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転生したらまた魔女の男子だった件

179.人間の姿になったリクとライラとレンくんとリリちゃん

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 丸まって寝ているリクとライラを膝の上に乗せていたら、急に膝が重くなった。
 何事かと思って見降ろすと、黒と銀色の混ざった髪の男の子と女の子が裸で眠っていた。
 人間の姿だ。
 僕は驚いてセイラン様を大声で呼んでいた。

「セイラン様、リクとライラが人間の姿になりました」

 駆けて来たセイラン様が、僕とリラの小さい頃の服を出してきてリクとライラに着せていた。

「ママ、これなぁに?」
「お手手だよ」
「これは?」
「足だよ」
「リク、なんかへん!」
「らーも、へん!」

 生まれてからずっと白虎の姿だったリクとライラには違和感があるようだが、僕はリクとライラの人間の姿を見ることができて涙が出るほど嬉しかった。
 リクは僕によく似ていて、ライラはセイラン様に似ているようだ。
 人間の姿に慣れずに四つ足で歩こうとするリクとライラの手を握って、直立歩行するように促す。
 食事のときにスプーンを渡してみると、意味が分からなかったようだが、僕が握って見せると、一生懸命スプーンを握って食べていた。

 数日後にはレンくんとリリちゃんも人間の姿になれていた。

「レンは僕にそっくりですね」
「リリは私にそっくりだわ」
「リリとリクがいると、ラーイとリラが小さい頃を思い出します」
「リクったらお兄ちゃんそっくりだものね」

 レイリ様とリラもレンくんとリリちゃんに僕とリラが小さい頃に着ていた服を着せながら、人間の姿になれたことを喜んでいた。
 人間の姿になっても、白虎の姿だったときの癖が抜けずに、四つ足で歩いてみたり、部屋の隅の猫のお手洗いで用を足してしまったり、服を着たままお風呂に入ってしまったり、失敗は多かったが、徐々にリクもライラもレンくんもリリちゃんも慣れて来た。

 幼い子どもの順応力というのはすごいもので、数日でスプーンで食事ができるようになり、椅子に座ることも覚えていた。

「ママとおなじねー」
「おてて、べんりね」

 リクは僕と同じことを喜んでいて、ライラは手で色んなことができることを喜んでいた。

 フレーズちゃんが小学校に行く年になっても燕の姿だったので、リクとライラとレンくんとリリちゃんも成人近くまで人間の姿にはなれないのだと思っていただけに、人間の姿になれたことは大きな喜びだった。

「白虎の姿には戻れるのか?」
「びゃっこ?」
「らー、にゃーにゃーなれないの」
「レン、ちょっとむつかしい」
「どうすればいいの?」

 白虎の姿に戻る方法を聞いてくるリリちゃんにセイラン様が説明をする。

「自らの内なる獣を解き放つのだ。そなたたちの本性は白虎なのだからな」
「うちなるけもの?」
「うちなるけものってなぁに?」
「白虎のことだ」
「にゃーにゃーじゃないの?」
「ママ、わかんないー!」

 結局僕に助けを求められたが、僕の方も分からない。どうすればいいか迷っているとリラが話しに混ざって来た。

「変身するのよ!」
「へんちん?」
「へんちん、なぁに?」
「どうやるの?」
「おしえて!」
「自分が自分じゃなくなるみたいな気持ちで、強く強く変身した姿を頭に思い描くの。そして叫ぶのよ! 変身! って!」
「へんちん!」
「へーんちん!」
「へんちんするー!」
「りーもー!」

 それで何が伝わったのか分からない。
 僕には全然意味が分からなかったのに、リクとライラとレンくんとリリちゃんは白虎の姿になれていた。

「ママとおなじになるときも、へんちん?」
「そうよ! 心に思い描くのよ!」
「へんちん!」
「へーんちん!」
「レンもへんちん!」
「りーも!」

 それでできてしまうのだからリクもライラもレンくんもリリちゃんも優秀だ。四人ともしっかりと人間の姿に戻れていた。
 四人はこうして人間の姿と白虎の姿を自在に操れるようになったのだ。

 小学校に入学する前に人間の姿にもなれるようになっていて、僕は大いに安心した。

 秋が過ぎて冬が来て、春になって、フレーズちゃんは八歳に、スリーズちゃんは十三歳になった。
 お誕生日には僕がリクとライラを連れて、リラがレンくんとリリちゃんを連れて母の家に行った。
 十四歳になっていたレオくんはフレーズちゃんとスリーズちゃんのお誕生日に大粒の苺を持ってきてくれていた。

「私が十八歳になったら、レオくんと結婚するのよ」
「スリーズお姉ちゃん、レオお兄ちゃんと結婚するの? 私は誰と結婚するの?」
「それはフレーズ、あなたが決めるのよ」
「私は誰と結婚するか自分で決めるの?」
「そうよ。お兄ちゃんも、リラお姉ちゃんも、お母さんも、みんな、自分で誰と結婚するか決めたのよ」

 結婚という言葉がまだピンと来ていないのはフレーズちゃんが八歳と言う幼さだからだろう。フレーズちゃんは生まれ変わったわけではないので、普通の八歳児だった。
 僕やスリーズちゃんとは違う。
 スリーズちゃんは十歳を超えて三年目のお誕生日だったが、高等学校での成績も非常によく、頭のいい子に育っているようだった。

「俺、スリーズちゃんに相応しい男になるよ! 魔法は使えないけど」
「魔法が使えるのが大事じゃないわ。レオくんはずっと私と一緒にいてくれた。私を応援してくれているじゃない。レオくんには私のことを一生応援してほしいの」

 そのために、レオくんには神族になって欲しい。

 スリーズちゃんの口から出た言葉に僕は驚いていた。
 スリーズちゃんは半分魔法使いで半分神族だ。レオくんと結婚したらレオくんのことを神族にして寿命を分け合うことができるだろう。
 レオくんが魔法を使えないことで人間の血が濃いのではないかとスリーズちゃんは気付いていたのだ。

「俺が神族になれるのか?」
「神族と結婚したら、伴侶は神族になれるのよ。私は半分は神族だから、レオくんを神族にしてあげられるはず。そうすれば、レオくんは神族の術が使えるようになるわ」
「果樹園を豊かにする術が使えるかな?」
「燕族は夏の恵みをもたらす神族よ。きっとできるようになるわ」

 十三歳と十四歳の結婚の約束だが、二人は真剣だった。
 小さな頃からお互いに好きで、結婚したいと言っていたスリーズちゃんとレオくんがしっかりと将来を考えている。

「アマリエ、そろそろレオくんとスリーズを婚約させてもいいんじゃないか?」
「そうね。いいと思うわ」

 僕とリラは、セイラン様とレイリ様と七歳で婚約したが、それはセイラン様とレイリ様は神族で土地神様であったという理由があった。
 スリーズちゃんとレオくんは十三歳と十四歳でやっと婚約を許されている。

 スリーズちゃんのお誕生日は二人の婚約のめでたい日にもなった。

「スリーズお姉ちゃんいいなぁ。私も結婚するひとを探したい」
「フレーズにはちょっと早いかな」
「えぇー」
「フレーズまで早く結婚してしまったら私が寂しいよ」
「それでも結婚したいの!」

 スリーズちゃんの婚約はフレーズちゃんに結婚に対する憧れを抱かせたようだった。

 お父さんは複雑な気持ちだろうが、フレーズちゃんもリラの妹なので言い出したら聞かないところがある。
 近いうちにフレーズちゃんも結婚したい相手ができるのではないかと僕は思っていた。

 お腹いっぱいケーキを食べたリクとライラとレンくんとリリちゃんは白虎の姿になってぐっすりと眠っていた。白虎の姿になっても四歳になるとずっしりと重いので僕はリクとライラを抱っこするので精いっぱいだった。リラはレンくんとリリちゃんを軽々と抱えている。

 社に帰るとセイラン様とレイリ様が待っていてくれた。
 最近はマオさんも赤ちゃんを連れて社の表に出てくるようになった。赤ちゃんにはリクとライラも興味津々だ。

「あかちゃん! リク、だっこしたい!」
「らー、いいこしたい!」

 赤ちゃんに触れたがるリクとライラにマオさんが赤ちゃんを降ろしてくれる。床の上に座った赤ちゃんは涎を垂らしてリクとライラを見ている。

「リクにぃによ?」
「ライラねぇねよ?」
「ママ、あかちゃんのおなまえは?」
「ママ、あかちゃんなめてもいい?」

 口々に聞かれて僕は苦笑する。

「赤ちゃんはミオちゃんだよ。舐めちゃダメ。人間の赤ちゃんは舐めちゃダメなんだよ」
「ミオちゃん、かわいいねー」
「わかった、なめない」

 舐めるのは毛繕いやコミュニケーションの意味があるので、白虎族の間ではしてもよかったが、ミオちゃんは人間の赤ちゃんなので舐めてはいけない。伝えると舐めないと答えるライラの頭を撫でていると、リクがミオちゃんに尻尾を掴まれている。

「ママー! いたいよー!」
「ミオちゃん、尻尾は掴まないであげて」
「びゃー!」

 泣いているリクを助け出すと、ミオちゃんは首を傾げてお目目を丸くしていた。
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