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24.月神の誤解
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月神を独り占めして誰の手も届かないようにしてしまいたい。
両想いだと分かったときから真珠の中には仄暗い独占欲が渦巻いていた。
誰にも顧みられることのなかった自分を、唯一正面から見つめて、ずっと好きでいてくれた相手。親子ほど年が違うのだから、いつか月神が好きな相手を連れて来たときには送り出さなければいけないと覚悟していたのに、月神は真珠を運命の相手と言って、好きだと告白してきた。
もう逃がさないと心に決めた。
まだ性の目覚めも来ていなかった月神を、真珠の手で目覚めさせて、真珠の元を離れられないようにしようとした。眠っている月神の後孔に自らをおさめて、月神を自分のものだと確信していないと安心して眠ることもできなかった。
それを、月神は全て受け止めた挙句に、真珠を抱き締めて歌ってくれた。
月神の歌は美しく真珠の心を溶かした。
例え腕の中に閉じ込めなくても、月神はどこかに行ってしまったりしない。真珠の元を離れない。そのことを強く実感させてくれた。
真珠は月神の愛の前に跪いて、月神を信じることができるようになったのだ。
結婚式場で打ち合わせをして予約をした後に、指輪を買いに行って、帰って来た洋館で、真珠は旭とアウラに二世帯住宅の話を持ち出していた。
旭は問題の多い父親ではあったけれど、月神は旭のことを愛しているし、心配してもいる。アウラという伴侶が現れたからといってすぐには安心はできないだろう。
二世帯住宅の話をすれば、アウラも旭も喜んでいるし、月神は真珠に抱き付いて涙目になって喜んでいた。
やはり独り占めしようと月神を閉じ込める計画を実行していなくてよかったと真珠はしみじみと思ったのだった。
吸血鬼として長く生きていて魔法も使えるアウラが家にいてくれれば、月神と旭は守られる。月神は吸血鬼だが、能力が癒しの歌なので攻撃的なことはできない。月神のファンの中には過激派もいるので、真珠はそれを心配していた。
「アウラさん、月神さんと旭さんのこと、守ってくださいますか?」
「もちろんです。真珠さんの不在時には僕がしっかりと守ります」
「私がいるときには協力しましょう」
「はい!」
アウラとも密やかに協定を結んで、真珠は安心して仕事に出かけられるようになった。
洋館は広く部屋も余っているので、アウラと旭は当面の生活用品を持って引っ越してくる。
一緒に暮らしながらこれまでほとんど使っていなかった二階と三階を改装して、二階にも三階にも簡易なキッチンとしっかりと広いバスルームを付けて、一階を共用部分、二階を月神と真珠の家、三階をアウラと旭の家にすれば問題なく暮らせるようになるだろう。
それぞれに夜の営みはあるだろうから、バスルームは外せない。子どもができたときのためにも簡易キッチンは絶対に必要だ。
子どもに関しても前向きに考えられるようになったのも月神のおかげだ。月神が真珠の不安を全て取り除いてくれた。
子どもが生まれたら真珠に似ているだろうか、月神に似ているだろうか。月神が小さい頃に世話をしたのだが、可愛くて可愛くて堪らなかったので、月神に似ていてくれればいい。
そんなことまで真珠は考えるようになっていた。
仕事の休憩時間にデスクでお弁当を開けると、タコさんウインナーや魚の形のかまぼこ、ご飯の上にはふりかけが波のような形でかけてあって、真珠は微笑んでしまう。
月神は海に行きたいのだろうか。
そういえば忙しくて海に行ったことなどなかった気がする。旭が月神を連れて海に行っているというのも考えにくい。
新婚旅行は海の見える旅館で温泉なんていいのではないだろうか。
考えつつお弁当を食べ終わったところで、真珠は別の課の課長に呼び出された。
「私は休憩時間中なんですよ。勤務時間外に呼び出すのは、規則違反になりますよ」
「世間話がしたかっただけよ。結婚したって、本当なの?」
少し年上のその別の課の課長は、獣人で、一時期『遺跡管理課』に所属していた。獣人の力を引き出すために血を分けたことがあるが、手首からしか血を分けない主義である真珠に対して、首筋から飲みたがって面倒だった覚えがある。
人目のある場所だから平気かと思っていたが、じりじりと壁際に追い詰められている気がする。
マニキュアを塗った手が、真珠の首筋を撫でる。
「こんなところに堂々とマーキングされちゃって」
「触れないでください!」
前々から狙われているとは気が付いていた。
真珠の血は獣人や妖精種など亜人の力を引き出す特殊な能力がある。その血を目当てにこの課長は、真珠を手に入れようとベッドに誘ってきたこともある。
血が目当てだと分かっていたし、こういう面倒な相手に執着されたくなかったので丁重にお断りしたのだが、とにかくこの課長はしつこいのだ。
「その血を独り占めするなんて、羨ましいわ」
「独り占めではありません。『遺跡管理課』で必要になれば供給します」
「なぁんだ、その程度なんだ」
壁際に追い詰められるのから逃れようとすると、別の課の課長は豊かな胸を押しつけて来る。香水の匂いが強くて、真珠は吐きそうになる。体をずらして逃げようとすると首筋に別の課の課長が歯を立てようとして来る。
「セクハラですよ!」
強く押し退けて真珠は言い切る。
「私はもう他夫なのです。手を出すと不倫ですよ? セクハラと不倫で課長の座を退きたいのですか?」
「つれないわね」
「二度と私に触れないでください」
そのまま別の課の課長を置いてデスクに戻ろうとしたところで、真珠は廊下をかけて行く小柄な人影に気付いていた。
月神だ。
どんな場面を見られてしまったのだろう。
真珠にやましいところは全くなかったし、完全なる相手のセクハラでしかなかったが、見た場面によっては真珠が別の課の課長を受け入れているように見えたかもしれない。
「月神さん、誤解です!」
廊下を走って追い駆ける真珠は、冷静沈着と言われる普段の姿とは全く違っていた。
市役所を出たところで月神を捕まえて、腕の中に抱き込む。黒い目に涙をいっぱい溜めて、月神は震えていた。
「やっぱり、大人の女性の方がいいんですか?」
「月神さん、誤解です! 二人きりになってしまったのは私の油断でした。でも、私は月神さん以外を愛するわけがありません」
「首筋から、血を、あげていたじゃないですか……ふぇ……」
大きな黒曜石の目からボロボロと涙を流す月神に、真珠は跪いてその手を額に押し当てた。
「噛み付かれそうになっただけです。触れられていません。誓います」
「真珠ぅ……」
「非常時は別として月神さん以外の相手の唇を首筋に許すつもりはありません。月神さんだけですよ、私の首筋から血を吸っていいのは」
「本当ですか?」
「本当です。非常時ならば相手の口に指を突っ込んででも飲ませますが、本当に触れて欲しいのは月神さんだけです。血は与えますが、月神さんの元に生きて帰ってくるためです」」
「真珠はそれだけ過酷な現場にいるんですね……」
「血を分けるような場面となると、どうしても非常事態になってきますからね。血は与えます。それでも必ず月神さんのところに生きて帰ってきます」
血を与えるような場面が発生するということ自体、非常時しかありえない。
非常時以外で月神の可愛い唇以外を肌に許すのは、そもそも真珠が受け付けなかった。
非常時ならば仕方がないが、血を与える代わりに必ず月神の元に帰ってくると伝えれば、月神はやっと落ち着いてくれたようだ。
零れる涙を拭いて、微笑んでくれる。
「真珠が浮気なんてするはずないのに、疑ってごめんなさい」
「私も月神さんという夫がありながら、他人と二人きりになってしまうなんて不用意でした」
「誰も通らなかっただけで廊下でしたし」
「彼女が結界を使えるのを忘れていました」
獣人には縄張りという名の結界を使えるものが一部いる。その場を縄張りに変えて、他の相手が近付きにくくするのだ。
吸血鬼である月神は縄張りを超えて入って来られたが、それ以外の職員は近付くと嫌な感じがして、そこを自然と遠回りしてしまったのだろう。
「そういえば、職場まで来て下さったのは何かあったのですか?」
「あ、そうでした。宝飾店から連絡が来て、指輪が出来上がったということでした」
どうしても直に伝えたくて。
頬を薔薇色に染めて言う月神に真珠は微笑んで月神の指先にキスをする。
「午後の仕事が終わるまで待っていられますか?」
「はい、待っています」
「一緒に指輪を取りに行きましょう」
指輪を取りに行く約束をした月神は、『遺跡管理課』の端で本を読みながら真珠の仕事が終わるのを待っていた。仕事が終わると真珠は月神を車に乗せて宝飾店まで行った。
宝飾店で指輪を受け取り、月神の華奢な左手の薬指にはめると、月神も真珠の左手の薬指にはめてくれる。
家に帰るとアウラが夕飯の支度をして待っていてくれた。
「アウラさん、指輪が出来上がったんです」
「魔法をかけていただけますか?」
月神と一緒にアウラにお願いすると、アウラは指輪を付けたままの真珠と月神の手に手を翳して指輪に魔法をかけてくれた。
両想いだと分かったときから真珠の中には仄暗い独占欲が渦巻いていた。
誰にも顧みられることのなかった自分を、唯一正面から見つめて、ずっと好きでいてくれた相手。親子ほど年が違うのだから、いつか月神が好きな相手を連れて来たときには送り出さなければいけないと覚悟していたのに、月神は真珠を運命の相手と言って、好きだと告白してきた。
もう逃がさないと心に決めた。
まだ性の目覚めも来ていなかった月神を、真珠の手で目覚めさせて、真珠の元を離れられないようにしようとした。眠っている月神の後孔に自らをおさめて、月神を自分のものだと確信していないと安心して眠ることもできなかった。
それを、月神は全て受け止めた挙句に、真珠を抱き締めて歌ってくれた。
月神の歌は美しく真珠の心を溶かした。
例え腕の中に閉じ込めなくても、月神はどこかに行ってしまったりしない。真珠の元を離れない。そのことを強く実感させてくれた。
真珠は月神の愛の前に跪いて、月神を信じることができるようになったのだ。
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旭は問題の多い父親ではあったけれど、月神は旭のことを愛しているし、心配してもいる。アウラという伴侶が現れたからといってすぐには安心はできないだろう。
二世帯住宅の話をすれば、アウラも旭も喜んでいるし、月神は真珠に抱き付いて涙目になって喜んでいた。
やはり独り占めしようと月神を閉じ込める計画を実行していなくてよかったと真珠はしみじみと思ったのだった。
吸血鬼として長く生きていて魔法も使えるアウラが家にいてくれれば、月神と旭は守られる。月神は吸血鬼だが、能力が癒しの歌なので攻撃的なことはできない。月神のファンの中には過激派もいるので、真珠はそれを心配していた。
「アウラさん、月神さんと旭さんのこと、守ってくださいますか?」
「もちろんです。真珠さんの不在時には僕がしっかりと守ります」
「私がいるときには協力しましょう」
「はい!」
アウラとも密やかに協定を結んで、真珠は安心して仕事に出かけられるようになった。
洋館は広く部屋も余っているので、アウラと旭は当面の生活用品を持って引っ越してくる。
一緒に暮らしながらこれまでほとんど使っていなかった二階と三階を改装して、二階にも三階にも簡易なキッチンとしっかりと広いバスルームを付けて、一階を共用部分、二階を月神と真珠の家、三階をアウラと旭の家にすれば問題なく暮らせるようになるだろう。
それぞれに夜の営みはあるだろうから、バスルームは外せない。子どもができたときのためにも簡易キッチンは絶対に必要だ。
子どもに関しても前向きに考えられるようになったのも月神のおかげだ。月神が真珠の不安を全て取り除いてくれた。
子どもが生まれたら真珠に似ているだろうか、月神に似ているだろうか。月神が小さい頃に世話をしたのだが、可愛くて可愛くて堪らなかったので、月神に似ていてくれればいい。
そんなことまで真珠は考えるようになっていた。
仕事の休憩時間にデスクでお弁当を開けると、タコさんウインナーや魚の形のかまぼこ、ご飯の上にはふりかけが波のような形でかけてあって、真珠は微笑んでしまう。
月神は海に行きたいのだろうか。
そういえば忙しくて海に行ったことなどなかった気がする。旭が月神を連れて海に行っているというのも考えにくい。
新婚旅行は海の見える旅館で温泉なんていいのではないだろうか。
考えつつお弁当を食べ終わったところで、真珠は別の課の課長に呼び出された。
「私は休憩時間中なんですよ。勤務時間外に呼び出すのは、規則違反になりますよ」
「世間話がしたかっただけよ。結婚したって、本当なの?」
少し年上のその別の課の課長は、獣人で、一時期『遺跡管理課』に所属していた。獣人の力を引き出すために血を分けたことがあるが、手首からしか血を分けない主義である真珠に対して、首筋から飲みたがって面倒だった覚えがある。
人目のある場所だから平気かと思っていたが、じりじりと壁際に追い詰められている気がする。
マニキュアを塗った手が、真珠の首筋を撫でる。
「こんなところに堂々とマーキングされちゃって」
「触れないでください!」
前々から狙われているとは気が付いていた。
真珠の血は獣人や妖精種など亜人の力を引き出す特殊な能力がある。その血を目当てにこの課長は、真珠を手に入れようとベッドに誘ってきたこともある。
血が目当てだと分かっていたし、こういう面倒な相手に執着されたくなかったので丁重にお断りしたのだが、とにかくこの課長はしつこいのだ。
「その血を独り占めするなんて、羨ましいわ」
「独り占めではありません。『遺跡管理課』で必要になれば供給します」
「なぁんだ、その程度なんだ」
壁際に追い詰められるのから逃れようとすると、別の課の課長は豊かな胸を押しつけて来る。香水の匂いが強くて、真珠は吐きそうになる。体をずらして逃げようとすると首筋に別の課の課長が歯を立てようとして来る。
「セクハラですよ!」
強く押し退けて真珠は言い切る。
「私はもう他夫なのです。手を出すと不倫ですよ? セクハラと不倫で課長の座を退きたいのですか?」
「つれないわね」
「二度と私に触れないでください」
そのまま別の課の課長を置いてデスクに戻ろうとしたところで、真珠は廊下をかけて行く小柄な人影に気付いていた。
月神だ。
どんな場面を見られてしまったのだろう。
真珠にやましいところは全くなかったし、完全なる相手のセクハラでしかなかったが、見た場面によっては真珠が別の課の課長を受け入れているように見えたかもしれない。
「月神さん、誤解です!」
廊下を走って追い駆ける真珠は、冷静沈着と言われる普段の姿とは全く違っていた。
市役所を出たところで月神を捕まえて、腕の中に抱き込む。黒い目に涙をいっぱい溜めて、月神は震えていた。
「やっぱり、大人の女性の方がいいんですか?」
「月神さん、誤解です! 二人きりになってしまったのは私の油断でした。でも、私は月神さん以外を愛するわけがありません」
「首筋から、血を、あげていたじゃないですか……ふぇ……」
大きな黒曜石の目からボロボロと涙を流す月神に、真珠は跪いてその手を額に押し当てた。
「噛み付かれそうになっただけです。触れられていません。誓います」
「真珠ぅ……」
「非常時は別として月神さん以外の相手の唇を首筋に許すつもりはありません。月神さんだけですよ、私の首筋から血を吸っていいのは」
「本当ですか?」
「本当です。非常時ならば相手の口に指を突っ込んででも飲ませますが、本当に触れて欲しいのは月神さんだけです。血は与えますが、月神さんの元に生きて帰ってくるためです」」
「真珠はそれだけ過酷な現場にいるんですね……」
「血を分けるような場面となると、どうしても非常事態になってきますからね。血は与えます。それでも必ず月神さんのところに生きて帰ってきます」
血を与えるような場面が発生するということ自体、非常時しかありえない。
非常時以外で月神の可愛い唇以外を肌に許すのは、そもそも真珠が受け付けなかった。
非常時ならば仕方がないが、血を与える代わりに必ず月神の元に帰ってくると伝えれば、月神はやっと落ち着いてくれたようだ。
零れる涙を拭いて、微笑んでくれる。
「真珠が浮気なんてするはずないのに、疑ってごめんなさい」
「私も月神さんという夫がありながら、他人と二人きりになってしまうなんて不用意でした」
「誰も通らなかっただけで廊下でしたし」
「彼女が結界を使えるのを忘れていました」
獣人には縄張りという名の結界を使えるものが一部いる。その場を縄張りに変えて、他の相手が近付きにくくするのだ。
吸血鬼である月神は縄張りを超えて入って来られたが、それ以外の職員は近付くと嫌な感じがして、そこを自然と遠回りしてしまったのだろう。
「そういえば、職場まで来て下さったのは何かあったのですか?」
「あ、そうでした。宝飾店から連絡が来て、指輪が出来上がったということでした」
どうしても直に伝えたくて。
頬を薔薇色に染めて言う月神に真珠は微笑んで月神の指先にキスをする。
「午後の仕事が終わるまで待っていられますか?」
「はい、待っています」
「一緒に指輪を取りに行きましょう」
指輪を取りに行く約束をした月神は、『遺跡管理課』の端で本を読みながら真珠の仕事が終わるのを待っていた。仕事が終わると真珠は月神を車に乗せて宝飾店まで行った。
宝飾店で指輪を受け取り、月神の華奢な左手の薬指にはめると、月神も真珠の左手の薬指にはめてくれる。
家に帰るとアウラが夕飯の支度をして待っていてくれた。
「アウラさん、指輪が出来上がったんです」
「魔法をかけていただけますか?」
月神と一緒にアウラにお願いすると、アウラは指輪を付けたままの真珠と月神の手に手を翳して指輪に魔法をかけてくれた。
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