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本編
28.婚約式
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この国の学園の新学期は春に始まる。
春を前にわたくしは白いドレスと白薔薇の花冠を用意して、国王陛下の前でお義兄様との婚約式に臨んでいた。
バルテルミー家の娘なのだが、わたくしは養子なのでお義兄様と結婚できる。
クラリス嬢のことはもうすっかり忘れ去られていて、バルテルミー家はわたくしをお義兄様の花嫁に迎えるために養子にしたのではないかという噂すら立ち始めているほどだ。
十二歳になったわたくしは王宮の大広間で、国王陛下と王妃殿下の前に立っていた。
わたくしの隣りにはお義兄様がいて、お義兄様とわたくしの後ろにはお義父様とお義母様が見守ってくれている。
お義兄様は白いタキシードを着ていて見上げるような長身でとても格好いい。
「マクシミリアン・バルテルミー、そなたはアデライド・バルテルミーを婚約者とし、アデライドの成人の暁には結婚することを誓うか」
国王陛下の問いかけにお義兄様が落ち着いて答える。
「誓います」
それに満足そうに頷き、国王陛下がわたくしに向き直る。
「アデライド・バルテルミー、そなたはマクシミリアン・バルテルミーを婚約者とし、成人した暁には結婚すると誓うか」
国王陛下の問いかけにわたくしは力を込めて返事をした。
「誓います!」
お義兄様はわたくしが幸せにします!
クラリス嬢との婚約は白紙に戻し、元アルシェ公爵夫人も退けた。後はお義兄様が学園を卒業するまでしっかり見守り、暗殺されないようにするのみだ。
そのためにも、わたくしはクラリス嬢との手紙のやり取りも進んで行っていた。
クラリス嬢が幸せに暮らしていて、アルシェ家をクラリス嬢とセドリック殿が継ぐとなれば、元アルシェ公爵夫人の怒りもある程度はおさまっているのではないだろうか。
それにセドリック殿がいるので元アルシェ公爵夫人はアルシェ公爵領の田舎の屋敷に閉じ込められて出られないようになっているはずだ。
それでもどんな手を使ってでもお義兄様を暗殺しようとするかもしれない。金を払えば暗殺を請け負う輩もいないとは限らないのだ。
国王陛下の前で婚約を誓ってお義兄様に手を引かれてお義父様とお義母様の元に行くと、お義父様とお義母様が微笑んで迎えてくれる。
「マクシミリアンがアデライドと婚約できて本当によかった」
「アデライドの成人までは少し時間がありますが、その間にマクシミリアンは公爵としての仕事を覚えてもらいましょうね」
「母上、気が早いです。わたしはまだ学園を卒業していないのですよ」
「そうでした。学園を卒業したら、マクシミリアンにはしっかりと学んでもらわねば」
家族で和やかに話していると、ヴィルヘルム殿下が婚約者の隣国の王女殿下をエスコートしながらこちらへやってくる。
「マックス、おめでとう。こんな素晴らしい日はないな」
「ありがとうございます、ヴィルヘルム殿下。ですが、まだ今日が最良の日とは言えません。これから結婚式、その先も素晴らしい日々が待っているでしょう」
「セドリック殿が有能だからあの令嬢もまともになったようだが、あの令嬢と婚約していたころのマックスを思えば、もっともっと幸せになってもらわないといけないね」
「そう言っていただけると嬉しいです」
ヴィルヘルム殿下にお祝いされてわたくしも胸に幸せがこみ上げてくる。
お義兄様のことは大好きだったし、尊敬していたが、本当に婚約できる日が来るとは思わなかった。
前回の人生では考えもしなかったことだ。
「マクシミリアン殿、アデライド嬢のことは諦めます。ですから、マクシミリアン殿が幸せにするのですよ!」
ダヴィド殿下の言葉に、わたくしは驚いてしまう。
ダヴィド殿下も何度か冗談でわたくしを口説くようなことをしてきていたが、王宮に年齢の近い相手がいなくて、わたくしくらいしかダヴィド殿下と釣り合う身分の者がそばにいなかっただけだと思っていた。
本当にダヴィド殿下はわたくしのことが好きだったのだろうか。
「それを言うなら、ぼくの方も……」
「兄上は王女殿下に失礼なので、口を閉じていてください」
「あらあら、妬けますわね」
ころころと鈴を転がすような声で笑っている王女殿下は、ヴィルヘルム殿下の言葉を全く気にしていない様子だった。
「アデライドはわたしが幸せにします。まだ結婚まで六年もありますけれどね」
男らしい笑みを浮かべたお義兄様にわたくしは胸をときめかせていた。
その日、わたくしにクラリス嬢から手紙が来た。
『アデライド・バルテルミー嬢へ。
本日アデライド嬢がマクシミリアン様と婚約なさるということをセドリック様から聞きました。わたくしはセドリック様と出会えてから、心を入れ替え勉学に励み、今はアルシェ公爵領をセドリック様と共に治める日を心待ちにしております。どうかアデライド嬢もお幸せに。わたくしは初夏のわたくしの十八歳の誕生日にセドリック様と結婚します。そのときには国王陛下にお許しをいただいているので、どうかバルテルミー家の皆様も結婚式に出席していただけないでしょうか。わたくしの求めていた真実の愛はここにあったのだと皆様にお伝えしたいのです。
クラリス・アルシェ』
これは危険なのではないだろうか。
アルシェ公爵家に出向いたときに、お義兄様が暗殺されてしまう可能性がある。
手紙を受け取って真剣に返事に悩むわたくしに、お義父様もお義母様も「無理はしなくていい」と言ってくださる。
国王陛下の許可があるのならば、アルシェ公爵家に行かないのは失礼にあたるかもしれない。
わたくしにできることはなんだろう。
真剣に悩んだ末、わたくしはお義兄様に相談していた。
クラリス嬢との婚約を白紙に戻すときにもお義兄様とは共犯者になったのだ。もう正直に話してしまうのがいいと判断したのだ。
「お義兄様、アルシェ公爵領に行ったら、逆恨みした元アルシェ公爵夫人がわたくしたちに危害を加えないかが心配なのです」
「元アルシェ公爵夫妻は監禁状態だと聞いているよ」
「それでも、お金を払えばどんなことでもするものはいるのです」
お義兄様に警戒してほしくてわたくしが言えば、お義兄様は少し考えてセドリック殿に手紙を書くことを思い付いた。
「セドリック殿はクラリス嬢を再教育できた有能な人物だ。アルシェ公爵家での結婚式でわたしたちが害されれば、アルシェ公爵家の責任となる。それはセドリック殿にとっても本意ではないだろう」
「そうですね」
「セドリック殿に結婚式の警備を厳重にしてもらって、バルテルミー家からも警備の兵士を連れて行けるように手配してもらおう」
お義兄様と話しているとわたくしは落ち着いてくる。
むねがざわざわして、前回の人生のお義兄様の血の気の失せた死に顔が浮かんでくるが、お義兄様はそれを打ち消すように力強く告げる。
「アルシェ公爵家もバルテルミー家と事を構えたくないだろう。バルテルミー家の後ろには王家が付いているのだから」
そうなのだ。
お義父様は現国王陛下の王弟である。バルテルミー家の後ろには王家が付いている。バルテルミー家には王家の血が濃く流れている。
それを考えれば、セドリック殿はわたくしたちを丁重に扱うことはあっても、害そうとは思わないだろう。
「わたしが一番心配しているのはアデリーが害されることだよ」
「わたくしが!?」
前回の人生では元アルシェ公爵夫人はお義兄様を狙ってきていたので考えもしていなかったが、わたくしが害される可能性もあるのだ。言われてみればそれが一番色濃いかもしれない。
わたくしはバルテルミー家の娘とはいえ養子で王家の血は入っていないし、アルシェ公爵家が裁かれる場で証言までしている。
今回の人生では元アルシェ公爵夫人が狙って来るのはわたくしかもしれない。
「わたくし……」
「国王陛下が許可をしたのだし、セドリック殿は父上の元の部下だから行かないわけにはいかないだろうが、アルシェ公爵領に入ったら、アデリーはわたしから絶対に離れないように」
「は、はい。お義兄様」
お義兄様を守るつもりが、わたくしが狙われる立場になるだなんて。
これが杞憂ならばよいのだが。
元アルシェ公爵夫人は前回の人生でお義兄様を卑劣にも暗殺してみせた。
警戒は怠りなく。
わたくしは気を引き締めるのだった。
春を前にわたくしは白いドレスと白薔薇の花冠を用意して、国王陛下の前でお義兄様との婚約式に臨んでいた。
バルテルミー家の娘なのだが、わたくしは養子なのでお義兄様と結婚できる。
クラリス嬢のことはもうすっかり忘れ去られていて、バルテルミー家はわたくしをお義兄様の花嫁に迎えるために養子にしたのではないかという噂すら立ち始めているほどだ。
十二歳になったわたくしは王宮の大広間で、国王陛下と王妃殿下の前に立っていた。
わたくしの隣りにはお義兄様がいて、お義兄様とわたくしの後ろにはお義父様とお義母様が見守ってくれている。
お義兄様は白いタキシードを着ていて見上げるような長身でとても格好いい。
「マクシミリアン・バルテルミー、そなたはアデライド・バルテルミーを婚約者とし、アデライドの成人の暁には結婚することを誓うか」
国王陛下の問いかけにお義兄様が落ち着いて答える。
「誓います」
それに満足そうに頷き、国王陛下がわたくしに向き直る。
「アデライド・バルテルミー、そなたはマクシミリアン・バルテルミーを婚約者とし、成人した暁には結婚すると誓うか」
国王陛下の問いかけにわたくしは力を込めて返事をした。
「誓います!」
お義兄様はわたくしが幸せにします!
クラリス嬢との婚約は白紙に戻し、元アルシェ公爵夫人も退けた。後はお義兄様が学園を卒業するまでしっかり見守り、暗殺されないようにするのみだ。
そのためにも、わたくしはクラリス嬢との手紙のやり取りも進んで行っていた。
クラリス嬢が幸せに暮らしていて、アルシェ家をクラリス嬢とセドリック殿が継ぐとなれば、元アルシェ公爵夫人の怒りもある程度はおさまっているのではないだろうか。
それにセドリック殿がいるので元アルシェ公爵夫人はアルシェ公爵領の田舎の屋敷に閉じ込められて出られないようになっているはずだ。
それでもどんな手を使ってでもお義兄様を暗殺しようとするかもしれない。金を払えば暗殺を請け負う輩もいないとは限らないのだ。
国王陛下の前で婚約を誓ってお義兄様に手を引かれてお義父様とお義母様の元に行くと、お義父様とお義母様が微笑んで迎えてくれる。
「マクシミリアンがアデライドと婚約できて本当によかった」
「アデライドの成人までは少し時間がありますが、その間にマクシミリアンは公爵としての仕事を覚えてもらいましょうね」
「母上、気が早いです。わたしはまだ学園を卒業していないのですよ」
「そうでした。学園を卒業したら、マクシミリアンにはしっかりと学んでもらわねば」
家族で和やかに話していると、ヴィルヘルム殿下が婚約者の隣国の王女殿下をエスコートしながらこちらへやってくる。
「マックス、おめでとう。こんな素晴らしい日はないな」
「ありがとうございます、ヴィルヘルム殿下。ですが、まだ今日が最良の日とは言えません。これから結婚式、その先も素晴らしい日々が待っているでしょう」
「セドリック殿が有能だからあの令嬢もまともになったようだが、あの令嬢と婚約していたころのマックスを思えば、もっともっと幸せになってもらわないといけないね」
「そう言っていただけると嬉しいです」
ヴィルヘルム殿下にお祝いされてわたくしも胸に幸せがこみ上げてくる。
お義兄様のことは大好きだったし、尊敬していたが、本当に婚約できる日が来るとは思わなかった。
前回の人生では考えもしなかったことだ。
「マクシミリアン殿、アデライド嬢のことは諦めます。ですから、マクシミリアン殿が幸せにするのですよ!」
ダヴィド殿下の言葉に、わたくしは驚いてしまう。
ダヴィド殿下も何度か冗談でわたくしを口説くようなことをしてきていたが、王宮に年齢の近い相手がいなくて、わたくしくらいしかダヴィド殿下と釣り合う身分の者がそばにいなかっただけだと思っていた。
本当にダヴィド殿下はわたくしのことが好きだったのだろうか。
「それを言うなら、ぼくの方も……」
「兄上は王女殿下に失礼なので、口を閉じていてください」
「あらあら、妬けますわね」
ころころと鈴を転がすような声で笑っている王女殿下は、ヴィルヘルム殿下の言葉を全く気にしていない様子だった。
「アデライドはわたしが幸せにします。まだ結婚まで六年もありますけれどね」
男らしい笑みを浮かべたお義兄様にわたくしは胸をときめかせていた。
その日、わたくしにクラリス嬢から手紙が来た。
『アデライド・バルテルミー嬢へ。
本日アデライド嬢がマクシミリアン様と婚約なさるということをセドリック様から聞きました。わたくしはセドリック様と出会えてから、心を入れ替え勉学に励み、今はアルシェ公爵領をセドリック様と共に治める日を心待ちにしております。どうかアデライド嬢もお幸せに。わたくしは初夏のわたくしの十八歳の誕生日にセドリック様と結婚します。そのときには国王陛下にお許しをいただいているので、どうかバルテルミー家の皆様も結婚式に出席していただけないでしょうか。わたくしの求めていた真実の愛はここにあったのだと皆様にお伝えしたいのです。
クラリス・アルシェ』
これは危険なのではないだろうか。
アルシェ公爵家に出向いたときに、お義兄様が暗殺されてしまう可能性がある。
手紙を受け取って真剣に返事に悩むわたくしに、お義父様もお義母様も「無理はしなくていい」と言ってくださる。
国王陛下の許可があるのならば、アルシェ公爵家に行かないのは失礼にあたるかもしれない。
わたくしにできることはなんだろう。
真剣に悩んだ末、わたくしはお義兄様に相談していた。
クラリス嬢との婚約を白紙に戻すときにもお義兄様とは共犯者になったのだ。もう正直に話してしまうのがいいと判断したのだ。
「お義兄様、アルシェ公爵領に行ったら、逆恨みした元アルシェ公爵夫人がわたくしたちに危害を加えないかが心配なのです」
「元アルシェ公爵夫妻は監禁状態だと聞いているよ」
「それでも、お金を払えばどんなことでもするものはいるのです」
お義兄様に警戒してほしくてわたくしが言えば、お義兄様は少し考えてセドリック殿に手紙を書くことを思い付いた。
「セドリック殿はクラリス嬢を再教育できた有能な人物だ。アルシェ公爵家での結婚式でわたしたちが害されれば、アルシェ公爵家の責任となる。それはセドリック殿にとっても本意ではないだろう」
「そうですね」
「セドリック殿に結婚式の警備を厳重にしてもらって、バルテルミー家からも警備の兵士を連れて行けるように手配してもらおう」
お義兄様と話しているとわたくしは落ち着いてくる。
むねがざわざわして、前回の人生のお義兄様の血の気の失せた死に顔が浮かんでくるが、お義兄様はそれを打ち消すように力強く告げる。
「アルシェ公爵家もバルテルミー家と事を構えたくないだろう。バルテルミー家の後ろには王家が付いているのだから」
そうなのだ。
お義父様は現国王陛下の王弟である。バルテルミー家の後ろには王家が付いている。バルテルミー家には王家の血が濃く流れている。
それを考えれば、セドリック殿はわたくしたちを丁重に扱うことはあっても、害そうとは思わないだろう。
「わたしが一番心配しているのはアデリーが害されることだよ」
「わたくしが!?」
前回の人生では元アルシェ公爵夫人はお義兄様を狙ってきていたので考えもしていなかったが、わたくしが害される可能性もあるのだ。言われてみればそれが一番色濃いかもしれない。
わたくしはバルテルミー家の娘とはいえ養子で王家の血は入っていないし、アルシェ公爵家が裁かれる場で証言までしている。
今回の人生では元アルシェ公爵夫人が狙って来るのはわたくしかもしれない。
「わたくし……」
「国王陛下が許可をしたのだし、セドリック殿は父上の元の部下だから行かないわけにはいかないだろうが、アルシェ公爵領に入ったら、アデリーはわたしから絶対に離れないように」
「は、はい。お義兄様」
お義兄様を守るつもりが、わたくしが狙われる立場になるだなんて。
これが杞憂ならばよいのだが。
元アルシェ公爵夫人は前回の人生でお義兄様を卑劣にも暗殺してみせた。
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わたくしは気を引き締めるのだった。
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