つぐちゃんと真珠さん

秋月真鳥

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21.高校卒業と月神の舞台

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 舞台稽古が始まって月神は忙しくなった。
 舞台稽古だけでなく、高校の卒業式もあるので、高校にも出席しなければいけなくなって、月神は真珠と抱き合うどころではなくなってしまった。

 舞台はかなり変化を遂げていた。
 遺跡の見学で着想を得た監督が脚本を大幅に書き換えてしまったのだ。

 遺跡の中で発見された少女は、記憶がなく、食事の作法すら全くできていなかった。遺跡を探索していた教授はその少女を引き取り、育てていく。礼儀作法を教え、淑女にしていって、自分の手からどこかいい相手に紹介しようと思っていた教授だったが、少女の無垢な感情に触れて惹かれてしまう。
 少女は外に出るようにもなり、学校にも行くようになって、同級生から恋をされる。同級生に告白された少女は自分の気持ちが分からず、それを受けてしまって、同級生を教授に紹介する。
 年の近い二人が幸せになることを願って教授は身を引こうとするが、そのときには少女のことを愛してしまっている。

 ここまではそれまでの脚本と変わりはなかった。
 問題はそれ以降だ。

 同級生と幸せな学校生活を送る少女の前に一人の女性が現れる。女性は少女に告げる。
「あなたは遺跡の大事な核なのです。どうか遺跡に戻って来てください」
 少女は自分がただの人間ではなく、遺跡を維持するための装置の一部だと理解するのだ。
 教授と同級生は少女を取り戻そうと女性に立ち向かうが、弓式のレールガンを使うその女性は教授と同級生を退けて、少女を遺跡の中に連れ帰ってしまう。
 最後は少女は遺跡の中で女性に守られて幸せになり、教授と同級生は少女を失った悲しみを共有して共に慰め合うのだった。

 つまりは、百合と薔薇が咲き乱れるラスト。

 どうしてこんなことになってしまったのか。
 急遽、キャスティングされた遺跡から迎えに来た女性役の女優さんはどこか真珠に似ている。似ているというか、似せている。髪の色や武器も同じだ。
 真珠と月神の絆を見て、監督はこの脚本に書き換えたに違いないのだ。

 脚本が変わったということは稽古が最初からやり直しというわけで、月神はダンスを覚え直し、遺跡から来た女性役の女優さんと二人で歌うナンバーも何曲も増えた。
 デュエットをして、記憶を取り戻し、自分が遺跡の中に戻る決意をする少女の役を演じつつ、なんでこうなったのかと考えずにはいられない月神だった。

 毎日歌って踊って、少しできた時間には高校に行って、月神は真珠と触れ合えない日々が続いていた。

「しんじゅぅ、キスしたいですぅ」
「月神さん、起きてるのですか!?」
「しんじゅのあついのがほしいぃ!」
「寝ている!? この子、寝ながら言ってるんですか!? 恐ろしい子!」

 帰って夕食を食べながら撃沈してしまったり、シャワーを浴びたらベッドで爆睡してしまったりしている月神に、真珠もさすがに何もしかけて来ない。
 もっと強引に抱いて欲しいと願っているのに、それが叶わなくて、月神は欲求不満を募らせていた。

 舞台稽古の合間に、高校の卒業式があった。
 卒業式の日は舞台稽古を休ませてもらって、月神は高校に行った。
 仕事が忙しくてまともに高校に通えていなかったし、友達らしい友達もいなかった。それでも音楽大学には行きたくて、高校の単位はギリギリで習得していた。
 音楽大学は推薦入学で真珠の家から徒歩で通える場所に受かっているし、卒業式が終われば真珠との結婚式も挙げられるし、月神はものすごく期待していた。

 卒業式には真珠と旭も仕事を休んで、アウラまで一緒に来てくれていた。
 卒業証書をもらって、体育館から出ると、真珠に肩を抱かれる。

「月神さん、写真撮りましょう?」
「はい、真珠!」

 校庭の満開の桜の下で、真珠と月神と旭で並んで、アウラにスマートフォンを渡して写真を撮ってもらう。
 旭は感極まって泣いているようだった。

「つぐちゃん、おめでとう」
「ありがとう、お父さん」
「私、いい父親じゃなかった……」
「お父さんは僕のお父さんだよ」
「つぐちゃん」

 抱き締められて月神も旭の細い体を抱き締め返した。

「真珠、舞台が終わったら、結婚式を挙げたいです」

 月神が真珠にお願いすると、頷いてくれる。

「最高の結婚式にしましょう」

 豪華ではなくてもいい。
 家族だけで小ぢんまりとした式場で結婚式を挙げたい。
 タキシード姿の真珠と月神で並んで、旭とアウラに祝ってもらうのだ。

「月神さん、ショートパンツの結婚衣装もお似合いだと思いますが」
「真珠は僕にショートパンツをはいて欲しいんですか?」
「はい、ぜひ」

 初めてお風呂を手伝ったときに、月神の膝小僧に真珠が妙に反応していたから、真珠は月神の少年らしい膝が大好きなのかもしれない。そんなところで真珠を魅了できるのだったら、月神はどれだけでもショートパンツくらいはくつもりだった。

「いいですよ。真珠はタキシードを着てくださいね」
「月神さんの望むままに」

 微笑む真珠に月神は最高の気分になっていた。

 舞台の本番が始まると月神はまた忙しくなる。
 もう一か月は真珠と抱き合っていないのではないだろうか。
 精通から全部真珠の手で促された月神は、自分で触れて処理するという考え方がなかった。性行為と言えば真珠と一緒にするものだ。
 一か月も抱き合っていないと、月神も健康な男性なので、性欲が溜まってくる。
 それを発散できないで、夜は真珠に抱き締められて眠るのがひたすらにつらい。性行為をしようとしても疲れ切っているので、真珠の胸に抱き締められてしまうと寝落ちるのだが、朝には生理現象として中心が兆しているのをどうしようもなくて、シャワーを浴びて体の熱を抑えるくらいしか月神にはできなかった。

「しんじゅぅ、だいてぇ……」
「月神さん、寝ているんですよね!? 寝てるいるんですよね!?」
「しんじゅがほしいぃ!」
「起きてるんですか!? 抱いていいんですか!?」

 寝ながら真珠を欲しがる月神に、真珠も取り乱してしまっていた。

 初日から千秋楽まで、月神は舞台を走り切った。
 途中、ハプニングがなかったわけではない。

 教授役の主演男優が台詞を一ページ丸々飛ばしてしまったり、同級生役の男優がダンスで靴が脱げてしまったり、遺跡から来た女性役の女優とのリフトが崩れてしまったりしたこともあったが、なんとか繋いで、舞台は終わらせた。

 千秋楽には真珠が見に来てくれていた。
 真っ赤な薔薇の花束を抱いた真珠が月神を迎えに来てくれて、薔薇の花束を月神に渡す。

「素晴らしい舞台でした。月神さんの歌声もダンスもとても素晴らしかったです」
「ありがとうございます、真珠」
「今日は、覚悟してくださいね?」

 抱き寄せられて耳元に囁かれて、甘い夜の予感に月神は震える。
 薔薇の花束を抱いたまま抱き上げられて、車まで連れて行かれたところで、月神は我慢ができず真珠の首筋に顔を埋めた。

「月神さん、いけませんよ?」
「欲しいんです。お願い」

 一か月以上真珠との行為を我慢していた間、月神は真珠の血も飲んでいなかった。血を飲んでしまうとお互いに快感を覚えて歯止めが利かなくなると分かっていたからだ。

「駄目です。家まで我慢してください」
「しんじゅぅ」
「月神さん、私もギリギリなんですよ?」

 助手席に乗せられて、覆いかぶさるようにしてごりっと中心を太ももに押し付けられて、そこが硬く大きくなっていることに気付いて、月神は期待に唾を飲み込む。
 それ以上は何もせずに運転席に回った真珠に、月神は夕食もシャワーも何もいらないと思っていた。

 洋館に戻ると、真珠が月神をバスルームに押し込んで、性急に体を洗って髪も濡れたままバスタオルだけ体に巻いて寝室に抱いて連れ込む。
 口付けると、お互いに我慢していたのが弾けそうで、月神は真珠の体に中心を擦り付ける。
 大きな手が月神の中心を掴み、真珠の中心と共に掴んで扱く。

「あっ! あぁぁっ! でちゃう!」
「私も……一回、出しておきましょう」
「ひぁぁぁっ!」

 太く逞しい真珠の中心と擦り合わせるようにして扱き上げられた月神の中心は、長い禁欲生活に耐えかねて、あっさりと達していた。達したのに真珠が達していないのでまた擦り上げられて月神は悲鳴を上げる。

「だめぇ! イったばかりなのにぃ!」
「私はまだですからね」
「しんじゅぅ! なかで! なかにちょうだい!」

 身も世もなく縋ってしまう月神に、真珠が唇を弧の形にする。

「月神さん、ここだけでイってみましょうか?」

 中心から手を外して、乳首を摘まんだ真珠に、月神は達したばかりの敏感な体に与えられる快感に震えていた。
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