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転生したらまた魔女の男子だった件
162.十七歳のお誕生日
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僕が忙しくアマンダ姉さんの結婚式の衣装を作っている間に、リヒ様が夏を運んできて、僕は十七歳になった。
十七歳にもなるとお誕生日を祝ってもらうのも気恥ずかしいのだが、セイラン様とレイリ様は僕とリラの成長を願ってくれているし、マオさんは張り切ってご馳走を作ってくれるし、母はケーキを作ってくれるので、僕は大人しく祝われることにした。
今年もナンシーちゃんが艶々のさくらんぼを持ってきてくれている。
「スリーズちゃん、覚えてる? 僕とスリーズちゃんは前世でさくらんぼのパイが大好きだったよね」
「覚えてるわ、お兄ちゃん。あまり食べられなかったから、わたし、いつもさくらんぼのパイが食べたかった」
さくらんぼのパイを落ち着いて食べられる時間など限られていて、その時間が貴重で、僕とスリーズちゃんには懐かしい思い出になっていた。十歳のお誕生日に食べたがったさくらんぼのパイのせいで僕とスリーズちゃんは前世で殺されてしまったのだけれど、さくらんぼのパイが好物というのは変わらなかった。
「お兄ちゃんとスリーズちゃんが前世の話をするのって珍しいわ」
「リラを仲間外れにしてるつもりはないよ」
「大丈夫よ、そんなこと思ってないから。もっと話していいのよ。お兄ちゃんとスリーズちゃんはどんな冒険をしてきたの?」
僕はリラが前世の妹だと思い込んでいて、何も覚えていないリラの記憶が戻ることがないようにリラの前では前世の話はしないように気を付けていた。それが今も続いていて、リラには前世の話はほとんどしたことがないことを思い出す。
「僕とスリーズちゃんは双子で生まれたけど、僕は男の子で災厄の子って言われて殺されそうになったから、前世の母さんは僕とスリーズちゃんを連れて大陸に逃げたんだ」
大陸での暮らしは苦しいものだった。
魔女の森で得られるはずの魔力を得られず、いつも飢餓状態で、体調を崩して寝込んでいることが多かった。
追手からも逃げなければいけなくて、夜中でも容赦なく叩き起こされて宿から逃げ出すことがあった。
話をするとリラが拳を握って、それを震わせている。
「お兄ちゃんにもスリーズちゃんにも何も悪いことはないのに、生まれてきただけなのに、そんな酷いことになっていたの?」
「その土地の土地神様が神力を込めた水をくれて一時的に飢えをしのぐことはあったけれど、ほとんどのときは魔力が枯渇して死にそうになってた」
「しかも、殺されちゃったんでしょう?」
「十歳の誕生日に、さくらんぼのパイが食べたいって、わたしが言ったの。お母さんはさくらんぼのパイを買いに行って、わたしとお兄ちゃんだけが残ってて、そこに魔女が来た……」
死ぬ瞬間のことは覚えていないが苦しかった記憶だけある。僕とスリーズちゃんの話を聞いてリラは腕を伸ばして僕とスリーズちゃんを抱き締めた。
「今世では私がお兄ちゃんとスリーズちゃんを守るわ! ずっとずっと一緒よ」
リラは前世の妹ではなかったけれど、僕とスリーズちゃんの苦しみを理解してくれて守ると言ってくれていた。
「兄妹仲がいいのね。さくらんぼのパイはいかが?」
母がさくらんぼのパイを持ってきてくれて話は終わった。
フレーズちゃんのためには小さく小さく切って、スリーズちゃんと僕とリラには大きな一切れにアイスクリームを添えて、お誕生日のおやつが始まる。種を取ったさくらんぼがたくさん乗ったパイはとても美味しかった。
十七歳ということは、セイラン様と結婚できるまで後一年に迫っているということだ。
最近忙しくしている僕に、セイラン様が部屋で二人きりになって問いかける。
「仕事はどうだ?」
「アマンダ姉さんの結婚式の衣装作りを任されました。新しくこの土地でセイラン様とレイリ様の眷属になる神族の男性と結婚するのだそうで」
「挨拶に来ておったな。結婚衣装を作ると言っておったから、魔法使いの街の仕立て屋は腕がいいと売り込んでおいた」
「売り込んでくれていたのですか?」
セイラン様にそんな風に評価されるなんて僕は嬉しくてにやけてしまう。誰に褒められるよりもセイラン様に褒められるのが僕は一番嬉しいのだ。
「あの方は熊の神族だと仰っていました。熊の神族はどこに住んでいるのですか?」
「大陸から来たのではなさそうだったな。恐らく、この島国の北の方の土地から来たのではないだろうか。それも聞いてみるといい」
セイラン様に言われて僕は頷く。
他にも話したいことがあったけれど、僕はセイラン様の体に擦り寄った。しっかりとした体格のセイラン様は僕の細っこい体を抱き締めてくれる。僕はまだ体付きが細くて、身長もセイラン様よりも頭一つ以上小さかった。
「僕の血が混じったら、生まれて来る子どもは弱くなってしまうのではないでしょうか?」
不安を口にすれば、セイラン様が目を細める。
「肉体的には弱くなる可能性もある。だが、魔法が使える子が生まれる可能性もあるのだぞ。悪いことばかりではない」
「魔法が使えることが神族において役に立ちますか?」
「生まれてきた子全てが土地を継げるわけではないのだ。そうなった場合には、残った子はどうにかして生計を立てていかなければいけない。そういうときに魔法は非常に有効であろう?」
確かに、土地神になれる神族は土地の大きさが決まっているので大量には出ない。そうなると土地神になること以外で生きて行かねばならなくなるのだが、その場合には魔法を使えたら僕のように仕立て屋になることもできるだろうし、ナンシーちゃんのように土地を豊かにして実りを増やすこともできるだろうし、リラのように肉体を強化して戦うこともできるだろう。
魔法使いで神族ということが僕とセイラン様の子どもにとっては有利になるかもしれないことを知って、僕は少しだけほっとしていた。
「セイラン様、十七歳になったのです。キスをしてもいいでしょう?」
「ラーイはそう言って私を煽る」
苦笑しながらセイラン様が僕の唇を食べてしまうように塞ぐ。少し慣れてきたので息はできるのだが、舌を絡めると心臓がドキドキして、気持ちよさに頭の芯がぼーっとしてくる。
舌を絡めて、セイラン様の長くて太い舌が僕の口腔内を蹂躙する。僕の舌を舐めて、口蓋を舐めて、歯列を舐めて、舌先を甘く噛んでくる。
「んっ! ふっ! ふぁっ!」
気持ちよくて下半身が反応している僕はキスをしながら膝を擦り合わせる。キスをしたままでセイラン様の手が僕のズボンと下着を脱がせて、中心を握る。
くちくちと口腔内を舐められつつ、中心も扱き上げられて、僕は快感に息もできなくなる。
セイラン様の名前を呼びたいが口を封じられているのでできない。
精を吐き出して、倒れた僕の目の前でセイラン様が大きな手を濡らす僕の白濁をぺろりと舐めた。
「せ、セイラン様、き、汚いです!」
「ラーイのは汚くなどないぞ。正直、美味しいわけではないがな」
「そんなもの舐めないでください」
恥ずかしくて真っ赤になった僕にセイラン様は笑っていた。
風呂場で体を流して一緒に湯船に浸かる。
セイラン様の足の間に座る僕は狭いのだが、妙に満たされていた。
風呂の湯はぬるく、火照った体に心地よい。
「セイラン様……キスしながら触られるのは、僕にはちょっと早いようです」
「気持ちよさそうな顔をしていて可愛かったぞ?」
「刺激が強すぎました」
体が傾いて湯船に溺れそうになるのをセイラン様が抱き留めてくれる。
セイラン様に抱き締められて僕は湯船の中で眠ってしまいそうになる。精を吐き出した後にはとても怠くて眠くなってしまうのだ。
「ラーイ、仕事もしっかりして、いい男に育ったな」
「いい男、ですか?」
「私とラーイの結婚式の衣装も安心して任せられそうだ」
僕とセイラン様の結婚式の衣装を作る。
それは僕の夢でもあった。
「レイリ様とリラの結婚式の衣装も作れるでしょうか?」
「ラーイならばきっとできるであろう」
「僕、頑張ります」
一年の時間があるのだから少しずつ進めて行けばいい。
セイラン様には紋付き袴を着て欲しいが、レイリ様とリラはどんな衣装で結婚したいのだろう。
うとうとと眠気に耐えながら僕は一生懸命考えていた。
十七歳にもなるとお誕生日を祝ってもらうのも気恥ずかしいのだが、セイラン様とレイリ様は僕とリラの成長を願ってくれているし、マオさんは張り切ってご馳走を作ってくれるし、母はケーキを作ってくれるので、僕は大人しく祝われることにした。
今年もナンシーちゃんが艶々のさくらんぼを持ってきてくれている。
「スリーズちゃん、覚えてる? 僕とスリーズちゃんは前世でさくらんぼのパイが大好きだったよね」
「覚えてるわ、お兄ちゃん。あまり食べられなかったから、わたし、いつもさくらんぼのパイが食べたかった」
さくらんぼのパイを落ち着いて食べられる時間など限られていて、その時間が貴重で、僕とスリーズちゃんには懐かしい思い出になっていた。十歳のお誕生日に食べたがったさくらんぼのパイのせいで僕とスリーズちゃんは前世で殺されてしまったのだけれど、さくらんぼのパイが好物というのは変わらなかった。
「お兄ちゃんとスリーズちゃんが前世の話をするのって珍しいわ」
「リラを仲間外れにしてるつもりはないよ」
「大丈夫よ、そんなこと思ってないから。もっと話していいのよ。お兄ちゃんとスリーズちゃんはどんな冒険をしてきたの?」
僕はリラが前世の妹だと思い込んでいて、何も覚えていないリラの記憶が戻ることがないようにリラの前では前世の話はしないように気を付けていた。それが今も続いていて、リラには前世の話はほとんどしたことがないことを思い出す。
「僕とスリーズちゃんは双子で生まれたけど、僕は男の子で災厄の子って言われて殺されそうになったから、前世の母さんは僕とスリーズちゃんを連れて大陸に逃げたんだ」
大陸での暮らしは苦しいものだった。
魔女の森で得られるはずの魔力を得られず、いつも飢餓状態で、体調を崩して寝込んでいることが多かった。
追手からも逃げなければいけなくて、夜中でも容赦なく叩き起こされて宿から逃げ出すことがあった。
話をするとリラが拳を握って、それを震わせている。
「お兄ちゃんにもスリーズちゃんにも何も悪いことはないのに、生まれてきただけなのに、そんな酷いことになっていたの?」
「その土地の土地神様が神力を込めた水をくれて一時的に飢えをしのぐことはあったけれど、ほとんどのときは魔力が枯渇して死にそうになってた」
「しかも、殺されちゃったんでしょう?」
「十歳の誕生日に、さくらんぼのパイが食べたいって、わたしが言ったの。お母さんはさくらんぼのパイを買いに行って、わたしとお兄ちゃんだけが残ってて、そこに魔女が来た……」
死ぬ瞬間のことは覚えていないが苦しかった記憶だけある。僕とスリーズちゃんの話を聞いてリラは腕を伸ばして僕とスリーズちゃんを抱き締めた。
「今世では私がお兄ちゃんとスリーズちゃんを守るわ! ずっとずっと一緒よ」
リラは前世の妹ではなかったけれど、僕とスリーズちゃんの苦しみを理解してくれて守ると言ってくれていた。
「兄妹仲がいいのね。さくらんぼのパイはいかが?」
母がさくらんぼのパイを持ってきてくれて話は終わった。
フレーズちゃんのためには小さく小さく切って、スリーズちゃんと僕とリラには大きな一切れにアイスクリームを添えて、お誕生日のおやつが始まる。種を取ったさくらんぼがたくさん乗ったパイはとても美味しかった。
十七歳ということは、セイラン様と結婚できるまで後一年に迫っているということだ。
最近忙しくしている僕に、セイラン様が部屋で二人きりになって問いかける。
「仕事はどうだ?」
「アマンダ姉さんの結婚式の衣装作りを任されました。新しくこの土地でセイラン様とレイリ様の眷属になる神族の男性と結婚するのだそうで」
「挨拶に来ておったな。結婚衣装を作ると言っておったから、魔法使いの街の仕立て屋は腕がいいと売り込んでおいた」
「売り込んでくれていたのですか?」
セイラン様にそんな風に評価されるなんて僕は嬉しくてにやけてしまう。誰に褒められるよりもセイラン様に褒められるのが僕は一番嬉しいのだ。
「あの方は熊の神族だと仰っていました。熊の神族はどこに住んでいるのですか?」
「大陸から来たのではなさそうだったな。恐らく、この島国の北の方の土地から来たのではないだろうか。それも聞いてみるといい」
セイラン様に言われて僕は頷く。
他にも話したいことがあったけれど、僕はセイラン様の体に擦り寄った。しっかりとした体格のセイラン様は僕の細っこい体を抱き締めてくれる。僕はまだ体付きが細くて、身長もセイラン様よりも頭一つ以上小さかった。
「僕の血が混じったら、生まれて来る子どもは弱くなってしまうのではないでしょうか?」
不安を口にすれば、セイラン様が目を細める。
「肉体的には弱くなる可能性もある。だが、魔法が使える子が生まれる可能性もあるのだぞ。悪いことばかりではない」
「魔法が使えることが神族において役に立ちますか?」
「生まれてきた子全てが土地を継げるわけではないのだ。そうなった場合には、残った子はどうにかして生計を立てていかなければいけない。そういうときに魔法は非常に有効であろう?」
確かに、土地神になれる神族は土地の大きさが決まっているので大量には出ない。そうなると土地神になること以外で生きて行かねばならなくなるのだが、その場合には魔法を使えたら僕のように仕立て屋になることもできるだろうし、ナンシーちゃんのように土地を豊かにして実りを増やすこともできるだろうし、リラのように肉体を強化して戦うこともできるだろう。
魔法使いで神族ということが僕とセイラン様の子どもにとっては有利になるかもしれないことを知って、僕は少しだけほっとしていた。
「セイラン様、十七歳になったのです。キスをしてもいいでしょう?」
「ラーイはそう言って私を煽る」
苦笑しながらセイラン様が僕の唇を食べてしまうように塞ぐ。少し慣れてきたので息はできるのだが、舌を絡めると心臓がドキドキして、気持ちよさに頭の芯がぼーっとしてくる。
舌を絡めて、セイラン様の長くて太い舌が僕の口腔内を蹂躙する。僕の舌を舐めて、口蓋を舐めて、歯列を舐めて、舌先を甘く噛んでくる。
「んっ! ふっ! ふぁっ!」
気持ちよくて下半身が反応している僕はキスをしながら膝を擦り合わせる。キスをしたままでセイラン様の手が僕のズボンと下着を脱がせて、中心を握る。
くちくちと口腔内を舐められつつ、中心も扱き上げられて、僕は快感に息もできなくなる。
セイラン様の名前を呼びたいが口を封じられているのでできない。
精を吐き出して、倒れた僕の目の前でセイラン様が大きな手を濡らす僕の白濁をぺろりと舐めた。
「せ、セイラン様、き、汚いです!」
「ラーイのは汚くなどないぞ。正直、美味しいわけではないがな」
「そんなもの舐めないでください」
恥ずかしくて真っ赤になった僕にセイラン様は笑っていた。
風呂場で体を流して一緒に湯船に浸かる。
セイラン様の足の間に座る僕は狭いのだが、妙に満たされていた。
風呂の湯はぬるく、火照った体に心地よい。
「セイラン様……キスしながら触られるのは、僕にはちょっと早いようです」
「気持ちよさそうな顔をしていて可愛かったぞ?」
「刺激が強すぎました」
体が傾いて湯船に溺れそうになるのをセイラン様が抱き留めてくれる。
セイラン様に抱き締められて僕は湯船の中で眠ってしまいそうになる。精を吐き出した後にはとても怠くて眠くなってしまうのだ。
「ラーイ、仕事もしっかりして、いい男に育ったな」
「いい男、ですか?」
「私とラーイの結婚式の衣装も安心して任せられそうだ」
僕とセイラン様の結婚式の衣装を作る。
それは僕の夢でもあった。
「レイリ様とリラの結婚式の衣装も作れるでしょうか?」
「ラーイならばきっとできるであろう」
「僕、頑張ります」
一年の時間があるのだから少しずつ進めて行けばいい。
セイラン様には紋付き袴を着て欲しいが、レイリ様とリラはどんな衣装で結婚したいのだろう。
うとうとと眠気に耐えながら僕は一生懸命考えていた。
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