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第3部 天然女子高生のための超そーかつ
第72話 スクールハラスメント
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)
マルクス高校には今月初めから新たに社会科の先生が赴任してきて、私たちは1年生の政治・経済の授業で初対面となるその先生を待っていた。
「皆さんはじめまして。私は今日からこのクラスで政治・経済を教える路堂久美子と申します。では早速マルクス経済学の復習から……」
「先生すごく美人さんですね! 彼氏とかいるんですか?」
「ひいっ!」
「いきなり驚かせちゃ駄目だよ朝日さん。じゃあ、先生って何か得意分野ありますか?」
「ひいっっ!!」
若くて美人な先生に興味津々で質問をぶつけた朝日千春さんと梅畑伝治君だが、新しくやって来た先生への質問としてはよくある内容にも関わらず路堂先生は怯えて教室から逃げ出してしまった。
これでは授業にならないのでクラスを代表して先生を探しに行くと、彼女は階段の踊り場でうずくまっていた。
「どうしたんですか先生、いきなり逃げ出されて皆心配してますよ?」
「ごめんなさい……。実は私、前に教えてた男子校で生徒からのハラスメントに耐えられなくなって、お父さんのコネでこの学校に転勤させて貰ったの。お父さんは日○組の偉い人で……」
「そ、そんなご事情が……」
まだ名前も知らない女子生徒である私に、路堂先生は震えながら事情を話し始めた。
「だって男子校の不良生徒たちって、中ソ国境紛争の授業で私に珍宝島事件って何回も読ませるのよ!? 恥ずかしがる私をまたあざ笑って、あの時はもう辛くて辛くて……」
「ダマンスキー島事件って教えればいいような気もしますけど、セクハラの被害は本当にお気の毒です……」
「さっきの質問だって、私は新人教師のくせに彼氏がいる( 自粛 )だとか、夜の得意分野は何なのかとかそういう意味に決まってるわ! この高校は平和だって聞いてたのに……」
「それは流石に深読みしすぎですよ! ともかく一緒に教室に戻りましょう?」
それからは路堂先生を連れて教室に戻り、初回の授業は無事に終わったが彼女の抱えるトラウマは何とかしなければいけないと思った。
「オーウ、そういうコトデシタらワタシにレットしてクダさい。ミズ路堂のトラウマをクリアーしてみせマスよ」
「ありがとうございます。では明日の英語の授業で……」
職員室に来た私の頼みをマルクス高校英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生は快く引き受けてくれて、明日の1年生の英語の授業には教育研修という名目で路堂先生も参加することになった。
そして翌日……
「グッモーニンエヴリワン。今日はスチューデントがイングリッシュセンテンスをスピークし、ワタシがジャパニーズトランスレイションを読みマス。それではヒアウィーゴー!」
「分かりました! I met him by chance at a school route.」
「ワタシは通学路で彼にタマ・タマ出会いマシタ。ネクスト!」
「Moons travel around planets.」
「衛星は惑星のマワリをウンコゥする!」
「ところでドイツ語で『不足』って何でしたっけ?」
「( ピー )。これは豆知識デスね」
「素晴らしいわ、これが生きた英語の授業なのね……」
「そういう意味で見て貰ったんじゃないです……」
スノハート先生の捨て身の授業に感動している路堂先生を見て、私はともかく新しい環境に慣れてくれそうでよかったと思った。
(続く)
マルクス高校には今月初めから新たに社会科の先生が赴任してきて、私たちは1年生の政治・経済の授業で初対面となるその先生を待っていた。
「皆さんはじめまして。私は今日からこのクラスで政治・経済を教える路堂久美子と申します。では早速マルクス経済学の復習から……」
「先生すごく美人さんですね! 彼氏とかいるんですか?」
「ひいっ!」
「いきなり驚かせちゃ駄目だよ朝日さん。じゃあ、先生って何か得意分野ありますか?」
「ひいっっ!!」
若くて美人な先生に興味津々で質問をぶつけた朝日千春さんと梅畑伝治君だが、新しくやって来た先生への質問としてはよくある内容にも関わらず路堂先生は怯えて教室から逃げ出してしまった。
これでは授業にならないのでクラスを代表して先生を探しに行くと、彼女は階段の踊り場でうずくまっていた。
「どうしたんですか先生、いきなり逃げ出されて皆心配してますよ?」
「ごめんなさい……。実は私、前に教えてた男子校で生徒からのハラスメントに耐えられなくなって、お父さんのコネでこの学校に転勤させて貰ったの。お父さんは日○組の偉い人で……」
「そ、そんなご事情が……」
まだ名前も知らない女子生徒である私に、路堂先生は震えながら事情を話し始めた。
「だって男子校の不良生徒たちって、中ソ国境紛争の授業で私に珍宝島事件って何回も読ませるのよ!? 恥ずかしがる私をまたあざ笑って、あの時はもう辛くて辛くて……」
「ダマンスキー島事件って教えればいいような気もしますけど、セクハラの被害は本当にお気の毒です……」
「さっきの質問だって、私は新人教師のくせに彼氏がいる( 自粛 )だとか、夜の得意分野は何なのかとかそういう意味に決まってるわ! この高校は平和だって聞いてたのに……」
「それは流石に深読みしすぎですよ! ともかく一緒に教室に戻りましょう?」
それからは路堂先生を連れて教室に戻り、初回の授業は無事に終わったが彼女の抱えるトラウマは何とかしなければいけないと思った。
「オーウ、そういうコトデシタらワタシにレットしてクダさい。ミズ路堂のトラウマをクリアーしてみせマスよ」
「ありがとうございます。では明日の英語の授業で……」
職員室に来た私の頼みをマルクス高校英語科AET(英語指導助手)のガラー・スノハート先生は快く引き受けてくれて、明日の1年生の英語の授業には教育研修という名目で路堂先生も参加することになった。
そして翌日……
「グッモーニンエヴリワン。今日はスチューデントがイングリッシュセンテンスをスピークし、ワタシがジャパニーズトランスレイションを読みマス。それではヒアウィーゴー!」
「分かりました! I met him by chance at a school route.」
「ワタシは通学路で彼にタマ・タマ出会いマシタ。ネクスト!」
「Moons travel around planets.」
「衛星は惑星のマワリをウンコゥする!」
「ところでドイツ語で『不足』って何でしたっけ?」
「( ピー )。これは豆知識デスね」
「素晴らしいわ、これが生きた英語の授業なのね……」
「そういう意味で見て貰ったんじゃないです……」
スノハート先生の捨て身の授業に感動している路堂先生を見て、私はともかく新しい環境に慣れてくれそうでよかったと思った。
(続く)
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