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転生したらまた魔女の男子だった件
139.愛してるにはまだ遠い
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この夏はスリーズちゃんにとっては学びの夏だった気がする。
子どものできる方法を詳細にではないがお父さんから聞いて、キスでできると勘違いしていたことを訂正された。
魔女の森の歴史も聞いた。
四歳だが中身は十歳のスリーズちゃんは全てのことを理解してしっかりと話が聞けていたようだった。
僕にとっても明らかになったことがあった。
スリーズちゃんと僕とリラでは全く生まれた経緯が違う。母は生物学上の父に何の感情も持っていなかったし、子どもを作った後で二度と父に会うつもりもなかったようだが、スリーズちゃんのお父さんは僕とリラのお父さんのように接することを許していて、将来は結婚も考えている。
それはお父さんが神族であるということも大きいのだが、何よりもお父さんが父親として責任をもってスリーズちゃんを育てるつもりで、僕とリラの父親にもちゃんとなる気でいるということだ。
ナンシーちゃんは魔女の中でも希少な愛し合って生まれた魔女だが、ナンシーちゃんのお父さんは魔女の森が開かれるまで待って、魔女の森に引っ越して来た。その後にレオくんが生まれている。
ナンシーちゃんはナンシーちゃんのお母さんのコピーだが、レオくんはしっかりと遺伝子が混じっているのを感じる。
僕たちの世代とスリーズちゃんの世代では両親観というものが全く変わってくるのではないだろうか。
スリーズちゃんが少し羨ましいような気もするが、お父さんは僕にとってもお父さんとして振舞ってくれているのでそれでいいことにした。
「お兄ちゃん、何を縫っているの? 私、当てようか?」
「リラ、分かる?」
「分かるわ。それ、お父さんの着物でしょう?」
僕はお父さんがいる間に着物を一着縫ってしまおうとしていた。
これから旅立つお父さんのために着物が一着あれば僕のことを旅先でも思い出してくれるのではないだろうか。
「私はそういうのができないからなぁ」
羨ましそうにしているリラに、何かさせてあげたくて、僕はウッドデッキにいる母に声をかける。母はお父さんと一緒にスリーズちゃんとレオくんが汗びっしょりになって庭で遊んでいるのを見守りながら仕事をしていた。
「エイゼン、スリーズとレオくんに飲み物をあげてくれる?」
「分かったよ」
「レオくんのポーチの中に着替えがあるから、汗をシャワーで流して、着替えさせて。スリーズもお願い」
「任せて」
この土地にいる限りはいい父親であろうとするお父さんは子育てに協力を惜しまない。
スリーズちゃんとレオくんをキッチンに連れて行って冷たいフルーツティーを飲ませて、シャワーを浴びさせて、着替えさせて涼しい部屋の中で遊べるようにしている。
その間に僕は母に相談した。
「お父さんの着物を作ってるんだけど、リラができることってないかな?」
「リラには帯を選んでもらいましょう」
「帯を?」
僕が問いかけると母は様々な織りの帯を出してくる。僕の縫っている着物が臙脂色なので、リラは灰色に白と黒の模様の入った帯を選んだ。
「リラが選んだ帯だって言って渡すといいわ」
「ありがとう、お母さん」
リラにもできることがあって、嬉しそうに目を輝かせていた。
僕も十四歳になってセイラン様との関係をもう一歩深めたいと思っていた。
どうすればいいのか分からないけれど、セイラン様に触れたい気持ちはあるし、セイラン様に抱き締められたい。
最近セイラン様は僕を抱っこしてくれなくなったような気がするのだ。
「セイラン様、僕、重いですか?」
「そんなことはないぞ。ラーイは十四歳の普通の体重だと思う。むしろ、軽いのではないか」
「それなら、どうして抱っこしてくれないのですか?」
詰め寄る僕にセイラン様が困っているのが分かる。
僕はセイラン様と顔がくっ付くくらいまで近寄った。
膝の上に乗って抱き付くとセイラン様が目を伏せている。水色の目に銀色の睫毛がとても美しい。
「ラーイが妙なことを言うから……」
「妙なことですか?」
「私を抱きたいなどという妙なことだ。体格から考えても、年齢から考えても、私がラーイを抱く方ではないのか?」
セイラン様はそれがずっと引っかかっていたようだ。ぐいぐいと体を近付けると、僕とセイラン様の胸がぴたりと合わさる。平らなのでセイラン様の胸と僕の胸は妙な凹凸もないのだ。
「僕はセイラン様が好きなんです。だから僕がセイラン様を抱くのが正しいんです」
「いやいやいや、私はこの通りの体格だぞ? それに、神族だ」
「僕は魔女ですよ? 魔女の男です。それに体格は関係ないでしょう」
「私の体を見たらラーイはきっと萎える」
「萎えません! 温泉でセイラン様の体を見て、どれだけ反応しそうになっていたことか!」
言い争いながらも僕とセイラン様はぴったりと体をくっ付けて抱き合っていた。お互いの体温でじんわりと汗が滲んでくる。風で部屋を涼しくしているといっても、夏なのでぴったりとくっ付けば暑さはあった。
「私の方がラーイが好きだぞ? だから私が抱くのではないか?」
「それだけは負けません。僕の方がセイラン様が大好きです」
「ラーイのオムツを替えて、風呂に入れて、大事に育てたのは私だぞ?」
「大事に育てられたからこそ、小さな頃からセイラン様が好きだったのです。セイラン様以外あり得ないと思っていました。セイラン様はいつから僕のことが好きだったのですか?」
「そ、それは……ラーイが大人になるまでは待たねばならないと思いつつ、ラーイの体が大人になったら、そわそわしていた」
「それならば、僕の方が先です。僕は生まれてすぐのころにはセイラン様に恋をしていました」
これはもう相手をどうやって説き伏せるかになってきている。
熱弁する僕にセイラン様は圧倒されているのが分かる。抱き付いているセイラン様の心臓もとくとくと早鐘のように打っている。
「そ、そんなに早くから!?」
「僕は生まれたときには十歳の記憶があったのです。恋をしてもおかしくはないでしょう」
「親に対する愛情ではないのか?」
「僕は! 親に対して! 欲情しません!」
精通があった日、僕はセイラン様の太腿に股間を擦り付けて達していた。それを思い出して、セイラン様をきりっと見つめると、セイラン様は困ったように目を伏せている。
恥ずかしいのか白い頬が紅潮しているのが愛しくてならない。
「セイラン様、大好きです」
「私もラーイが好きだ。自分の養い子にこんな感情を抱いていいのかと思っていたが、ラーイが七歳のときに婚約式を両親から言われて、この子を一生自分のものにしていいと許しを得た気がした。私にとっては、この世で一番可愛い子だ」
「うぐっ……それでもだめです! 僕がセイラン様を抱くんです」
告白大会のようになっていることに気付いて僕も顔が熱くなってくる。
セイラン様がそんなことを考えていただなんて僕は全然知らなかった。
「セイラン様ともっと恋人らしくなりたいのです」
「それはまだ早くないか?」
「頬にキスくらいはよくないですか?」
僕が真剣に問いかけるとセイラン様の大きな手が僕の小さな顎を優しく包む。頬に唇を寄せられて、僕は目を閉じた。
セイラン様と僕の関係は少しずつしか進まないけれど、それは僕が一つずつしか年を取ることができないのだから仕方がない。
一足飛びに大人になってしまいたいが、リラやナンシーちゃんと過ごす高等学校の生活も僕にとっては大事なものだ。
今しか経験できないことを僕は捨てるようなことはできなかった。
「セイラン様、愛しています」
「ラーイ……あい、あ、あい……好きだぞ」
「セイラン様?」
「あ、あ、あい、あいあい、あい、あ……」
セイラン様の口調が何かおかしい。
何か言おうとしているのだが上手く言えていない気がする。
「セイラン様?」
「なんでもない。ラーイが好きなことには変わりはないのだからな」
僕とセイラン様とのどちらが抱くか問題については決着がつかなかった。
それでも僕は自分の気持ちを曲げる気はなかった。
子どものできる方法を詳細にではないがお父さんから聞いて、キスでできると勘違いしていたことを訂正された。
魔女の森の歴史も聞いた。
四歳だが中身は十歳のスリーズちゃんは全てのことを理解してしっかりと話が聞けていたようだった。
僕にとっても明らかになったことがあった。
スリーズちゃんと僕とリラでは全く生まれた経緯が違う。母は生物学上の父に何の感情も持っていなかったし、子どもを作った後で二度と父に会うつもりもなかったようだが、スリーズちゃんのお父さんは僕とリラのお父さんのように接することを許していて、将来は結婚も考えている。
それはお父さんが神族であるということも大きいのだが、何よりもお父さんが父親として責任をもってスリーズちゃんを育てるつもりで、僕とリラの父親にもちゃんとなる気でいるということだ。
ナンシーちゃんは魔女の中でも希少な愛し合って生まれた魔女だが、ナンシーちゃんのお父さんは魔女の森が開かれるまで待って、魔女の森に引っ越して来た。その後にレオくんが生まれている。
ナンシーちゃんはナンシーちゃんのお母さんのコピーだが、レオくんはしっかりと遺伝子が混じっているのを感じる。
僕たちの世代とスリーズちゃんの世代では両親観というものが全く変わってくるのではないだろうか。
スリーズちゃんが少し羨ましいような気もするが、お父さんは僕にとってもお父さんとして振舞ってくれているのでそれでいいことにした。
「お兄ちゃん、何を縫っているの? 私、当てようか?」
「リラ、分かる?」
「分かるわ。それ、お父さんの着物でしょう?」
僕はお父さんがいる間に着物を一着縫ってしまおうとしていた。
これから旅立つお父さんのために着物が一着あれば僕のことを旅先でも思い出してくれるのではないだろうか。
「私はそういうのができないからなぁ」
羨ましそうにしているリラに、何かさせてあげたくて、僕はウッドデッキにいる母に声をかける。母はお父さんと一緒にスリーズちゃんとレオくんが汗びっしょりになって庭で遊んでいるのを見守りながら仕事をしていた。
「エイゼン、スリーズとレオくんに飲み物をあげてくれる?」
「分かったよ」
「レオくんのポーチの中に着替えがあるから、汗をシャワーで流して、着替えさせて。スリーズもお願い」
「任せて」
この土地にいる限りはいい父親であろうとするお父さんは子育てに協力を惜しまない。
スリーズちゃんとレオくんをキッチンに連れて行って冷たいフルーツティーを飲ませて、シャワーを浴びさせて、着替えさせて涼しい部屋の中で遊べるようにしている。
その間に僕は母に相談した。
「お父さんの着物を作ってるんだけど、リラができることってないかな?」
「リラには帯を選んでもらいましょう」
「帯を?」
僕が問いかけると母は様々な織りの帯を出してくる。僕の縫っている着物が臙脂色なので、リラは灰色に白と黒の模様の入った帯を選んだ。
「リラが選んだ帯だって言って渡すといいわ」
「ありがとう、お母さん」
リラにもできることがあって、嬉しそうに目を輝かせていた。
僕も十四歳になってセイラン様との関係をもう一歩深めたいと思っていた。
どうすればいいのか分からないけれど、セイラン様に触れたい気持ちはあるし、セイラン様に抱き締められたい。
最近セイラン様は僕を抱っこしてくれなくなったような気がするのだ。
「セイラン様、僕、重いですか?」
「そんなことはないぞ。ラーイは十四歳の普通の体重だと思う。むしろ、軽いのではないか」
「それなら、どうして抱っこしてくれないのですか?」
詰め寄る僕にセイラン様が困っているのが分かる。
僕はセイラン様と顔がくっ付くくらいまで近寄った。
膝の上に乗って抱き付くとセイラン様が目を伏せている。水色の目に銀色の睫毛がとても美しい。
「ラーイが妙なことを言うから……」
「妙なことですか?」
「私を抱きたいなどという妙なことだ。体格から考えても、年齢から考えても、私がラーイを抱く方ではないのか?」
セイラン様はそれがずっと引っかかっていたようだ。ぐいぐいと体を近付けると、僕とセイラン様の胸がぴたりと合わさる。平らなのでセイラン様の胸と僕の胸は妙な凹凸もないのだ。
「僕はセイラン様が好きなんです。だから僕がセイラン様を抱くのが正しいんです」
「いやいやいや、私はこの通りの体格だぞ? それに、神族だ」
「僕は魔女ですよ? 魔女の男です。それに体格は関係ないでしょう」
「私の体を見たらラーイはきっと萎える」
「萎えません! 温泉でセイラン様の体を見て、どれだけ反応しそうになっていたことか!」
言い争いながらも僕とセイラン様はぴったりと体をくっ付けて抱き合っていた。お互いの体温でじんわりと汗が滲んでくる。風で部屋を涼しくしているといっても、夏なのでぴったりとくっ付けば暑さはあった。
「私の方がラーイが好きだぞ? だから私が抱くのではないか?」
「それだけは負けません。僕の方がセイラン様が大好きです」
「ラーイのオムツを替えて、風呂に入れて、大事に育てたのは私だぞ?」
「大事に育てられたからこそ、小さな頃からセイラン様が好きだったのです。セイラン様以外あり得ないと思っていました。セイラン様はいつから僕のことが好きだったのですか?」
「そ、それは……ラーイが大人になるまでは待たねばならないと思いつつ、ラーイの体が大人になったら、そわそわしていた」
「それならば、僕の方が先です。僕は生まれてすぐのころにはセイラン様に恋をしていました」
これはもう相手をどうやって説き伏せるかになってきている。
熱弁する僕にセイラン様は圧倒されているのが分かる。抱き付いているセイラン様の心臓もとくとくと早鐘のように打っている。
「そ、そんなに早くから!?」
「僕は生まれたときには十歳の記憶があったのです。恋をしてもおかしくはないでしょう」
「親に対する愛情ではないのか?」
「僕は! 親に対して! 欲情しません!」
精通があった日、僕はセイラン様の太腿に股間を擦り付けて達していた。それを思い出して、セイラン様をきりっと見つめると、セイラン様は困ったように目を伏せている。
恥ずかしいのか白い頬が紅潮しているのが愛しくてならない。
「セイラン様、大好きです」
「私もラーイが好きだ。自分の養い子にこんな感情を抱いていいのかと思っていたが、ラーイが七歳のときに婚約式を両親から言われて、この子を一生自分のものにしていいと許しを得た気がした。私にとっては、この世で一番可愛い子だ」
「うぐっ……それでもだめです! 僕がセイラン様を抱くんです」
告白大会のようになっていることに気付いて僕も顔が熱くなってくる。
セイラン様がそんなことを考えていただなんて僕は全然知らなかった。
「セイラン様ともっと恋人らしくなりたいのです」
「それはまだ早くないか?」
「頬にキスくらいはよくないですか?」
僕が真剣に問いかけるとセイラン様の大きな手が僕の小さな顎を優しく包む。頬に唇を寄せられて、僕は目を閉じた。
セイラン様と僕の関係は少しずつしか進まないけれど、それは僕が一つずつしか年を取ることができないのだから仕方がない。
一足飛びに大人になってしまいたいが、リラやナンシーちゃんと過ごす高等学校の生活も僕にとっては大事なものだ。
今しか経験できないことを僕は捨てるようなことはできなかった。
「セイラン様、愛しています」
「ラーイ……あい、あ、あい……好きだぞ」
「セイラン様?」
「あ、あ、あい、あいあい、あい、あ……」
セイラン様の口調が何かおかしい。
何か言おうとしているのだが上手く言えていない気がする。
「セイラン様?」
「なんでもない。ラーイが好きなことには変わりはないのだからな」
僕とセイラン様とのどちらが抱くか問題については決着がつかなかった。
それでも僕は自分の気持ちを曲げる気はなかった。
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