潔癖王子の唯一無二

秋月真鳥

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番外編・後日談

束縛王子の結婚式

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 独占欲が強い。
 アレクサンテリの従兄のヴァルネリは、ヨウシアに対するアレクサンテリの様子をそう表した。本当にそうなのか、懐疑的なヨウシアだったが、ヴァルネリの元から引き離して、お礼を言う暇もなく抱き上げて連れて帰るアレクサンテリは、珍しく機嫌が良くないようだった。
 浮気など考えたこともなく、既にアレクサンテリとヨウシアは番で、ヴァルネリもマティアスと番なのだから、何かが起こるはずはない。それでも、アレクサンテリは日も暮れてからヨウシアとヴァルネリが会ったことを快く思っていないようだった。

「ごめんなさい……僕、アレク様のことをお聞きしたくて」
「ヴァルネリは私の従兄だ」
「はい、雰囲気が似ていました」
「似ていたか……私とどっちが……」

 言いかけて口を閉じ、アレクサンテリはさっさと部屋に戻ってバスルームにヨウシアを連れ込んだ。口付けながら脱がされて、アレクサンテリも服を脱いで、熱いシャワーを浴びる。
 泡立てたボディソープで念入りに体を撫で擦られて、ヨウシアは身を捩った。

「アレク様、いけません。明日は結婚式なのに」
「結婚式なのに、無断で外出するヨウシアが悪いのだ」

 怒らせてしまったかとしゅんとするヨウシアを、髪までアレクサンテリは綺麗に洗い上げた。洗い終えると、アレクサンテリがヨウシアの前にペタンと座り込んだ。

「私を洗ってくれないのか?」
「洗わせていただきます」

 甘えるような仕草が年上なのに可愛くて、ヨウシアは手の平でボディソープを泡立てる。白い肌に塗り付けて撫でていくと、アレクサンテリが甘く笑う。

「くすぐったいな」
「もうちょっと強く擦りますか?」
「いや、ヨウシアの可愛い手が気持ちいい」

 目を伏せるアレクサンテリの胸を撫で、尖りに手が触れると、「んんっ」と悩ましい声が漏れて、ヨウシアは唾を飲み込んだ。結婚式は明日に迫っている。アレクサンテリと睦み合った翌日はヨウシアは腰が立たなくなるので、ここ数日は禁欲をしていた。
 反応しかけた中心を前屈みに隠して、出来るだけ意識しないようにしながら、ヨウシアはアレクサンテリの長いアッシュブロンドの髪を洗う。

「アレク様の髪、伸びましたね」
「切られるときに触られるのが嫌で切っていないだけだ。ヨウシアならば切っても良いぞ?」
「こんなにお綺麗な髪なのに勿体ないです」

 指で梳いて、泡で撫でるようにして髪を洗い、頭皮をマッサージすると、目を閉じたアレクサンテリの唇からほぅとため息が漏れた。反応している中心を悟られないようにしたつもりなのに、手を伸ばして、アレクサンテリがそこを撫でる。

「ぴゃっ!?」
「私に触っただけでこんなになったのか?」
「ダメですぅ! 明日は結婚式なのですよ!」

 これ以上続けるつもりならば、別の部屋で寝ると泣けば、涙の伝う頬を舐められて、アレクサンテリが目を細めた。

「それでは、明日は覚悟しておれよ?」
「は、はい」

 結婚式の後には初夜がある。婚約の披露の後も激しく睦み合ったが、結婚式はその比ではないだろう。風呂で互いに洗い合って、アレクサンテリの機嫌も直ったように見えた。
 二人でベッドに入ると、もう眠くて瞼が落ちかけたヨウシアに、髪を撫でながらアレクサンテリが囁く。

「ヴァルネリは私と似ていただろう。もう私がいないときには、会ってはいけないよ」
「どうして……」
「私とヨウシアはいつも一緒だ。外出も私なしではしないで欲しい」

 病弱で痩せて小柄なヨウシアに、何か起きてはいけないと心配されているのかもしれない。大丈夫だと答えようとしても、眠くてうまく口が動かない。
 その後も幾つか言われて、ヨウシアは「はい……」と呟きながら眠りに落ちていった。
 翌日の結婚式は衣装の準備から着替えまで、二人でした。アッシュブロンドの長い髪に櫛を通して、編み込むのはヨウシアの仕事。自分も髪が長めなので、毎日のようにアレクサンテリの髪を編んでいると、ヨウシアもすっかり慣れてしまった。
 鍛え上げた体をタキシードに包んだアレクサンテリと、裾がトレーンのように広がったパンツに刺繍の入ったシャツ、ボレロを着てヴェールを被ったヨウシア。二人が出てくると、拍手喝采が起きた。
 王宮の大広間で結婚の誓いを述べる。

「私は、最愛の伴侶を生涯守り、共に生きることを誓おう」
「僕は、王子様を支えて、素晴らしい家庭を築きたいと思います」

 名前を言わないのは、王族が家族以外に名前を知らせないしきたりがあるからだった。ヨウシアもそれに倣ったが、ヨウシアの場合は、アレクサンテリの独占欲が働いているとは知る由もない。

「生涯、私から離れずに」
「はい」
「常に共にいて欲しい」
「はい」
「一人で出かけることなく、常に私と共に」
「はい」

 敷かれた絨毯の上を歩きながら、アレクサンテリの言葉に、ヨウシアは返事をする。幸福感で胸がいっぱいで、雲の上を歩いているかのようだった。
 他人との食事を好まないアレクサンテリのために、王宮のバルコニーから国民に手を振って、披露宴なしで簡単に結婚式は終わりになった。結婚式と同時にアレクサンテリの王位継承権の放棄も行われたので、サインが終わると、女王と王女とアレクサンテリとヨウシアの四人で食事をした。
 家族である女王と王女には触れられるし、食事も共にできるので、アレクサンテリもヨウシアも寛いだ雰囲気で食事をすることができた。

「与えられた領地には明日にでも向かう」
「明日は早いのではなくて? 伴侶の君に無理をさせないでくださいませ」
「そうだな……明日はヨウシアも疲れておるか」

 きらりと肉食獣のようにアレクサンテリの目が光ったのを、ヨウシアは肉を切るのに一生懸命で気付いていなかったが、王女は気付いて遠い目をしていた。
 食事が終わると、部屋に戻って衣装を脱ぐ。バスルームに入って二人、昨日のように体を洗い合った。昨日は我慢をさせられたが、今日は我慢をすることもない。
 アレクサンテリの体を撫で洗ったせいで反応し始めた中心を握られて、ヨウシアは腰が引けてしまった。強く抱き寄せられて、水も滴ったままでバスローブを羽織って、ベッドに倒れ込む。

「愛しています、アレク様」
「私も愛しているよ、可愛いヨウシア」
「僕、16歳になりました……立派なお父さんになれるでしょうか?」

 濃厚なフェロモンの香りが部屋中に充満し始めていた。番になったアレクサンテリは、ヨウシアを誘うためだけにフェロモンを出す。

「それが、心配だったのか?」
「アレク様が赤ちゃんに触れなかったら、僕、その分も頑張ろうと思って……」
「なんと健気な。大丈夫だ、私も良い親になるつもりだ。共に頑張ろう」
「は、はい」

 そのためにもと、アレクサンテリが甘く囁やく。
 既にアレクサンテリの後孔はヨウシアを求めて、濡れていた。双丘を割るようにしてくぱりと晒されたそこに、ヨウシアが指で触れる。ぐにぐにと周囲を揉んで、先端を宛てがうと、招くように体を捩って振り返るアレクサンテリが唇を舐めた。
 ぐっと体を進めると、きつく締め付ける内壁に、搾り取られそうになる。

「アレクさまぁ!」
「ヨウシア、たっぷり私の中でイって?」
「あっ! あぁっ!」

 細い腰を打ち付けながら必死にアレクサンテリを快感に導こうとするが、蠢く内壁に逆にヨウシアの方が追い詰められて、達しそうになってしまう。

「ダメェ! 出るぅ! 出ちゃうぅ!」
「奥で、出して?」
「あぁ!?」

 どくどくと中に放ったヨウシアが、シーツの上に倒れ込むのに、後孔から白濁を太ももに伝わせながら、アレクサンテリがその華奢な腰に跨った。

「孕むまで出してもらわねばならないな」

 舌舐めずりしたアレクサンテリの中に飲み込まれて、ヨウシアは意識がなくなるまで搾り取られ、翌朝は腰が立たず、領地への出発は延期となったのだった。
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