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4.真珠の仕事
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月神が吸血鬼だった。
幼馴染の旭には真珠にも話していない秘密があった。
旭の妻の叶は死にかけていた老齢の吸血鬼の運命の相手で、伴侶であり、その吸血鬼との間に生んだのが月神だった。
本来ならば運命の相手の吸血鬼が亡くなった時点で叶の命も尽きるはずだったのだが、生まれてくる子どもを託すために吸血鬼は残りの寿命を叶に譲り渡していた。
それでも叶は子どもを産んだ後に体を弱らせて死にかけていて、子どもを託せる相手として選んだのが旭だったのだ。
旭と叶の間に愛情があったのかは分からない。旭は叶を好きだったようだが、叶が旭に応えたかどうかは真珠も想像もつかない。
とにかく、月神は旭と叶の息子として育てられることになって、叶は残り少ない命を何とか繋いで生きてきたが、月神が十四歳のときに亡くなって、旭と月神が残された。
生まれたときから知っているからか、旭は月神を自分の息子と思い込んでいたようで、月神に真実を話しているときにも、自分で口にして自分でショックを受けているような状態だった。
感情表現が得意ではなく、表情筋が動くことのない旭のショックを感じ取れたのも、幼いころから知っている真珠くらいだろう。
月神は吸血鬼だった。
その事実が分かってから三年の年月が経っていた。
月神は十八歳になった。その間、真珠は月神に何度か血を分けている。首からではなくて、手首からだが。
血を吸われるたびにくらくらするような酩酊状態に陥って、そのまま月神を押し倒してしまいたい気分になるのだが、必死でこらえて来た。
月神はいつかは運命のひとと出会って、真珠の手をすり抜けて自由に飛び立つ運命なのだ。
そう考えると、一抹の寂しさが真珠を襲った。
真っすぐに自分を見つめてくれる黒い目も、自分のために作られるお弁当も、いつかは誰かのものになる。
それが嬉しいことのはずなのに、胸をかきむしられるような感情が生まれて、真珠は「これが息子を嫁に出す父親の気持ちなのかしら」とか斜め上のことを考えていた。
真珠の勤める『遺跡管理課』は忙しい。
遺跡に入り込んで魔法兵器を盗み出そうという輩はいるし、遺跡の中から魔法生物が溢れて出て来ることもある。
魔法生物は処理しつつ、遺跡は封印して外部の人間が入れないようにしなければいけない。
遺跡の探索も『遺跡管理課』の重要な仕事だった。
遺跡を管理するためには、その遺跡にどんなものが眠っているのか調査しなければいけない。
見つかったものの検証も『遺跡管理課』の仕事だった。
「楽譜のようなものが見付かった、ということですが、映像と解析した結果を見せてもらえますか?」
「この仕事、天使に頼んだらどうですか? この町には天使がいるんですから」
「あなたは何を言っているんですか?」
「ひぃ!? すみません」
「さっさと調査結果を出しなさい」
部下の安増に絶対零度の視線を向けたのは、安増がこの町出身のクラシック歌手として活動している月神に関して、妙な感情を持っているのに苛立ちを覚えたからだった。
月神は真面目にクラシック歌手として活動しているのに、その見目のよさと癒しの歌声から天使ともてはやす一部のファンがいるのは知っていた。特に安増は仕事はできるのだが、性的な問題で何度も懲罰ギリギリのところまで行っている。
実家が有名な吸血鬼の家系なので、大金持ちで、金で何でも解決しているらしく、訴えられる前に口封じをしてしまうので大事にはなっていないが、それも時間の問題という雰囲気だった。
「遺跡の地下二階のホールに石板があって、そこに楽譜らしきものが描かれていました。画像は資料を参考下さい。この楽譜に描かれている音楽で遺跡のギミックが発動するのではないかと憶測できるのですが、演奏者と歌い手が見付かっていません」
安増の報告を聞いて一番に頭に浮かんだのは旭と月神だった。旭は移動できるキーボードを持って行けばその場で演奏できるだろうし、月神は楽譜を見れば歌えるだろう。
下心満載の安増の思い通りにするのは気が乗らなかったが、真珠は月神と旭に連絡をしてみることにした。
「市役所の『遺跡管理課』課長、五百蔵真珠・ヴァレンチノと申します」
『しんちゃん?』
「この度は舞園旭さんと舞園月神さんに協力いただきたくてご連絡を差し上げました」
『メール、見た』
「メールに添付した画像の楽譜を現地で演奏していただく形になりますが、お願いできますでしょうか?」
『多分、できる。つぐちゃんは、マネージャーさんに』
「分かりました。舞園月神さんはマネージャーさんに連絡をしますね」
言葉が少なすぎる旭だが、真珠は慣れているのでどうってことはない。月神のマネージャーに連絡を取ると、妙な返事が来た。
『月神さんは、今、監督と打ち合わせ中なのですが……』
「それならばかけ直します」
『月神さんを、助けてくれませんか?』
突然のことに驚きはしたものの、マネージャーの声は切羽詰まっていて、真珠は素早く荷物を纏めて車に乗り込んだ。マネージャーに指定された収録現場に行くと、入口でマネージャーが待っていてくれる。
「月神さんに個人的な指導があると言って個室に連れ込んだまま、出て来ないんです。ドアには鍵がかかっていて」
廊下を歩きながら説明された真珠は鍵のかかったドアを見てマネージャーに笑顔で問いかけた。
「鍵はかかっていませんでしたね?」
「へ?」
「かかっていませんでしたね?」
べきっという音と共にドアが蝶番ごと外れる。外れたドアを投げ捨てて中に入ると、月神が涙目で壁に追い詰められていた。
シャツのボタンが外されていて、スラックスのベルトが抜き取られている。
素早く監督と月神の間に入った真珠は、笑顔で監督に問いかけた。
「月神さんに何をしようとしていたんですか?」
「え、演技がなってないから、指導を……」
「これが指導とはとても思えませんね。その汚いものを仕舞いなさい」
ズボンのチャックを下げて自身を出している監督の汚いそれを踏みつぶしてやろうかと思ったが、社会的に抹殺するくらいで許してやろうと真珠は考えを変える。
まずは怯えて涙目になっている月神を助けることが先決だ。
抱き上げてさっさと部屋を後にすると、急いでチャックを上げたのか、監督がブツを挟んで悲鳴を上げていた。
それくらいでは生温い。
監督の醜聞を探して被害者を見つけ出してマスコミに情報を売って、社会的に抹殺するのだ。
「月神さん、大丈夫ですか?」
「ふぇ……真珠さん……」
それはともかくとして、月神を慰めることが一番の課題だと抱き上げたまま問いかけると、月神は真珠の首に手を回して抱き付いてくる。男性に襲われる寸前だったに関わらず、真珠に触れるのは平気なのだと安堵する。
「あの監督は二度と月神さんのそばに寄らないようにしますからね」
「そんなこと、できるんですか?」
「私には司法という強い味方がいますから」
司法の場であの監督は裁かれて、二度と表に出られないようにする。
真珠はそれを決意していた。
「仕事を頼みに来たのですが、こんな状況では月神さんは落ち着かないでしょう。一度家までお送りします」
「いいえ、僕でできることなら、やります」
涙を拭って表情を引き締める月神のプロ意識は素晴らしいが、真珠は月神が心配だった。
「無理をなさらないでくださいね」
「無理ではないです。仕事をしていた方が気がまぎれるから……」
それに、今まで逃げられて来たけど、ああいうことをされそうになったのは初めてではないですから。
月神の呟きに真珠は全身の血が沸騰するような怒りを覚えた。
まだ十八歳の月神がこれまで何度もこんなことを経験してきただなんて、信じられない。
その相手全てを社会的に抹殺してやりたい気分だった。
「月神さん、これからは何かあったら私に相談してください。どんなことでもです」
「真珠さん……頼っていいのですか?」
「月神さんと私の仲ではないですか」
月神と真珠の仲。
父親の旭が真珠の幼馴染で、小さい頃から見守って来た仲というだけしかない。
未来の約束も何もないこの仲を、いつまで続けられるのか、真珠の胸を冷たいものが過った。
幼馴染の旭には真珠にも話していない秘密があった。
旭の妻の叶は死にかけていた老齢の吸血鬼の運命の相手で、伴侶であり、その吸血鬼との間に生んだのが月神だった。
本来ならば運命の相手の吸血鬼が亡くなった時点で叶の命も尽きるはずだったのだが、生まれてくる子どもを託すために吸血鬼は残りの寿命を叶に譲り渡していた。
それでも叶は子どもを産んだ後に体を弱らせて死にかけていて、子どもを託せる相手として選んだのが旭だったのだ。
旭と叶の間に愛情があったのかは分からない。旭は叶を好きだったようだが、叶が旭に応えたかどうかは真珠も想像もつかない。
とにかく、月神は旭と叶の息子として育てられることになって、叶は残り少ない命を何とか繋いで生きてきたが、月神が十四歳のときに亡くなって、旭と月神が残された。
生まれたときから知っているからか、旭は月神を自分の息子と思い込んでいたようで、月神に真実を話しているときにも、自分で口にして自分でショックを受けているような状態だった。
感情表現が得意ではなく、表情筋が動くことのない旭のショックを感じ取れたのも、幼いころから知っている真珠くらいだろう。
月神は吸血鬼だった。
その事実が分かってから三年の年月が経っていた。
月神は十八歳になった。その間、真珠は月神に何度か血を分けている。首からではなくて、手首からだが。
血を吸われるたびにくらくらするような酩酊状態に陥って、そのまま月神を押し倒してしまいたい気分になるのだが、必死でこらえて来た。
月神はいつかは運命のひとと出会って、真珠の手をすり抜けて自由に飛び立つ運命なのだ。
そう考えると、一抹の寂しさが真珠を襲った。
真っすぐに自分を見つめてくれる黒い目も、自分のために作られるお弁当も、いつかは誰かのものになる。
それが嬉しいことのはずなのに、胸をかきむしられるような感情が生まれて、真珠は「これが息子を嫁に出す父親の気持ちなのかしら」とか斜め上のことを考えていた。
真珠の勤める『遺跡管理課』は忙しい。
遺跡に入り込んで魔法兵器を盗み出そうという輩はいるし、遺跡の中から魔法生物が溢れて出て来ることもある。
魔法生物は処理しつつ、遺跡は封印して外部の人間が入れないようにしなければいけない。
遺跡の探索も『遺跡管理課』の重要な仕事だった。
遺跡を管理するためには、その遺跡にどんなものが眠っているのか調査しなければいけない。
見つかったものの検証も『遺跡管理課』の仕事だった。
「楽譜のようなものが見付かった、ということですが、映像と解析した結果を見せてもらえますか?」
「この仕事、天使に頼んだらどうですか? この町には天使がいるんですから」
「あなたは何を言っているんですか?」
「ひぃ!? すみません」
「さっさと調査結果を出しなさい」
部下の安増に絶対零度の視線を向けたのは、安増がこの町出身のクラシック歌手として活動している月神に関して、妙な感情を持っているのに苛立ちを覚えたからだった。
月神は真面目にクラシック歌手として活動しているのに、その見目のよさと癒しの歌声から天使ともてはやす一部のファンがいるのは知っていた。特に安増は仕事はできるのだが、性的な問題で何度も懲罰ギリギリのところまで行っている。
実家が有名な吸血鬼の家系なので、大金持ちで、金で何でも解決しているらしく、訴えられる前に口封じをしてしまうので大事にはなっていないが、それも時間の問題という雰囲気だった。
「遺跡の地下二階のホールに石板があって、そこに楽譜らしきものが描かれていました。画像は資料を参考下さい。この楽譜に描かれている音楽で遺跡のギミックが発動するのではないかと憶測できるのですが、演奏者と歌い手が見付かっていません」
安増の報告を聞いて一番に頭に浮かんだのは旭と月神だった。旭は移動できるキーボードを持って行けばその場で演奏できるだろうし、月神は楽譜を見れば歌えるだろう。
下心満載の安増の思い通りにするのは気が乗らなかったが、真珠は月神と旭に連絡をしてみることにした。
「市役所の『遺跡管理課』課長、五百蔵真珠・ヴァレンチノと申します」
『しんちゃん?』
「この度は舞園旭さんと舞園月神さんに協力いただきたくてご連絡を差し上げました」
『メール、見た』
「メールに添付した画像の楽譜を現地で演奏していただく形になりますが、お願いできますでしょうか?」
『多分、できる。つぐちゃんは、マネージャーさんに』
「分かりました。舞園月神さんはマネージャーさんに連絡をしますね」
言葉が少なすぎる旭だが、真珠は慣れているのでどうってことはない。月神のマネージャーに連絡を取ると、妙な返事が来た。
『月神さんは、今、監督と打ち合わせ中なのですが……』
「それならばかけ直します」
『月神さんを、助けてくれませんか?』
突然のことに驚きはしたものの、マネージャーの声は切羽詰まっていて、真珠は素早く荷物を纏めて車に乗り込んだ。マネージャーに指定された収録現場に行くと、入口でマネージャーが待っていてくれる。
「月神さんに個人的な指導があると言って個室に連れ込んだまま、出て来ないんです。ドアには鍵がかかっていて」
廊下を歩きながら説明された真珠は鍵のかかったドアを見てマネージャーに笑顔で問いかけた。
「鍵はかかっていませんでしたね?」
「へ?」
「かかっていませんでしたね?」
べきっという音と共にドアが蝶番ごと外れる。外れたドアを投げ捨てて中に入ると、月神が涙目で壁に追い詰められていた。
シャツのボタンが外されていて、スラックスのベルトが抜き取られている。
素早く監督と月神の間に入った真珠は、笑顔で監督に問いかけた。
「月神さんに何をしようとしていたんですか?」
「え、演技がなってないから、指導を……」
「これが指導とはとても思えませんね。その汚いものを仕舞いなさい」
ズボンのチャックを下げて自身を出している監督の汚いそれを踏みつぶしてやろうかと思ったが、社会的に抹殺するくらいで許してやろうと真珠は考えを変える。
まずは怯えて涙目になっている月神を助けることが先決だ。
抱き上げてさっさと部屋を後にすると、急いでチャックを上げたのか、監督がブツを挟んで悲鳴を上げていた。
それくらいでは生温い。
監督の醜聞を探して被害者を見つけ出してマスコミに情報を売って、社会的に抹殺するのだ。
「月神さん、大丈夫ですか?」
「ふぇ……真珠さん……」
それはともかくとして、月神を慰めることが一番の課題だと抱き上げたまま問いかけると、月神は真珠の首に手を回して抱き付いてくる。男性に襲われる寸前だったに関わらず、真珠に触れるのは平気なのだと安堵する。
「あの監督は二度と月神さんのそばに寄らないようにしますからね」
「そんなこと、できるんですか?」
「私には司法という強い味方がいますから」
司法の場であの監督は裁かれて、二度と表に出られないようにする。
真珠はそれを決意していた。
「仕事を頼みに来たのですが、こんな状況では月神さんは落ち着かないでしょう。一度家までお送りします」
「いいえ、僕でできることなら、やります」
涙を拭って表情を引き締める月神のプロ意識は素晴らしいが、真珠は月神が心配だった。
「無理をなさらないでくださいね」
「無理ではないです。仕事をしていた方が気がまぎれるから……」
それに、今まで逃げられて来たけど、ああいうことをされそうになったのは初めてではないですから。
月神の呟きに真珠は全身の血が沸騰するような怒りを覚えた。
まだ十八歳の月神がこれまで何度もこんなことを経験してきただなんて、信じられない。
その相手全てを社会的に抹殺してやりたい気分だった。
「月神さん、これからは何かあったら私に相談してください。どんなことでもです」
「真珠さん……頼っていいのですか?」
「月神さんと私の仲ではないですか」
月神と真珠の仲。
父親の旭が真珠の幼馴染で、小さい頃から見守って来た仲というだけしかない。
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