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転生したらまた魔女の男子だった件
107.上級生との決闘
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妙なトラブルにはならないでほしかった。
周囲は全員女の子の中で小学校からずっと生活している僕は、女の子が怒ったらどれだけ怖いかを知っていたのだ。
上級生たちは僕を通して同級生の女の子たちを侮辱した。教室の中にいた僕に聞こえたのだから、他の同級生たちにあのセリフが聞こえていないはずはなかった。
――女の子を侍らせていい気になって。
同級生の女の子たちは僕に侍っているわけではない。勉強を教えられることはあっても、僕と同級生の女の子たちの立場は同等だ。僕たちは友達なのだ。
それを穿った見方をしてくる上級生に、同級生の女の子たちが怒りを覚えていないはずはない。
――あの子がうちの学年の子を振ったんでしょう?
――高等学校でたった一人の男の子だからって、調子に乗っているのよ。
確かに僕は上級生の女の子を振った。
僕にはセイラン様がいるし、婚約もしているのだ。上級生の女の子と付き合うなんてことはあり得るはずがない。土地神様と婚約しているということがどういうことなのか、上級生たちは理解していない。
休み時間に僕はリラに話をした。
「ちょっと、行きたいところがあるんだ」
「ついて行くわ」
「一人で行かせて。お願い」
「でも、お兄ちゃんは身を守る方法も持っていないでしょう?」
そうなのだ。
僕は肉体強化の魔法が小さい頃に少しだけ使えたけれど、自分の進路を決めて縫物の付与魔法の道に進むようになってから、肉体強化の魔法は磨いていないのですっかり鈍って錆び付いてしまった。
今では戦いは全くできない状態である。
「危ないことはしないよ。ちょっと話をしてくるだけだよ」
「心配だわ。私を連れて行って」
「リラを連れて行くと僕の方が心配なんだよ」
可愛いのにリラはものすごく喧嘩っ早い。止める間もなく相手に殴りかかっている。
前回は上級生が僕の大事な場所を見たがったり、侮辱して来たりしたので、喧嘩両成敗ということになったが、今回はどうなるか分からない。基本的に喧嘩は先に手を出した方が悪いと僕の知識にはあるので、リラの手は汚させたくなかったのだ。
「僕が絶対に説得してくる」
「お兄ちゃん、近くにいるわ。危なくなったら呼んで」
「リラ……」
できれば教室で待っていてほしかったのだが、僕はリラをそれ以上止めることができなかった。
上級生の教室は上の階にある。階段を登っていくと、僕に視線が集まる。
「あの子、二年生でしょう」
「一人だけの男の子」
「何の用なのかしら」
高等学校に男の子は一人だけ。しかも飛び級していて二年早く入学しているので、僕は周囲の女の子よりも体が小さい。目立ってしまう僕に、リラが階段の下からシャドウボクシングをして威嚇して守ってくれている。
廊下を歩いて上級生の教室に着く。僕に告白してきた子は四年生で、僕よりも六つも年上だった。
「僕、二年生のラーイです。お話があるんですけど」
教室の入口で声をかけると、僕より大きな女の子たちに囲まれてしまう。
もうすぐ十二歳になる僕は背も高くなったのだが、まだまだ女の子の方が成長が早くてリラよりも少しだけ背が低かった。僕の身体はリラよりも小さいのだから上級生はもっと大きく感じられる。
「うちの学年の子を振ったんでしょう?」
「どの面下げてここに来られたの?」
「土下座して謝ってくれるわけ?」
柄の悪い子たちが僕に言うのを、後ろから品のいい子たちが止めている。
「やめなさいよ、その子、魔女族の長様の子で、土地神様の養い子なのよ」
「魔女族の長様を敵に回したら魔女の森で生きていけないわ」
「土地神様は敬うものなのよ」
良識のある上級生もいるようだ。
保護者の威を借りたくないのだが、僕にとって母が魔女族の長であるということと、養父が土地神様であるということはこの土地で生きていくにあたっては非常に有利なことだった。
「僕は土地神様と婚約しています。その意味が分からないわけではないでしょう?」
「土地神様がこんな小さな男の子と婚約するはずがないわ」
「こんな小さな男の子に振られて根に持ってるのは、そちらのお仲間なんですけどね」
小さいことを言われてしまって、僕もちょっとむっとしてしまった。言い返すと、僕を取り囲んでいる上級生たちに殺気が走る。
「生意気な口は封じなきゃいけないわね」
「ちょっと痛い目に遭ってもらおうかしら」
「魔女族は決闘で全てを決めるのよ。受けなさい」
暴力に走ってしまうようになってしまった。
どうにかして話し合いで解決したかったが、僕はできなかったようだ。
殴られるのを覚悟していると、夏が近付いているので開け放された窓から、カーテンを突き破って何かが突撃してきた。
「にぎょー!」
この声には聞き覚えがある。
ものすごい勢いで飛んできた燕の姿のスリーズちゃんが、その勢いのままで嘴を上級生の額に突き刺したのだ。
上級生の額に突き刺さるスリーズちゃんを僕は慌てて引き抜く。
上級生の額から血が出ているような気がするが、それは視界から外しておく。
「スリーズちゃん、なんでこんなところに!?」
「すー、にぃに、まもゆ! にぎょー!」
薔薇乙女仮面二号としてスリーズちゃんが覚醒してしまった。
なんで高等学校に二歳の妹が来てしまうのだろう。
あまりのことに泣きそうになっている僕の手から逃れて、スリーズちゃんは人間の女の子の姿になった。上半身は着物っぽい作りで下半身はフリフリのスカートになっていて、お尻にはしっかりとカボチャパンツをはいたスリーズちゃんが小さな拳を構えるのを、上級生たちは笑って見ている。
「何その子」
「赤ちゃんに守ってもらうの? お兄ちゃん?」
「可愛い赤ちゃんが助けに来てくれてよかったわね」
げらげらと笑っている上級生たちの前にリラが現れた。騒ぎを聞きつけてきたようだ。
「薔薇乙女仮面、見参! 二号、行くわよ」
「あい! ねぇね!」
薄くマニキュアを塗った手をリラが上に掲げると、着ているものが制服から夜空のようなワンピースに変わる。ワンピースを翻して、リラはスリーズちゃんと一緒に上級生の中に突っ込んでいった。
「リラ! スリーズちゃん! やめて!」
「お兄ちゃんを侮辱するものは許さない!」
「にぃに、たつけう!」
殴るかかっていくリラとスリーズちゃんに血しぶきが飛ぶ。上級生の方が数が多いし、リラは十一歳、スリーズちゃんは二歳なのに、完全に薔薇乙女仮面が優勢だ。
顔面を殴り付けられて鼻血を出して倒れる上級生、鳩尾に蹴りを入れられて吹っ飛ぶ上級生、巻き込まれないように教室の奥に逃げて行く上級生と、その場は騒然となった。
「喧嘩はやめなさい!」
「先生止めないで! これは決闘なのよ! こいつらが決闘だって言ったんだから!」
「やーの!」
先生が駆け付けてきたが、リラとスリーズちゃんの攻撃は止まらない。僕は必死にスリーズちゃんを抱き留めて、リラの手を握った。リラの手には血が付いている。
「お願い、もうやめて。僕のせいでリラの手を汚したくないんだよ」
「お兄ちゃん……」
「にぃに……」
ぽろぽろと涙を零す僕の顔を見て、リラとスリーズちゃんはやっと手を止めてくれた。
泣いている間に母とセイラン様とレイリ様に連絡が行ったようだ。
僕とリラとスリーズちゃんは職員室に呼び出された。上級生の保護者も呼び出されている。
「上級生がラーイくんに酷いことを言ったんです」
「私たちも腹を立ててました」
「ラーイくんは話し合いで解決しようとリラちゃんを説得して一人で上級生の教室に行ったんです」
駆け付けた同級生たちが先生に訴えている。
「上級生が決闘をラーイくんに申し込んだのは本当のようですね。それをラーイくんの妹が代理で受けたようです」
先生もきちんと話を聞いて、判断してくれている。
「魔女族は決闘で決めるって言ったのはあっちよ。私はお兄ちゃんが戦えないから、助けに入ったの。人数だってあっちの方がずっと多かったわ」
「にぃに、たつけた」
「スリーズちゃんなんて二歳よ! 二歳の子に負けたことを、毎晩お布団の中で転げ回って恥じるといいんだわ」
「すー、かった!」
リラもスリーズちゃんも堂々としている。
すぐに駆け付けてくれた母にスリーズちゃんは言い聞かされていた。
「勝手に家から出てはいけないと言ったじゃない。危ないわよ」
「かか、ごめちゃい」
「ラーイが心配だったのは分かるけど、一人で出てはだめよ。ちゃんと私に言って」
「あい」
「えぇ!? お母さんも来ちゃうの!?」
「ラーイの危機には来るわよ」
何ということでしょう。
スリーズちゃんが母に相談していたら、母も来ていたかもしれないなんて。
「上級生は何を考えておるのか。そもそも、ラーイは私の婚約者。それに手を出そうとすることは、土地神を愚弄して、魔女の森は土地神に反意があると示すことになりかねないのだぞ」
珍しくセイラン様が怒っている。僕はセイラン様に寄り添って大きな手を握った。セイラン様は僕を見下ろす。
「リラも僕の婚約者で、養い子です。リラと戦うということは、僕に敵意を向けることに他ならないのですが、それがお分かりですか?」
レイリ様も怒りを露わにしていた。
魔女の森は開かれてからは魔力が足りなくなって、子どもたちの成長のために土地神であるセイラン様とレイリ様の力を借りている。
それがなくなれば魔女族全体の不利益になりかねない。
「申し訳ありませんでした」
「お許しください」
「子どもにはきつく言い聞かせます」
上級生の保護者達は深々と頭を下げて謝っている。穏やかで優しいセイラン様とレイリ様がこのように怒りを露わにするとは僕ですら初めて見た。
「よろしくお願いしますよ」
「本当に、二度とこのようなことは起こしてくれるな」
厳しく叱責されて、上級生の保護者は土下座するように頭を下げ続けていた。
周囲は全員女の子の中で小学校からずっと生活している僕は、女の子が怒ったらどれだけ怖いかを知っていたのだ。
上級生たちは僕を通して同級生の女の子たちを侮辱した。教室の中にいた僕に聞こえたのだから、他の同級生たちにあのセリフが聞こえていないはずはなかった。
――女の子を侍らせていい気になって。
同級生の女の子たちは僕に侍っているわけではない。勉強を教えられることはあっても、僕と同級生の女の子たちの立場は同等だ。僕たちは友達なのだ。
それを穿った見方をしてくる上級生に、同級生の女の子たちが怒りを覚えていないはずはない。
――あの子がうちの学年の子を振ったんでしょう?
――高等学校でたった一人の男の子だからって、調子に乗っているのよ。
確かに僕は上級生の女の子を振った。
僕にはセイラン様がいるし、婚約もしているのだ。上級生の女の子と付き合うなんてことはあり得るはずがない。土地神様と婚約しているということがどういうことなのか、上級生たちは理解していない。
休み時間に僕はリラに話をした。
「ちょっと、行きたいところがあるんだ」
「ついて行くわ」
「一人で行かせて。お願い」
「でも、お兄ちゃんは身を守る方法も持っていないでしょう?」
そうなのだ。
僕は肉体強化の魔法が小さい頃に少しだけ使えたけれど、自分の進路を決めて縫物の付与魔法の道に進むようになってから、肉体強化の魔法は磨いていないのですっかり鈍って錆び付いてしまった。
今では戦いは全くできない状態である。
「危ないことはしないよ。ちょっと話をしてくるだけだよ」
「心配だわ。私を連れて行って」
「リラを連れて行くと僕の方が心配なんだよ」
可愛いのにリラはものすごく喧嘩っ早い。止める間もなく相手に殴りかかっている。
前回は上級生が僕の大事な場所を見たがったり、侮辱して来たりしたので、喧嘩両成敗ということになったが、今回はどうなるか分からない。基本的に喧嘩は先に手を出した方が悪いと僕の知識にはあるので、リラの手は汚させたくなかったのだ。
「僕が絶対に説得してくる」
「お兄ちゃん、近くにいるわ。危なくなったら呼んで」
「リラ……」
できれば教室で待っていてほしかったのだが、僕はリラをそれ以上止めることができなかった。
上級生の教室は上の階にある。階段を登っていくと、僕に視線が集まる。
「あの子、二年生でしょう」
「一人だけの男の子」
「何の用なのかしら」
高等学校に男の子は一人だけ。しかも飛び級していて二年早く入学しているので、僕は周囲の女の子よりも体が小さい。目立ってしまう僕に、リラが階段の下からシャドウボクシングをして威嚇して守ってくれている。
廊下を歩いて上級生の教室に着く。僕に告白してきた子は四年生で、僕よりも六つも年上だった。
「僕、二年生のラーイです。お話があるんですけど」
教室の入口で声をかけると、僕より大きな女の子たちに囲まれてしまう。
もうすぐ十二歳になる僕は背も高くなったのだが、まだまだ女の子の方が成長が早くてリラよりも少しだけ背が低かった。僕の身体はリラよりも小さいのだから上級生はもっと大きく感じられる。
「うちの学年の子を振ったんでしょう?」
「どの面下げてここに来られたの?」
「土下座して謝ってくれるわけ?」
柄の悪い子たちが僕に言うのを、後ろから品のいい子たちが止めている。
「やめなさいよ、その子、魔女族の長様の子で、土地神様の養い子なのよ」
「魔女族の長様を敵に回したら魔女の森で生きていけないわ」
「土地神様は敬うものなのよ」
良識のある上級生もいるようだ。
保護者の威を借りたくないのだが、僕にとって母が魔女族の長であるということと、養父が土地神様であるということはこの土地で生きていくにあたっては非常に有利なことだった。
「僕は土地神様と婚約しています。その意味が分からないわけではないでしょう?」
「土地神様がこんな小さな男の子と婚約するはずがないわ」
「こんな小さな男の子に振られて根に持ってるのは、そちらのお仲間なんですけどね」
小さいことを言われてしまって、僕もちょっとむっとしてしまった。言い返すと、僕を取り囲んでいる上級生たちに殺気が走る。
「生意気な口は封じなきゃいけないわね」
「ちょっと痛い目に遭ってもらおうかしら」
「魔女族は決闘で全てを決めるのよ。受けなさい」
暴力に走ってしまうようになってしまった。
どうにかして話し合いで解決したかったが、僕はできなかったようだ。
殴られるのを覚悟していると、夏が近付いているので開け放された窓から、カーテンを突き破って何かが突撃してきた。
「にぎょー!」
この声には聞き覚えがある。
ものすごい勢いで飛んできた燕の姿のスリーズちゃんが、その勢いのままで嘴を上級生の額に突き刺したのだ。
上級生の額に突き刺さるスリーズちゃんを僕は慌てて引き抜く。
上級生の額から血が出ているような気がするが、それは視界から外しておく。
「スリーズちゃん、なんでこんなところに!?」
「すー、にぃに、まもゆ! にぎょー!」
薔薇乙女仮面二号としてスリーズちゃんが覚醒してしまった。
なんで高等学校に二歳の妹が来てしまうのだろう。
あまりのことに泣きそうになっている僕の手から逃れて、スリーズちゃんは人間の女の子の姿になった。上半身は着物っぽい作りで下半身はフリフリのスカートになっていて、お尻にはしっかりとカボチャパンツをはいたスリーズちゃんが小さな拳を構えるのを、上級生たちは笑って見ている。
「何その子」
「赤ちゃんに守ってもらうの? お兄ちゃん?」
「可愛い赤ちゃんが助けに来てくれてよかったわね」
げらげらと笑っている上級生たちの前にリラが現れた。騒ぎを聞きつけてきたようだ。
「薔薇乙女仮面、見参! 二号、行くわよ」
「あい! ねぇね!」
薄くマニキュアを塗った手をリラが上に掲げると、着ているものが制服から夜空のようなワンピースに変わる。ワンピースを翻して、リラはスリーズちゃんと一緒に上級生の中に突っ込んでいった。
「リラ! スリーズちゃん! やめて!」
「お兄ちゃんを侮辱するものは許さない!」
「にぃに、たつけう!」
殴るかかっていくリラとスリーズちゃんに血しぶきが飛ぶ。上級生の方が数が多いし、リラは十一歳、スリーズちゃんは二歳なのに、完全に薔薇乙女仮面が優勢だ。
顔面を殴り付けられて鼻血を出して倒れる上級生、鳩尾に蹴りを入れられて吹っ飛ぶ上級生、巻き込まれないように教室の奥に逃げて行く上級生と、その場は騒然となった。
「喧嘩はやめなさい!」
「先生止めないで! これは決闘なのよ! こいつらが決闘だって言ったんだから!」
「やーの!」
先生が駆け付けてきたが、リラとスリーズちゃんの攻撃は止まらない。僕は必死にスリーズちゃんを抱き留めて、リラの手を握った。リラの手には血が付いている。
「お願い、もうやめて。僕のせいでリラの手を汚したくないんだよ」
「お兄ちゃん……」
「にぃに……」
ぽろぽろと涙を零す僕の顔を見て、リラとスリーズちゃんはやっと手を止めてくれた。
泣いている間に母とセイラン様とレイリ様に連絡が行ったようだ。
僕とリラとスリーズちゃんは職員室に呼び出された。上級生の保護者も呼び出されている。
「上級生がラーイくんに酷いことを言ったんです」
「私たちも腹を立ててました」
「ラーイくんは話し合いで解決しようとリラちゃんを説得して一人で上級生の教室に行ったんです」
駆け付けた同級生たちが先生に訴えている。
「上級生が決闘をラーイくんに申し込んだのは本当のようですね。それをラーイくんの妹が代理で受けたようです」
先生もきちんと話を聞いて、判断してくれている。
「魔女族は決闘で決めるって言ったのはあっちよ。私はお兄ちゃんが戦えないから、助けに入ったの。人数だってあっちの方がずっと多かったわ」
「にぃに、たつけた」
「スリーズちゃんなんて二歳よ! 二歳の子に負けたことを、毎晩お布団の中で転げ回って恥じるといいんだわ」
「すー、かった!」
リラもスリーズちゃんも堂々としている。
すぐに駆け付けてくれた母にスリーズちゃんは言い聞かされていた。
「勝手に家から出てはいけないと言ったじゃない。危ないわよ」
「かか、ごめちゃい」
「ラーイが心配だったのは分かるけど、一人で出てはだめよ。ちゃんと私に言って」
「あい」
「えぇ!? お母さんも来ちゃうの!?」
「ラーイの危機には来るわよ」
何ということでしょう。
スリーズちゃんが母に相談していたら、母も来ていたかもしれないなんて。
「上級生は何を考えておるのか。そもそも、ラーイは私の婚約者。それに手を出そうとすることは、土地神を愚弄して、魔女の森は土地神に反意があると示すことになりかねないのだぞ」
珍しくセイラン様が怒っている。僕はセイラン様に寄り添って大きな手を握った。セイラン様は僕を見下ろす。
「リラも僕の婚約者で、養い子です。リラと戦うということは、僕に敵意を向けることに他ならないのですが、それがお分かりですか?」
レイリ様も怒りを露わにしていた。
魔女の森は開かれてからは魔力が足りなくなって、子どもたちの成長のために土地神であるセイラン様とレイリ様の力を借りている。
それがなくなれば魔女族全体の不利益になりかねない。
「申し訳ありませんでした」
「お許しください」
「子どもにはきつく言い聞かせます」
上級生の保護者達は深々と頭を下げて謝っている。穏やかで優しいセイラン様とレイリ様がこのように怒りを露わにするとは僕ですら初めて見た。
「よろしくお願いしますよ」
「本当に、二度とこのようなことは起こしてくれるな」
厳しく叱責されて、上級生の保護者は土下座するように頭を下げ続けていた。
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