62 / 181
第2部 天然女子高生のための再そーかつ
第59話 重点政策
しおりを挟む
東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は今時珍しい革新系の学校で、在学生には(後略)
「久しぶりだなミス野掘。この服と靴かっこいいだろう?」
「いやー、どうなんでしょうね……」
ある日曜日の昼、飼っているハムスターの飼育グッズを買いにデパートを訪れていた私は元生徒会長の2年生にして金髪天然パーマの治定度力先輩に出くわした。
先輩は真っ白な上下を着て先の尖った金色の靴を履いており、これはもはやダサいというレベルを超越しているように思われた。
「うーん、イマイチなのか? 女の子に魅力を見せつけようと思って、15万円も出して一式揃えたんだが」
「15万円!? 先輩、そんなお金があるならもっと有意義に使いましょうよ……」
せっかくの大金でこんな衣装を買ってしまうのも治定度先輩なら平常運転だが、流石にもったいないと思った。
「実は最近デートした女の子にことごとく振られてて、この前なんかお互い高校生だし食事代を割り勘にしようって言ったらあり得ないって言われたんだよ。正論だと思うんだけど、やっぱりもっとベタ惚れさせないと駄目なのかな?」
「いやいやいや、15万円でそんな一式買えるなら食事代ぐらいおごるべきでしょう! ちょっと練習として私にお昼ご飯おごってくれません!?」
あまりの驚きに図々しいお願いをしてしまったが、今の先輩はそれぐらいしないと恋愛で重点を置くべき方策を修正できないと思った。
「まあミス野掘には世話になってるし、そもそも後輩だから全然いいよ。そこのセイザリアでもいいか?」
「全然いいですよ。あっ、あの子は……」
「野掘さんじゃないですか! そちらの方は……彼氏さんですか?」
「違うっ! 全然違うから!!」
デパートの広い通路を歩いていたのはケインズ女子高校硬式テニス部員の灰田菜々さんで、彼女は私の姿を見かけて自分から声をかけてくれた。
「こっ、これは……かわいい! 君も昼食をご一緒してくれないか!?」
「今からこの先輩にお昼ご飯おごって貰う所だったの。もし良かったら灰田さんも食べてかない?」
「いいんですか!? ありがとうございます、ちょうどお腹空いてたんです」
「君みたいなかわいい女の子のためならいくらでもご馳走するさ。好きなだけ食べてくれ」
治定度先輩は小柄な美少女である灰田さんにデレデレしつつ私たちを連れてファミレスチェーンのセイザリアに入り、私は何となく不吉な予感がした。
そして数十分後……
「やっぱりセイザリアは美味しいですー。すみません、緑豆サラダのベーコン抜きとミニフランスパンを2つずつ、あと野菜シチューも追加でお願いします!」
「ははは、美味しく食べてくれて嬉しいよ……」
菜食主義者の灰田さんは肉を除外したメニューを次々に注文し続け、彼女の底なしの食欲に治定度先輩は青ざめていた。
(先輩、ぶっちゃけお金足ります?)
(最悪の場合はさっき買ったこの服を返品して……あ、人前では脱げないか……)
小声で絶望的な状況を伝えてきた先輩に、私は流石に酷なことをしたなあと少しだけ反省した。
(続く)
「久しぶりだなミス野掘。この服と靴かっこいいだろう?」
「いやー、どうなんでしょうね……」
ある日曜日の昼、飼っているハムスターの飼育グッズを買いにデパートを訪れていた私は元生徒会長の2年生にして金髪天然パーマの治定度力先輩に出くわした。
先輩は真っ白な上下を着て先の尖った金色の靴を履いており、これはもはやダサいというレベルを超越しているように思われた。
「うーん、イマイチなのか? 女の子に魅力を見せつけようと思って、15万円も出して一式揃えたんだが」
「15万円!? 先輩、そんなお金があるならもっと有意義に使いましょうよ……」
せっかくの大金でこんな衣装を買ってしまうのも治定度先輩なら平常運転だが、流石にもったいないと思った。
「実は最近デートした女の子にことごとく振られてて、この前なんかお互い高校生だし食事代を割り勘にしようって言ったらあり得ないって言われたんだよ。正論だと思うんだけど、やっぱりもっとベタ惚れさせないと駄目なのかな?」
「いやいやいや、15万円でそんな一式買えるなら食事代ぐらいおごるべきでしょう! ちょっと練習として私にお昼ご飯おごってくれません!?」
あまりの驚きに図々しいお願いをしてしまったが、今の先輩はそれぐらいしないと恋愛で重点を置くべき方策を修正できないと思った。
「まあミス野掘には世話になってるし、そもそも後輩だから全然いいよ。そこのセイザリアでもいいか?」
「全然いいですよ。あっ、あの子は……」
「野掘さんじゃないですか! そちらの方は……彼氏さんですか?」
「違うっ! 全然違うから!!」
デパートの広い通路を歩いていたのはケインズ女子高校硬式テニス部員の灰田菜々さんで、彼女は私の姿を見かけて自分から声をかけてくれた。
「こっ、これは……かわいい! 君も昼食をご一緒してくれないか!?」
「今からこの先輩にお昼ご飯おごって貰う所だったの。もし良かったら灰田さんも食べてかない?」
「いいんですか!? ありがとうございます、ちょうどお腹空いてたんです」
「君みたいなかわいい女の子のためならいくらでもご馳走するさ。好きなだけ食べてくれ」
治定度先輩は小柄な美少女である灰田さんにデレデレしつつ私たちを連れてファミレスチェーンのセイザリアに入り、私は何となく不吉な予感がした。
そして数十分後……
「やっぱりセイザリアは美味しいですー。すみません、緑豆サラダのベーコン抜きとミニフランスパンを2つずつ、あと野菜シチューも追加でお願いします!」
「ははは、美味しく食べてくれて嬉しいよ……」
菜食主義者の灰田さんは肉を除外したメニューを次々に注文し続け、彼女の底なしの食欲に治定度先輩は青ざめていた。
(先輩、ぶっちゃけお金足ります?)
(最悪の場合はさっき買ったこの服を返品して……あ、人前では脱げないか……)
小声で絶望的な状況を伝えてきた先輩に、私は流石に酷なことをしたなあと少しだけ反省した。
(続く)
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
最近の女子高生は思想が強い ~雇用・利子および女子高生の一般りろん~
輪島ライ
大衆娯楽
東京都千代田区にある私立ケインズ女子高校は本来の意味でリベラルな学校で、在学生には寛容の精神と資本主義思想が教え込まれている。
社会派ドタバタポリティカルコメディ、ここでも開幕!!
※この作品は「小説家になろう」「アルファポリス」「カクヨム」「エブリスタ」に投稿しています。
※これは架空の物語です。過去、あるいは現在において、たまたま実在する人物、出来事と類似していても、それは偶然に過ぎません。
※姉妹作「天然女子高生のためのそーかつ」を並行連載中です。(内容に一部重複があります)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売

雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ!
コバひろ
大衆娯楽
格闘技を通して、男と女がリングで戦うことの意味、ジェンダー論を描きたく思います。また、それによる両者の苦悩、家族愛、宿命。
性差とは何か?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる