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僕が抱かれるはずがない! ~運命に裏切られるなんて冗談じゃない~
運命に裏切られるなんて冗談じゃない 7
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同棲を始めて半年近く、エルドレッドは20歳に、ジェイムズは29歳になっていた。研究は順調で、エルドレッドも大学で優秀な成績を修めている。ジェイムズの研究をエルドレッドが手伝う場面もあった。
同じく共同研究者として再び仕事を共にするかと想定していたラクランは、妊娠が分かって理人とヘイミッシュとスコットの過保護もあって、仕事時間を減らしている。作曲家兼ピアニストとして活動しながらも医学部の学生をしている理人は、父親になるので張り切っているようだった。
妊娠期間に入って貧血を起こしかけているのか、やたらと眠いというラクランをエルドレッドやヘイミッシュやスコットは、様子を見に行ったり、家事を手伝いに行ったりして助けていた。
「明日はヘイミッシュと兄さんのところに行ってくるよ。晩ご飯は作って持って帰って来るから、食べずに待っててね」
湯上りにジェイムズの髪を乾かしながら、エルドレッドが明日の予定を伝えて来る。ふわふわの巻き毛をエルドレッドは気に入っていて、髪を洗うのも乾かすのも適当なジェイムズに変わって、どちらも丁寧に指を通してやってくれて、ふわふわに仕上げてくれていた。
「君は何でもできるよね。僕が君に勝てるのは、シャツのアイロン掛けくらいしかない気がするよ」
「何でもはできないよ。できることだけ。それに、ジェイムズがアイロンをかけてくれたシャツ、ピシッとしてすごく綺麗で着心地が良いよ」
耳元でゴーゴーと鳴るドライヤーの音に遮られない、明朗なよく通る声でエルドレッドが言う。顔立ちもだが、背筋の伸びた姿勢も、白い肌も、艶やかな黒髪も、こえまでも美しいエルドレッド。
その容姿だけでも目を引くのに、世話焼きで料理上手で、家事も一切嫌がらずこなすのだから、モテないはずがない。
今のところは大学でもジェイムズは目を光らせているし、浮気の兆候はないが、エルドレッドも男性である、ジェイムズを抱けないことに焦れて、体だけの関係を求めたりする日が来ないとも限らない。女性を抱いた経験がジェイムズにはあるだけに、挿入というものが、相手に存在を許し許されるような、特別な行為であることを認識していた。
「ごめん、ヘイミッシュから電話だ。多分、明日のことだよ」
ドライヤーを片付けていたエルドレッドが携帯電話を持って、リビングから出て行ったのに、ジェイムズは少し引っかかりを感じた。
ヘイミッシュはエルドレッドの父親で、ジェイムズのことも認めてくれている。いつもは電話が来てもジェイムズの隣りに座っていたり、肩を寄せ合ったりして、離れていくことはなかった。
書斎に入ったエルドレッドを、そっと追いかけたジェイムズは、ドアの隙間から漏れ聞こえる声に耳を澄ませる。
「その話なんだけど……やっぱり、僕には向いてないっていうか。言いたくないけど、経験不足なんだよね」
何の話をしているのかと、どきりと心臓が跳ねる。性的なことに関しては、互いに中心を触れ合わせることや、手で触り合うことはあっても、エルドレッドは肝心の挿入はしたことがないはずだった。まだ一度も経験したことのないそれを、やはり男性だからしたいと思うのは当然のことなのか。
冷たい汗がジェイムズの脇の下を流れ落ちていく。
エルドレッドの会話の相手は誰なのだろう。ヘイミッシュだと言っていたが、嘘をつかれたのだろうか。
「努力はしたんだけど……無理かもしれない……」
風呂上がりにジェイムズの髪を乾かしていたエルドレッドは、いつもと変わらないように見えた。普段の様子の裏で、ジェイムズに言えない思いを隠していたのか。
別れを切り出されるのが怖くて、ジェイムズの脚が震える。
毎日エルドレッドの作る料理を食べて、車はジェイムズが一人のときに移動手段がないのは不便なので買ったが大抵はエルドレッドが大学まで送り迎えしてくれて、風呂では髪を洗って乾かしてくれて、体に触り合って眠る。この生活に完全にジェイムズは溺れ切っていた。離れていた時間のつらさを知っているが故に、もう二度とエルドレッドと離れたくないと強く願っていた。
「……本当に? それなら、試してみようかな」
誰と? 何を?
風俗に行くくらいのことは許容しなければいけないのだろうか。漏れ聞こえて来る声に嫌な予感しかしない。
最後までしなくても結婚生活は成り立つとエルドレッドが言ってくれたから、ジェイムズもそれを信じてイギリスに戻って、同棲を始めた。しかし、結婚まですすまないのは、やはり理由があったのだ。
絶望的になって、それ以上何も聞きたくなくてとぼとぼとソファに戻って座ると、虚無感に襲われる。
エルドレッドを失うくらいなら、抱かれることくらい。
考えかけて本当にそれができるものなのかと、ジェイムズは青ざめた。
「ジェイムズ? どうしたの? 湯冷めした?」
通話を終えて書斎から出てきたエルドレッドが、ジェイムズの額に手をやって顔を覗き込むのに、くしゃりと泣きそうな顔になって、抱き締められた。
「僕には話せないこと?」
「ううん……エルドレッド、抱き締めて。僕を離さないで」
「もちろんだよ」
細いが力強い腕で抱き締めてくれるエルドレッドの肩口に顔を埋めて、髪の匂いを吸い込む。心は冷えていくようなのに、エルドレッドの体は暖かかった。
寝室のベッドでエルドレッドが腕の中で健やかに寝息を立てている。完全に深い眠りに落ちているのを確かめて、ジェイムズはベッドサイドのテーブルに置いてあるエルドレッドの携帯に手を伸ばした。画面をタップすると、暗証番号を求められる。
家族の誕生日や記念日を暗証番号にするような迂闊さは、エルドレッドにはない。しばらく考えて、ジェイムズは数字を打ち込んだ。
「……エルドレッドらしい」
認証されたその数字は、初めて会ったときにエルドレッドが仕掛けたクロスワードパズルのエルドレッドとジェイムズの解けた時間の差が、秒数で小数点以下まで計算されたものだった。
こっそりと見た着信履歴に、怪しいものはない。先程の通話も、間違いなくヘイミッシュからのものだった。
ハワード家は貴族の家系で、子どものできない結婚にヘイミッシュが本当は反対だったのかと、疑心暗鬼になってしまう。同棲して試してみたが、結婚は無理だと告げたエルドレッドに、ヘイミッシュが別の相手を宛てがうなど、あり得ないことまでジェイムズは想像してしまうくらい追い詰められていた。
翌日は別々に家を出て、自分で車を運転して大学まで行く。エルドレッドが一緒ならば、昼食はどうするかとか、研究の話などで盛り上げれるのに、音楽をかけても寂しいだけ。
昼にはエルドレッドが作ってくれたサンドイッチを、買ったコーヒーと食べる。鶏ののササミのソテーと炒めたキャベツと玉ねぎを挟んだサンドイッチは、ジェイムズの好物だった。今頃エルドレッドも同じ物を食べているのだろうと考えかけて、今日はラクランの家に行っているのでヘイミッシュと料理を作っているのだと気づけば、違うものを食べているというだけなのに妙に寂しくなる。
午後からは教授の手伝いで学生の論文の指導も入っていた。プリントアウトされた論文に目を通すが、内容の酷さもあって、目が滑って仕方がない。
「ジェイムズ、体調が悪いのかい?」
挙句、教授に心配される始末だった。
一時期は無精髭もそのままで、数日風呂に入っておらず、食事も碌に摂っていないこともあったが、エルドレッドと暮らし始めてからは、髭も毎日剃っていて、髪もふわふわにセットしてもらって、清潔な格好をして、食事も三食美味しいものを食べている。骨格的に厚みのある体つきだが、前よりも筋肉もしっかりとしてますます逞しくなった気がする。
それだけ改善したジェイムズが、具合が悪く見えるのだから、よほど酷い顔をしていたのだろう。早めに家に帰されても、エルドレッドの帰りが遅いので、普段はそんなこと考えもしないのに、マンションが広すぎて寒々しく感じられて、落ち着かなかった。
ラクランの家に行くと言ったのは嘘で、どこか風俗店にでも行ったのかもしれない。経験がないことを悩んでいて、試したいと相談されて、男同士、欲望があることは理解できるから、ヘイミッシュが安全な相手を紹介したとか、一昔前の貴族社会を思い浮かべて、ジェイムズはソファに座り込んで頭を抱えた。
どれくらいそうしていただろう。気が付けば部屋は真っ暗になっていて、ジェイムズはふらふらと立ち上がった。
抱かれることに妥協をすれば。
ジェイムズだって、何度もそれを考えたし、一度は自分の後孔に指で触れてみた。怖くて指一本しか入れられなかったけれど、本当に恐ろしかったのは、抱かれることではなく、エルドレッドに抱かれて、逞しく厳つい自分が、情けなく喘ぐ姿だったのかもしれない。
「エルドレッド……」
失うくらいなら、抱かれても構わない。
潤滑剤と避妊具を買ってきて、ジェイムズは死刑台に上がるような心地で、バスルームに入っていった。
同じく共同研究者として再び仕事を共にするかと想定していたラクランは、妊娠が分かって理人とヘイミッシュとスコットの過保護もあって、仕事時間を減らしている。作曲家兼ピアニストとして活動しながらも医学部の学生をしている理人は、父親になるので張り切っているようだった。
妊娠期間に入って貧血を起こしかけているのか、やたらと眠いというラクランをエルドレッドやヘイミッシュやスコットは、様子を見に行ったり、家事を手伝いに行ったりして助けていた。
「明日はヘイミッシュと兄さんのところに行ってくるよ。晩ご飯は作って持って帰って来るから、食べずに待っててね」
湯上りにジェイムズの髪を乾かしながら、エルドレッドが明日の予定を伝えて来る。ふわふわの巻き毛をエルドレッドは気に入っていて、髪を洗うのも乾かすのも適当なジェイムズに変わって、どちらも丁寧に指を通してやってくれて、ふわふわに仕上げてくれていた。
「君は何でもできるよね。僕が君に勝てるのは、シャツのアイロン掛けくらいしかない気がするよ」
「何でもはできないよ。できることだけ。それに、ジェイムズがアイロンをかけてくれたシャツ、ピシッとしてすごく綺麗で着心地が良いよ」
耳元でゴーゴーと鳴るドライヤーの音に遮られない、明朗なよく通る声でエルドレッドが言う。顔立ちもだが、背筋の伸びた姿勢も、白い肌も、艶やかな黒髪も、こえまでも美しいエルドレッド。
その容姿だけでも目を引くのに、世話焼きで料理上手で、家事も一切嫌がらずこなすのだから、モテないはずがない。
今のところは大学でもジェイムズは目を光らせているし、浮気の兆候はないが、エルドレッドも男性である、ジェイムズを抱けないことに焦れて、体だけの関係を求めたりする日が来ないとも限らない。女性を抱いた経験がジェイムズにはあるだけに、挿入というものが、相手に存在を許し許されるような、特別な行為であることを認識していた。
「ごめん、ヘイミッシュから電話だ。多分、明日のことだよ」
ドライヤーを片付けていたエルドレッドが携帯電話を持って、リビングから出て行ったのに、ジェイムズは少し引っかかりを感じた。
ヘイミッシュはエルドレッドの父親で、ジェイムズのことも認めてくれている。いつもは電話が来てもジェイムズの隣りに座っていたり、肩を寄せ合ったりして、離れていくことはなかった。
書斎に入ったエルドレッドを、そっと追いかけたジェイムズは、ドアの隙間から漏れ聞こえる声に耳を澄ませる。
「その話なんだけど……やっぱり、僕には向いてないっていうか。言いたくないけど、経験不足なんだよね」
何の話をしているのかと、どきりと心臓が跳ねる。性的なことに関しては、互いに中心を触れ合わせることや、手で触り合うことはあっても、エルドレッドは肝心の挿入はしたことがないはずだった。まだ一度も経験したことのないそれを、やはり男性だからしたいと思うのは当然のことなのか。
冷たい汗がジェイムズの脇の下を流れ落ちていく。
エルドレッドの会話の相手は誰なのだろう。ヘイミッシュだと言っていたが、嘘をつかれたのだろうか。
「努力はしたんだけど……無理かもしれない……」
風呂上がりにジェイムズの髪を乾かしていたエルドレッドは、いつもと変わらないように見えた。普段の様子の裏で、ジェイムズに言えない思いを隠していたのか。
別れを切り出されるのが怖くて、ジェイムズの脚が震える。
毎日エルドレッドの作る料理を食べて、車はジェイムズが一人のときに移動手段がないのは不便なので買ったが大抵はエルドレッドが大学まで送り迎えしてくれて、風呂では髪を洗って乾かしてくれて、体に触り合って眠る。この生活に完全にジェイムズは溺れ切っていた。離れていた時間のつらさを知っているが故に、もう二度とエルドレッドと離れたくないと強く願っていた。
「……本当に? それなら、試してみようかな」
誰と? 何を?
風俗に行くくらいのことは許容しなければいけないのだろうか。漏れ聞こえて来る声に嫌な予感しかしない。
最後までしなくても結婚生活は成り立つとエルドレッドが言ってくれたから、ジェイムズもそれを信じてイギリスに戻って、同棲を始めた。しかし、結婚まですすまないのは、やはり理由があったのだ。
絶望的になって、それ以上何も聞きたくなくてとぼとぼとソファに戻って座ると、虚無感に襲われる。
エルドレッドを失うくらいなら、抱かれることくらい。
考えかけて本当にそれができるものなのかと、ジェイムズは青ざめた。
「ジェイムズ? どうしたの? 湯冷めした?」
通話を終えて書斎から出てきたエルドレッドが、ジェイムズの額に手をやって顔を覗き込むのに、くしゃりと泣きそうな顔になって、抱き締められた。
「僕には話せないこと?」
「ううん……エルドレッド、抱き締めて。僕を離さないで」
「もちろんだよ」
細いが力強い腕で抱き締めてくれるエルドレッドの肩口に顔を埋めて、髪の匂いを吸い込む。心は冷えていくようなのに、エルドレッドの体は暖かかった。
寝室のベッドでエルドレッドが腕の中で健やかに寝息を立てている。完全に深い眠りに落ちているのを確かめて、ジェイムズはベッドサイドのテーブルに置いてあるエルドレッドの携帯に手を伸ばした。画面をタップすると、暗証番号を求められる。
家族の誕生日や記念日を暗証番号にするような迂闊さは、エルドレッドにはない。しばらく考えて、ジェイムズは数字を打ち込んだ。
「……エルドレッドらしい」
認証されたその数字は、初めて会ったときにエルドレッドが仕掛けたクロスワードパズルのエルドレッドとジェイムズの解けた時間の差が、秒数で小数点以下まで計算されたものだった。
こっそりと見た着信履歴に、怪しいものはない。先程の通話も、間違いなくヘイミッシュからのものだった。
ハワード家は貴族の家系で、子どものできない結婚にヘイミッシュが本当は反対だったのかと、疑心暗鬼になってしまう。同棲して試してみたが、結婚は無理だと告げたエルドレッドに、ヘイミッシュが別の相手を宛てがうなど、あり得ないことまでジェイムズは想像してしまうくらい追い詰められていた。
翌日は別々に家を出て、自分で車を運転して大学まで行く。エルドレッドが一緒ならば、昼食はどうするかとか、研究の話などで盛り上げれるのに、音楽をかけても寂しいだけ。
昼にはエルドレッドが作ってくれたサンドイッチを、買ったコーヒーと食べる。鶏ののササミのソテーと炒めたキャベツと玉ねぎを挟んだサンドイッチは、ジェイムズの好物だった。今頃エルドレッドも同じ物を食べているのだろうと考えかけて、今日はラクランの家に行っているのでヘイミッシュと料理を作っているのだと気づけば、違うものを食べているというだけなのに妙に寂しくなる。
午後からは教授の手伝いで学生の論文の指導も入っていた。プリントアウトされた論文に目を通すが、内容の酷さもあって、目が滑って仕方がない。
「ジェイムズ、体調が悪いのかい?」
挙句、教授に心配される始末だった。
一時期は無精髭もそのままで、数日風呂に入っておらず、食事も碌に摂っていないこともあったが、エルドレッドと暮らし始めてからは、髭も毎日剃っていて、髪もふわふわにセットしてもらって、清潔な格好をして、食事も三食美味しいものを食べている。骨格的に厚みのある体つきだが、前よりも筋肉もしっかりとしてますます逞しくなった気がする。
それだけ改善したジェイムズが、具合が悪く見えるのだから、よほど酷い顔をしていたのだろう。早めに家に帰されても、エルドレッドの帰りが遅いので、普段はそんなこと考えもしないのに、マンションが広すぎて寒々しく感じられて、落ち着かなかった。
ラクランの家に行くと言ったのは嘘で、どこか風俗店にでも行ったのかもしれない。経験がないことを悩んでいて、試したいと相談されて、男同士、欲望があることは理解できるから、ヘイミッシュが安全な相手を紹介したとか、一昔前の貴族社会を思い浮かべて、ジェイムズはソファに座り込んで頭を抱えた。
どれくらいそうしていただろう。気が付けば部屋は真っ暗になっていて、ジェイムズはふらふらと立ち上がった。
抱かれることに妥協をすれば。
ジェイムズだって、何度もそれを考えたし、一度は自分の後孔に指で触れてみた。怖くて指一本しか入れられなかったけれど、本当に恐ろしかったのは、抱かれることではなく、エルドレッドに抱かれて、逞しく厳つい自分が、情けなく喘ぐ姿だったのかもしれない。
「エルドレッド……」
失うくらいなら、抱かれても構わない。
潤滑剤と避妊具を買ってきて、ジェイムズは死刑台に上がるような心地で、バスルームに入っていった。
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