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転生したらまた魔女の男子だった件

28.小学校での生活

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 魔女の森の学校に行くようになってから、僕もリラも毎日お乳を必要とはしなくなった。お乳が必要になるのは魔女の森の学校が休みの日だけである。魔女の森の空気や食材は魔力に満ちているので、学校で魔女の森で過ごして、給食を食べて帰った日はお乳がいらないのだ。
 お乳を飲む日が減って、セイラン様もレイリ様も安心しているようだった。

 僕もリラも順調に大きくなっていた。
 僕よりリラの方が少し体が大きい気がするが、同じくらいの大きさで、服が色違いなので僕とリラは双子だとすぐに分かる。

 魔女の森の学校でも僕とリラに関しては、クラスの他の子から言われた。

「すごいししゅうのふくをきてるのね」
「まほうがたくさんかかっているわ」
「ラーイくんとリラちゃんは、おかあさんにまもられているのね」

 こんなに刺繍の緻密に入った服を着ているのは、僕とリラくらいだ。普段着でも僕とリラの服には刺繍がしっかりと入っていた。母は僕とリラを守りたいと、一針一針大事に縫ってくれたのだ。
 そのことを思い知って母に感謝する。

 ヘルミーナ先生は僕が魔女の森の小学校に通うことになったので、全校生徒を前に説明を行っていた。

「魔女の森には女性ばかりですが、魔女の森を出ると男性もいます。女性は大きくなると胸が膨らみますが、男性は足の間に男性の印があります。その印はとても大事なものなので、見せたり、見ようとしたり、触らせたり、触ろうとしたりしてはいけません。女性の下着で隠れる場所と口も、他人に触らせてはいけません」

 とても大事な授業なので、集められた全校生徒が真剣に聞いていた。

「ラーイくんはおおきくなっても、むねはおおきくならないのね」
「おんなのひとでも、むねはおおきくないひとはいるわ」
「あしのあいだに、おとこのこのしるしがあるんだって」
「どんなものなのかしら」

 クラスに戻ると興味津々で女の子たちに囲まれてしまったが、リラが僕の前に立って両腕を広げて僕を庇ってくれる。

「だいじなところなのー! みちゃだめなのー! ひっぱっちゃだめなのー!」

 自分が引っ張ろうとしてセイラン様とレイリ様に言われたことを覚えていたようだ。

「そうだったわ、せんせいにおこられちゃう」
「ラーイくん、ごめんね」
「リラちゃん、さわったりしないわよ」

 女の子たちも納得して僕から離れてくれた。
 僕のためだけに小学校には男子用のお手洗いができた。
 それまでは職員用のお手洗いを使っていたので、僕は男子用のお手洗いができてほっとした。
 女子用のお手洗いは広い部屋に何個も個室が並んでいるが、男子用のお手洗いは一人用で、個室と手を洗う場所が用意されていた。
 職員用のお手洗いでは遠くて間に合わなくなる可能性もあったので、教室の近くにできた男子用のお手洗いを僕は使わせてもらった。

「お手洗いが近い教室を使えるように、ラーイくんのいるクラスは六年生までこの教室を使うことになりました」

 僕のために学校側も配慮してくれていた。
 僕はずっとお手洗いに近い教室で授業を受けられる。
 それはとてもありがたいことだった。

 給食がトマトソースのパスタで、僕もリラもシャツを盛大にトマトソースで汚してしまったことがあった。
 リラはその場で着替えていたが、僕は女の子の中で服を脱ぐのを躊躇っていた。
 それに気付いてくれたヘルミーナ先生が、僕を男子用のお手洗いに連れて行ってくれた。

「手を洗う場所で着替えたらいいですよ」
「ありがとうございます」

 男子用のお手洗いが個室だけでなく手を洗う場所も広く取られている理由が、僕にも理解できた。ここは僕用の更衣室としても使われるのだ。トイレに失敗して濡らしてしまったときもここで着替えればいい。
 女の子の目を引かずに着替えられるということは、僕を安心させた。

 リラは何とか脱がずに用を足そうとしているが、ズボンやパンツや靴下を濡らしてしまうことも少なくなかった。
 教室の端でリラが着替えていると、女の子たちが集まってくる。僕はリラがいじめられていないか心配だったけれど、女の子たちの思惑は違っていた。

「みんなにみられたらはずかしいでしょう」
「わたしたちがかべになってるから、そのあいだにきがえたらいいよ」
「ありがとう、みんな」

 座ってパンツやズボンや靴下をはくリラは、どうしても時間がかかってしまう。その間下半身丸出しになっているのをみんなに見られないように、クラスの女の子たちは壁になって守ってくれていた。
 まだ五歳ということで、リラも僕もクラスの女の子たちは可愛がってくれているようだ。
 正直、僕は生まれ変わっているので中身は十歳なのだが、六歳や七歳の子たちが僕を可愛がってくれるというのは嫌ではない。

 社に帰ると、リラと僕で並んで宿題をする。
 リラは文字の練習からで、計算はまだ全然できないけれど、僕は答えが二桁になる計算をしていた。二桁同士の計算もできるのだが、今与えられた勉強を馬鹿にしていたらすぐについて行けなくなるのは分かっていた。
 リラの隣りに座って、僕は真剣に計算の答えを書いて、見直しもした。

「セイランさま、おえかきのじゅぎょうで、えのぐがいるとヘルミーナせんせいがいっていました」
「絵具か。仕入れて来なければいけないな」
「レイリさま、きょうかしょをよむから、きいていて」
「リラ、お膝へどうぞ」

 来週に必要なものを伝えると、セイラン様は仕入れて来てくれると言ってくれる。
 リラはレイリ様の膝の上に乗って教科書を読み始めていた。魔法の本の内容を教科書にしているリラは、その頁を広げて一生懸命に文字を読む。

「いめが、あるいて、いなした」
「犬が、歩いて、いました、かな」
「あ、これ、『ぬ』か」

 似ている文字は見分けがつかないようでリラは苦戦していたが、一生懸命読んで練習していた。

「セイランさま、つかれました。ねむくなっちゃった……」
「レイリさま、わたしもねむい」

 お昼寝もしていないし、昼間は魔女の森の小学校に通っている僕とリラは夜はすぐに眠くなってしまう。
 晩ご飯を食べ終えて、宿題をしていると、欠伸が出て来る。

「お風呂に入ろうか」
「歯も磨いてから眠りましょうね」

 セイラン様とレイリ様は僕とリラをお風呂に入れてくれる。
 セイラン様とレイリ様は、僕とリラが小さい頃から、お風呂に一緒に入ることはなかった。着流しを着たままでバスルームに立って僕とリラを洗ってくれて、バスタブで温まらせてくれるが、自分が脱ぐことはない。
 お乳をくれるときでも上半身をはだけるが、お乳を飲んだ後は整えて、セイラン様とレイリ様は着流しを僕とリラの前で脱ぐことはない。
 着流しの裾から下着が覗くこともないのだ。鉄壁のガードに僕はこの年になってやっと気付いていた。

「セイランさまとレイリさまはいつおふろにはいっているのですか?」
「ラーイが寝た後に入っておるぞ」
「リラが寝た後に入っていますよ」
「わたしがねたあとに、ぬけだしてたの!?」

 セイラン様とレイリ様は絶対に自分の肌をみだりに見せようとしない。
 それはお二人が白虎族という神族であるからかもしれない。
 神として簡単に体を晒さないのだろう。

「わたし、レイリさまのおっぱい、みたことあるもん」
「リラ、そういうことはおおきなこえでいっちゃダメだよ?」
「ダメなの?」
「レイリさまがはずかしいでしょう?」

 放っておくとリラは学校でもこういうことを言いそうになるので、ここできちんと話をしておかなければいけない。

「ぼくとリラが、セイランさまとレイリさまのおっぱいをのんでいるのは、ぜったいにいっちゃダメなんだよ」
「どうして? ママのおっぱいをのむのはふつうでしょう?」
「セイランさまとレイリさまは、おとこのかたなんだ。おっぱいがでるっていうのは、ないしょにしないといけない」
「おとこのひとは、おっぱいがでないの!?」

 ここからだった。
 リラは男性はおっぱいが出ないということを知らなかった。
 リラにとっては身近にいる男性二人、セイラン様とレイリ様におっぱいが出るので、当然男性もおっぱいが出ると考えていたようだ。

「セイランさまとレイリさまは、びゃっこぞくで、しんぞくだから、とくべつなんだよ。ぼくとリラがまじょで、セイランさまとレイリさまにまほうをかけて、おっぱいがでるようにしたんだ」
「わたしとおにいちゃんが、おっぱいがでるようにしちゃったの?」
「そう。だから、ほかのひとにはいっちゃダメなんだよ」

 一生懸命説明していると、僕は疲れて眠くなってくる。
 リラに僕の言うことは通じただろうか。

 眠くて湯船に沈みそうになっている僕を、セイラン様が抱き上げて身体を拭いてくれた。
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