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転生したらまた魔女の男子だった件
82.年越しはコロッケ蕎麦
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冬になってスリーズちゃんははいはいをするようになった。
可愛いロンパースを着せられて、床の上をはいはいして僕やリラを追い駆けて来るスリーズちゃん。障害物があると乗り越えられなくて泣いて自己主張するが、普通の人間の子どもとしても発達をしていた。
燕の姿になると自由に飛んで行って、僕の肩に乗って、飛び上がって嘴で額を突く。突かれると結構痛いのだが、スリーズちゃんのすることなので僕も許している。
「スリーズちゃんはお兄ちゃんに何が言いたいのかしら」
「喋れるようになればいいんだけどね」
額を突かれる理由をスリーズちゃんの口から聞けるならば、それが一番いいのだがスリーズちゃんはまだ喋れない。
少しだけだが言葉が出てきているが、まだまだ意思疎通を図るのは難しい。
「にぃ!」
「何かな、スリーズちゃん?」
「あい!」
僕のことは「にぃ」と言えるし、「はい」は言えるようになったのだが、それ以外の単語がなかなか出てこない。
「最初の単語は『ママ』だと思ったのに、ラーイのことを呼ぶのね」
「ママより言いやすかったのかもしれないよ」
僕は幼い頃に「セイラン様」といおうとしても「ま」しか口から出て来なくてかなり苦しんだが、スリーズちゃんはそんなことはないようだ。
「ねぇ!」
「なぁに、スリーズちゃん」
「あい!」
リラのこともちゃんと呼べる。
僕とリラを呼んで、スリーズちゃんは何かもにゃもにゃと喋っているのだが、それが全然聞き取れない。「あぶ」とか「あだ」とか言われても、何を言っているのか全然分からない。
燕の姿になると「ちよちよ」と鳴くだけでなく「ちー」とか「ちーよ」と鳴き方にもヴァリエーションが出てきたのだが、そちらも何て言っているのか分からない。
同じ燕のお父さんならば分かるのかもしれないと思うと、お父さんが次の土地に行ってしまったのがすごく惜しまれる。
来年お父さんが来る頃にはスリーズちゃんはもっと喋れるようになっているだろう。
「何を言ってるのか分からないけど、私はスリーズちゃんが大好きよ」
「僕もスリーズちゃんが大好きだよ」
抱っこしてあげるとスリーズちゃんはきゃっきゃと笑う。表情も豊かになって可愛い盛りだ。
こんな可愛い時期にスリーズちゃんと一緒にいられないのはお父さんのことを気の毒に思ってしまう。それでも、それがお父さんの仕事なのだから仕方がない。
母の家に遊びに行くときには、最近はセイラン様かレイリ様がついて来てくださる。
今日はセイラン様だった。
レイリ様は風に乗って土地の見回りに行っていた。
「セイラン様、帰りましょう」
「スリーズと存分に遊んだか?」
「いっぱい遊んだわ。楽しかった」
「スリーズちゃんはとても可愛いです」
「それはよかったな」
セイラン様に連れられて僕とリラは社に帰る。雪の降り積もる庭先まで母がスリーズちゃんを抱っこして見送りに出てくれていた。
母とスリーズちゃんに大きく手を振って、僕は白虎のセイラン様の背中に乗った。リラも一緒に乗っている。
僕とリラが乗っても平気なくらいセイラン様の白虎の姿は大きかった。
社に帰るとマオさんが年越しの準備をしていた。
今年もそんな時期になるのだ。
僕とリラも厨房に行ってマオさんに声をかける。
「マオさんお手伝いさせて」
「私も手伝うわ」
声をかけるとマオさんが困ったように眉を下げる。
「厨房が広くないので、居間に道具を持って行きましょうね」
「僕も料理を覚えたいんだ」
「マオお姉ちゃん、私もお料理ができるようになりたいの」
僕とリラの興味は料理にあった。
母の家に行くときにも、料理ができれば母がスリーズちゃんの世話に手間取っているときに、僕とリラは自分のことは自分でできるようになる。お茶は熱湯だから危ないかもしれないが、牛乳を注ぐことはできるし、簡単な料理ができれば母の分まで食事の支度ができるかもしれない。
食事の問題が解決すれば、僕もリラも母の手を煩わせずに母の家にいられるかもしれないのだ。
最初の頃は正直母の家に行くのは嫌だった。
セイラン様と離れるのが嫌だったのだ。
リラも同じでレイリ様と離れるのが嫌で、母の家には行きたがらなかった。
母と信頼関係を築いて、母に縫物を教えてもらうようになって、母の家に行くのが楽しくなった。スリーズちゃんが生まれてからは母の家に行きたくてたまらなくなった。
「料理は簡単なものから教えましょうね」
言いながらマオさんが居間のテーブルの上にバットと小さなボウルを並べていく。
材料を冷水にくぐらせて粉をつけるのをさせてくれるようだ。
「天ぷらを作りますからね。年越し蕎麦に天ぷら、お好きでしょう?」
「大好き!」
「私は、ちくわの磯部揚げが好きだわ」
「今年はコロッケも乗せてみようと思っているのです。コロッケ、作ってみませんか?」
コロッケは母の家でも、魔女の森の小学校でも食べたことがあるが、蕎麦に乗せるというのは初めてである。社では出てきたことがないので、マオさんも作るのは初めてなのだろう。
「炒めたミンチと玉ねぎと人参のみじん切りがあります。これを皮を剥いたジャガイモを潰したものと合わせてください」
「分かったわ!」
「よく混ぜるね」
洗った手でジャガイモを潰して炒めたミンチと玉ねぎと人参のみじん切りと混ぜていく。コロッケの形を作って、小麦粉をつけて、卵液にくぐらせて、パン粉をつけていくと、手がぬるぬるになってしまった。
「お兄ちゃんの手を揚げたら美味しそう」
「リラの手も衣がついちゃってるよ」
僕とリラは笑い合いながらコロッケを作った。
天ぷらにも衣をつけて、マオさんに揚げてもらう。
晩ご飯まで少し時間があったが、揚げたてのいい香りに勝てずに、僕とリラはコロッケを一個食べさせてもらった。
揚げたてのコロッケは外がカリカリ、中がホクホクでとても美味しい。
一個で足りなくなって、何個でも食べたくなるがそれは我慢する。
「ただいま戻りました。いい匂いがしますね」
土地の見回りに行っていたレイリ様が戻ってきて、マオさんは蕎麦を茹でて晩ご飯の準備をする。
「今年も土地のひとたちは無事に年を越せそうでした」
「飢えて凍えておるものもいないようだったな」
「一年間、お疲れさまでした、セイラン兄上」
「レイリもお疲れ様だったな」
お互いに労い合う土地神様の兄弟。こういう姿を見ると、セイラン様もレイリ様もこの土地の土地神様なのだと強く感じる。普段は身近にいすぎて、身内のような感覚になっているが、セイラン様もレイリ様もこの土地の神様なのだ。
「お蕎麦が茹で上がりましたよ。何を乗せますか?」
「卵とちくわの磯部揚げと海老天、それにコロッケがいいわ」
「僕も同じので」
大きく返事をするリラに、僕も同じものを頼む。僕とリラは食べ物の好みがすごくよく似ているのだ。
前世の妹とはどうだっただろう。
結構好みはバラバラだった気がする。
「セイラン様とレイリ様はどうなさいますか?」
「コロッケを乗せておるのだな。それは食べてみたいな」
「僕はコロッケとワカメでお願いします」
全員コロッケ蕎麦には興味津々だったようだ。
蕎麦のお椀が出てきて、そこにこんもりとちくわの磯部揚げと海老天とコロッケ、それに卵が乗っているのが僕とリラのもの、コロッケだけ乗ったシンプルなのがセイラン様とレイリ様のものだった。
椅子に座って食べると、コロッケが蕎麦の出汁を吸っていて美味しい。
「おいひいですね」
「ろっても、おいひいわ」
口に頬張ったまま言う僕とリラに、セイラン様とレイリ様が苦笑している。
「飲み込んでから話すのだぞ。喉に詰まってしまう」
「リラも、飲み込んでから話しましょうね」
「ふぁい」
「ん」
もぐもぐと咀嚼して飲み込んで、僕はマオさんにお礼を言った。
「今年もたくさん美味しいものを作ってくれてありがとう。来年は料理を教えてね、マオさん」
「私にもお料理を教えてね、マオお姉ちゃん」
僕とリラのお願いにマオさんは頷いてくれた。
可愛いロンパースを着せられて、床の上をはいはいして僕やリラを追い駆けて来るスリーズちゃん。障害物があると乗り越えられなくて泣いて自己主張するが、普通の人間の子どもとしても発達をしていた。
燕の姿になると自由に飛んで行って、僕の肩に乗って、飛び上がって嘴で額を突く。突かれると結構痛いのだが、スリーズちゃんのすることなので僕も許している。
「スリーズちゃんはお兄ちゃんに何が言いたいのかしら」
「喋れるようになればいいんだけどね」
額を突かれる理由をスリーズちゃんの口から聞けるならば、それが一番いいのだがスリーズちゃんはまだ喋れない。
少しだけだが言葉が出てきているが、まだまだ意思疎通を図るのは難しい。
「にぃ!」
「何かな、スリーズちゃん?」
「あい!」
僕のことは「にぃ」と言えるし、「はい」は言えるようになったのだが、それ以外の単語がなかなか出てこない。
「最初の単語は『ママ』だと思ったのに、ラーイのことを呼ぶのね」
「ママより言いやすかったのかもしれないよ」
僕は幼い頃に「セイラン様」といおうとしても「ま」しか口から出て来なくてかなり苦しんだが、スリーズちゃんはそんなことはないようだ。
「ねぇ!」
「なぁに、スリーズちゃん」
「あい!」
リラのこともちゃんと呼べる。
僕とリラを呼んで、スリーズちゃんは何かもにゃもにゃと喋っているのだが、それが全然聞き取れない。「あぶ」とか「あだ」とか言われても、何を言っているのか全然分からない。
燕の姿になると「ちよちよ」と鳴くだけでなく「ちー」とか「ちーよ」と鳴き方にもヴァリエーションが出てきたのだが、そちらも何て言っているのか分からない。
同じ燕のお父さんならば分かるのかもしれないと思うと、お父さんが次の土地に行ってしまったのがすごく惜しまれる。
来年お父さんが来る頃にはスリーズちゃんはもっと喋れるようになっているだろう。
「何を言ってるのか分からないけど、私はスリーズちゃんが大好きよ」
「僕もスリーズちゃんが大好きだよ」
抱っこしてあげるとスリーズちゃんはきゃっきゃと笑う。表情も豊かになって可愛い盛りだ。
こんな可愛い時期にスリーズちゃんと一緒にいられないのはお父さんのことを気の毒に思ってしまう。それでも、それがお父さんの仕事なのだから仕方がない。
母の家に遊びに行くときには、最近はセイラン様かレイリ様がついて来てくださる。
今日はセイラン様だった。
レイリ様は風に乗って土地の見回りに行っていた。
「セイラン様、帰りましょう」
「スリーズと存分に遊んだか?」
「いっぱい遊んだわ。楽しかった」
「スリーズちゃんはとても可愛いです」
「それはよかったな」
セイラン様に連れられて僕とリラは社に帰る。雪の降り積もる庭先まで母がスリーズちゃんを抱っこして見送りに出てくれていた。
母とスリーズちゃんに大きく手を振って、僕は白虎のセイラン様の背中に乗った。リラも一緒に乗っている。
僕とリラが乗っても平気なくらいセイラン様の白虎の姿は大きかった。
社に帰るとマオさんが年越しの準備をしていた。
今年もそんな時期になるのだ。
僕とリラも厨房に行ってマオさんに声をかける。
「マオさんお手伝いさせて」
「私も手伝うわ」
声をかけるとマオさんが困ったように眉を下げる。
「厨房が広くないので、居間に道具を持って行きましょうね」
「僕も料理を覚えたいんだ」
「マオお姉ちゃん、私もお料理ができるようになりたいの」
僕とリラの興味は料理にあった。
母の家に行くときにも、料理ができれば母がスリーズちゃんの世話に手間取っているときに、僕とリラは自分のことは自分でできるようになる。お茶は熱湯だから危ないかもしれないが、牛乳を注ぐことはできるし、簡単な料理ができれば母の分まで食事の支度ができるかもしれない。
食事の問題が解決すれば、僕もリラも母の手を煩わせずに母の家にいられるかもしれないのだ。
最初の頃は正直母の家に行くのは嫌だった。
セイラン様と離れるのが嫌だったのだ。
リラも同じでレイリ様と離れるのが嫌で、母の家には行きたがらなかった。
母と信頼関係を築いて、母に縫物を教えてもらうようになって、母の家に行くのが楽しくなった。スリーズちゃんが生まれてからは母の家に行きたくてたまらなくなった。
「料理は簡単なものから教えましょうね」
言いながらマオさんが居間のテーブルの上にバットと小さなボウルを並べていく。
材料を冷水にくぐらせて粉をつけるのをさせてくれるようだ。
「天ぷらを作りますからね。年越し蕎麦に天ぷら、お好きでしょう?」
「大好き!」
「私は、ちくわの磯部揚げが好きだわ」
「今年はコロッケも乗せてみようと思っているのです。コロッケ、作ってみませんか?」
コロッケは母の家でも、魔女の森の小学校でも食べたことがあるが、蕎麦に乗せるというのは初めてである。社では出てきたことがないので、マオさんも作るのは初めてなのだろう。
「炒めたミンチと玉ねぎと人参のみじん切りがあります。これを皮を剥いたジャガイモを潰したものと合わせてください」
「分かったわ!」
「よく混ぜるね」
洗った手でジャガイモを潰して炒めたミンチと玉ねぎと人参のみじん切りと混ぜていく。コロッケの形を作って、小麦粉をつけて、卵液にくぐらせて、パン粉をつけていくと、手がぬるぬるになってしまった。
「お兄ちゃんの手を揚げたら美味しそう」
「リラの手も衣がついちゃってるよ」
僕とリラは笑い合いながらコロッケを作った。
天ぷらにも衣をつけて、マオさんに揚げてもらう。
晩ご飯まで少し時間があったが、揚げたてのいい香りに勝てずに、僕とリラはコロッケを一個食べさせてもらった。
揚げたてのコロッケは外がカリカリ、中がホクホクでとても美味しい。
一個で足りなくなって、何個でも食べたくなるがそれは我慢する。
「ただいま戻りました。いい匂いがしますね」
土地の見回りに行っていたレイリ様が戻ってきて、マオさんは蕎麦を茹でて晩ご飯の準備をする。
「今年も土地のひとたちは無事に年を越せそうでした」
「飢えて凍えておるものもいないようだったな」
「一年間、お疲れさまでした、セイラン兄上」
「レイリもお疲れ様だったな」
お互いに労い合う土地神様の兄弟。こういう姿を見ると、セイラン様もレイリ様もこの土地の土地神様なのだと強く感じる。普段は身近にいすぎて、身内のような感覚になっているが、セイラン様もレイリ様もこの土地の神様なのだ。
「お蕎麦が茹で上がりましたよ。何を乗せますか?」
「卵とちくわの磯部揚げと海老天、それにコロッケがいいわ」
「僕も同じので」
大きく返事をするリラに、僕も同じものを頼む。僕とリラは食べ物の好みがすごくよく似ているのだ。
前世の妹とはどうだっただろう。
結構好みはバラバラだった気がする。
「セイラン様とレイリ様はどうなさいますか?」
「コロッケを乗せておるのだな。それは食べてみたいな」
「僕はコロッケとワカメでお願いします」
全員コロッケ蕎麦には興味津々だったようだ。
蕎麦のお椀が出てきて、そこにこんもりとちくわの磯部揚げと海老天とコロッケ、それに卵が乗っているのが僕とリラのもの、コロッケだけ乗ったシンプルなのがセイラン様とレイリ様のものだった。
椅子に座って食べると、コロッケが蕎麦の出汁を吸っていて美味しい。
「おいひいですね」
「ろっても、おいひいわ」
口に頬張ったまま言う僕とリラに、セイラン様とレイリ様が苦笑している。
「飲み込んでから話すのだぞ。喉に詰まってしまう」
「リラも、飲み込んでから話しましょうね」
「ふぁい」
「ん」
もぐもぐと咀嚼して飲み込んで、僕はマオさんにお礼を言った。
「今年もたくさん美味しいものを作ってくれてありがとう。来年は料理を教えてね、マオさん」
「私にもお料理を教えてね、マオお姉ちゃん」
僕とリラのお願いにマオさんは頷いてくれた。
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