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転生したらまた魔女の男子だった件

100.大人の悩み

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 僕は大人になってしまった。
 セイラン様の太腿に股間を擦り付けて精を吐き出した日から、僕は急に恥ずかしくなってセイラン様のお乳を飲めなくなった。
 お乳を飲まなければ成長に支障が出る。体調も崩しやすくなる。分かっているのだが、どうしても恥ずかしいのだ。

 夜にお風呂に入ると自分の部屋に行って、セイラン様の寝室に来ない僕をセイラン様は心配していた。

「ラーイ、乳を飲まなくていいのか? 身体に支障はないか?」

 ドアを叩いて声をかけてくれるセイラン様に、僕は上手く返事ができない。ベッドに倒れ込んで布団を頭まで被っていると、そっと部屋を覗いたセイラン様がため息を吐くのが分かる。

「寝ておるのか……。体に影響がないといいが」

 優しいセイラン様は僕が寝ていると確認すると、部屋に入らずに自分の寝室に戻って行く。セイラン様がいなくなってから、僕は虚しく自分のお腹を押さえていた。
 晩ご飯は食べているのでお腹はいっぱいのはずだ。
 それなのに、僕の体にはセイラン様のお乳が必要で、それを飲まなくては満足できない。お乳が欲しいのに我慢しているから、お腹の辺りがおかしくなってくる。
 満腹のはずなのに、空腹感を覚えたり、お腹がしくしく痛んだりする。

「セイラン様ぁ……」

 呟くと涙が出て来る。
 セイラン様の胸に顔を埋めたい。
 セイラン様のお乳を思う存分飲みたい。
 けれど、セイラン様に見られてしまった。

 太ももに股間を擦り付けて、胸を揉みながら乳首を吸って、僕が精を吐き出した姿を、セイラン様はしっかりと見ていたはずだ。その後で風呂場にも連れて行かれたし、下着も洗われてしまった。
 恥ずかしくてセイラン様の顔を真っすぐに見られないのだが、セイラン様と離れていると寂しくて涙が出て来る。

 セイラン様と一緒に寝たい。
 セイラン様のお乳を飲みたい。

 大人になんてなりたくなかった。

 苦しくて、恥ずかしくて、転げまわりそうな僕は必死に寝ようと目を閉じるのだが、眠気が全然やって来ない。それなのに、頭痛はしてくるし、お腹はしくしくと痛む。
 朝になっても起きられない僕に、セイラン様はさすがに心配になったのか部屋に入って来て僕の布団を剥がした。

 泣き腫らして目は真っ赤、熱っぽくて顔も赤い、洟が垂れて涙も流している僕を見て、セイラン様はまず顔をお湯で湿らせたタオルで拭いてくれた。

「ラーイ、体調が悪いのではないか?」
「分かりません……」
「熱が出ておる。乳を飲むのに抵抗があるなら、神力を込めた水を持ってくるぞ?」

 セイラン様に言われて、僕はセイラン様の膝に縋り付いた。

「セイラン様のお乳を飲みたくないわけじゃないんですぅ。でも、僕……あんなことをしてしまって……」

 僕はセイラン様を性的に見ている。
 あの夜にそのことがはっきりと分かった。
 僕はセイラン様を抱きたいと思っているのだ。

「あれは……大人になるための段階というか……普通のことだ」
「普通のことなのですか?」
「私はそういう欲が少ないのですることはないが、自分で触れて精を出したり、どこかに擦り付けて精を出したりするのは、大人の男性では普通のことなのだよ」

 どこかに擦り付けて、の場所がセイラン様の太腿であったことが大問題なのだが、そのことをセイラン様は気にしていないようだった。

「乳を飲むのが嫌ではないなら、飲んでくれ。飲まれなくて、私は胸が張っているし、乳を飲まないでラーイが体調を崩す方が私にはつらい」

 着物の袷を寛げて胸を露わにしてくれるセイラン様に、僕はもう我慢ができなかった。淡い色の乳首に吸い付くと、甘いお乳が口の中に広がる。夢中でお乳を飲んでいると、熱で朦朧とした頭が冷えていく気がする。

「セイラン様ぁ……」
「ラーイ、体を壊すような我慢はやめてくれ」

 胸を吸う僕の髪をセイラン様の大きな手が撫でる。お乳をたっぷりと飲んだら、僕の体調不良はよくなった。
 その日は高等学校はお休みをして、リラだけが高等学校に行っていた。マオさんは社の庭の落ち葉を片付けているし、レイリ様は土地の見回りに行っている。

 二人きりで居間で僕は白虎の姿のセイラン様を背もたれにして本を読んでいた。
 セイラン様はうとうとと眠っているようだ。
 静かに本を読んでいると、セイラン様が寝惚けて僕を呼ぶ。

「ラーイ?」
「はい、ここにいます」

 答えると安心したのかまたセイラン様が眠る。
 こんな風に日中に眠っているセイラン様を見たことがなかったので僕は新鮮な気分だった。

 レイリ様が帰ってくると、セイラン様は昼寝から目を覚ました。
 白虎の姿から人間の姿に戻ったレイリ様がセイラン様を見て苦笑している。

「セイラン兄上は、ラーイが一緒に寝なくなってから、あまり眠れていなかったのでしょう」
「ずっと一緒だったのだから慣れないのだ。乳を飲まなかったから、体調を崩すのではないかと気が気ではなかったし」

 生物学上の父に僕がクロスボウで撃たれたときも、回復した後セイラン様はしばらく僕から離れられなかった。セイラン様が意外と過保護で僕を気にしていることを僕は知っていた。

「レイリこそ、リラが一緒に寝なくなって寂しいのではないか?」
「寂しいですが、リラの成長ですからね」

 生理が来て大人になってからリラも自分の部屋で寝るようにしたのだ。レイリ様のお乳は飲んでいるが、飲み終わったらリラは自分の部屋に行って自分のベッドで寝る。

「ラーイが乳離れしたら、寂しいのはセイラン兄上の方ではないですか?」
「レイリもひとのことは言えないだろう」

 お互いに言い合うレイリ様とセイラン様に、僕とリラは大事にされているのだと改めて実感した。

「ただいまー! お兄ちゃん、大丈夫? お母さんとスリーズちゃんが心配してたわよ」

 元気よく帰って来たリラは、僕がどうして熱を出したのかよく分かっていない。僕がセイラン様のお乳を拒んでいたなんて知らないのだ。

「熱は下がったよ。風邪だったのかな」
「アンナマリお姉ちゃんに診てもらえばよかったわね」
「それほど酷くなかったから」

 誤魔化して僕はセイラン様を見る。セイラン様は分かっているが何も言わなかった。

 その日から僕はまたセイラン様のお乳を飲み始めた。
 夜にお風呂に入ってから、セイラン様の寝室に行って、お乳を飲ませてもらう。お乳を飲んでいる間、股間がむずむずするのだが、そっちに意識を行かせないように気を付けて飲むことに集中した。
 飲み終わるとセイラン様に「お休みなさい」を言って、自分の部屋に帰る。

 股間のむずむずは治まっていない。
 ベッドに入ってそこに触ってみるのだが、どうすればいいのか分からずに、股間の熱は高まるばかりである。
 自分でそこに触って精を吐き出すのが成人男性では普通だと言われたが、僕はどうしていいのかよく分からない。
 シーツに股間を擦り付けても、セイラン様の太腿が頭を過って全然気持ちよくない。

「セイラン様ぁ……苦しいよぉ、セイラン様ぁ……」

 股間の熱を持て余して、僕は眠るしかなかった。

 こんなことは誰に相談すればいいのだろう。
 僕が何でも話せる相手はセイラン様しかいないのだが、セイラン様の太腿を思い出しながら股間に触ったなんてことを言えるはずがない。
 上手く股間の熱を発散できないでいる僕に、リラがお風呂に入っている間にレイリ様が僕のことを呼んで話をしてくれた。

「ラーイはセイラン兄上に言えないことで悩んでいるのではないですか?」
「レイリ様!? 何故分かるのですか!?」
「セイラン兄上から、ラーイの話を聞いてあげるように言われました。セイラン兄上には言わないので、話してください」

 レイリ様も土地神様で神族だが、成人した男性だ。
 男同士ということで話はしやすい。

「僕、精通が来たんです。それから、セイラン様のお乳を飲むと、股間が熱くなって、それをどうすればいいのか分からないんです」
「精を出してしまうといいでしょうね」
「どうすればいいんですか?」

 真剣に聞く僕をレイリ様は馬鹿にしたり笑ったりしない。

「その場所に触れて、手で擦ると精が出ると聞いたことがあります」
「直に触れるんですか?」

 これまでそういう場所は大事だから、お手洗いやお風呂のとき以外で直に触れることはなかった。セイラン様の太腿に擦り付けたときもパジャマを着たままだった。

「直に触れた方がいいでしょうね」
「レイリ様はしたことがありますか?」
「僕はそういう欲はあまりない方なので、数度だけ。精を出したいと思うのはおかしいことではないのですよ。大人になった証拠です」

 レイリ様に教えてもらって僕は少しほっとした。

 その夜もセイラン様のお乳を飲んで、自分の部屋のベッドに入った。股間は熱かったけれど、どうしようか悩んでいるうちに眠気が勝って僕は寝てしまった。
 対処法が分かっていれば、安心して眠れるようだ。
 僕は話をしてくれたレイリ様に感謝しながら眠りについた。
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