龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する

秋月真鳥

文字の大きさ
上 下
22 / 150
一章 龍王は王配と出会う

22.ヨシュアの秘密

しおりを挟む
「ちょっちょっと何やってんすか葛宮さん!?」

 葛宮の行動が理解不能なのはいつものことだが、今日は一段とタガが外れていた。
 俺たちは車に乗り込み汐見の様子を見ていたのだが……。
 汐見と水川がマンションに入っていくや否や、葛宮はどこかに電話をかけた。

「……僕だ。ちょっと聞きたいことがあって……あぁ、水川弓月だよ…………3002だね、ありがとう」

 俺と晴瀬は顔を見合わせる。

「上の階を押さえてくれないか?うん……指紋は登録してある僕のもので構わない。……頼むよ」

 そう言うと葛宮は電話を切り、車を降りた。

「さぁ、行こう!」
「どこへ!?」
「水川弓月の部屋の上の部屋だ」
「何者だよあんた!?!?」

 このマンションは父の管理物件でね……等とのたまいやがる。
 葛宮の家が超絶金持ちであることは知っていたが、こんな高級タワマンを管理してるって一体どんな家だよ!?
 俺は話のついていけなさで思わず呟いた。


「……ボンボンはやることが違うよ」
「犯罪に走らずに済んだことを君は喜ぶべきじゃないか?」

 確かに、葛宮のコネがなければおそらく法に触れるやり方でこのタワマンに侵入する羽目になっていただろう。
 喜んでいいのか悲しんでいいのか、少なくともこの金持ちに少々イラっとはする。

「へ~俺タワマンなんか入るの初めてだわ。オーナー、俺にも融通効かせてここ入れてよ」
「君は部屋汚すからダメ」

 晴瀬が軽口を叩く一方、葛宮は自身の指紋で難なく入り口のオートロックを開けた。
 俺たち三人は、タワマンの中に正面堂々潜入したのだった。
 エントランスではコンシェルジュが葛宮にそっと耳打ちする。

「あぁ、助かるよ」

 葛宮はそれだけ返した。その時は意味がわからなかったが、部屋に入った瞬間その意味を知ることになる。
 だだっ広い部屋、高級そうなインテリア、高級家具も既に置かれていて、

「盗聴機ぃ~!?」

 部屋のテーブルには盗聴機のスピーカーが置かれていた。

「ってことはなんですか?さっきのコンシェルジュが勝手にスペアキーを使って水川の部屋に忍び込んで、盗聴機を仕掛けたってことですか?」
「相変わらずイカれてんな~」
「結局犯罪じゃないですか!!!」
「汐見くんの一大事だ、手段は選んでられないだろう?」

 嘘つけ!!内心楽しんでる癖に!
 満面の笑みの葛宮が機械の電源をつけると、汐見と水川の口論、水川の過去、そしてあられもない汐見の嬌声が鮮明に聞こえてきた。

「あーらら、やべえなこりゃ」
「相変わらずいいね……生きてるって感じの感情の乗った素晴らしい声だ……」

 能天気な晴瀬と変態発動してる葛宮に、俺はもうなにも考えるまいと思った。葛宮のやりたいようにやらせよう。

『俺の幸せの中に……あんたはいない……!』

 スピーカーから汐見の信じられないほどの悲痛な叫びが響いた瞬間、葛宮の目の色が変わった。

「……乗り込むよ」
「え?」

 葛宮は俺の腕を無理やり掴んで、ベランダから下の階に飛び降りたのだった。


ガッシャーーーン!!
バリーーーーン!!

 ぎゃあああああ死ぬうううう!!
 運良くなのか計算なのか、葛宮の脚が窓ガラスを割り砕き、俺と葛宮の身体は部屋の中にするんと入り込んだ。

「よいしょっと」

 そのあとに続いて、晴瀬は極めて慎重にベランダから下に飛び降り、呑気に水川の部屋に入った。




「そこまでだ!!!」
 
 葛宮が高らかに叫ぶ。

「なんなんだ!?……というかお前ら葬儀屋の……!」

 ベッドの上で水川は怒りを滲ませながら喚いた。
 その水川の下では汐見が息を荒げながら、両股をもじもじと擦りあわせている。

「何だかんだと聞かれたら」
「答えてあげるが世の情け」
「それ以上はアウトですよ!!」

 打合せしたかのようにロ○ット団になる葛宮と晴瀬を俺は必死に止める。

「うちの大事な従業員を傷つける人間は、兄であろうが許しては置けないねえ!」
「よく言うよ、自分が満足するまで鑑賞しておいて、堪能しきってから助けに来たくせに」

 俺の言葉に晴瀬もうんうんうなずいている。
 早く助ければ良かったものの、汐見が焦らしプレイで追い込まれるまで食い入るように鑑賞していたのは葛宮だ。

「俺たち家族の問題に、首を突っ込むな……」
「何言ってるんですか!家族なら、そんなレイプ紛いなことしないでしょう!?万が一恋愛関係にあったとしても、そんな酷いことするな!!」
 
 俺は思わず叫んでいた。この好き勝手している男に汐見が傷つけられるのは無性に腹が立つ。

「俺たちは血の繋がった、唯一の家族だ。他の家族は死んだ、剣が見殺しにした。だから、俺には剣を好きにする権利がある、剣を幸せにするのも不幸にするのも、許すのも許さないのも、飼うのも、自由にするのも、全て俺だ」
「………………」
「だから、俺だけが…ブフォオウッ!!」

 水川弓月が喋り終える前に、俺はこのクソムカつく成金俺様バカ男の顔面に飛び蹴りを食らわした。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

ANGRAECUM-Genuine

清杉悠樹
恋愛
エマ・マクリーンは城で開催される新年の祝賀行事に参加することになった。 同時に舞踏会も開催されるその行事に、若い娘なら誰もが成人となって初めて参加するなら期待でわくわくするはずが、エマは失望と絶望しか感じていなかった。 何故なら父からは今日会わせる相手と結婚するように言われたからだ。 昔から父から愛情も受けた記憶が無ければ、母が亡くなり、継母が出来たが醜い子と言われ続け、本邸の離れに年老いた侍女と2人暮らしている。 そんな父からの突然の命令だったが背けるわけがなく、どんな相手だろうが受け入れてただ大人しくすることしか出来ない。 そんな祝賀行事で、運命を変える出会いが待っていた。魔法を扱う部署のマギ課室長レナート・シルヴィオと、その義妹、ホノカ・シルヴィオと出会って。 私、こんな幸せになってもいいんですか? 聖獣というもふもふが沢山出て来て、魔法もある世界です。最初は暗いですが、途中からはほのぼのとする予定です。最後はハッピーエンドです。 関連作品として、CLOVER-Genuine(注:R18指定)があります。 ANGRAECUM-Genuineは、CLOVER-Genuineのその後という感じの流れになっています。 出来ればCLOVER-Genuineを読んだ後にこちらを読んで頂いた方が分かり易いかと思います。 アルファポリス、小説家になろう、pixivに同時公開しています。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

処理中です...