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魔女(男)とこねこ(虎)たん 3
141.呪いの元凶
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エヴェリーナの来訪で分かったことは、魔女の森のほとんどの魔女たちが子の呪いに気付いていて、呪いが解けることを望んでいるということだった。それだけでも伝えに来てくれたエヴェリーナにアデーラは感謝する。
しかし、引っかかっていることもあった。
アデーラが魔女の森の自分の家に捕らえられたときに、エディタを操っていた存在だ。アデーラを無理やりに魔女の森に戻そうとしたその存在と、アデーラとレオシュを結び付けようとする存在は、全く別物に違いなかった。
エリシュカやブランカですら解けないエディタの結界を抜けてレオシュはアデーラの元に来られたし、エディタの魔法もレオシュを傷付けることはなかった。
過去をどれだけ思い出しても、レオシュははぐれの魔女に攻撃されかけたこともあったが、魔法で害されたことがない。レオシュの身につけていた宝石のおかげだったのかと分かると、アデーラも納得がいった。
「レオシュは、私の運命……」
最初からレオシュはアデーラに引き寄せられるように魔女の森にやってきた。獣人の国から魔女の森まではかなりの距離があって、1歳半の幼児が一人で来られるはずがないのに、レオシュはそれを成し遂げた。
そこに何者かの意志が入っていたのならば、レオシュがアデーラの元に来られたのも理解できる。
「運命には違いないけど、私がママを愛したのは、私の意志だよ」
「私も、レオシュと共に暮らして、レオシュが育っていくのを見て行くうちで愛しいと思うようになった」
始めは誰かの意志が入っていたかもしれないが、レオシュがアデーラを愛したことと、アデーラがレオシュを誰よりも可愛いと思っていることは、その後の長い時間をかけて育んだ関係性だった。そこには誰の意志も入っていない。
「きっかけを与えてくれたひとには感謝するけど、私は自分でママを選んだんだからね」
「分かってる。レオシュと過ごした時間が私にとってはかけがえのない大事な時間だったよ」
まだこれが恋愛感情かどうか分からないのは、アデーラにも魔女の森の呪いがかかっているからだろう。アデーラはこの呪いを解いてしまわなくてはいけない。
「レオシュ、私たちが魔女の森に行かなければいけない気がするんだ」
「分かるよ。ママは特別な男の魔女。私は獣人の国の王家の血を引くもの」
アデーラとレオシュが話していると、ダーシャとルカーシュが会話に加わる。
「二人だけで行かせるわけがないでしょう。アデーラは刺繍で守護の魔法は天下一だけど、攻撃が全くできないんだからね」
「僕も王家の血を引くものとして、レオシュを一人だけで行かせるわけにはいかない」
ダーシャとルカーシュも心は決まっているようだ。
アデーラとダーシャは、レオシュとルカーシュを連れてエリシュカとブランカの家を訪ねた。エリシュカとブランカは来訪を知っていたようだ。
「待っていたよ、アデーラ、ダーシャ、レオシュ、ルカーシュ」
「そろそろ来る頃だと思っていたわ」
エリシュカはルカーシュの手に緑がかった宝石を乗せた。フベルトのポーチの裏に十年以上縫い付けられていて、最近返してもらった王家に伝わる歴史ある宝石。
「これを持って魔女の森の一番奥の老木に向かうといい」
「私たちでは鍵は開けられなかった。それでも、宝石が反応しているのは分かったわ」
エディタが近くを通ったときに操られてしまったという魔女の森の一番奥の老木。そこに何かあるようだ。そこまではエリシュカもブランカも掴んでいたが、それ以上先に進むことはできなかったようだ。
「やはり、王家の血がなければ扉は開かれないということ?」
「あたしたちも一緒に行くよ」
「魔女の妨害があるかもしれないわ」
上の世代の魔女がどこまでエリシュカとブランカの掴んだことを知っているのかは分からない。ただ、アデーラには一つだけ言うことができた。
「エヴェリーナ曾お祖母様が私たちのところに来たんだ。曾お祖母様も、魔女の森の異常さに気付いていた」
「エヴェリーナお祖母様がかい?」
上の世代の魔女が妨害してくるのだとばかり思っていたが、そうではないのかもしれない。元凶は他にあるのかもしれないと告げるアデーラに、エリシュカが表情を険しくする。
「行ってみるしかないだろうね」
何が起こるか分からない。それでも、これ以上調べることも尽きてしまった。
アデーラとダーシャはレオシュとルカーシュを連れて、エリシュカとブランカと共に魔女の森の一番奥の老木の元に向かうことにした。歩いているうちに濃い霧があたりに充満して、視界が悪くなってくる。
魔女の森の奥の老木の辺りには、ほとんどひとが住まず、木々も荒れて道もなく、薄気味悪い雰囲気だった。木々の枝を刈り、草を踏み分けて老木に近寄ると、そばに立っている人物がいる。
「エヴェリーナ曾お祖母様」
見知った顔だとアデーラがホッとして声をかけた瞬間、エヴェリーナの手から閃光が放たれた。エヴェリーナの紫のはずの目が、赤く燃えるように光っている。
「アデーラ、ダーシャ、レオシュとルカーシュを連れて行くんだ」
「ここは私たちがなんとかするわ」
完全に味方だと思っていたエヴェリーナを、何者かが操っている。エヴェリーナほどの魔女も操れるような相手が敵なのだと理解すると、アデーラは空恐ろしくなってくる。
レオシュがアデーラの手を引いて走り出した。ダーシャもルカーシュの手を引いて走っている。
「侵入者を発見……ここは通さない」
「あんたの相手はあたしたちだよ!」
「アデーラ、ダーシャ、行きなさい!」
幾つもの魔法の閃光が飛び交っているのが分かる。エヴェリーナ相手ではエリシュカもブランカも長くは持たないだろう。
走った先に辿り着いた老木にアデーラはぞっとした。
今まで間近で見たことがなかったが、老木は表面に蝋が塗られたようになっていて、滑るそれが人間の肌と非常に似ている。
「ママ、ここ光ってる?」
「え?」
レオシュの声にアデーラが視線を下に落とした瞬間、足元の土が消えた。絡み合う老木の根っこも消えて、アデーラは吸い込まれるように落ちていく。途中でレオシュがアデーラにしがみ付いて来て、アデーラは必死にレオシュを抱き締めていた。
最初は筒のような狭い空間だったが、滑り落ちていくにつれてだんだんと広くなっている。
最終的にはドーム状の天井のある広い空間にアデーラとレオシュは落ちて行った。
「アデーラ、手を伸ばして!」
「ダーシャ!」
レオシュを片腕で抱いたまま、アデーラは一緒に落ちて来たダーシャに手を伸ばす。ダーシャの指先に指が触れた瞬間、ルカーシュを抱き締めているダーシャと共に、落下速度が遅くなった。
ふわりとアデーラが落ちたのは頭上に木の根のドームがあって、足元は大理石のようなつるつるの場所だった。中央に棺のようなものが置かれている。
恐る恐る近寄ると、棺の中には大量の木の根のようなものに浸食された女性が眠っていた。
アデーラはこの顔を見たことがある。ダーシャも同じくすぐに気付いたようだった。
「ブランカ母さん?」
「違うけど、ブランカ母さんにそっくりだ……」
魔女はずっとコピーを産んで来ている。ブランカのオリジナルが彼女だとすれば、ブランカの血筋にアデーラが生まれたことに何の不思議もなかった。
「生きているの?」
「多分、生かされているんだと思う」
アデーラに抱き締められながら恐る恐る棺の中を覗き込んだレオシュに、アデーラが答えると、レオシュの水色の目が潤む。
「千年以上も生かされているのか……」
ルカーシュの言葉には重みがあった。それはルカーシュが千年以上前の記録を王家の保管庫で見て来たからだろう。
『やっと、来てくれた……』
『邪魔者は排除しなければ』
二つの重なる声がドームの中に響いて、アデーラは混乱する。同じ声なのに、全く違うことを言っている。
『お願い、もう、終わりにして……』
『魔女の森は永遠に続かなければいけない。私が犠牲になった意味がない!』
魔法のかかった宝石でアデーラたちを導いてここに連れて来た存在と、アデーラを妨害していた存在は同じものだった。
千年以上のときを無理やりに生命だけ繋いで生きさせられて、人格が二つに分裂してしまったのだろう。
『助けて』
『お前たちは私の敵!』
響き渡る二つの声と共に、ドームが揺らいでいるのが分かる。攻撃して来ようとする木の根を、レオシュが素早くポーチから取り出した短剣で弾き、ダーシャが魔法で焼いてしまう。
『私は魔女の母体にさせられた。全ての魔法使いの娘を産まされて、魔女の森の核にさせられた』
『魔女など滅べばいい! 憎い! 憎い! 憎い!』
『助けに来てくれると約束したわよね……』
『決して誰もこの呪いを解くことは許さない! 魔女は滅ぶのだ!』
『お願い、私を終わらせて』
『魔女の森が終わるまで、このシステムは維持される!』
二つの同じ声が訴えかけてくる。
曰く、獣人の国に嫁ぐはずだった魔女は、全ての魔女の母体となるために、存在する全ての魔法使いの子どもを産まされた。生まれて来た子どもは全て女の子で、その女の子を始まりの魔女として、コピーをするシステムが出来上がった。
自分たちの魔力が落ちないように、他の血を入れずに魔女だけで生きて行こうとする歪んだシステムの犠牲者に彼女はなった。
そのままそのシステムを維持する核として千年以上死んだような状態で生かされていたという彼女。
「終わらせてあげたい。ママ、あまりにも可哀想だよ!」
レオシュの言葉に、アデーラはポーチの中に入っている短剣を思い出した。リリアナが使っていたという女性用の短剣。
あれが手渡されたときに、アデーラの役目は決まっていたのかもしれない。
「終わらせてあげようね」
この呪いと共に。
アデーラはポーチから短剣を取り出した。
しかし、引っかかっていることもあった。
アデーラが魔女の森の自分の家に捕らえられたときに、エディタを操っていた存在だ。アデーラを無理やりに魔女の森に戻そうとしたその存在と、アデーラとレオシュを結び付けようとする存在は、全く別物に違いなかった。
エリシュカやブランカですら解けないエディタの結界を抜けてレオシュはアデーラの元に来られたし、エディタの魔法もレオシュを傷付けることはなかった。
過去をどれだけ思い出しても、レオシュははぐれの魔女に攻撃されかけたこともあったが、魔法で害されたことがない。レオシュの身につけていた宝石のおかげだったのかと分かると、アデーラも納得がいった。
「レオシュは、私の運命……」
最初からレオシュはアデーラに引き寄せられるように魔女の森にやってきた。獣人の国から魔女の森まではかなりの距離があって、1歳半の幼児が一人で来られるはずがないのに、レオシュはそれを成し遂げた。
そこに何者かの意志が入っていたのならば、レオシュがアデーラの元に来られたのも理解できる。
「運命には違いないけど、私がママを愛したのは、私の意志だよ」
「私も、レオシュと共に暮らして、レオシュが育っていくのを見て行くうちで愛しいと思うようになった」
始めは誰かの意志が入っていたかもしれないが、レオシュがアデーラを愛したことと、アデーラがレオシュを誰よりも可愛いと思っていることは、その後の長い時間をかけて育んだ関係性だった。そこには誰の意志も入っていない。
「きっかけを与えてくれたひとには感謝するけど、私は自分でママを選んだんだからね」
「分かってる。レオシュと過ごした時間が私にとってはかけがえのない大事な時間だったよ」
まだこれが恋愛感情かどうか分からないのは、アデーラにも魔女の森の呪いがかかっているからだろう。アデーラはこの呪いを解いてしまわなくてはいけない。
「レオシュ、私たちが魔女の森に行かなければいけない気がするんだ」
「分かるよ。ママは特別な男の魔女。私は獣人の国の王家の血を引くもの」
アデーラとレオシュが話していると、ダーシャとルカーシュが会話に加わる。
「二人だけで行かせるわけがないでしょう。アデーラは刺繍で守護の魔法は天下一だけど、攻撃が全くできないんだからね」
「僕も王家の血を引くものとして、レオシュを一人だけで行かせるわけにはいかない」
ダーシャとルカーシュも心は決まっているようだ。
アデーラとダーシャは、レオシュとルカーシュを連れてエリシュカとブランカの家を訪ねた。エリシュカとブランカは来訪を知っていたようだ。
「待っていたよ、アデーラ、ダーシャ、レオシュ、ルカーシュ」
「そろそろ来る頃だと思っていたわ」
エリシュカはルカーシュの手に緑がかった宝石を乗せた。フベルトのポーチの裏に十年以上縫い付けられていて、最近返してもらった王家に伝わる歴史ある宝石。
「これを持って魔女の森の一番奥の老木に向かうといい」
「私たちでは鍵は開けられなかった。それでも、宝石が反応しているのは分かったわ」
エディタが近くを通ったときに操られてしまったという魔女の森の一番奥の老木。そこに何かあるようだ。そこまではエリシュカもブランカも掴んでいたが、それ以上先に進むことはできなかったようだ。
「やはり、王家の血がなければ扉は開かれないということ?」
「あたしたちも一緒に行くよ」
「魔女の妨害があるかもしれないわ」
上の世代の魔女がどこまでエリシュカとブランカの掴んだことを知っているのかは分からない。ただ、アデーラには一つだけ言うことができた。
「エヴェリーナ曾お祖母様が私たちのところに来たんだ。曾お祖母様も、魔女の森の異常さに気付いていた」
「エヴェリーナお祖母様がかい?」
上の世代の魔女が妨害してくるのだとばかり思っていたが、そうではないのかもしれない。元凶は他にあるのかもしれないと告げるアデーラに、エリシュカが表情を険しくする。
「行ってみるしかないだろうね」
何が起こるか分からない。それでも、これ以上調べることも尽きてしまった。
アデーラとダーシャはレオシュとルカーシュを連れて、エリシュカとブランカと共に魔女の森の一番奥の老木の元に向かうことにした。歩いているうちに濃い霧があたりに充満して、視界が悪くなってくる。
魔女の森の奥の老木の辺りには、ほとんどひとが住まず、木々も荒れて道もなく、薄気味悪い雰囲気だった。木々の枝を刈り、草を踏み分けて老木に近寄ると、そばに立っている人物がいる。
「エヴェリーナ曾お祖母様」
見知った顔だとアデーラがホッとして声をかけた瞬間、エヴェリーナの手から閃光が放たれた。エヴェリーナの紫のはずの目が、赤く燃えるように光っている。
「アデーラ、ダーシャ、レオシュとルカーシュを連れて行くんだ」
「ここは私たちがなんとかするわ」
完全に味方だと思っていたエヴェリーナを、何者かが操っている。エヴェリーナほどの魔女も操れるような相手が敵なのだと理解すると、アデーラは空恐ろしくなってくる。
レオシュがアデーラの手を引いて走り出した。ダーシャもルカーシュの手を引いて走っている。
「侵入者を発見……ここは通さない」
「あんたの相手はあたしたちだよ!」
「アデーラ、ダーシャ、行きなさい!」
幾つもの魔法の閃光が飛び交っているのが分かる。エヴェリーナ相手ではエリシュカもブランカも長くは持たないだろう。
走った先に辿り着いた老木にアデーラはぞっとした。
今まで間近で見たことがなかったが、老木は表面に蝋が塗られたようになっていて、滑るそれが人間の肌と非常に似ている。
「ママ、ここ光ってる?」
「え?」
レオシュの声にアデーラが視線を下に落とした瞬間、足元の土が消えた。絡み合う老木の根っこも消えて、アデーラは吸い込まれるように落ちていく。途中でレオシュがアデーラにしがみ付いて来て、アデーラは必死にレオシュを抱き締めていた。
最初は筒のような狭い空間だったが、滑り落ちていくにつれてだんだんと広くなっている。
最終的にはドーム状の天井のある広い空間にアデーラとレオシュは落ちて行った。
「アデーラ、手を伸ばして!」
「ダーシャ!」
レオシュを片腕で抱いたまま、アデーラは一緒に落ちて来たダーシャに手を伸ばす。ダーシャの指先に指が触れた瞬間、ルカーシュを抱き締めているダーシャと共に、落下速度が遅くなった。
ふわりとアデーラが落ちたのは頭上に木の根のドームがあって、足元は大理石のようなつるつるの場所だった。中央に棺のようなものが置かれている。
恐る恐る近寄ると、棺の中には大量の木の根のようなものに浸食された女性が眠っていた。
アデーラはこの顔を見たことがある。ダーシャも同じくすぐに気付いたようだった。
「ブランカ母さん?」
「違うけど、ブランカ母さんにそっくりだ……」
魔女はずっとコピーを産んで来ている。ブランカのオリジナルが彼女だとすれば、ブランカの血筋にアデーラが生まれたことに何の不思議もなかった。
「生きているの?」
「多分、生かされているんだと思う」
アデーラに抱き締められながら恐る恐る棺の中を覗き込んだレオシュに、アデーラが答えると、レオシュの水色の目が潤む。
「千年以上も生かされているのか……」
ルカーシュの言葉には重みがあった。それはルカーシュが千年以上前の記録を王家の保管庫で見て来たからだろう。
『やっと、来てくれた……』
『邪魔者は排除しなければ』
二つの重なる声がドームの中に響いて、アデーラは混乱する。同じ声なのに、全く違うことを言っている。
『お願い、もう、終わりにして……』
『魔女の森は永遠に続かなければいけない。私が犠牲になった意味がない!』
魔法のかかった宝石でアデーラたちを導いてここに連れて来た存在と、アデーラを妨害していた存在は同じものだった。
千年以上のときを無理やりに生命だけ繋いで生きさせられて、人格が二つに分裂してしまったのだろう。
『助けて』
『お前たちは私の敵!』
響き渡る二つの声と共に、ドームが揺らいでいるのが分かる。攻撃して来ようとする木の根を、レオシュが素早くポーチから取り出した短剣で弾き、ダーシャが魔法で焼いてしまう。
『私は魔女の母体にさせられた。全ての魔法使いの娘を産まされて、魔女の森の核にさせられた』
『魔女など滅べばいい! 憎い! 憎い! 憎い!』
『助けに来てくれると約束したわよね……』
『決して誰もこの呪いを解くことは許さない! 魔女は滅ぶのだ!』
『お願い、私を終わらせて』
『魔女の森が終わるまで、このシステムは維持される!』
二つの同じ声が訴えかけてくる。
曰く、獣人の国に嫁ぐはずだった魔女は、全ての魔女の母体となるために、存在する全ての魔法使いの子どもを産まされた。生まれて来た子どもは全て女の子で、その女の子を始まりの魔女として、コピーをするシステムが出来上がった。
自分たちの魔力が落ちないように、他の血を入れずに魔女だけで生きて行こうとする歪んだシステムの犠牲者に彼女はなった。
そのままそのシステムを維持する核として千年以上死んだような状態で生かされていたという彼女。
「終わらせてあげたい。ママ、あまりにも可哀想だよ!」
レオシュの言葉に、アデーラはポーチの中に入っている短剣を思い出した。リリアナが使っていたという女性用の短剣。
あれが手渡されたときに、アデーラの役目は決まっていたのかもしれない。
「終わらせてあげようね」
この呪いと共に。
アデーラはポーチから短剣を取り出した。
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