龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する

秋月真鳥

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三章 甥の誕生と六年目まで

28.湯殿の寝椅子

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 ネイサンの帰った青陵殿では、ヨシュアと龍王の世話をする者がいない。
 背中にある妖精の薄翅を見られないように、ネイサンとデボラだけに頼っていたのが、デボラが妊娠で休んで、ネイサンもデボラの出産で休むとなると、ヨシュアは自分のことは何でもできるのだが龍王のことまでしなければいけなくなっていた。
 龍王には龍王の従者がいるのだが、ヨシュアの秘密は話していないのでヨシュアと龍王が湯あみするときも、着替えるときも手伝ってもらうわけにはいかない。ヨシュアだけ別に湯あみすることも、着替えることも考えたが、せっかくの結婚記念日なのに離れているのは寂しいと龍王も言うだろう。

 湯殿の中では龍王も自分のことは全部できるようになっていたし、意識があれば龍王は湯殿を出ても体や髪を拭くことや着替えはできるようになっている。
 問題は意識を失っているときだ。
 ヨシュアは自分の着替えをしなければいけないし、意識のない龍王を放っておけるわけがないので誰かに頼むしかない。そのときに手伝ってくれるのがネイサンなのだが、今日はネイサンは命令で返してしまった。

「シオン、イザーク、ちょっと力仕事を頼めるか?」
「いかがいたしましたか?」
「どんなことでしょう?」

 警護の兵士や龍王の侍従よりも近い関係にある魔術騎士団の若い二人を呼び寄せると、ヨシュアは湯殿の広い脱衣所に寝椅子を運ばせた。ヨシュアが自分で運んでもよかったのだが、王配という地位からして、自分で何でもしてしまうと他の侍従や警備の兵士に気を遣わせてしまう。
 寝椅子が脱衣所に運ばれると、ヨシュアは少し安心した。

 これでヨシュアが着替えている間、龍王を寝椅子で休ませて、意識のない龍王の世話を着替えてから安心して行える。
 ほんの少しの工夫でネイサンの労力も減るのだから、いいだろうと思っていたが、龍王の侍従はそれをあまりよく思っていないようだった。

「王配陛下の侍従が休んでいるときくらい、わたくしたちをお使いください」
「わたくしたちも龍王陛下と王配陛下のお役に立ちたいのです」

 懇願されてしまうが、ヨシュアの秘密を軽々しく話すわけにはいかないし、ヨシュアが迷っていると、龍王が眉間に皴を寄せた。

「我が王配の乳兄弟ならまだしも、それ以外のものに我が王配の肌を見せることは許さない。愛しい王配の肌はわたしだけのものだ」

 本当に不機嫌になったわけではなく、これは龍王の演技だと分かってヨシュアも合わせる。

「龍王陛下以外におれの肌を見せたくないし、龍王陛下の肌もできればおれだけのものにしたい」

 お互いに独占欲が強くて、睦み合った後の肌など見せられないと主張する龍王とヨシュアに、龍王の侍従も大人しく引いてくれた。
 安堵して湯殿に行くと、湯はちょうどいい温度に温められている。
 体を洗って、髪も洗って、龍王の髪も洗っていると、龍王が気持ちよさそうに目を閉じている。

「ヨシュアに髪を洗ってもらっているととても幸せです」
「これくらいなら毎日してあげるよ」
「嬉しい」

 ヨシュアに出会うまでは龍王は自分で体を洗うことも髪を洗うことも知らなかった。湯殿の係の者に洗ってもらっていたのだろうが、ヨシュアが教えた今では自分で体も髪も洗えるようになっている。髪はほとんどの場合ヨシュアが洗っているが、それは愛情があるからしているだけなので、本当は龍王は自分でできるとヨシュアも知っていた。

 湯殿から出て体を拭いて寝間着に着替えると、龍王とヨシュアは部屋に戻った。部屋で龍王の侍従がお茶の用意をして待っていたが、下がらせて、イザークとシオンを呼ぶ。
 龍王とヨシュアの閨の警護はイザークとシオンが務めることになっていた。

 硝子の水差しから硝子の器に水を注ぎ、水分補給をしてからヨシュアと龍王は寝台に向かう。寝台の天蓋の幕を閉じてしまって、結界も張ると、二人だけの空間が出来上がった。

「ヨシュア、今日はわたしに愛させてください」
「おいで、星宇」

 緩く腕を広げて寝台の上に寝そべると、龍王がヨシュアの寝間着を脱がせて来る。紐で結んだだけの寝間着は解くと簡単に前が開く。紐で調節する下衣も脱がせてしまうと、下着は着ていなかったのでヨシュアは一糸まとわぬ姿になった。
 龍王も自分の寝間着をもどかしそうに脱ぎ捨て、ヨシュアにのしかかってくる。
 口付けを受けると龍王の手がヨシュアの胸に触れた。力を入れていない胸筋は柔らかいので龍王の指が埋まるくらいに豊かな肉がそこにある。胸全体を揉んで、胸の飾りを押し潰されて、ヨシュアの口から漏れる甘い声は口付けている龍王の口の中に飲み込まれていく。
 舌を絡めていると龍王の唾液がヨシュアの唾液と混ざる。自分の唾液は無味だと思っているが、龍王の唾液は甘いような気がして、飲み込むと龍王も喉を鳴らしてヨシュアの唾液を飲み込んでいる。

 長い口付けの後に、香油を手の平の上で温めた龍王がヨシュアの後孔に触れてくる。周囲を撫でるようにしてから、ゆっくりと指が差し込まれる。
 毎日のように体を繋げているので、そこはすっかりと龍王の形を覚えてしまって柔らかくなっているのに、龍王が丁寧に指を差し込んで拓いていくのがじれったくなる。

「星宇、もう、入るから」
「でも……わたしのは、指三本よりも大きい気がして」
「指三本に拘るな」
「侍従長が閨のことを聞いたときに教えてくれたのです。指が三本入るくらい解さなければ挿入は難しいと。でも、わたしのものは、もっと大きい気がするのです」

 指三本を既にヨシュアの後孔は咥えているが、それ以上指を増やされたところでヨシュアは奥まで届かないそれに焦れてしまう。龍王の願いなので全部させてやりたかったが、龍王を押さえ込んで自分から乗ってしまった方が早いような気がしてくるのだ。

「星宇、いいから来て?」
「ヨシュア、きつかったら言ってください」

 龍王の方も我慢の限界なのだろう。情欲に濡れた黒い瞳でヨシュアを見て、指を引き抜いた後孔に先端を押し当ててくる。一番太い部分が入るときには、ヨシュアも僅かにきつさを感じて声を上げた。

「くっ……うぁっ!」
「ヨシュア、痛いですか?」
「いいから、奥まで、きて」

 じりじりと腰を進める龍王も苦しそうで、全身汗をかいているのが分かる。龍王の顎を伝った汗がヨシュアの胸の上で砕ける。
 全部納めたところで、長く息を吐いた龍王に、ヨシュアが悪い笑みを浮かべた。
 中を引き絞るようにすると、龍王の喉から悲鳴が上がる。

「ひぁっ!? ヨシュア、ダメです! 出てしまう!」
「おれは星宇のものなんだから、いつでも出していいのに」
「だ、ダメ……ヨシュアにも気持ちよくなってもらわないと」
「十分気持ちいいよ。おれの中に注いで、星宇」

 低く甘い声で囁けば、龍王が我慢できなくなって激しく腰を動かす。腰を打ち付けられて、まだ十分に拓いていない内壁をこすり上げられて、ヨシュアも甘い声を漏らす。

「あっ! あぁっ! 星宇、いいよ、気持ちいい」
「ヨシュア、ヨシュア」

 もうヨシュアの名前を呼ぶことしかできなくなった龍王が最奥を突き上げて達したとき、ヨシュアも中で達していた。ヨシュアの中心からもとろとろと白濁が溢れ出る。
 中での絶頂は長く続くが、龍王はもう遠慮することなく、ヨシュアの中を復活した高ぶりで抉っている。引かない快楽にヨシュアは身を任せた。

 龍王が何度も達してから、力尽きてヨシュアの胸に倒れ込むまで、どれくらいの時間が経っただろう。
 ヨシュアは結界を解いて、シオンとイザークを下がらせて、自分の寝間着をどろどろの体に身に着け、龍王も寝間着を着せて、龍王を湯殿まで連れて行った。
 体を流した後で中に吐き出された白濁の後始末もして、脱衣所で龍王を寝椅子に休ませて手早く体を拭いて着替えると、龍王の体も拭いて着替えさせる。

 湯殿から戻って部屋に帰ったときには、寝台の上の布団は新しいものに取り換えられていて、清潔な布団の中に龍王を抱き締めて入ると、ヨシュアは目を閉じた。

「ギデオンなんて、どうかな?」
「ん……?」

 ネイサンとデボラの息子の名前を考えながら、ヨシュアは眠りに落ちて行った。
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