土地神様に守られて 〜転生したらまた魔女の男子だった件〜

秋月真鳥

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転生したらまた魔女の男子だった件

111.流星群の夜

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 夏休みはセイラン様とデートにも行ったし、お父さんと母とスリーズちゃんとリラと親子水入らずで温泉にも行った。
 楽しかった分だけ夏休みが終わりに近付くと寂しくなってくる。

 夏休みが終わりに近付いた夜に、お父さんから申し出があった。
 僕とリラを社まで迎えに来てくれたお父さんが、セイラン様とレイリ様にお願いしたのだ。

「今夜は流星群が見られると聞きます。ラーイとリラを魔女の森で過ごさせてもいいでしょうか?」

 流星群の話は初めて聞いたので僕もリラも興味津々だった。

「お父さん、流星群ってなに?」
「お母さんの家に泊まるの?」

 問いかける僕とリラにお父さんが説明してくれる。

「流星群とは、流れ星がたくさん見られる夜のことを言うんだよ。今日は特に流れ星が多いらしい」

 流星群は今日一日だけでなく、他の日もあるのだが、今日は特に多いと言われていて、その日をお父さんは僕とリラと一緒に過ごしたいと言ってくれているのだ。

「他の日もあるなら、帰ってからセイラン様とも見られますね」
「レイリ様とも見られるわ。お父さんとお母さんとスリーズちゃんと見るのも楽しみだけど」

 嬉しそうにしている僕とリラを見て、セイラン様もレイリ様も穏やかにお父さんに返事をしていた。

「ラーイとリラがよいのならば泊めてやってくれ」
「楽しんで来てくださいね、ラーイ、リラ」

 快く送り出されて、僕とリラは魔女の森の母の家までお父さんと一緒に向かった。魔女の森の母の家ではスリーズちゃんがベッドに寝ている。一生懸命目を閉じようとしているのだが、お目目がぱっちりと開いてしまう。

「スリーズったら、夜に起きていられるように、今のうちに寝ようとしているのよ」
「すー、ねんね」
「眠れないのだから仕方がないわよ。お昼ご飯を食べたら眠れるかもしれないわ」
「ごはん!」

 ベッドでもぞもぞとしていたスリーズちゃんは、お昼ご飯という単語に反応して飛び起きて来る。母の作ったピザパンの上に乗っている具だけを摘まんで食べようとするスリーズちゃんに、お父さんがミルクティーを差し出す。

「これを飲みながらだと食べやすいよ」
「すちやない……」
「ピザパンの具だけ食べて、パンを食べない子は大きくなれないよ?」
「そうよ! 立派な薔薇乙女仮面二号になれないんだから!」
「にぎょー!」

 薔薇乙女仮面にどんな魅力があるのか分からないが、リラに言われるとスリーズちゃんは一生懸命苦手なパンも食べている。スリーズちゃんはどうやら水気の少ないものが苦手なようだ。

 デザートに母が手作りのプリンを出してくると、大喜びで食べている。
 プリンのカラメルはちょっとほろ苦くて、大人の味がした。

「エイゼンはプリンが好きなのよ。硬めで、カラメルがちょっと苦いのが」
「アマリエの作るプリンは私の好みにぴったりだ」
「そうでしょう? 研究を重ねたのよ」

 母とお父さんの仲のいい様子に僕は嬉しくなってしまう。この調子だったら、母はお父さんとまた子どもを作るのではないだろうか。
 今はスリーズちゃんが小さいから控えているが、スリーズちゃんがもう少し大きくなったら、妹か弟が生まれるかもしれない。スリーズちゃんはとても可愛くて大好きなので、僕は更に妹か弟が生まれることを期待していた。

「かか、おかーり!」
「お代わりはないのよ。これでお終い」
「やー! たべうー!」

 泣いてお代わりを欲しがるスリーズちゃんを着替えさせて、ベッドに寝かせると、スリーズちゃんは「おかーり……」と呟きながら眠ってしまった。今日は夜更かしの予定なので、スリーズちゃんはお昼寝をしっかりしておいた方がいいだろう。

「リラ、どうする?」
「何が?」
「僕たちもお昼寝をする?」
「そうね。ちょっとしといた方がいいかもしれないわ」

 夜に備えて僕とリラも少しだけお昼寝をすることにした。
 ソファに寝て薄い掛布団をかけていると、お腹もいっぱいなので眠気が襲ってくる。うとうとと眠っていると、僕の腹部に衝撃が走った。

「ぐはっ!?」

 目を開けてみると、リラの足が僕のお腹に乗っている。どうやら蹴られたようだ。
 小さい頃からリラはレイリ様と寝ていて、僕はセイラン様と眠っていた。リラの寝相が悪いだなんて、僕は初めて知ったのだった。
 その後も何とか目をつぶって眠って、夕方に僕もリラも起き出して来た。
 晩ご飯の用意を手伝って、ジャガイモを薄切りにする。ミートソースと薄切りのジャガイモを合わせたグラタンに、スープとご飯の組み合わせだった。

「スリーズがパンよりご飯が好きなのよね。パンは苦手みたい」
「僕もパンはお母さんの家で時々食べるからいいけど、普段はご飯がいいかな」
「私もお社ではご飯を食べてるわ」

 スリーズちゃんの味覚は僕とリラに似てしまったようだった。
 ご飯の上にグラタンを乗せてもりもり食べているスリーズちゃんはほっぺたが膨らんで、そこを突きたくなってしまう。僕もリラもお腹いっぱい晩ご飯を食べて、お風呂に入って、寝る準備を万端にして暗くなったテラスに出た。上を見上げると星が煌めいている。

 いつ星が流れるのか分からないので一生懸命目を見開いている僕とリラとスリーズちゃんに、お父さんが教えてくれる。

「流れ星が流れる間に、願い事を三回言えたら、叶うっていうよ」
「三回! 頑張らないと!」
「レイリ様と結婚できますように!」
「くだもの! くだもの! くだもの!」
「リラ、スリーズちゃん、気が早いよ」

 必死に唱えるリラとスリーズちゃんに僕は笑ってしまった。
 その瞬間目の端で光るものがあった。

「あ、流れた!」
「流れ星だわ! 初めて見た!」
「ちれー!」

 流れ星に見惚れてしまった僕とリラとスリーズちゃんは願い事を言うどころではなかった。
 流星群というだけあって、その後も何度も流れ星は流れた。
 そのたびに願い事を言おうとするのだが、見るのに必死になってしまってうまくいかない。

「ちらちら!」
「また流れたね!」
「レイリ様とけっこ……あぁ! 言えないわ!」

 スリーズちゃんは願い事をすっかり忘れていて、僕も言えないが、リラは諦めていないようだった。リラの方を叩いて僕は言う。

「せっかくの流れ星を見ないのはもったいないよ」
「そうね……願い事はきっと叶うわ。今は見ることに集中しましょう」

 前向きなリラは願い事を三回言えなくても、願い事はきっと叶うと思い込んでいた。

 夜更けまで流星群を見て、僕とリラとスリーズちゃんは眠くなってしまって、家の中に入った。
 スリーズちゃんとリラが母と一緒のベッドで、僕がお父さんと一緒のベッドで眠る。
 眠る前にお父さんは僕に話してくれた。

「太陽の光が強くて見えないだけで、星は昼間も空に存在するんだよ。流星群の間は、昼間も星が流れ続けているんだ」
「星は昼間も空にあるの?」
「視力がとてもいいひとたちは昼間でも星が見えるっていうね。私は昼間の星は見えないけれど」
「お父さんにも見えないんだ」
「セイラン様とレイリ様は見えるかもしれない。聞いてみるといいよ」

 寝る前の二人だけの会話は、お父さんを独り占めにできたようで嬉しかった。
 薄い掛布団を被って、僕は目を閉じる。
 セイラン様がいないので、寂しくて眠れないかと思ったら、お父さんがいてくれたら僕は少しは眠ることができた。

 翌朝、ご飯を食べて僕は社に帰った。
 朝ご飯はご飯とお味噌汁と卵焼きと焼き魚だった。

「スリーズがこっちの方が好きだから、マオさんに教えてもらったのよ」
「おいち! まんま、おかーり!」
「はいはい、ご飯のお代わりを上げましょうね」
「みとちる、おかーり!」
「お味噌汁もね。今日はよく食べるわね」

 ご飯もお味噌汁もお代わりするスリーズちゃんはお腹いっぱい食べて満足そうだった。

 社に帰ったら、セイラン様とレイリ様に話をするのだ。
 僕は朝ご飯を食べ終えて、手を合わせた。
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