龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する

秋月真鳥

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三章 甥の誕生と六年目まで

19.龍王の発情期

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 龍族でも血が濃い龍の本性になれるものしか発情期は来ない。
 発情期の周期も十年から三十年に一度で、そのときには非常に子どもができやすくなるという。発情期の期間は半月ほどだが、発情期は繁殖のことしか考えられずに食事も寝るのもおろそかになるので、半月もその状態にいるとやせ細ってしまう。そのため子どもを求めている場合以外は発情期は薬で抑えて、二、三日に縮めるのが普通だった。
 龍王は三十歳を超えてやっと初めての発情期を迎える。
 子どもを作ることにない龍王には、発情期はあまり関係のないことだったが、ヨシュアを巻き込まねばならなくなるとなるとどうしても話し合いは必要だった。

 普段の精力の二倍程度にはなるという発情期。
 今のところは普段はヨシュアに任せて力尽きるまで精を吐き出しているが、発情期ともなるとそうはいかなくなるだろう。
 ヨシュアが魔術の結界を維持していられなくなる事態になるかもしれないし、湯殿にも行けなくなるかもしれない。二、三日とは言われているが、その期間眠りもせずに、食事もとらずヨシュアだけを貪り続ける自我のない自分など、考えるだけで嫌だった。

「やはり寝室を別にしましょう」
「寝室を別にしても、本能で戻ってくるんじゃないか?」
「何重にも結界を張って、部屋から出られないようにします」
「それは、誰も入れなくなるんじゃないのか? 誰が星宇の面倒を見るんだ?」
「二、三日なら死にません」

 日ごろからヨシュアに甘えている自覚はある。これ以上ヨシュアの負担にならないように言うのに、ヨシュアが聞いてくれない。

「抑制剤も副作用があるんじゃないか?」
「それは大丈夫です。抑制剤を飲まない方が、半月も寝ずに食べずにで、体調に支障があります」

 子どもがずっと生まれなかった前王妃は発情期を抑制剤なしに過ごしたという。
 その間前龍王も前王妃と共に過ごしていたというが、前龍王の方が力が強かったので、前王妃を落ち着かせて、食事を摂らせたり、湯殿に連れて行ったりはしていたようだ。
 ヨシュアと龍王だとヨシュアの方が普段は力が強いのだが、龍族の力を解放した龍王の力がどのくらいかは分からない。龍王は魔術も使えるのが気になっている。
 魔術を封じてもらって、何重の結界で阻んで閉じ込めてもらえば、何とかヨシュアには迷惑をかけずに済むのではないだろうか。

「星宇、できるなら、発情期もあなたと一緒に過ごしたい」
「それはいけません。ヨシュアを自我がないままに抱いて、傷付けてしまう可能性があります」
「おれは頑丈だから簡単に傷付いたりしない。星宇、一緒にいよう。星宇だけがつらい思いをすることはない」
「ヨシュア……」

 優しく言って龍王を抱き締めてくれるヨシュアに、龍王はますます離れることを強く望む。優しいヨシュアを傷付けたくなかった。龍の本能を剥き出しにする自分の相手をさせてはいけない。

「分かってください、ヨシュア。愛しているからこそ、離れたいのです」

 どうしても譲らない龍王にヨシュアは納得している表情ではなかった。

 抑制剤となる薬湯は苦くてえぐくてとても飲めたものではない。以前ならば飲むことを拒否していたかもしれないが、これを飲まなければヨシュアと会えない日が増えると思うと、龍王は大人しくそのものすごくまずい薬湯を全部飲みほした。

 発情期が来たのは数日後のことだった。
 体が熱くて、頭がくらくらして、ヨシュアのことしか考えられなくなる前に、龍王は黄宮こうきゅうの自分の部屋にイザークとシオンに手伝ってもらって何重もの結界をかけた。それと共に、自分の魔術も封じる魔術をかけてもらって、部屋に閉じこもる。
 体が熱くて、どうしようもない。
 ヨシュアの白い豊かな体が目に浮かぶ。見事な胸筋を撫でて揉んで、胸の飾りを舌でなぶって吸って、丸い臀部を揉みしだいて、柔らかな奥に自身を突き入れたい。
 思考がそれ一色に染まって、龍王は寝台の上で呻く。

「ヨシュア……ヨシュア……」

 名前を呼んでも自分から拒んでいるので来るわけがないが、張りつめた中心を握ると、すぐに反応して扱く手が止められない。
 先走りを塗り込むようにしてぐちゅぐちゅと扱いていると、ヨシュアの体が思い浮かぶ。あの体に触れたい。柔らかく熱くきつく龍王を包み込むヨシュアの中に欲望を吐き出したい。

 手で触れて、達してもすぐにがちがちに硬くなるそこは、普段よりも凶悪さを増している気がする。龍王の体格に反してそこは非常に逞しいのだが、普段以上の大きさを誇って反り返っている。

 何度手で抜いても満足感などなく、ただただ虚しいだけで、龍王は自分の体液でぐちゃぐちゃの寝台の上で咆哮した。

 もう自我などないに等しい。
 ただただヨシュアが欲しい。
 ヨシュアに受け止めてほしい。

 自分でヨシュアを遠ざけると決めたのに、咆哮してヨシュアの名前を呼び、寝台の布団を引き裂き、枕を叩きつけ、羽毛にまみれた龍王は爪も龍のように伸びて曲がり、握り締める自分の手を傷付ける。二対ある犬歯も龍の牙のように尖って噛み締める自らの唇から血を流す。
 こらえきれない体の熱に、結界を解こうともがくが、部屋の外でイザークとシオンが必死に結界を張り直している気配がする。

 もう本能しかない龍王はイザークとシオンの存在を邪魔だと認識していた。
 無理やり解いた魔術の封印に、魔術を使えるように戻った龍王は、イザークとシオンを排除しようと魔術を振りかざす。
 その魔術がイザークとシオンを襲う前に霧散した。
 崩れかけていた結界が解かれて、部屋の戸が開く。

「星宇、おいで」

 そこに立っていたヨシュアに龍王が襲い掛かろうとすると、ヨシュアは軽々と龍王の体を抱き留めてしまう。
 口付けを交わしながら、ヨシュアは黄宮の龍王の部屋から青陵殿のヨシュアの部屋に魔術で飛んでいた。
 布団が引き裂かれ、寝台も壊されて、酷い状態だった龍王の部屋から、整えられたヨシュアの部屋に場所が変わる。
 ヨシュアは龍王を丁寧に寝台の上に降ろすと、自ら着ていた長衣と下衣を脱ぎ捨てた。後ろ手で天蓋の幕を閉めると、結界の魔術を張る。
 突然のヨシュアの登場に反応できていなかった龍王にヨシュアが覆い被さる。その後孔からはたっぷりと仕込まれた香油が溢れ出し、ヨシュアの太ももを伝っていた。

「ヨシュア……ヨシュア……」
「星宇、普段より大きいな。まぁ、入るだろ」

 中途半端に引っかかっている龍王の服も全部脱がせてしまうと、ヨシュアは龍王の強直の上に腰を落としていく。香油で解して広げていたらしいその場所は、きつく龍王を食い締めながら中に導く。

「あぁっ! ヨシュア……どうして……」
「星宇が一人で苦しむなんて冗談じゃない。おれの話は聞いてもらえないようだったから、実力行使で攫ってきた」

 僅かに残った自我がいけないと警鐘を鳴らすが、それ以上に包み込まれる快感に龍王は溺れた。ゆっくりと腰を落とそうとするヨシュアの腰を掴んで、下から一気に突き上げる。

「ひぁっ!? しん、ゆー……いけないひとだな」

 奥まで突かれてヨシュアが息を切らしながら、龍王の頬を撫でる。
 もう無理だ。
 龍王は完全に自我を手放した。

 ヨシュアを寝台に押し倒し、がつがつと奥を抉る。深い場所で阻まれるのを、無理やりにこじ開ける。

「あぁぁっ!? 星宇、そこ、だめぇ!」
「ヨシュア……気持ちいい……ヨシュア、愛してる」

 奥の柔らかな場所をこじ開けてそこにたっぷりと白濁を注ぎ込んでも、まだ龍王の中心は猛ったままだった。
 ヨシュアの体を裏返して背中から腰を打ち付ける。胸に手を当てて、爪で傷つけないように手の平全体で、胸の飾りを潰すように揉み解すと、ヨシュアの中が甘く締め付けてくる。

「星宇……あっ! ひぁっ!」
「ヨシュア、ヨシュア」

 ただヨシュアの名前を呼んで、背中の翅の模様に噛み付き、首筋に噛み付き、赤い痕を残していく。
 自分の手でも何度も達していたのに、ヨシュアの中にも大量に注ぎ込んで、龍王はヨシュアの体の上に倒れ込んだ。
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