土地神様に守られて 〜転生したらまた魔女の男子だった件〜

秋月真鳥

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転生したらまた魔女の男子だった件

120.薔薇乙女仮面三号

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「すーは、ばらおとめかめん、にごー!」
「レオは?」
「レオくんは、まもられて! すーがまもるからね! きのうしろからでてきちゃめーよ?」
「わかった! まもって、スリーズちゃん!」

 おやつの時間にお誕生日ケーキを食べた後で、庭でスリーズちゃんとレオくんが遊んでいる。三歳と四歳の遊びというのは可愛いものだ。
 ウッドデッキに出て、母がお茶を入れてくれるので、紅茶に牛乳を入れてミルクティーにして飲みながら、僕とリラとナンシーちゃんは庭で遊ぶスリーズちゃんとレオくんを見ていた。

 虚空に向かって拳を突き入れ、蹴りを放ち、戦うスリーズちゃんの後ろでレオくんは木の陰に隠れて応援している。

「がんばれ、がんばれ、スリーズちゃん!」
「あい! すー、がんばる!」
「かって、レオをまもって!」
「あい! レオくんまもる!」

 僕やリラと遊ぶときとは全く違う活き活きとしたスリーズちゃんの姿が見られて、僕は満足だった。
 帰りに母はナンシーちゃんとレオくんを送って行った。僕もリラもそれについて行った。

「スリーズのお誕生日にあんな素晴らしい苺をいただいてありがとうございます。スリーズもラーイもリラも喜んで食べていました」
「かあちゃん、スリーズちゃんのいえのケーキ、すっごくデカかった!」
「こちらこそ、レオがとても楽しんだようでよかったです。ありがとうございました」

 挨拶をする母とナンシーちゃんとレオくんのお母さん。
 母がナンシーちゃんとレオくんのお母さんに提案する。

「ラーイとリラが高等学校が忙しくなって、年頃ですし、スリーズとはあまり遊べなくなってしまったのです。ぜひ、レオくんと遊ばせてあげたいのですが」
「とてもありがたい申し出ですが、私はレオを送っていくことができません。土地神様からお仕事をいただいているのです」
「その話も聞いています。毎日私がレオくんを迎えに来て、お昼ご飯を食べさせて、晩ご飯までに帰すのではいかがでしょう?」
「大変ではないですか?」
「これまでラーイとリラにしてきたことです。それがレオくんになったところで変わりません」

 食事も母は僕やリラの分も作ってくれていたし、おやつも作ってくれていた。
 それに、と母が付け加える。

「スリーズ一人だけだと、ずっと私のことを呼んで、私が遊んでやらないといけなくて、仕事ができないのです。スリーズに遊び相手ができてくれると助かるのです」
「分かります! 私もレオ一人だけだと、ずっとレオの相手をさせられます」

 分かり合ったところで、ナンシーちゃんとレオくんのお母さんは心を決めたようだ。

「それでは、明日からよろしくお願いします」
「明日の朝に迎えに来ますね」
「レオ、明日からお寝坊できないわよ? スリーズちゃんのお母様が来るんだからね?」
「レオ、おねぼうしない! スリーズちゃんとあそぶんだ!」

 元気よく答えるレオくんに、スリーズちゃんがその手をぎゅっと握っていた。
 明日からは可愛い二人は一緒に遊ぶようだ。

 社に帰って今日の報告をするのが僕とリラの日課だ。
 スリーズちゃんにお友達ができたことをセイラン様とレイリ様に伝えると、目を細めていた。

「年が近い友達がおるのはよいことだ」
「ラーイとリラは双子だったから、小さい頃から一緒で仲良しで、とても楽でしたからね」
「一人であったなら、ずっと相手をしておかねばならなくて大変だったであろう」

 子どもが増えるのは大変なことだと勝手に思っていたが、意外とそうではないようだ。子ども同士で遊ぶので、保護者も自由な時間ができる。
 小さい頃から僕はリラが大好きだったし、可愛い妹だと思っていたので、一緒に遊んでいた。
 そういうことがセイラン様とレイリ様を楽にさせていたようだ。

「今年はラーイとリラが十三歳になるな」
「本来ならば、今年に高等学校に入学していたはずなのですよね」

 しみじみと言うセイラン様とレイリ様に、僕は気付く。
 今年こそが、本来ならば僕とリラが高等学校に進学していた年なのだ。
 僕とリラはセイラン様とレイリ様の神力をもらって生きていたが、魔女の森の魔力を得られるように、母が小学校の校長先生と交渉して、二年も早く入学させてもらったのだ。
 入学したのは五歳の秋だが、僕とリラはもうお誕生日を迎えていて、本来ならば四歳から入学したことになる。

 小学校では小さすぎて困ったこともあったし、男子用のお手洗いがなくて困ってしまった。それもすぐに個室のお手洗いを作ってもらって、広い洗面所では体育のときに着替えられるようにもしてもらった。

 あの頃リラはやっとお手洗いに一人で行けるようになったばかりで、下半身を全部脱がなければ用が足せなかった。
 そのときに、他のクラスの子が見ないように女の子を集めて壁を作って守ってくれたのがナンシーちゃんなのだ。それ以降ナンシーちゃんとはずっと仲良くしている。

「ナンシーちゃんにはいっぱいお世話になってるね」
「お兄ちゃん、お礼をしなきゃいけないとか思ってる? 平気よ。ナンシーちゃんの方もお兄ちゃんにお世話になってると思ってると思うわ」
「そうかな?」
「そうよ。だって、ナンシーちゃんに勉強を教えてあげたでしょう?」

 あれくらいは僕ができることなので何でもないことのように思ってしまうが、リラはそうではないのだと教えてくれる。

「ひとにはそれぞれできることがあって、お兄ちゃんはお勉強、ナンシーちゃんは他のことができるのよ。お互いに分け合えば、みんな幸せになれるわ」

 立派なことを言っているリラに僕は感心してしまった。
 ナンシーちゃんにはお母さんにマンドラゴラの栄養剤を作ってもらっているし、スリーズちゃんのお誕生日のケーキの苺も貰っているし、とてもお世話になっている。
 それと同じように、僕も自分のできることでナンシーちゃんに恩返しができていればいいと思っていた。

「私、いいことを考えたのよ」
「あ、そのいいこと、何か嫌な予感がする」
「お兄ちゃん、聞いてよ?」
「ちょっと、聞きたくないかな」

 抵抗する僕にリラが目を輝かせて伝える。

「ナンシーちゃんを薔薇乙女仮面三号に加えるのよ!」
「そんなことだと思ったー!」

 なんで魔女の森の魔女はみんなこんなに好戦的なのだろう。僕やレオくんのように魔女の森でも男性は好戦的ではない気がする。スリーズちゃんが虚空と戦って遊んでいたとき、レオくんは木の陰に隠れていた。

「僕は反対だからね!」
「いいじゃない! お兄ちゃん、お揃いの衣装を作ってよ! 守護の付与魔法がいっぱいかかっているのがいいわ!」
「もう、リラは自分で勝手に決めちゃって!」

 一応怒る態度は見せるのだが、僕はリラに怒り切れない。リラはやはり僕にとっては可愛い妹なのだ。
 それに考えてみると分かる。リラとナンシーちゃんとスリーズちゃんがお揃いの衣装を着ていたらどれだけ可愛いだろう。

 スリーズちゃんは燕なので、燕尾服のようなジャケットを着せて、下にワンピースを着せたら格好いいし、可愛いのではないか。それに合わせてリラとナンシーちゃんも燕尾服のようなジャケットの下にワンピースを着せたら可愛いのではないか。
 ついでにレオくんにも身を守るための燕尾服のようなジャケットとシャツとスラックスを作ったらいいのではないだろうか。

 口では反対しているのに、頭の中ではデザインを考え始めているのだから僕はどうしようもない。
 僕は注文されたものを作りたくて仕方がないのだ。

 もうすぐ僕とリラのお誕生日が来る。
 リラのお誕生日お祝いに僕は薔薇乙女仮面の衣装を作ろうかと考え始めていた。
 本当に僕は妹たちに甘すぎる。
 でも妹たちが可愛いから仕方がないのだ。
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