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7.考えさせてほしいはお断りの常套句?
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遺跡の調査で怪我をしてしまった真珠は、傷病手当をもらって仕事は休みになっていた。
大学に推薦入学が決まっていたし、高校の授業はもうないので自由登校になっている月神はずっと真珠のそばにいられた。
薔薇の茂みのある大きな古い洋館に着くと、真珠が鍵を出して門を開ける。重厚な音を立てて開いた門を潜って庭を抜けて玄関まで歩く。
小さい頃月神はこの庭でよく遊んでいた。忙しい旭に代わって真珠が保育園に迎えに来てくれて、日が沈むまでの間、月神は庭で花壇を砂場代わりにして遊んで、真珠が晩ご飯を作るのを待っていた。
もう少し大きくなると真珠と一緒に晩ご飯を作るようになって、お泊りをした朝には真珠と一緒に朝ご飯を作った。
卵の割り方、お米のとぎ方、包丁の使い方、火の使い方。月神は何でも真珠に教えてもらった。生活面ではあてにならない旭と違って、真珠は何でもできた。
「家族は何もしてくれなかったからねぇ。あたしは必然的に何でもできるようにならなきゃいけなかったのよ」
一度だけ遠く昔を思い出す目で真珠が言ったことがある。あれは月神が真珠にどうして何でもできるのか聞いたときだっただろうか。あのとき真珠の目は近寄りがたい色をしていた。
洋館に移り住んで一人で暮らしている真珠には何か事情があるのだと分かるが、深いところまで聞ける雰囲気ではなかった。
今なら聞けるだろうか。真珠は月神に心の内を打ち明けたいと思ってくれるだろうか。
「真珠さーん! お風呂、お手伝いしまーす!」
「きゃー!? つぐちゃん、いけないわ! 入っちゃダメー!」
「男同士なんだから気にしないでください。何かあったら、責任取りますから!」
「男前ー!?」
病院から帰ってお風呂に入りたがった真珠に、月神は遠慮なくバスルームに入っていく。甲高い悲鳴を上げている真珠だが、左腕の傷は魔法医療で塞いだが、深部まで完治していないので、左腕が上がらないのは医師に説明されて分かっていた。
「髪を洗いましょうね」
「つ、つぐちゃん、それ、もしかして!?」
「大丈夫ですよ、はいてますから」
長めのシャツで隠れてしまっているが、月神は濡れてもいいようにショートパンツをはいていた。シャツを捲って見せると、真珠がまた悲鳴を上げる。
「はいてるって……そりゃそうよね。って、きゃー!? おへそが見えちゃってるじゃない!? 膝小僧が可愛くて眩しいし!」
よく分からないが真珠は月神の格好を直視できないようだ。月神は男で真珠も男なのだから遠慮することなどないのにとは思うが、真珠がタオルで大急ぎで隠した股間が月神も気にならないことはない。ちらりとしか見えなかったが、相当大きかった気がする。
今はそれを気にしている場合ではないので、湯船に真珠を浸からせて、月神は丁寧に真珠の髪を洗う。榛色の髪は柔らかく指通りがいい。シャンプーを泡立てて、顔にかからないようにそっと流して、コンディショナーを馴染ませて、そっと流す。
「自分でできるって思ってたけど、してもらうのも悪くないわぁ。つぐちゃん、気持ちいい……」
「髪くらいいつでも洗いますよ」
「何でそんなに男前なの!」
男前と言われてしまうが、真珠のためならば何でもできるだけで、誰にでもそうではない。それにバスルームで二人きりになって間違いが起きたら、それはそれで月神にとってはラッキーとしか言いようがなかった。
告白をしたから真珠は意識してくれている。
考えさせてほしいというのは断るときの常套句だと分かっているが、月神は思い出が欲しかった。
初恋のひと、運命のひとと一夜限りでもいいので結ばれたいと思っていた。
「つぐちゃん、あたしのどこがいいの?」
「小さい頃から僕を大事にしてくれているし、僕が喋ると真珠さん、いつでも話し終わるまで静かに聞いていてくれました。僕、父に似たのかなかなか考えが纏まらなくて、上手く説明できないこともあったけれど、真珠さんは急かしたりせずにずっと僕が話し終わるまで待っていてくれました」
「えーっと」とか「うんと」とか、小さい頃月神はよく言葉に詰まっていた。胸には思いがあるのに上手く伝えられないでいた。父も寡黙でほとんど喋らないし、月神の話を聞いてくれる大人は真珠くらいだったのだが、真珠は月神がどれだけ言葉に詰まっても静かに待っていてくれた。
真珠にならば何でも話せる。安心して行くにつれて月神は上手におしゃべりができるようになったのだが、それが真珠のおかげであることは間違いない。
「あたしなんて、何の面白みもない男なのに……。こういう喋りをしているのも、少しでも親しみがわくようにで、本当のあたしは、仕事のときのあたしなのよ?」
「仕事のときの真珠さんも素敵です。格好よくて、できる男って感じで。惚れます」
「つぐちゃん……あなたを、あたしのものにしていいの?」
思ったより熱っぽく強く問いかけられて、月神は躊躇なく答えた。
「真珠さんのものにしてください」
「あたしは嫉妬深いし、独占欲の塊よ? つぐちゃんを逃がしてあげられないかもしれない」
「真珠さんになら、閉じ込められてもいい」
素直な気持ちを口に出すと、真珠が黙り込んでしまった。
タオルを腰に巻いて「そろそろ出るわ」と言った真珠に、月神もバスルームから出た。
脱衣所で服を着るのを手伝おうとすると、真珠から抵抗される。
「一人でできるから! つぐちゃんはそんなことしちゃダメよぉ!」
「左腕動かないんですよ! 一人でできるわけないでしょう?」
「見ちゃダメぇ!」
腰のタオルを剥がして下着をはかせようとする月神に真珠は抵抗していたが、最終的には月神が勝った。真珠の下着をはかせて、部屋着のジャージを着せて、リビングに出る。
「僕も着替えてきますね」
「あ、着替えるのね。膝小僧……」
「真珠さん、膝が見えてるのが好きですか?」
「そ、そそそそ、そんな変態みたいなこと言わないわよぉ!」
動揺している月神に、これはもしかすると脚を見せた方が真珠にアピールできるのではないかと思う月神だった。
水が跳ねて濡れたシャツとショートパンツを脱いで、スラックスと新しいシャツに着替えると、月神はリビングに戻った。片手だけでドライヤーを使って髪を乾かそうとしている真珠の座っているソファの隣りに座って、手を差し出す。
「僕がやりますよ」
「……お願いした方が早そうね。妙に虚勢を張ってることはないわね」
「真珠さんの髪はふわふわで柔らかくて、手触りがいいですね」
ドライヤーをかけながら手櫛で髪を整えていると、真珠が髪と同じ榛色の目を伏せる。
「母が外国人だったのよ。ヴァレンチノの祖父の従兄とあたしはそっくりだったんですって」
「お祖父様の従兄さんですか?」
「そうよ。それで、この洋館をあたしに残してくれたの。兄はそれが不服だったみたいだけど……でも、両親はあたしがここで暮らすと言ったら、賛成してくれた」
厄介払いだったんでしょうね。
真珠の声に空虚さがある気がして、月神は真珠の体に抱き付いていた。
「誰かが真珠さんをいらないって言うなら、僕がもらいます。僕は真珠さんが必要です!」
「本当に、男前なんだから。いつの間にこんなに格好よく育っちゃったのかしらね」
真珠さんです。
真珠さんがそういう風に育ててくれたんです。
そう言いたかったけれど、月神は気が付けば唇を塞がれていた。
真珠の唇と重なった唇に、月神は目を丸くして固まってしまった。
「き、きききき、キス!?」
「ごめんなさい、つい、つぐちゃんが可愛くて」
「可愛くてって……真珠さん、僕のこと、好意的に見てくださってるってことですよね? これは期待していいんですよね?」
考えさせてほしいはお断りの常套句だと思っていたが希望があるのかもしれない。それを感じ取って、月神は真珠の唇の感触が残っている唇を指先で撫でた。
大学に推薦入学が決まっていたし、高校の授業はもうないので自由登校になっている月神はずっと真珠のそばにいられた。
薔薇の茂みのある大きな古い洋館に着くと、真珠が鍵を出して門を開ける。重厚な音を立てて開いた門を潜って庭を抜けて玄関まで歩く。
小さい頃月神はこの庭でよく遊んでいた。忙しい旭に代わって真珠が保育園に迎えに来てくれて、日が沈むまでの間、月神は庭で花壇を砂場代わりにして遊んで、真珠が晩ご飯を作るのを待っていた。
もう少し大きくなると真珠と一緒に晩ご飯を作るようになって、お泊りをした朝には真珠と一緒に朝ご飯を作った。
卵の割り方、お米のとぎ方、包丁の使い方、火の使い方。月神は何でも真珠に教えてもらった。生活面ではあてにならない旭と違って、真珠は何でもできた。
「家族は何もしてくれなかったからねぇ。あたしは必然的に何でもできるようにならなきゃいけなかったのよ」
一度だけ遠く昔を思い出す目で真珠が言ったことがある。あれは月神が真珠にどうして何でもできるのか聞いたときだっただろうか。あのとき真珠の目は近寄りがたい色をしていた。
洋館に移り住んで一人で暮らしている真珠には何か事情があるのだと分かるが、深いところまで聞ける雰囲気ではなかった。
今なら聞けるだろうか。真珠は月神に心の内を打ち明けたいと思ってくれるだろうか。
「真珠さーん! お風呂、お手伝いしまーす!」
「きゃー!? つぐちゃん、いけないわ! 入っちゃダメー!」
「男同士なんだから気にしないでください。何かあったら、責任取りますから!」
「男前ー!?」
病院から帰ってお風呂に入りたがった真珠に、月神は遠慮なくバスルームに入っていく。甲高い悲鳴を上げている真珠だが、左腕の傷は魔法医療で塞いだが、深部まで完治していないので、左腕が上がらないのは医師に説明されて分かっていた。
「髪を洗いましょうね」
「つ、つぐちゃん、それ、もしかして!?」
「大丈夫ですよ、はいてますから」
長めのシャツで隠れてしまっているが、月神は濡れてもいいようにショートパンツをはいていた。シャツを捲って見せると、真珠がまた悲鳴を上げる。
「はいてるって……そりゃそうよね。って、きゃー!? おへそが見えちゃってるじゃない!? 膝小僧が可愛くて眩しいし!」
よく分からないが真珠は月神の格好を直視できないようだ。月神は男で真珠も男なのだから遠慮することなどないのにとは思うが、真珠がタオルで大急ぎで隠した股間が月神も気にならないことはない。ちらりとしか見えなかったが、相当大きかった気がする。
今はそれを気にしている場合ではないので、湯船に真珠を浸からせて、月神は丁寧に真珠の髪を洗う。榛色の髪は柔らかく指通りがいい。シャンプーを泡立てて、顔にかからないようにそっと流して、コンディショナーを馴染ませて、そっと流す。
「自分でできるって思ってたけど、してもらうのも悪くないわぁ。つぐちゃん、気持ちいい……」
「髪くらいいつでも洗いますよ」
「何でそんなに男前なの!」
男前と言われてしまうが、真珠のためならば何でもできるだけで、誰にでもそうではない。それにバスルームで二人きりになって間違いが起きたら、それはそれで月神にとってはラッキーとしか言いようがなかった。
告白をしたから真珠は意識してくれている。
考えさせてほしいというのは断るときの常套句だと分かっているが、月神は思い出が欲しかった。
初恋のひと、運命のひとと一夜限りでもいいので結ばれたいと思っていた。
「つぐちゃん、あたしのどこがいいの?」
「小さい頃から僕を大事にしてくれているし、僕が喋ると真珠さん、いつでも話し終わるまで静かに聞いていてくれました。僕、父に似たのかなかなか考えが纏まらなくて、上手く説明できないこともあったけれど、真珠さんは急かしたりせずにずっと僕が話し終わるまで待っていてくれました」
「えーっと」とか「うんと」とか、小さい頃月神はよく言葉に詰まっていた。胸には思いがあるのに上手く伝えられないでいた。父も寡黙でほとんど喋らないし、月神の話を聞いてくれる大人は真珠くらいだったのだが、真珠は月神がどれだけ言葉に詰まっても静かに待っていてくれた。
真珠にならば何でも話せる。安心して行くにつれて月神は上手におしゃべりができるようになったのだが、それが真珠のおかげであることは間違いない。
「あたしなんて、何の面白みもない男なのに……。こういう喋りをしているのも、少しでも親しみがわくようにで、本当のあたしは、仕事のときのあたしなのよ?」
「仕事のときの真珠さんも素敵です。格好よくて、できる男って感じで。惚れます」
「つぐちゃん……あなたを、あたしのものにしていいの?」
思ったより熱っぽく強く問いかけられて、月神は躊躇なく答えた。
「真珠さんのものにしてください」
「あたしは嫉妬深いし、独占欲の塊よ? つぐちゃんを逃がしてあげられないかもしれない」
「真珠さんになら、閉じ込められてもいい」
素直な気持ちを口に出すと、真珠が黙り込んでしまった。
タオルを腰に巻いて「そろそろ出るわ」と言った真珠に、月神もバスルームから出た。
脱衣所で服を着るのを手伝おうとすると、真珠から抵抗される。
「一人でできるから! つぐちゃんはそんなことしちゃダメよぉ!」
「左腕動かないんですよ! 一人でできるわけないでしょう?」
「見ちゃダメぇ!」
腰のタオルを剥がして下着をはかせようとする月神に真珠は抵抗していたが、最終的には月神が勝った。真珠の下着をはかせて、部屋着のジャージを着せて、リビングに出る。
「僕も着替えてきますね」
「あ、着替えるのね。膝小僧……」
「真珠さん、膝が見えてるのが好きですか?」
「そ、そそそそ、そんな変態みたいなこと言わないわよぉ!」
動揺している月神に、これはもしかすると脚を見せた方が真珠にアピールできるのではないかと思う月神だった。
水が跳ねて濡れたシャツとショートパンツを脱いで、スラックスと新しいシャツに着替えると、月神はリビングに戻った。片手だけでドライヤーを使って髪を乾かそうとしている真珠の座っているソファの隣りに座って、手を差し出す。
「僕がやりますよ」
「……お願いした方が早そうね。妙に虚勢を張ってることはないわね」
「真珠さんの髪はふわふわで柔らかくて、手触りがいいですね」
ドライヤーをかけながら手櫛で髪を整えていると、真珠が髪と同じ榛色の目を伏せる。
「母が外国人だったのよ。ヴァレンチノの祖父の従兄とあたしはそっくりだったんですって」
「お祖父様の従兄さんですか?」
「そうよ。それで、この洋館をあたしに残してくれたの。兄はそれが不服だったみたいだけど……でも、両親はあたしがここで暮らすと言ったら、賛成してくれた」
厄介払いだったんでしょうね。
真珠の声に空虚さがある気がして、月神は真珠の体に抱き付いていた。
「誰かが真珠さんをいらないって言うなら、僕がもらいます。僕は真珠さんが必要です!」
「本当に、男前なんだから。いつの間にこんなに格好よく育っちゃったのかしらね」
真珠さんです。
真珠さんがそういう風に育ててくれたんです。
そう言いたかったけれど、月神は気が付けば唇を塞がれていた。
真珠の唇と重なった唇に、月神は目を丸くして固まってしまった。
「き、きききき、キス!?」
「ごめんなさい、つい、つぐちゃんが可愛くて」
「可愛くてって……真珠さん、僕のこと、好意的に見てくださってるってことですよね? これは期待していいんですよね?」
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