天然女子高生のためのそーかつ

輪島ライ

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第3部 天然女子高生のための超そーかつ

第79話 Z世代

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 東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。


「最近は予算が不足してますわね。これでは合宿で安いホテルにしか泊まれませんわ」
「ネットとかラケットとか一気に新調したせいですけど、実際困りますよね。部長また骨折して入院中ですし」

 ある日の練習後。私、野掘のぼり真奈まなは部長の入院により部長代理を務めている堀江ほりえ有紀ゆき先輩と一緒に硬式テニス部の部室で会計収支を計算していた。

 硬式テニス部は部員数が多いもののあくまで中高の部活なので部費は安く、マルクス高校自体あまりお金のある私立学校ではないので予算を援助して貰える見込みもなかった。

「堀江さんも野掘さんもお疲れ様。実はこんなコンテストの案内状が届いたんだけど、ちょっと参加してみない? 区民会館のホールでやるみたいだから怪しいイベントではなさそうよ」
「お疲れ様です、金坂先生。なになに、Z世代コンテスト? 我こそはZ世代と思う人々がクイズや即興演技に挑戦して、賞金は10万円!? これは出てみる価値ありそうですね」
「そもそもZ世代って何でしたかしら?」

 私も名前しか知らなかったので硬式テニス部顧問である金坂かなさかえいと先生に聞いてみたところ、ゼット世代とは一般に1990年代後半以降生まれの若者を指す言葉らしく、私や先輩方は2000年から2002年の生まれなので当然該当することになる。

「何か面白そうだから私も参加するよ! 私たちの世代らしさって言ったら……そうだ、毎日遅刻してくるなら帰れって先生に叱られたら何の迷いもなく帰るよ!!」
「うちもヌコヌコ動画よりYoutubeばっかり見とるからZ世代の資格あるで! たこ焼き機でアヒージョ作るんも好きやし!!」
「まだまだですわね。スマートフォンの日本語入力アプリに平気で『Maitakeマイタケ』を使うぐらいは必須でしてよ」
「先輩方、何だかんだで今時の若者なんですね……」

 何はともあれ私たちはその日からZ世代らしさの研究に励み、翌週日曜日には金坂先生に連れられて皆で区民会館を訪れた。

 そこではZ世代らしさを競うコンテストが繰り広げられ……


「クアトラ・バルージがアフリカの議会で演説を」ピコーン!
「第37話!!」
「正解です! 次はゲームからの出題。本作のヨンテンドー機初のゲーム化で、後に」ピコーン!
「機甲戦陣Zザンタム・ヒートスクランダー!!」
「その通り! クイズはここで一旦中断し、即興演技のコーナーを始めます。では金坂さん、カーマン・ハーンの台詞で最も好きなものをどうぞ!」
「よくもいけしゃあしゃあと私に干渉する! 恥を知れ、俗人!!」
「素晴らしい! 演技力ボーナスで5点が加算されます!!」


「ってこれゼータ世代コンテストじゃないですか! 私たち知る訳ないですよ!!」
「金坂先生、中高生の頃に大ファンだったらしいですわよ。わたくしも映画版は前に見ましたわ」

 即興演技が評価されたおかげでその日は金坂先生が優勝となり、硬式テニス部の予算には無事に10万円が加算されたのだった。


 (続く)
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