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セイジはこの世界で最強の魔術師と呼ばれていた。
その才能は十代の頃に認められて、王宮に仕えていたこともある。
それを全て捨てて人里離れた山の中に住み始めたのは、二十三歳のとき。そのときには女遊びも煩わしい権力闘争も面倒くさくなって、ただ静かに余生を過ごしたかった。
その才能故にセイジの人生はあまりにも早く始まりすぎたのだ。
それから六年、セイジは自分の暮らす小屋の前に立ち尽くしていた。
目の前では弟子が泣いている。美しい金髪碧眼に白い肌の美少年なので、色彩が違うのに「お母さんに似たのね」と血縁関係を疑われることがある。セイジにとっては解せないが、弟子とセイジには血縁関係は全くない。六年前にこの山に来たときに拾った……というか、セイジに付いて来てなし崩しに弟子になったのだ。
「イオ……その右手に持っているものはなんだ?」
「師匠、魔王を取り逃がしました……悔しいです」
「だから、その右手に持っているものは……」
美少年の弟子、イオは左手で褐色の肌に緩やかに波打つ艶やかな黒髪、金色の瞳のとても美しい女性を引っ張っている。それはいい。それはいいのだが、問題は右手に持っているものだ。
びくびくと蠢く褐色の肌の腕。断面から見て明らかにもぎ取ったものだと分かる。
「これだけ残して、魔王は逃げました!」
「こっちに近付けるな!」
ぐいぐいともぎ取った腕を押し付けられそうになってセイジは一歩下がる。下がったところに玄関の石段があって躓いて転ぶセイジ。頭を打って意識が遠くなりながら、弟子との出会いを思い出していた。
イオは山に捨てられた子どもだった。
出会ったときにはまだ六歳で幼く小さく、魔物に襲われているのだとセイジは駆け付けた。周囲にはカラスが飛び交い、イオの前には漆黒の毛皮を纏ったブラックベアが威嚇するように身を低くしていた。
「危ない!」
駆け寄ってイオを抱き締めたところで、セイジは小さな体に隠れていたブラックベアの巨大な姿をようやくきちんと見た。ブラックベアの腕が妙な方向に捩じれている。
「こわいのですー! おおきなクマさんが、おそってきたのですー!」
ブラックベアの血で濡れた手を拭いながら言うイオは、金髪碧眼の美しい男の子だ。何か近付いてはいけないものをセイジはそのときに感じ取っていた。手負いの獣は厄介だというが、ブラックベアは片腕を捩じられて痛みにもがき苦しんでいる。威嚇の声に聞こえたのは痛みに悶絶する声だった。
「これ、お前がやったのか?」
「クマさんがおそってこようとしたのです。イオはわるくありません」
けろりとして言うイオに、セイジは全力で逃げた。
イオは全力で追って来た。
小屋のドアを閉めて入れないように魔術で結界を張ろうとしても、ドアごともぎ取ってイオは入って来る。そして可愛い顔で言うのだ。
「おなかがすいたのです」
世界最強の魔術師はセイジのはずだった。それなのに、イオはそれを超える未知の能力を持っている。恐ろしさに抗うことができずに、セイジはイオを弟子にした。この未知の腕力や能力を自覚のないまま扱うことの危険さをセイジは察していた。
弟子にして六年目で、イオは十二歳になっていた。
「人々から聖女を奪って、世界を闇に陥れようとしている魔王がいると聞きました」
「誰から聞いた?」
「行商のおばさんからです」
魔王がこの世界にいるのは知っているが、セイジにとっては大した存在ではないので放っておいた。聖女が攫われたのもセイジが生まれる前のことで、セイジが王宮にいた時代にはもう聖女の存在はそこになかった。
過去に攫われた聖女に興味もなかったし、魔王は悪事を行うといっても、手下を魔族の領域から送り込んで人々を襲うくらいで、それも大抵は冒険者や騎士に撃退されている。大した存在ではないとセイジはどうでもいいと思っていた。
「魔王を倒しに行ってきます」
魔王を倒すために弟子が独り立ちするならば、それはそれでいいことなのだろう。正直御しきれないこの弟子に、セイジは情はわいていたが、疲れてもいた。
「あぁ、行ってこい」
「お弁当を作ってください」
「魔王退治に弁当が?」
「お腹が空きます!」
主張されて渋々お弁当を作るのもいつものことだ。この弟子は自分では料理をしないくせに舌が肥えていて、ものすごく食いしん坊なのだ。舌を肥えさせたのはセイジでもあるからその点では何も言えない。
お弁当を持って意気揚々と出て行った弟子に、安心してこれからの一人暮らしをセイジは考えていた。
魔王を倒した弟子は勇者として人々に迎えられるだろう。そうなればセイジはもう弟子のイオに関わることもない。当初計画していたひっそりとした隠居が叶う日が来たのだ。
それなのに、弟子は半日で帰って来た。
右手にもぎ取った魔王の腕を握り締め、左手で美しい女性の手を握って。
もぎ取った腕は返して来いと言ってもイオは聞かなかった。
「すり潰します!」
「いやいやいや」
弟子が意気揚々と魔王退治に出かけて、戻って来たと思ったら魔王の腕はもぎ取ったが仕留め損ねたと悔しがって泣いているし、魔王の腕はびくびくと蠢いている。
はっきり言って怖い。
世界最強の魔術師すら怖がらせるこの光景に、腕を返して来いと言っても、イオは頑として聞かない。
「すり潰して再生不可能にします」
「魔王ってそんなに酷いことしたか?」
「力のない人々を襲っています。力のある相手からは逃げて」
「卑怯者だとは思うが、そこまでやるか?」
説得するつもりでイオに言えば、イオはまだあどけなさの残る丸い頬を膨らませていた。
とりあえず魔王の腕は呪符でぐるぐる巻きにして封印する。封印が終わると、見えない場所に置いておいて、セイジは連れて来られた女性に向き合った。
かなりの長身で緩やかに波打つ長く艶やかな黒髪を腰まで伸ばして、褐色の肌にアーモンド形の金色の目が特徴的なふっくらとした唇の美女である。
「弟子のイオが失礼したな。俺はセイジ。あなたは?」
「私はカマルと申します」
柔らかく響く心地よい声にセイジはじっとその女性を見つめてしまう。着ているのは豪奢だが優しい雰囲気のその女性、カマルに似合わないオーガンジーとフリルの華美すぎるドレスだし、豊かな胸の谷間にはきらきらと輝くアメジストのネックレスが下がっている。ドレスと不似合いなネックレスに目を向けると、困ったようにカマルが目を伏せてアメジストのネックレスを握り締めた。
「私は……」
「聖女様なのです! イオはちゃんと聖女様を助けて来たのですよ! 師匠、それは評価してください。今夜はご馳走ですよね?」
「聖女……?」
胸を張って誇らし気な顔のイオの物言いにセイジは引っかかりを感じた。
聖女ならばセイジが生まれる前に攫われているので、セイジの倍は年齢がないとおかしいはずである。神のご加護によって多少老いが遅いとしても、セイジと年の変わらないようなカマルが聖女のはずはない。
「失礼ですがご年齢は?」
「私は三十です……私は聖女ではありません」
「間違いなく聖女様なのです! 神々しさと、魔王からイオを庇ってくれたことから分かるのです。さぁ、ご馳走、ご馳走!」
豪華な食事を求めて小屋の中に入っていくイオに、カマルが「あ」と声を上げて止めたが、イオは全くひとの話を聞かない。修行中もそうだったが、とにかくイオは思い込みが激しく、ひとの話を聞かないのだ。
「私は、魔王の異母姉なのです」
「異母姉!?」
「前魔王が捕らえた聖女を穢して、孕ませました。聖女は私を産んで死んだと聞いています」
その後に別の魔族との間に生まれたのが今の魔王だとカマルは話す。
「ということは、あなたは、魔族!?」
「はい……」
聖女と魔王の間に生まれたカマルは魔王の異母姉で、魔族だった。
「生まれてからずっと魔王に閉じ込められていました。魔王は姉として私を大事にするのですが……私は自由になりたかった……。イオ様を庇ったのではなくて、魔王と共に殺されようと思ったのです」
死んで自由になりたかったというカマルの憂い顔に、セイジは目が離せない。
この胸の高鳴りが何なのか、セイジにはまだ分かっていなかった。
その才能は十代の頃に認められて、王宮に仕えていたこともある。
それを全て捨てて人里離れた山の中に住み始めたのは、二十三歳のとき。そのときには女遊びも煩わしい権力闘争も面倒くさくなって、ただ静かに余生を過ごしたかった。
その才能故にセイジの人生はあまりにも早く始まりすぎたのだ。
それから六年、セイジは自分の暮らす小屋の前に立ち尽くしていた。
目の前では弟子が泣いている。美しい金髪碧眼に白い肌の美少年なので、色彩が違うのに「お母さんに似たのね」と血縁関係を疑われることがある。セイジにとっては解せないが、弟子とセイジには血縁関係は全くない。六年前にこの山に来たときに拾った……というか、セイジに付いて来てなし崩しに弟子になったのだ。
「イオ……その右手に持っているものはなんだ?」
「師匠、魔王を取り逃がしました……悔しいです」
「だから、その右手に持っているものは……」
美少年の弟子、イオは左手で褐色の肌に緩やかに波打つ艶やかな黒髪、金色の瞳のとても美しい女性を引っ張っている。それはいい。それはいいのだが、問題は右手に持っているものだ。
びくびくと蠢く褐色の肌の腕。断面から見て明らかにもぎ取ったものだと分かる。
「これだけ残して、魔王は逃げました!」
「こっちに近付けるな!」
ぐいぐいともぎ取った腕を押し付けられそうになってセイジは一歩下がる。下がったところに玄関の石段があって躓いて転ぶセイジ。頭を打って意識が遠くなりながら、弟子との出会いを思い出していた。
イオは山に捨てられた子どもだった。
出会ったときにはまだ六歳で幼く小さく、魔物に襲われているのだとセイジは駆け付けた。周囲にはカラスが飛び交い、イオの前には漆黒の毛皮を纏ったブラックベアが威嚇するように身を低くしていた。
「危ない!」
駆け寄ってイオを抱き締めたところで、セイジは小さな体に隠れていたブラックベアの巨大な姿をようやくきちんと見た。ブラックベアの腕が妙な方向に捩じれている。
「こわいのですー! おおきなクマさんが、おそってきたのですー!」
ブラックベアの血で濡れた手を拭いながら言うイオは、金髪碧眼の美しい男の子だ。何か近付いてはいけないものをセイジはそのときに感じ取っていた。手負いの獣は厄介だというが、ブラックベアは片腕を捩じられて痛みにもがき苦しんでいる。威嚇の声に聞こえたのは痛みに悶絶する声だった。
「これ、お前がやったのか?」
「クマさんがおそってこようとしたのです。イオはわるくありません」
けろりとして言うイオに、セイジは全力で逃げた。
イオは全力で追って来た。
小屋のドアを閉めて入れないように魔術で結界を張ろうとしても、ドアごともぎ取ってイオは入って来る。そして可愛い顔で言うのだ。
「おなかがすいたのです」
世界最強の魔術師はセイジのはずだった。それなのに、イオはそれを超える未知の能力を持っている。恐ろしさに抗うことができずに、セイジはイオを弟子にした。この未知の腕力や能力を自覚のないまま扱うことの危険さをセイジは察していた。
弟子にして六年目で、イオは十二歳になっていた。
「人々から聖女を奪って、世界を闇に陥れようとしている魔王がいると聞きました」
「誰から聞いた?」
「行商のおばさんからです」
魔王がこの世界にいるのは知っているが、セイジにとっては大した存在ではないので放っておいた。聖女が攫われたのもセイジが生まれる前のことで、セイジが王宮にいた時代にはもう聖女の存在はそこになかった。
過去に攫われた聖女に興味もなかったし、魔王は悪事を行うといっても、手下を魔族の領域から送り込んで人々を襲うくらいで、それも大抵は冒険者や騎士に撃退されている。大した存在ではないとセイジはどうでもいいと思っていた。
「魔王を倒しに行ってきます」
魔王を倒すために弟子が独り立ちするならば、それはそれでいいことなのだろう。正直御しきれないこの弟子に、セイジは情はわいていたが、疲れてもいた。
「あぁ、行ってこい」
「お弁当を作ってください」
「魔王退治に弁当が?」
「お腹が空きます!」
主張されて渋々お弁当を作るのもいつものことだ。この弟子は自分では料理をしないくせに舌が肥えていて、ものすごく食いしん坊なのだ。舌を肥えさせたのはセイジでもあるからその点では何も言えない。
お弁当を持って意気揚々と出て行った弟子に、安心してこれからの一人暮らしをセイジは考えていた。
魔王を倒した弟子は勇者として人々に迎えられるだろう。そうなればセイジはもう弟子のイオに関わることもない。当初計画していたひっそりとした隠居が叶う日が来たのだ。
それなのに、弟子は半日で帰って来た。
右手にもぎ取った魔王の腕を握り締め、左手で美しい女性の手を握って。
もぎ取った腕は返して来いと言ってもイオは聞かなかった。
「すり潰します!」
「いやいやいや」
弟子が意気揚々と魔王退治に出かけて、戻って来たと思ったら魔王の腕はもぎ取ったが仕留め損ねたと悔しがって泣いているし、魔王の腕はびくびくと蠢いている。
はっきり言って怖い。
世界最強の魔術師すら怖がらせるこの光景に、腕を返して来いと言っても、イオは頑として聞かない。
「すり潰して再生不可能にします」
「魔王ってそんなに酷いことしたか?」
「力のない人々を襲っています。力のある相手からは逃げて」
「卑怯者だとは思うが、そこまでやるか?」
説得するつもりでイオに言えば、イオはまだあどけなさの残る丸い頬を膨らませていた。
とりあえず魔王の腕は呪符でぐるぐる巻きにして封印する。封印が終わると、見えない場所に置いておいて、セイジは連れて来られた女性に向き合った。
かなりの長身で緩やかに波打つ長く艶やかな黒髪を腰まで伸ばして、褐色の肌にアーモンド形の金色の目が特徴的なふっくらとした唇の美女である。
「弟子のイオが失礼したな。俺はセイジ。あなたは?」
「私はカマルと申します」
柔らかく響く心地よい声にセイジはじっとその女性を見つめてしまう。着ているのは豪奢だが優しい雰囲気のその女性、カマルに似合わないオーガンジーとフリルの華美すぎるドレスだし、豊かな胸の谷間にはきらきらと輝くアメジストのネックレスが下がっている。ドレスと不似合いなネックレスに目を向けると、困ったようにカマルが目を伏せてアメジストのネックレスを握り締めた。
「私は……」
「聖女様なのです! イオはちゃんと聖女様を助けて来たのですよ! 師匠、それは評価してください。今夜はご馳走ですよね?」
「聖女……?」
胸を張って誇らし気な顔のイオの物言いにセイジは引っかかりを感じた。
聖女ならばセイジが生まれる前に攫われているので、セイジの倍は年齢がないとおかしいはずである。神のご加護によって多少老いが遅いとしても、セイジと年の変わらないようなカマルが聖女のはずはない。
「失礼ですがご年齢は?」
「私は三十です……私は聖女ではありません」
「間違いなく聖女様なのです! 神々しさと、魔王からイオを庇ってくれたことから分かるのです。さぁ、ご馳走、ご馳走!」
豪華な食事を求めて小屋の中に入っていくイオに、カマルが「あ」と声を上げて止めたが、イオは全くひとの話を聞かない。修行中もそうだったが、とにかくイオは思い込みが激しく、ひとの話を聞かないのだ。
「私は、魔王の異母姉なのです」
「異母姉!?」
「前魔王が捕らえた聖女を穢して、孕ませました。聖女は私を産んで死んだと聞いています」
その後に別の魔族との間に生まれたのが今の魔王だとカマルは話す。
「ということは、あなたは、魔族!?」
「はい……」
聖女と魔王の間に生まれたカマルは魔王の異母姉で、魔族だった。
「生まれてからずっと魔王に閉じ込められていました。魔王は姉として私を大事にするのですが……私は自由になりたかった……。イオ様を庇ったのではなくて、魔王と共に殺されようと思ったのです」
死んで自由になりたかったというカマルの憂い顔に、セイジは目が離せない。
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