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転生したらまた魔女の男子だった件
125.反抗期とは
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最近魔女の森に行く前にフウガくんと話すことが多くなった。
フウガくんは僕の周囲で僕と年齢が同じ唯一の男性の友達だ。僕にとっては大事な友達だった。
朝ご飯を食べてリラがマオさんに髪を結ってもらっている間に、僕はフウガくんと庭で話す。フウガくんも朝ご飯が終わったところで、口元に米粒を付けていたりする。
「フウガくん、ここ」
「ん? ついてたか」
あまりそういうことは気にしないタイプのようだが、僕は食後には歯も磨くし、鏡を見て髪も整えるので、フウガくんのそういうところはあまり理解できなかった。
頬っぺたについていた米粒を取って捨てるフウガくんの足元に雀が寄って来て、米粒をついばんでいる。可愛い雀を見ながら、僕とフウガくんは社の縁側に座って、涼しい風を浴びながら話す。
「この社は特に涼しいな。俺の家は暑くて汗だくだよ」
「セイラン様とレイリ様が涼しい風を吹かせてくださっているんだよ」
社の敷地内も、社の中も、セイラン様とレイリ様の風の術で夏場も涼しく保たれている。魔女の森の母の家に行くまでは暑いけれど、母の家は魔法で涼しく保たれているので、僕は夏場もばてることはなかった。
「フウガくんは焦ることってない?」
「何に焦るんだ?」
「恋愛……」
僕が相談すると、フウガくんはけらけらと笑っている。
「年の差なら、もうどうにもできないからな。そういうことで悩まないよ。でも、お社の巫女様と俺だと身分違いかもしれないってのは思うかな」
「そういうとき、どうする? お父さんに相談する?」
「えぇー!? 父ちゃんになんか何も言わないよー! 父ちゃんに言って何か解決したことなんてないよ」
「そうなの!? 僕、お父さんに相談するよ!?」
僕が驚いていると、フウガくんが僕の肩をぽんぽんと叩く。
「そりゃそうだろうよ。ラーイの父ちゃんは、あの夏の渡る神のエイゼン様なんだからよ」
そうだった。
僕のお父さんはこの土地の全員に知られていて、夏には来訪を待たれる立派な夏の渡る神様だったのだ。そんな方が僕のお父さんになってくれているというのはとてもありがたいことだし、頼りになるのも当然だった。
「お父さん、お母さんとの恋愛の話とかしてくれたよ。馴れ初めを話してくれて……フウガくんはそういうの、聞かない?」
「うわー、やだやだ。両親の馴れ初めとか聞きたくないよ」
フウガくんは両親に対して思うところがあるようだった。目を丸くする僕に、フウガくんは苦笑する。
「俺、いわゆる、反抗期なんだと思うんだ」
「えぇー!? 反抗期!?」
「そうだよ。この年齢だと、大体みんな反抗期じゃないか?」
僕の周囲には女の子しかいない。いるとすれば四歳のレオくんか、成熟した大人のお父さんやセイラン様やレイリ様だ。
反抗期などというショックな単語を聞いてしまって僕は胸がドキドキしていた。
「は、反抗期って、どんな感じ?」
「両親がすることが気に食わない。何をされても苛々してしまう。朝ご飯一つとっても、『違うのが食べたかったのに』ってキレちゃうような感じだよ」
「嘘ー!? そんなの無理ー!?」
朝ご飯はマオさんが心を込めて作ってくれているのだし、お昼ご飯は魔女の森では母が一生懸命僕にもリラにもスリーズちゃんにもレオくんにも食べやすく美味しいように作ってくれる。そういうことを考えたら、そんなことはとても言えない。
しかも、美味しいのは間違いないのだ。
「コウガと遊べっていうのも、『ふざけんな!』って返しちゃうし……。コウガのことはちょっと鬱陶しいときもあるけど、基本的に、可愛くて大好きな弟なんだけど、両親が言うと、反発しちゃうんだ」
「えぇぇー!?」
スリーズちゃんと遊べと言われたことはないし、母は自由にさせてくれるけれど、僕はスリーズちゃんが可愛いので一緒に遊んでいた。それも両親から言われると反抗してしまうのか。
反抗期とは怖いものだと僕の心に刻まれた。
「お兄ちゃん、準備できたわよー!」
「リラ、行こうか。フウガくん、またね」
「おう。俺の方が悩みを聞いてもらっちゃったな」
「悩んでたの?」
「なんか、ダメなんだよ。自分で自分を制御できないっていうか」
反抗期とは自分で自分を制御できないで両親に当たってしまうもののようだった。僕にはよく分からないけれど、フウガくんはそれに悩んでいた。
魔女の森まで歩いていくと、汗をかいてしまう。
母の家につくと、涼しい風に当たって、冷たい飲み物を飲んで、僕とリラは少し休む。
アイスティーのお代りはお父さんが注いでくれた。
グラスの中の氷がカランと鳴って、涼しさを増す。
「にぃに、これ、みて!」
「綺麗な布だね。どこで手に入れたの?」
「とと、くれた。にぃに、すーとレオくんにふく、ちゅくって!」
スリーズちゃんが駆けてきて綺麗な水色の布を見せてくれる。柔らかなガーゼ地で涼しいシャツが作れそうだった。
布はたくさんあるので、スリーズちゃんとレオくんの分は間違いなく作れる。
「レオくん、採寸させてくれる?」
「レオにつくってくれるのか?」
「うん、スリーズちゃんのお願いだからね」
レオくんをお店の方の試着室に連れて行って下着姿にして採寸していく。レオくんはまだオムツをつけていた。
「レオくん、おしっこはお手洗いでできる?」
「ときどき、もれちゃう」
「そっか。それじゃ、もう少しオムツかもしれないね」
オムツを付けている子に関しては、オムツの入るように服を作らなければいけない。レオくんの採寸はオムツを付けたまま行った。
まだ四歳なのだし、集中していることがあればおしっこが漏れることもあるだろう。僕はその辺は気にしないことにしている。スリーズちゃんは三歳だがまだまだトイレトレーニングが必要だ。
「裾が長いシャツを作ろうかな。横にスリットを入れて」
「それ、かっこいい?」
「すー、かわいい?」
「レオくんには格好よく、スリーズちゃんには可愛く作ろうね」
妹の注文を受けられることが僕には何よりも嬉しかった。
ウッドデッキで僕は縫物をして、スリーズちゃんとレオくんとリラが庭で遊んでいる。スリーズちゃんとリラが戦うのを応援しているレオくんに、お父さんが笛を渡していた。
「これは『勇猛の笛』と呼ばれる魔法具で、応援している相手に勇気を与える。決して負けない心を支える強い笛の音で、スリーズとリラを応援してやってくれ」
「レオにくれるの?」
「レオくんが危ない目に遭っているときにも、吹いたらいいよ。スリーズとリラに聞こえたら助けに行くからね」
「ありがとう、スリーズちゃんのおとうさま!」
首から丸いフォルムの艶々の白い笛を下げてもらって、レオくんは大事そうにその表面を撫でていた。
笛の音が鳴り響き、スリーズちゃんとリラが勇猛果敢に戦いをしている。
「スリーズちゃん、お姉ちゃんにかかっておいで!」
「ねぇね、てがげん、ちないわよ!」
「手加減、ね」
スリーズちゃんの放つ蹴りをリラが軽々と止める。スリーズちゃんの体を持ち上げて投げるリラに、スリーズちゃんはきちんと受け身を取って地面に降り立つ。
「ねぇね、まけないんだから!」
「私も負けないわよ!」
笛の力で思わぬところで決闘の練習が始まってしまったようだ。
ぴゅいーと助けを呼ぶように笛が鳴る。
僕はレオくんのところに走って行った。
「お手洗い?」
「もれるぅー!」
目の前の戦いが怖すぎてレオくんは漏らしてしまいそうになっていた。レオくんを小脇に抱えて僕はお手洗いまで走った。
お手洗いに入るとレオくんのズボンとオムツを脱がせて用を足させるが、ちょっとオムツに漏れていたので、そっと新しいオムツを出してレオくんを着替えさせた。
「笛は使い方を考えた方がいいかもね」
「こわかった……」
細い脚をぷるぷると震わせているレオくんに、僕は手を洗ってレオくんの髪を撫でた。
フウガくんは僕の周囲で僕と年齢が同じ唯一の男性の友達だ。僕にとっては大事な友達だった。
朝ご飯を食べてリラがマオさんに髪を結ってもらっている間に、僕はフウガくんと庭で話す。フウガくんも朝ご飯が終わったところで、口元に米粒を付けていたりする。
「フウガくん、ここ」
「ん? ついてたか」
あまりそういうことは気にしないタイプのようだが、僕は食後には歯も磨くし、鏡を見て髪も整えるので、フウガくんのそういうところはあまり理解できなかった。
頬っぺたについていた米粒を取って捨てるフウガくんの足元に雀が寄って来て、米粒をついばんでいる。可愛い雀を見ながら、僕とフウガくんは社の縁側に座って、涼しい風を浴びながら話す。
「この社は特に涼しいな。俺の家は暑くて汗だくだよ」
「セイラン様とレイリ様が涼しい風を吹かせてくださっているんだよ」
社の敷地内も、社の中も、セイラン様とレイリ様の風の術で夏場も涼しく保たれている。魔女の森の母の家に行くまでは暑いけれど、母の家は魔法で涼しく保たれているので、僕は夏場もばてることはなかった。
「フウガくんは焦ることってない?」
「何に焦るんだ?」
「恋愛……」
僕が相談すると、フウガくんはけらけらと笑っている。
「年の差なら、もうどうにもできないからな。そういうことで悩まないよ。でも、お社の巫女様と俺だと身分違いかもしれないってのは思うかな」
「そういうとき、どうする? お父さんに相談する?」
「えぇー!? 父ちゃんになんか何も言わないよー! 父ちゃんに言って何か解決したことなんてないよ」
「そうなの!? 僕、お父さんに相談するよ!?」
僕が驚いていると、フウガくんが僕の肩をぽんぽんと叩く。
「そりゃそうだろうよ。ラーイの父ちゃんは、あの夏の渡る神のエイゼン様なんだからよ」
そうだった。
僕のお父さんはこの土地の全員に知られていて、夏には来訪を待たれる立派な夏の渡る神様だったのだ。そんな方が僕のお父さんになってくれているというのはとてもありがたいことだし、頼りになるのも当然だった。
「お父さん、お母さんとの恋愛の話とかしてくれたよ。馴れ初めを話してくれて……フウガくんはそういうの、聞かない?」
「うわー、やだやだ。両親の馴れ初めとか聞きたくないよ」
フウガくんは両親に対して思うところがあるようだった。目を丸くする僕に、フウガくんは苦笑する。
「俺、いわゆる、反抗期なんだと思うんだ」
「えぇー!? 反抗期!?」
「そうだよ。この年齢だと、大体みんな反抗期じゃないか?」
僕の周囲には女の子しかいない。いるとすれば四歳のレオくんか、成熟した大人のお父さんやセイラン様やレイリ様だ。
反抗期などというショックな単語を聞いてしまって僕は胸がドキドキしていた。
「は、反抗期って、どんな感じ?」
「両親がすることが気に食わない。何をされても苛々してしまう。朝ご飯一つとっても、『違うのが食べたかったのに』ってキレちゃうような感じだよ」
「嘘ー!? そんなの無理ー!?」
朝ご飯はマオさんが心を込めて作ってくれているのだし、お昼ご飯は魔女の森では母が一生懸命僕にもリラにもスリーズちゃんにもレオくんにも食べやすく美味しいように作ってくれる。そういうことを考えたら、そんなことはとても言えない。
しかも、美味しいのは間違いないのだ。
「コウガと遊べっていうのも、『ふざけんな!』って返しちゃうし……。コウガのことはちょっと鬱陶しいときもあるけど、基本的に、可愛くて大好きな弟なんだけど、両親が言うと、反発しちゃうんだ」
「えぇぇー!?」
スリーズちゃんと遊べと言われたことはないし、母は自由にさせてくれるけれど、僕はスリーズちゃんが可愛いので一緒に遊んでいた。それも両親から言われると反抗してしまうのか。
反抗期とは怖いものだと僕の心に刻まれた。
「お兄ちゃん、準備できたわよー!」
「リラ、行こうか。フウガくん、またね」
「おう。俺の方が悩みを聞いてもらっちゃったな」
「悩んでたの?」
「なんか、ダメなんだよ。自分で自分を制御できないっていうか」
反抗期とは自分で自分を制御できないで両親に当たってしまうもののようだった。僕にはよく分からないけれど、フウガくんはそれに悩んでいた。
魔女の森まで歩いていくと、汗をかいてしまう。
母の家につくと、涼しい風に当たって、冷たい飲み物を飲んで、僕とリラは少し休む。
アイスティーのお代りはお父さんが注いでくれた。
グラスの中の氷がカランと鳴って、涼しさを増す。
「にぃに、これ、みて!」
「綺麗な布だね。どこで手に入れたの?」
「とと、くれた。にぃに、すーとレオくんにふく、ちゅくって!」
スリーズちゃんが駆けてきて綺麗な水色の布を見せてくれる。柔らかなガーゼ地で涼しいシャツが作れそうだった。
布はたくさんあるので、スリーズちゃんとレオくんの分は間違いなく作れる。
「レオくん、採寸させてくれる?」
「レオにつくってくれるのか?」
「うん、スリーズちゃんのお願いだからね」
レオくんをお店の方の試着室に連れて行って下着姿にして採寸していく。レオくんはまだオムツをつけていた。
「レオくん、おしっこはお手洗いでできる?」
「ときどき、もれちゃう」
「そっか。それじゃ、もう少しオムツかもしれないね」
オムツを付けている子に関しては、オムツの入るように服を作らなければいけない。レオくんの採寸はオムツを付けたまま行った。
まだ四歳なのだし、集中していることがあればおしっこが漏れることもあるだろう。僕はその辺は気にしないことにしている。スリーズちゃんは三歳だがまだまだトイレトレーニングが必要だ。
「裾が長いシャツを作ろうかな。横にスリットを入れて」
「それ、かっこいい?」
「すー、かわいい?」
「レオくんには格好よく、スリーズちゃんには可愛く作ろうね」
妹の注文を受けられることが僕には何よりも嬉しかった。
ウッドデッキで僕は縫物をして、スリーズちゃんとレオくんとリラが庭で遊んでいる。スリーズちゃんとリラが戦うのを応援しているレオくんに、お父さんが笛を渡していた。
「これは『勇猛の笛』と呼ばれる魔法具で、応援している相手に勇気を与える。決して負けない心を支える強い笛の音で、スリーズとリラを応援してやってくれ」
「レオにくれるの?」
「レオくんが危ない目に遭っているときにも、吹いたらいいよ。スリーズとリラに聞こえたら助けに行くからね」
「ありがとう、スリーズちゃんのおとうさま!」
首から丸いフォルムの艶々の白い笛を下げてもらって、レオくんは大事そうにその表面を撫でていた。
笛の音が鳴り響き、スリーズちゃんとリラが勇猛果敢に戦いをしている。
「スリーズちゃん、お姉ちゃんにかかっておいで!」
「ねぇね、てがげん、ちないわよ!」
「手加減、ね」
スリーズちゃんの放つ蹴りをリラが軽々と止める。スリーズちゃんの体を持ち上げて投げるリラに、スリーズちゃんはきちんと受け身を取って地面に降り立つ。
「ねぇね、まけないんだから!」
「私も負けないわよ!」
笛の力で思わぬところで決闘の練習が始まってしまったようだ。
ぴゅいーと助けを呼ぶように笛が鳴る。
僕はレオくんのところに走って行った。
「お手洗い?」
「もれるぅー!」
目の前の戦いが怖すぎてレオくんは漏らしてしまいそうになっていた。レオくんを小脇に抱えて僕はお手洗いまで走った。
お手洗いに入るとレオくんのズボンとオムツを脱がせて用を足させるが、ちょっとオムツに漏れていたので、そっと新しいオムツを出してレオくんを着替えさせた。
「笛は使い方を考えた方がいいかもね」
「こわかった……」
細い脚をぷるぷると震わせているレオくんに、僕は手を洗ってレオくんの髪を撫でた。
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