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第2部 天然女子高生のための再そーかつ
第57話 独占禁止法
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東京都千代田区にある私立マルクス高等学校は(後略)
「野掘さん、ケインズ女子高校の出羽さんが好きなものって知らないかい?」
「3年生の出羽ののかさんですよね? ある程度は知ってますけど、なぜ私に?」
ある日の放課後、2年生で応援団長の裏羽田由自先輩は私を探して1年生の教室に来ていた。
「この前出羽さんとデートした時、ちょっとしたすれ違いでこっちから別れを切り出してしまったんだけど、やっぱり彼女とまた会いたいんだ。それで彼女の趣味を知りたいと思って……」
「な、なるほど。裏羽田先輩モテますし、出羽さん以外の女の子じゃ駄目なんですか?」
ケインズ女子高校硬式テニス部所属の3年生である出羽ののかさんはスタイル抜群の美人だが男性をすぐに「北欧の男性」と比較する悪癖があるので、私は率直にそう尋ねてみた。
「確かに出羽さんは性格にやや難があるけど、僕がこれほど一人の女性を独占したいと思ったのは今日が初めてなんだ。独占禁止法とは言わないけど一人の女性を束縛することは自由主義に反するのに、それでも僕は出羽さんにまた会いたい」
「分かりました。出羽さんは確か、少女漫画とか韓流ドラマが好きみたいですね。乙女ゲーム? っていうのにも目がないみたいです」
裏羽田先輩が出羽さんを愛しているのは確かなようなので、私は以前本人から聞いた彼女の趣味を教えてあげた。
「そうなのか、じゃあ僕も彼女の好みの男性になれるよう頑張ってみるよ! 今日はありがとう!!」
裏羽田先輩は元気よく言うとそのまま教室を立ち去り、私は今回も心配が尽きないなあと思った。
その翌週……
「野掘さん、今日もしっかり監視するわよ! どうせ由自の恋路が上手くいく訳ないんだから」
「金原先輩、何だかんだ気にしてますよね……?」
裏羽田先輩のデート現場を見に行きたいと思って彼の従妹である金原真希先輩に話をした結果、デートの待ち合わせ場所を聞き出すだけのつもりが結局金原先輩も付いてきていた。
出羽さんはファッション街の掲示板の前に立っていて、腕時計を見ながら裏羽田先輩を待っていた。
「すみません、そこの女性……」
「裏羽田君、女性を待たせるなんて北欧の男性ではあり得な……あら、すみません」
「いえいえ。区民会館のカルチャースクールに参加したいのですが、場所をご存知でしょうか? 何分、この辺りの地理には詳しくなくて……」
出羽さんに話しかけたのは杖をついたおじいさんで、区民会館の場所を尋ねたおじいさんに出羽さんは親切に場所を教えてあげていた。
その時。
「遅れてすみません! んっ……?」
「おはよう、裏羽田君。今こちらの男性に……」
早歩きで到着した裏羽田先輩は出羽さんに声をかけると、突如として右手で彼女の左肩をつかみ、
「……付き合っているのか? 俺以外の奴と……」
「え!?」
出羽さんの身体を掲示板に押し付けつつ壁ドンをした。
「お前と付き合うのは、俺だけだと思ってた」
「ちょっ、待っ、一体何を」
裏羽田先輩は壁ドンの体勢から出羽さんににじり寄り、おじいさんは危険な若者にドン引きしつつその場を立ち去った。
「今日は帰したくない! サランヘヨ!!」
「きゃー助けてーー!!」
「君、公衆の面前で何をやっているんだ! 迷惑防止条例違反で逮捕する!!」
「えっ、僕は彼女の好みに合わせてうわああああやめろおおおおぉぉぉぉ」
韓国語で告白しつつ出羽さんを抱きしめようとした裏羽田先輩は、通りがかった警察官によりあっさりと連行された。
「ほら見なさい! やっぱり由自には高嶺の花の美人と恋愛なんてできないのよ!!」
「今回ばかりは出羽さんのせいじゃないと思います……」
例によって従兄をあざ笑っている金原先輩に、私は恋愛には自由と束縛のバランスが大切だなあと思った。
(続く)
「野掘さん、ケインズ女子高校の出羽さんが好きなものって知らないかい?」
「3年生の出羽ののかさんですよね? ある程度は知ってますけど、なぜ私に?」
ある日の放課後、2年生で応援団長の裏羽田由自先輩は私を探して1年生の教室に来ていた。
「この前出羽さんとデートした時、ちょっとしたすれ違いでこっちから別れを切り出してしまったんだけど、やっぱり彼女とまた会いたいんだ。それで彼女の趣味を知りたいと思って……」
「な、なるほど。裏羽田先輩モテますし、出羽さん以外の女の子じゃ駄目なんですか?」
ケインズ女子高校硬式テニス部所属の3年生である出羽ののかさんはスタイル抜群の美人だが男性をすぐに「北欧の男性」と比較する悪癖があるので、私は率直にそう尋ねてみた。
「確かに出羽さんは性格にやや難があるけど、僕がこれほど一人の女性を独占したいと思ったのは今日が初めてなんだ。独占禁止法とは言わないけど一人の女性を束縛することは自由主義に反するのに、それでも僕は出羽さんにまた会いたい」
「分かりました。出羽さんは確か、少女漫画とか韓流ドラマが好きみたいですね。乙女ゲーム? っていうのにも目がないみたいです」
裏羽田先輩が出羽さんを愛しているのは確かなようなので、私は以前本人から聞いた彼女の趣味を教えてあげた。
「そうなのか、じゃあ僕も彼女の好みの男性になれるよう頑張ってみるよ! 今日はありがとう!!」
裏羽田先輩は元気よく言うとそのまま教室を立ち去り、私は今回も心配が尽きないなあと思った。
その翌週……
「野掘さん、今日もしっかり監視するわよ! どうせ由自の恋路が上手くいく訳ないんだから」
「金原先輩、何だかんだ気にしてますよね……?」
裏羽田先輩のデート現場を見に行きたいと思って彼の従妹である金原真希先輩に話をした結果、デートの待ち合わせ場所を聞き出すだけのつもりが結局金原先輩も付いてきていた。
出羽さんはファッション街の掲示板の前に立っていて、腕時計を見ながら裏羽田先輩を待っていた。
「すみません、そこの女性……」
「裏羽田君、女性を待たせるなんて北欧の男性ではあり得な……あら、すみません」
「いえいえ。区民会館のカルチャースクールに参加したいのですが、場所をご存知でしょうか? 何分、この辺りの地理には詳しくなくて……」
出羽さんに話しかけたのは杖をついたおじいさんで、区民会館の場所を尋ねたおじいさんに出羽さんは親切に場所を教えてあげていた。
その時。
「遅れてすみません! んっ……?」
「おはよう、裏羽田君。今こちらの男性に……」
早歩きで到着した裏羽田先輩は出羽さんに声をかけると、突如として右手で彼女の左肩をつかみ、
「……付き合っているのか? 俺以外の奴と……」
「え!?」
出羽さんの身体を掲示板に押し付けつつ壁ドンをした。
「お前と付き合うのは、俺だけだと思ってた」
「ちょっ、待っ、一体何を」
裏羽田先輩は壁ドンの体勢から出羽さんににじり寄り、おじいさんは危険な若者にドン引きしつつその場を立ち去った。
「今日は帰したくない! サランヘヨ!!」
「きゃー助けてーー!!」
「君、公衆の面前で何をやっているんだ! 迷惑防止条例違反で逮捕する!!」
「えっ、僕は彼女の好みに合わせてうわああああやめろおおおおぉぉぉぉ」
韓国語で告白しつつ出羽さんを抱きしめようとした裏羽田先輩は、通りがかった警察官によりあっさりと連行された。
「ほら見なさい! やっぱり由自には高嶺の花の美人と恋愛なんてできないのよ!!」
「今回ばかりは出羽さんのせいじゃないと思います……」
例によって従兄をあざ笑っている金原先輩に、私は恋愛には自由と束縛のバランスが大切だなあと思った。
(続く)
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