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第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第73話 3R
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生にはリベラルアーツ精神と左派系の思想が叩き込まれている。
「うわっ、先輩それ何ですか? 何とも形容しがたい外見ですけど……」
ある日の登校中、私、野掘真奈は2年生の赤城旗子先輩が灰色で曲がった太い棒状の何かを台車に載せて運んでいる姿を目にした。
「生コンのナマコさ! お兄ちゃんがこの前大阪10区から取り寄せてくれたコンクリートで作ったんだよ」
「は、はあ……」
話を聞くと2年生は美術の授業で身近な素材から動物の模型を作ってくるよう命じられたらしく、生コンが身近な素材かどうかはともかく確かに海鼠も動物ではあると思った。
「今日は皆の前でナマコンを披露するんだよ~。自信作だから反応が楽しみだよ」
「それは楽しみですね……って危ない!!」
「にぎゃあああああああああ!!」
生コンのナマコを運んでいたはたこ先輩だが、校門の角を曲がろうとした所で突然自転車が飛び出してきた。
自転車は台車に激突し、乗っていた自転車ごと弾き飛ばされた女子生徒は同じく硬式テニス部所属の2年生である平塚鳴海先輩だった。
「ああー! 私の大事なナマコンがーー!!」
「ごめんはたこ、家に忘れ物取りに帰ろうとしてて急いでてん! 何でもするから許してーな!!」
「ん、今何でもするって言ったよね!? じゃあナマコンを今すぐ元に戻してよー!!」
「はたこ先輩、ショックなのは分かりますけど流石に無理ですよ。瞬間接着剤でくっつくかも分かりませんし……」
「そんなあ……」
はたこ先輩はポッキリと2つに折れてしまった生コンのナマコを手に取って泣き始め、これはどうしたものかと思った。
その時……
「何をしてますの? 1限目の授業に遅れますわよ」
「あっ、ゆき先輩」
「うちが自転車で走ってる時にはたこの台車にぶつかってもうて、生コンのナマコがこんな風になってもうてん」
1万円札のおもちゃを何十枚も組み合わせた鶴を手に登校してきたのは、やはり硬式テニス部所属の2年生である堀江有紀先輩だった。
「そんなことですの? でしたら3Rの発想で何とかなりますわよ。今から皆で美術室に行きましょう」
「ゆきが何とかしてくれるの? なら信じるよー!」
はたこ先輩は2つに折れた生コンを手に取ると立ち上がり、自転車を立て直して自宅に帰ったなるみ先輩を除く3人で美術室に行ってみることにした。
そして2年生の授業で……
「皆さん、はたこの作品は仲睦まじい2匹のナマコですわよ。不要な生コンを再利用し、海底の砂から上半身をのぞかせているというシチュエーションにすることで必要な生コンの量を減らし、頑丈な生コンを素材に選んだことで何度でも再展示することも可能となっていますわ。これこそ3Rの極致でしてよ!」
「素晴らしい! 赤城さんの作品は美術教育に留まらないポテンシャルを秘めているから、高校生美術展にわが校代表として応募させて貰うよ。美術教師として誇らしい限りだ!」
「まなちゃんまなちゃん、美術展の賞金で1万円貰ったから皆でナマコ料理食べにいこうよ! ナマコンのお葬式も兼ねてさ!!」
「は、ははは……」
1か月後、金一封を手に1年生の教室を訪ねてきたはたこ先輩に、私は「ものは言いよう」ってこういうことを指すのかなあと思った。
(続く)
「うわっ、先輩それ何ですか? 何とも形容しがたい外見ですけど……」
ある日の登校中、私、野掘真奈は2年生の赤城旗子先輩が灰色で曲がった太い棒状の何かを台車に載せて運んでいる姿を目にした。
「生コンのナマコさ! お兄ちゃんがこの前大阪10区から取り寄せてくれたコンクリートで作ったんだよ」
「は、はあ……」
話を聞くと2年生は美術の授業で身近な素材から動物の模型を作ってくるよう命じられたらしく、生コンが身近な素材かどうかはともかく確かに海鼠も動物ではあると思った。
「今日は皆の前でナマコンを披露するんだよ~。自信作だから反応が楽しみだよ」
「それは楽しみですね……って危ない!!」
「にぎゃあああああああああ!!」
生コンのナマコを運んでいたはたこ先輩だが、校門の角を曲がろうとした所で突然自転車が飛び出してきた。
自転車は台車に激突し、乗っていた自転車ごと弾き飛ばされた女子生徒は同じく硬式テニス部所属の2年生である平塚鳴海先輩だった。
「ああー! 私の大事なナマコンがーー!!」
「ごめんはたこ、家に忘れ物取りに帰ろうとしてて急いでてん! 何でもするから許してーな!!」
「ん、今何でもするって言ったよね!? じゃあナマコンを今すぐ元に戻してよー!!」
「はたこ先輩、ショックなのは分かりますけど流石に無理ですよ。瞬間接着剤でくっつくかも分かりませんし……」
「そんなあ……」
はたこ先輩はポッキリと2つに折れてしまった生コンのナマコを手に取って泣き始め、これはどうしたものかと思った。
その時……
「何をしてますの? 1限目の授業に遅れますわよ」
「あっ、ゆき先輩」
「うちが自転車で走ってる時にはたこの台車にぶつかってもうて、生コンのナマコがこんな風になってもうてん」
1万円札のおもちゃを何十枚も組み合わせた鶴を手に登校してきたのは、やはり硬式テニス部所属の2年生である堀江有紀先輩だった。
「そんなことですの? でしたら3Rの発想で何とかなりますわよ。今から皆で美術室に行きましょう」
「ゆきが何とかしてくれるの? なら信じるよー!」
はたこ先輩は2つに折れた生コンを手に取ると立ち上がり、自転車を立て直して自宅に帰ったなるみ先輩を除く3人で美術室に行ってみることにした。
そして2年生の授業で……
「皆さん、はたこの作品は仲睦まじい2匹のナマコですわよ。不要な生コンを再利用し、海底の砂から上半身をのぞかせているというシチュエーションにすることで必要な生コンの量を減らし、頑丈な生コンを素材に選んだことで何度でも再展示することも可能となっていますわ。これこそ3Rの極致でしてよ!」
「素晴らしい! 赤城さんの作品は美術教育に留まらないポテンシャルを秘めているから、高校生美術展にわが校代表として応募させて貰うよ。美術教師として誇らしい限りだ!」
「まなちゃんまなちゃん、美術展の賞金で1万円貰ったから皆でナマコ料理食べにいこうよ! ナマコンのお葬式も兼ねてさ!!」
「は、ははは……」
1か月後、金一封を手に1年生の教室を訪ねてきたはたこ先輩に、私は「ものは言いよう」ってこういうことを指すのかなあと思った。
(続く)
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