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転生したらまた魔女の男子だった件
77.前世の名前
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夏休みの終わりの日、僕はセイラン様にお願いして、前世の母のところに行っていた。前世の母に聞きたいことがあったのだ。
時刻は夕方になっていたけれど、前世の母は僕が来ると孤児院の庭に出てくれて、話を聞いてくれた。
「母さん、僕、十歳になったよ。前世の年齢を越したんだよ」
「あなたは前世では十歳のお誕生日までしか生きられなかったからね」
「今世のお母さんと、セイラン様とレイリ様とリラとお祝いしたんだよ」
話をしてから僕は思い出す。前世の母にはリラのことはほとんど話したことがない。
「リラは前世の妹が生まれ変わったんだと思うんだけど、何も覚えてないみたいで、つらい記憶を思い出したら可哀想だから連れて来てないんだ」
「え? あなたの双子の妹が前世の私の娘?」
初めて聞いた情報に前世の母は戸惑っている。
「あなたを見たときには間違いなく私の息子が生まれ変わったんだって分かったけど、私とアマリエが戦うのを見てた子よね……あの子には何も感じなかったわ」
「え!? 母さんはリラを見て何も感じなかったの!?」
「えぇ、前世が私の娘とは思えなかった」
それはリラが前世を思い出していないからではないかと僕は思ったのだが、別の可能性も胸に浮かんでくる。
「リラはもしかして、前世の僕の妹の生まれ変わりじゃないの!?」
自信満々でそれを信じていたが、根拠があったわけではなかった。リラも前世のことは全く覚えていないと答えている。僕は自分が正しいのかどうか、分からなくなってきた。
「リラは違うのかな……」
「あなたのように前世の記憶がないから分からなかっただけかもしれないけど……私は何も感じなかったわ」
「僕には感じたんだよね?」
「あなたは前世の私の息子の生まれ変わりだと強く感じた」
母の証言も合わせていくと、僕の前世の妹は生まれ変わっていないか、リラが思いだしていないので分からないかのようだ。僕はリラが前世の妹だと信じ込んでいただけにショックだった。
「十歳のお誕生日おめでとう。あなたが健康で十歳を迎えられてとても嬉しいわ」
お誕生日は過ぎていたけれど、母は祝ってくれる。
前世では僕は魔力が足りなくて病弱で、熱を出したり寝込んだりしていて、前世の母を心配させていた。
「母さん、ありがとう。前世で母さんの息子として生まれられたことも幸せだけど、今世でリラの他に妹も生まれて、お父さんもできて、今、すごく幸せなんだ」
「よかったわ。リラちゃんのことだけど、もし前世が私の娘でも、思い出さないなら思い出さない方がいいわ。ずっと逃げ続けて、体も弱くて、最後は殺されたなんて、恐ろしい記憶、ないならない方がいいに決まっている」
前世の母も僕と同じ意見だった。
十歳という区切りが来たので僕はずっと聞いてみたいことを口にした。
「前世の僕と妹は何ていう名前だったの?」
前世の記憶は曖昧で、僕は自分の姿も名前も覚えていない。前世の母にそれを聞いてしまうのは酷な気がしたが、区切りをつけるという意味でも、僕は知っておきたかった。
「前世のことを克明に思いだすのはつらいかもしれないと思って、呼ばないようにしていたのよ。あなたはリク、妹はライラよ」
「僕はリク、妹はライラ」
言われてみればそうだった気がしてくる。
前世の母は僕をリクと呼んでいて、妹をライラと呼んでいた。
「思いだしたよ……母さん」
「思いだすのがいいことかどうか、私には分からない。あなたは今世を生きていくのだから」
「前世の記憶も大事だよ。僕にとっては、母さんとの繋がりだからね」
「私のことは忘れて幸せになっていいのよ」
「母さんも一緒に幸せになるんだよ」
前世の母を忘れることなどできない。僕が言えば前世の母は涙ぐんで僕を抱き締めていた。
セイラン様の背中に乗って社に戻ると、リラがレイリ様と一緒に待っていた。
「お兄ちゃんは時々セイラン様と二人きりで出かけるわね」
「そうだけど、悪い?」
「悪くないわ。セイラン様とデートなのよね。私もレイリ様とデートするわ」
前世の母のことはリラには話していないので、リラは僕とセイラン様が僕とどこに行っているのか知らない。デートだと勘違いされているのならば、そのままにしておこう。
「レイリ様、私とデートして」
「今度の休みには二人きりで出かけますか?」
「嬉しい!」
レイリ様におねだりをして了承してもらったリラは大喜びだった。
夏休みが終わると、小学校が再開する。
保護者を呼んでの進路指導で、僕はセイラン様と二人でカルロッタ先生と向き合っていた。
「ラーイくんは小学校を卒業した後にどうするつもりですか?」
「高等学校に進ませようと思っておる」
「それならば、手続きをしなければいけませんね」
向かい合った机の引き出しからカルロッタ先生は高等学校に入学するための資料と申込書を出してセイラン様に渡した。
「ラーイくんの成績ならば、高等学校の授業料は免除されます。授業料免除の手続きの資料も入れていますので、目を通してください」
「リラはどうなる?」
「リラちゃんは授業料を払わなければいけませんね」
僕とリラの成績は違う。僕は成績優秀者に入るが、リラは成績は普通より少しいいくらいだった。
「そうか。一人だけでも授業料免除はありがたいな」
土地神様といってもお金を大量に持っているわけではない。セイラン様が支払いに困らないように授業料免除をもらえるのは誇らしかった。
僕とセイラン様が進路指導室を出ると、入れ替わりにレイリ様とリラが手を繋いで入って行く。
「レイリ、リラの進路、しっかり頼むぞ」
「分かっておりますよ、セイラン兄上」
レイリ様に声をかけてセイラン様は僕を連れて社に戻った。
社ではセイラン様は資料とにらめっこして、入学の申込書を書いていた。魔女の森ではペンが使われるが、この土地は大抵筆と墨が使われる。慣れないペンを握って申込書を書くセイラン様の難しい顔に、僕は申し訳なくなってしまう。
「記入欄がちまちましておって、書きにくいな」
「セイラン様、僕が書きましょうか?」
「いや、私が書く」
申込書をセイラン様が書いていると、レイリ様とリラも戻って来た。
「二年飛び級しているのにそのまま高等学校に入学させてもらえるのはありがたいですね」
そうだった。
レイリ様に言われるまで忘れていたが、僕とリラは二年飛び級しているのだ。それなのにカルロッタ先生はそのまま僕とリラが高等学校に行けるように手続きしてくれるのだ。
「リラが成績優秀で授業料免除をもらえなくてもおかしくなかったよ」
むしろ、リラは二年も先の授業について行って成績が普通よりも上というだけでもすごい。僕は前世の記憶があるし、前世では母が学校に行かせてやりたいと嘆いていたくらいの学力はあったようなので当然だが。
「ラーイは勉強ができてすごいと思っておるぞ」
「僕は……事情があるからです」
「いや、ラーイも二年先の授業を受けておることには変わりはない」
言われて気付いたが、僕が小学校で受けているのは十一歳から十二歳の子どもの授業だ。忘れていたが、僕は既に授業面においては年齢を超えていた。
「あまり実感がわきません」
「自分に自信を持っていいということだ」
セイラン様に褒められるのは誇らしく嬉しいのだが、僕がすごいかどうかはちょっと懐疑的だった。僕には前世の記憶がある。だから勉強はできて当然だと思っていたのだ。
「リラは普通の子なのにすごいです」
「お兄ちゃんだって普通の子だよ」
「僕は……」
全く僕の出自を疑っていないリラだが、僕に前世の記憶があると知ったらどうするのだろう。僕はリラを前世の妹と思っているので、十歳で殺されたような凄惨な前世を思い出させたくないからその話はしていない。
リラが本当に前世の妹ではなかったら、僕の前世の妹はどこにいるのだろうか。
僕のように生まれ変わる方が稀で、僕の前世の妹は生まれ変わらなかったのだろうか。
リラが可愛くてかけがえがないように、僕にとっては前世の妹も大事な存在だった。
前世の妹がリラではないならば、前世の妹は生まれ変わっていないことになる。
生まれ変わった僕と、生まれ変わっていないかもしれない妹。
その差は何なんだろう。
僕は運命というものが分からなくなってきていた。
時刻は夕方になっていたけれど、前世の母は僕が来ると孤児院の庭に出てくれて、話を聞いてくれた。
「母さん、僕、十歳になったよ。前世の年齢を越したんだよ」
「あなたは前世では十歳のお誕生日までしか生きられなかったからね」
「今世のお母さんと、セイラン様とレイリ様とリラとお祝いしたんだよ」
話をしてから僕は思い出す。前世の母にはリラのことはほとんど話したことがない。
「リラは前世の妹が生まれ変わったんだと思うんだけど、何も覚えてないみたいで、つらい記憶を思い出したら可哀想だから連れて来てないんだ」
「え? あなたの双子の妹が前世の私の娘?」
初めて聞いた情報に前世の母は戸惑っている。
「あなたを見たときには間違いなく私の息子が生まれ変わったんだって分かったけど、私とアマリエが戦うのを見てた子よね……あの子には何も感じなかったわ」
「え!? 母さんはリラを見て何も感じなかったの!?」
「えぇ、前世が私の娘とは思えなかった」
それはリラが前世を思い出していないからではないかと僕は思ったのだが、別の可能性も胸に浮かんでくる。
「リラはもしかして、前世の僕の妹の生まれ変わりじゃないの!?」
自信満々でそれを信じていたが、根拠があったわけではなかった。リラも前世のことは全く覚えていないと答えている。僕は自分が正しいのかどうか、分からなくなってきた。
「リラは違うのかな……」
「あなたのように前世の記憶がないから分からなかっただけかもしれないけど……私は何も感じなかったわ」
「僕には感じたんだよね?」
「あなたは前世の私の息子の生まれ変わりだと強く感じた」
母の証言も合わせていくと、僕の前世の妹は生まれ変わっていないか、リラが思いだしていないので分からないかのようだ。僕はリラが前世の妹だと信じ込んでいただけにショックだった。
「十歳のお誕生日おめでとう。あなたが健康で十歳を迎えられてとても嬉しいわ」
お誕生日は過ぎていたけれど、母は祝ってくれる。
前世では僕は魔力が足りなくて病弱で、熱を出したり寝込んだりしていて、前世の母を心配させていた。
「母さん、ありがとう。前世で母さんの息子として生まれられたことも幸せだけど、今世でリラの他に妹も生まれて、お父さんもできて、今、すごく幸せなんだ」
「よかったわ。リラちゃんのことだけど、もし前世が私の娘でも、思い出さないなら思い出さない方がいいわ。ずっと逃げ続けて、体も弱くて、最後は殺されたなんて、恐ろしい記憶、ないならない方がいいに決まっている」
前世の母も僕と同じ意見だった。
十歳という区切りが来たので僕はずっと聞いてみたいことを口にした。
「前世の僕と妹は何ていう名前だったの?」
前世の記憶は曖昧で、僕は自分の姿も名前も覚えていない。前世の母にそれを聞いてしまうのは酷な気がしたが、区切りをつけるという意味でも、僕は知っておきたかった。
「前世のことを克明に思いだすのはつらいかもしれないと思って、呼ばないようにしていたのよ。あなたはリク、妹はライラよ」
「僕はリク、妹はライラ」
言われてみればそうだった気がしてくる。
前世の母は僕をリクと呼んでいて、妹をライラと呼んでいた。
「思いだしたよ……母さん」
「思いだすのがいいことかどうか、私には分からない。あなたは今世を生きていくのだから」
「前世の記憶も大事だよ。僕にとっては、母さんとの繋がりだからね」
「私のことは忘れて幸せになっていいのよ」
「母さんも一緒に幸せになるんだよ」
前世の母を忘れることなどできない。僕が言えば前世の母は涙ぐんで僕を抱き締めていた。
セイラン様の背中に乗って社に戻ると、リラがレイリ様と一緒に待っていた。
「お兄ちゃんは時々セイラン様と二人きりで出かけるわね」
「そうだけど、悪い?」
「悪くないわ。セイラン様とデートなのよね。私もレイリ様とデートするわ」
前世の母のことはリラには話していないので、リラは僕とセイラン様が僕とどこに行っているのか知らない。デートだと勘違いされているのならば、そのままにしておこう。
「レイリ様、私とデートして」
「今度の休みには二人きりで出かけますか?」
「嬉しい!」
レイリ様におねだりをして了承してもらったリラは大喜びだった。
夏休みが終わると、小学校が再開する。
保護者を呼んでの進路指導で、僕はセイラン様と二人でカルロッタ先生と向き合っていた。
「ラーイくんは小学校を卒業した後にどうするつもりですか?」
「高等学校に進ませようと思っておる」
「それならば、手続きをしなければいけませんね」
向かい合った机の引き出しからカルロッタ先生は高等学校に入学するための資料と申込書を出してセイラン様に渡した。
「ラーイくんの成績ならば、高等学校の授業料は免除されます。授業料免除の手続きの資料も入れていますので、目を通してください」
「リラはどうなる?」
「リラちゃんは授業料を払わなければいけませんね」
僕とリラの成績は違う。僕は成績優秀者に入るが、リラは成績は普通より少しいいくらいだった。
「そうか。一人だけでも授業料免除はありがたいな」
土地神様といってもお金を大量に持っているわけではない。セイラン様が支払いに困らないように授業料免除をもらえるのは誇らしかった。
僕とセイラン様が進路指導室を出ると、入れ替わりにレイリ様とリラが手を繋いで入って行く。
「レイリ、リラの進路、しっかり頼むぞ」
「分かっておりますよ、セイラン兄上」
レイリ様に声をかけてセイラン様は僕を連れて社に戻った。
社ではセイラン様は資料とにらめっこして、入学の申込書を書いていた。魔女の森ではペンが使われるが、この土地は大抵筆と墨が使われる。慣れないペンを握って申込書を書くセイラン様の難しい顔に、僕は申し訳なくなってしまう。
「記入欄がちまちましておって、書きにくいな」
「セイラン様、僕が書きましょうか?」
「いや、私が書く」
申込書をセイラン様が書いていると、レイリ様とリラも戻って来た。
「二年飛び級しているのにそのまま高等学校に入学させてもらえるのはありがたいですね」
そうだった。
レイリ様に言われるまで忘れていたが、僕とリラは二年飛び級しているのだ。それなのにカルロッタ先生はそのまま僕とリラが高等学校に行けるように手続きしてくれるのだ。
「リラが成績優秀で授業料免除をもらえなくてもおかしくなかったよ」
むしろ、リラは二年も先の授業について行って成績が普通よりも上というだけでもすごい。僕は前世の記憶があるし、前世では母が学校に行かせてやりたいと嘆いていたくらいの学力はあったようなので当然だが。
「ラーイは勉強ができてすごいと思っておるぞ」
「僕は……事情があるからです」
「いや、ラーイも二年先の授業を受けておることには変わりはない」
言われて気付いたが、僕が小学校で受けているのは十一歳から十二歳の子どもの授業だ。忘れていたが、僕は既に授業面においては年齢を超えていた。
「あまり実感がわきません」
「自分に自信を持っていいということだ」
セイラン様に褒められるのは誇らしく嬉しいのだが、僕がすごいかどうかはちょっと懐疑的だった。僕には前世の記憶がある。だから勉強はできて当然だと思っていたのだ。
「リラは普通の子なのにすごいです」
「お兄ちゃんだって普通の子だよ」
「僕は……」
全く僕の出自を疑っていないリラだが、僕に前世の記憶があると知ったらどうするのだろう。僕はリラを前世の妹と思っているので、十歳で殺されたような凄惨な前世を思い出させたくないからその話はしていない。
リラが本当に前世の妹ではなかったら、僕の前世の妹はどこにいるのだろうか。
僕のように生まれ変わる方が稀で、僕の前世の妹は生まれ変わらなかったのだろうか。
リラが可愛くてかけがえがないように、僕にとっては前世の妹も大事な存在だった。
前世の妹がリラではないならば、前世の妹は生まれ変わっていないことになる。
生まれ変わった僕と、生まれ変わっていないかもしれない妹。
その差は何なんだろう。
僕は運命というものが分からなくなってきていた。
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