53 / 64
愛してるは言えない台詞 〜みち〜
届かぬ月 6
しおりを挟む
無事に冴の熱は下がって、連月にもうつった兆候はないというメールを受け取ったとき、路彦は見事に熱発していた。体温計の表示する高熱と冴と接触したことから、病院に行けば検査するまでもなく、抗インフルエンザ薬を処方された。
「発熱から時間が経たないとインフルエンザの陽性反応は出ないんですが、状況から見て、インフルエンザには違いないでしょう。高熱の中でもう一度病院に来る手間を考えたら、今処方しておいた方が良いかと思われます」
「ありがとうございます、助かります」
マスクをして鼻をずびずびと言わせて、路彦はレトルトのお粥やスポーツドリンクを買い込んで、病院から帰った。
帰ってから連月に、インフルエンザに罹ってしまったことと、冴が回復して連月もうつらなくて良かったという返事を書いたら、すぐに電話がかかってきた。
『路彦さん、さぁちゃんがうつしてしもたんやて? 看病に行くさかい、お家の場所、教えてください』
「ダメですよ。立田さん、冬のコレクションまで一週間ないんですよ?」
デザインは全て終わって、挨拶をする予定もない路彦はコレクションの期間も休んでいて構わないが、連月はうつってしまえば、専属モデルがコレクションに欠けることになってしまう。そもそも、インフルエンザのような感染力の強い病気の相手を、健康な成人男性とはいえ、気軽に見舞って良いものではない。
『俺が迷惑かけたようなもんやないの。お家に差し入れだけでも届けさせてもらえへん?』
「立田さんは、コレクションに集中してください」
きっぱりと断れば、電話の向こうでため息が聞こえた。
『自分で何でも決めてしまわはるし、俺に頼ってくれへんし、ベッドではあんなにかわええのに、路彦さんは大人で、俺が子どもみたいや』
拗ねたような口調の真意が読み取れず、路彦は熱でぼんやりとする頭で必死に言葉を紡ごうとするが、それより先に『治ったら連絡ください』といつもより他人行儀に連月が言って通話を切ってしまった。携帯電話を枕元に投げ出して、ベッドに寝転ぶ。
目を閉じると、薬が効いたのか、眠気が襲ってきた。
ーー俺のこと、好きやろ?
ーー路彦さん、ほんまにかわええわ
ーー嫌や言うても、体は悦んではるよ?
ーー俺のもんにしてええやろ?
夢うつつで連月の声が、脳内をぐるぐると巡る。
あの美しい連月が路彦の身体のどこが気に入ったのか分からないが、確かに路彦を抱いた。初めてのときは覚えていなかったが、二回目ははっきりと覚えている。体格差があるから、連月は路彦の助けがなければ脱がすこともできない。自分の意思で路彦は連月に身体を預けたのだ。
そのことに関して後悔はないが、もう一度求められたら歯止めが利かなくなるような気がして怖かった。既に路彦はかなり連月に溺れている自覚がある。誰もが羨むような美しい男に大事にされて、可愛いと言われれば、それは有頂天にもなるだろう。
今までの相手を捨ててきたように、いつか路彦も捨てられるのだろうか。
薬のおかげで熱は下がったようで水を飲みにキッチンに向かう途中で、付けたテレビのニュースが「立田連月が男性同士の愛を描く映画に出演」と告げた。
アクション映画のためにスタントを学び、死に至る病人を演じるために体重を10キロも落とす。芸のためなら何でもやる役者、立田連月。
「俺も、芸の肥やしか」
それならば、美しく咲いてもらわねばならない。
冬のコレクションで路彦のデザインした蓮の花をイメージしたペンダントトップは、連月に似合うだろうか。残念ながらインフルエンザで休んでいる路彦には、それを実際に見ることは叶わなかった。
熱が下がってから三日以上経ってから、路彦は工房での仕事を再開した。連月にも「治りました」とメールを送れば、「迷惑かけたお詫びと、全快祝いに食事でもどうですか?」と返ってきた。ニュースでの発表を知ってから、路彦の中で連月が自分に執着する意味が分かったような気がして、若干吹っ切れてもいたから「冴ちゃんも一緒に」と返すと、連月の家に招待された。
食事の後には抱かれるのだろうと着替えを準備してから、これまでそれほど気にならなかったのに、妙に意識してしまって、シャワーを浴びて身体を磨き上げてしまう。三十路にもなって何を期待しているのだろうと笑われるかもしれないが、汚い自分よりも厳つい外見は変えられないとしても、せめて清潔な自分で連月の前に立ちたい。
仕事を終えてから連月の家を訪ねると、玄関に冴が走ってきて、しっかりと路彦の脚にしがみ付く。
「みちひこさんです! さえが、インフルエンザをうつしてしまってごめんなさい! さえのこと、きらいにならないでください」
「冴ちゃんは可愛いし、冴ちゃんのせいじゃないし、冴ちゃんのことは大好きだよ」
可愛い仕草に、冴の両脇に手を入れて抱き上げると、ふにゃりと冴が笑った。よほど心配をさせたらしい。
「なんや、さぁちゃんには良い顔して」
いらっしゃいと言いつつ、割烹着姿の連月が出てきて、路彦は家に上がらせてもらった。食事の準備ができるまで待っていて欲しいと言われて、ソファに座ると、冴が路彦の作ったビジューの付いたリボンの髪飾りを持ってくる。
「かみのけ、むすんでください。ししょー、てきとーなのです!」
「立田さんは忙しいんだと思うよ」
「かわいくしたい、おとめごころがわかっていないのです!」
頬っぺたを膨らませる冴を膝の上に抱っこして、横の髪を編み込みにして、真後ろで束ねて髪飾りで留める。鏡で結んだところを見ようとしても、真後ろなので見えずに、ぶんぶんと頭を振るような格好になる冴が可愛くて、路彦は笑ってしまった。
「こうしたら見えるよね?」
「かわいいのです!」
手鏡を取り出して合わせ鏡にするとようやく結んだところが見えて、冴が目を輝かせた。
夕食は豪勢に、連月の手作りで。
「デザートは、路彦さんやで?」
甘く良い声で耳元で囁かれて、路彦はぞわりと腰に快感が走るのを、必死で堪えた。
夕食後には冴をお風呂に入れて、子ども部屋で寝かせる。久しぶりなのではしゃいでいる冴が路彦に絵本を読んでもらっている間に、連月は食器を片付けてしまっていた。
「さぁちゃん、寝た?」
「はい、ぐっすり」
子ども部屋から路彦が出てくると、連月がするりとその腕に腕を絡ませる。
「一緒にお風呂に入らへん? 俺ら、そういうの、したことないやろ?」
「いえ、仕事で汗掻いたから、シャワー浴びてきちゃったんですよ」
本当は連月に抱かれるために磨いてきたなど言えずに嘘をついてしまってから、路彦はハッとした。これから撮る映画で、男性同士で風呂に入るシーンがあるのかもしれない。それならば、協力しなければいけなかった。
「こうなるのを、期待して今夜は来てくれたんやろ? お風呂は残念やけど、路彦さんが俺に抱かれたいて思うてくれるの、嬉しいわぁ」
落胆を見せたりせずに、逆に良い方に考えてくれる連月に安堵したが、寝室に連れて行かれて、服を脱がされるのには毎度慣れない。全て連月の思う通りにされているような感覚だが、嫌ではないのは幼い頃から連月を能楽堂で、テレビで、映画で見て、好意を抱いていたためだろう。
白い形の良い手が、路彦の鍛え上げられた胸を執拗に揉む。そんな場所で感じるなんて信じられないのに、胸の尖りを摘まみ上げられると、「ひゃんっ!?」と悲鳴を上げて身体を反らせてしまう。
「いやらしい雄っぱいや。こんなけしからん雄っぱいで、今まで誰にも抱かれたことないやなんて、信じられへんわ」
「あっ……俺、なんか、誰も……んんっ!」
胸の尖りに歯を立てられて、びくびくと体が跳ねた。
「ここも、綺麗にしてくれてはるんやろ?」
脚を開かされて、腰が浮くほど膝を曲げられて、露わになった後孔に、ぬるりと濡れた感触があった。
「やぁっ!? だめぇっ! そんなとこ、きたな、いぃっ!?」
「路彦さんの体はどっこも汚くなんてあらへんで」
周辺を舐めて舌を差し込もうとする連月に、路彦は腰を捻って逃げようとする。もがく路彦の中心を握って、連月が緩々と扱き始めた。
「いやぁ……どうじ、だめっ……おかしく、なるぅっ!」
後孔に与えられる快感と前に与えられる快感で、おかしくなりそうになって泣き出した路彦を宥めて、連月はその夜も優しく、激しく、路彦を抱いた。
「発熱から時間が経たないとインフルエンザの陽性反応は出ないんですが、状況から見て、インフルエンザには違いないでしょう。高熱の中でもう一度病院に来る手間を考えたら、今処方しておいた方が良いかと思われます」
「ありがとうございます、助かります」
マスクをして鼻をずびずびと言わせて、路彦はレトルトのお粥やスポーツドリンクを買い込んで、病院から帰った。
帰ってから連月に、インフルエンザに罹ってしまったことと、冴が回復して連月もうつらなくて良かったという返事を書いたら、すぐに電話がかかってきた。
『路彦さん、さぁちゃんがうつしてしもたんやて? 看病に行くさかい、お家の場所、教えてください』
「ダメですよ。立田さん、冬のコレクションまで一週間ないんですよ?」
デザインは全て終わって、挨拶をする予定もない路彦はコレクションの期間も休んでいて構わないが、連月はうつってしまえば、専属モデルがコレクションに欠けることになってしまう。そもそも、インフルエンザのような感染力の強い病気の相手を、健康な成人男性とはいえ、気軽に見舞って良いものではない。
『俺が迷惑かけたようなもんやないの。お家に差し入れだけでも届けさせてもらえへん?』
「立田さんは、コレクションに集中してください」
きっぱりと断れば、電話の向こうでため息が聞こえた。
『自分で何でも決めてしまわはるし、俺に頼ってくれへんし、ベッドではあんなにかわええのに、路彦さんは大人で、俺が子どもみたいや』
拗ねたような口調の真意が読み取れず、路彦は熱でぼんやりとする頭で必死に言葉を紡ごうとするが、それより先に『治ったら連絡ください』といつもより他人行儀に連月が言って通話を切ってしまった。携帯電話を枕元に投げ出して、ベッドに寝転ぶ。
目を閉じると、薬が効いたのか、眠気が襲ってきた。
ーー俺のこと、好きやろ?
ーー路彦さん、ほんまにかわええわ
ーー嫌や言うても、体は悦んではるよ?
ーー俺のもんにしてええやろ?
夢うつつで連月の声が、脳内をぐるぐると巡る。
あの美しい連月が路彦の身体のどこが気に入ったのか分からないが、確かに路彦を抱いた。初めてのときは覚えていなかったが、二回目ははっきりと覚えている。体格差があるから、連月は路彦の助けがなければ脱がすこともできない。自分の意思で路彦は連月に身体を預けたのだ。
そのことに関して後悔はないが、もう一度求められたら歯止めが利かなくなるような気がして怖かった。既に路彦はかなり連月に溺れている自覚がある。誰もが羨むような美しい男に大事にされて、可愛いと言われれば、それは有頂天にもなるだろう。
今までの相手を捨ててきたように、いつか路彦も捨てられるのだろうか。
薬のおかげで熱は下がったようで水を飲みにキッチンに向かう途中で、付けたテレビのニュースが「立田連月が男性同士の愛を描く映画に出演」と告げた。
アクション映画のためにスタントを学び、死に至る病人を演じるために体重を10キロも落とす。芸のためなら何でもやる役者、立田連月。
「俺も、芸の肥やしか」
それならば、美しく咲いてもらわねばならない。
冬のコレクションで路彦のデザインした蓮の花をイメージしたペンダントトップは、連月に似合うだろうか。残念ながらインフルエンザで休んでいる路彦には、それを実際に見ることは叶わなかった。
熱が下がってから三日以上経ってから、路彦は工房での仕事を再開した。連月にも「治りました」とメールを送れば、「迷惑かけたお詫びと、全快祝いに食事でもどうですか?」と返ってきた。ニュースでの発表を知ってから、路彦の中で連月が自分に執着する意味が分かったような気がして、若干吹っ切れてもいたから「冴ちゃんも一緒に」と返すと、連月の家に招待された。
食事の後には抱かれるのだろうと着替えを準備してから、これまでそれほど気にならなかったのに、妙に意識してしまって、シャワーを浴びて身体を磨き上げてしまう。三十路にもなって何を期待しているのだろうと笑われるかもしれないが、汚い自分よりも厳つい外見は変えられないとしても、せめて清潔な自分で連月の前に立ちたい。
仕事を終えてから連月の家を訪ねると、玄関に冴が走ってきて、しっかりと路彦の脚にしがみ付く。
「みちひこさんです! さえが、インフルエンザをうつしてしまってごめんなさい! さえのこと、きらいにならないでください」
「冴ちゃんは可愛いし、冴ちゃんのせいじゃないし、冴ちゃんのことは大好きだよ」
可愛い仕草に、冴の両脇に手を入れて抱き上げると、ふにゃりと冴が笑った。よほど心配をさせたらしい。
「なんや、さぁちゃんには良い顔して」
いらっしゃいと言いつつ、割烹着姿の連月が出てきて、路彦は家に上がらせてもらった。食事の準備ができるまで待っていて欲しいと言われて、ソファに座ると、冴が路彦の作ったビジューの付いたリボンの髪飾りを持ってくる。
「かみのけ、むすんでください。ししょー、てきとーなのです!」
「立田さんは忙しいんだと思うよ」
「かわいくしたい、おとめごころがわかっていないのです!」
頬っぺたを膨らませる冴を膝の上に抱っこして、横の髪を編み込みにして、真後ろで束ねて髪飾りで留める。鏡で結んだところを見ようとしても、真後ろなので見えずに、ぶんぶんと頭を振るような格好になる冴が可愛くて、路彦は笑ってしまった。
「こうしたら見えるよね?」
「かわいいのです!」
手鏡を取り出して合わせ鏡にするとようやく結んだところが見えて、冴が目を輝かせた。
夕食は豪勢に、連月の手作りで。
「デザートは、路彦さんやで?」
甘く良い声で耳元で囁かれて、路彦はぞわりと腰に快感が走るのを、必死で堪えた。
夕食後には冴をお風呂に入れて、子ども部屋で寝かせる。久しぶりなのではしゃいでいる冴が路彦に絵本を読んでもらっている間に、連月は食器を片付けてしまっていた。
「さぁちゃん、寝た?」
「はい、ぐっすり」
子ども部屋から路彦が出てくると、連月がするりとその腕に腕を絡ませる。
「一緒にお風呂に入らへん? 俺ら、そういうの、したことないやろ?」
「いえ、仕事で汗掻いたから、シャワー浴びてきちゃったんですよ」
本当は連月に抱かれるために磨いてきたなど言えずに嘘をついてしまってから、路彦はハッとした。これから撮る映画で、男性同士で風呂に入るシーンがあるのかもしれない。それならば、協力しなければいけなかった。
「こうなるのを、期待して今夜は来てくれたんやろ? お風呂は残念やけど、路彦さんが俺に抱かれたいて思うてくれるの、嬉しいわぁ」
落胆を見せたりせずに、逆に良い方に考えてくれる連月に安堵したが、寝室に連れて行かれて、服を脱がされるのには毎度慣れない。全て連月の思う通りにされているような感覚だが、嫌ではないのは幼い頃から連月を能楽堂で、テレビで、映画で見て、好意を抱いていたためだろう。
白い形の良い手が、路彦の鍛え上げられた胸を執拗に揉む。そんな場所で感じるなんて信じられないのに、胸の尖りを摘まみ上げられると、「ひゃんっ!?」と悲鳴を上げて身体を反らせてしまう。
「いやらしい雄っぱいや。こんなけしからん雄っぱいで、今まで誰にも抱かれたことないやなんて、信じられへんわ」
「あっ……俺、なんか、誰も……んんっ!」
胸の尖りに歯を立てられて、びくびくと体が跳ねた。
「ここも、綺麗にしてくれてはるんやろ?」
脚を開かされて、腰が浮くほど膝を曲げられて、露わになった後孔に、ぬるりと濡れた感触があった。
「やぁっ!? だめぇっ! そんなとこ、きたな、いぃっ!?」
「路彦さんの体はどっこも汚くなんてあらへんで」
周辺を舐めて舌を差し込もうとする連月に、路彦は腰を捻って逃げようとする。もがく路彦の中心を握って、連月が緩々と扱き始めた。
「いやぁ……どうじ、だめっ……おかしく、なるぅっ!」
後孔に与えられる快感と前に与えられる快感で、おかしくなりそうになって泣き出した路彦を宥めて、連月はその夜も優しく、激しく、路彦を抱いた。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
嫁ぎ先は青髭鬼元帥といわれた大公って、なぜに?
猫桜
BL
はた迷惑な先の帝のせいで性別の差なく子が残せるそんな国で成人を前に王家から来栖 淡雪(くるす あわゆき)に縁談が届く。なんと嫁ぎ先は世間から鬼元帥とも青髭公とも言われてる西蓮寺家当主。既に3人の花嫁が行方不明となっており、次は自分が犠牲?誰が犠牲になるもんか!実家から共に西蓮寺家へとやってきた侍従と侍女と力を合わせ、速攻、円満離縁で絶対に生きて帰ってやるっ!!
【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件
神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。
僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。
だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。
子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。
ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。
指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。
あれから10年近く。
ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。
だけど想いを隠すのは苦しくて――。
こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。
なのにどうして――。
『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』
えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)
僕のために、忘れていて
ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ハッピーエンド
藤美りゅう
BL
恋心を抱いた人には、彼女がいましたーー。
レンタルショップ『MIMIYA』でアルバイトをする三上凛は、週末の夜に来るカップルの彼氏、堺智樹に恋心を抱いていた。
ある日、凛はそのカップルが雨の中喧嘩をするのを偶然目撃してしまい、雨が降りしきる中、帰れず立ち尽くしている智樹に自分の傘を貸してやる。
それから二人の距離は縮まろうとしていたが、一本のある映画が、凛の心にブレーキをかけてしまう。
※ 他サイトでコンテスト用に執筆した作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる