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偽りの運命 ~運命だと嘘をついた~
運命だと嘘をついた 9
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毎年、誕生日にはケーキ屋でケーキを選んで、家でみんなで切り分けて食べる。1月の最初の方が誕生日のエルドレッドは、甘いものよりもチーズなどが好きなので、エルドレッドの誕生日にはチーズフォンデュとチョコフォンデュをする。1月の終わりの方のラクランの誕生日にはケーキを選んで、5月の理人の誕生日にはラクランと同じケーキを選ぶのが恒例になっていた。
「ランさんの好きなのが食べたいねん。ランさんの好みの男になるんやからな」
訛りは取れないが、喋りはしっかりして来た7歳の理人は、ひょろりと背も伸びて、クラスで大きい方に入るようになった。手足も細いが、鍛えられてはいる。ふわふわの赤茶色の髪は、ラクランのお気に入りだったので、長めに伸ばしていて、大きな赤茶色の目で少女のように愛らしかった。
年々男臭く逞しくなっていくラクランにとっては、理人の可愛さは羨ましくもあった。エルドレッドはヘイミッシュの血をしっかりと継いでいるようで、美少年に育ちつつある。
「アタシの好みは難しいわよぉ?」
「お、アレやな? 輝夜姫みたいに、難問を突き付けてくるんやな? 理人くん、負けへんで?」
頭も良くてユーモアもある理人は、ラクランを慕うままに育っていく。このまま育てば、16歳でラクランにプロポーズするかもしれないなんて、現実的ではないことが過って、ラクランはそれを振り払った。
同級生から無理矢理にキスをされた日以来、ラクランは家族ではない男性に触れられるのが妙に苦手になってしまった。意識してはいけないのかもしれないが、授業の質問をしに行った教室で、二人きりのときに若い男性教師が、ラクランの胸元を見ていたり、背中に手を当てたりするのが、気持ち悪くてならない。出来るだけ二人きりにならないようにするのだが、その教師はラクランの成績が良いので、もっと深い知識を与えようと呼び出してくる。
「ランさん、浮かない顔しとる。何かあった? 理人くんに話して?」
「大丈夫だと思いたいんだけど……」
ラクランの自意識過剰と思いたいが、触れられるのには抵抗があって、ヘイミッシュにもスコットにも内緒だと約束して、ラクランは理人にそっと打ち明けた。
「社会学の先生が、アタシの思い違いかもしれないけど、なんだか……」
「ランさんは優しくて、綺麗で、かっこ良くて、素敵やから、狙われてるのかもしれへん。次に呼び出されてるのいつや? 俺に任せて」
7歳とは思えないくらい頼りになる言葉に、ラクランは鼓動が速くなる。どうして心臓がうるさいのか、ラクランにはよく分からない。
三日後にその教師から呼び出されたラクランは、いつになくその教師が接近してくるのに辟易していた。ノートを確認するふりをして、ラクランの髪に触れようとする手を逃れれば、胸元に下げていたネックレスを手に取られる。理人と出会って初めての誕生日に理人がくれた石を、金属の台座に嵌めてネックレスにしたそれを、教師は笑った。
「こんな安っぽいものを着けなくてもいいのに。もっと良いものを買ってあげようか?」
「お金には困っていませんし、これは大事なひとがくれたものです」
「そう、残念」
ネックレスから手を離した教師の手が、石を追いかけるようにして、ラクランの発達した大胸筋を撫でる。ゾッとして身を引いた瞬間、パシャパシャと携帯電話の撮影音が響いた。
「証拠、押さえたで! ランさん、帰ろ! ヘイミッシュさんとスコットさんに、これ、見てもらうんや!」
先に教室に来て小さな体を最大限に利用して、机の下に隠れていた理人が、携帯電話を構えたままで出てくる。
「それを渡せ!」
「語るに落ちたなぁ、焦って取り返さなあかんようなコトしたんやもんな」
殴られそうになった理人の体を軽々と抱き上げると、ラクランは教師を睨み付けた。
「処分は覚悟してくださいね」
理人を抱き抱えたまま教室を出て、迎えに来ていたヘイミッシュの車に乗り込むと、力が抜けてラクランは膝の上の理人に縋るように抱き着いてしまった。
「やっぱり、アタシ、狙われてたのね……怖かった……理人さん、ありがとう」
「狙われてたって、何があったの?」
震えているラクランに運転席からヘイミッシュが訝しげに振り返る。理人が携帯電話で撮った写真をヘイミッシュに見せた。
「こいつが、ランさんに触りよったんや。教師って立場を利用して、他にも被害者がおるかもしれへん」
「二人だけで対処したの? 無事だったから良かったものの、相手が逆上して暴力に訴えかけて来たらどうするつもりだったのよ」
口では厳しいことを言いながらも、ヘイミッシュは震えているラクランの姿に、心配そうだった。
「アタシに手を出す相手なんて、悪趣味でいないと……」
「悪趣味やない。ランさんはめっちゃ魅力的や。もっと自覚して」
顔立ちもスコットとヘイミッシュが混ざり合って悪くはないのだろうが、この背丈と分厚い胸板、太い尻と太ももに、性的な魅力を感じるのは変態だけだとラクランは身を以て知ったような気がした。
やはり一生恋愛も結婚もしない方がいい。
「ショックだったわよね。家に帰りましょう」
警察への届け出はヘイミッシュがしてくれて、若い教師は他の生徒にも性的な悪戯をしていて、余罪が大量に見つかって、逮捕された。落ち込んでいるラクランを、スコットとエルドレッドと理人が抱き締めて慰めてくれる。
「とても怖い思いをしたね。嫌だっただろう」
「俺に打ち明けてくれて、ありがとうな。ランさんが嫌な思いをするのは俺も嫌や」
「あの男は絶対に有罪になるようにするから、兄さんはもう大丈夫だよ」
優しいスコットと、幼いのに計画を立ててラクランを守ってくれた理人。何を企んでいるのかがちょっと怖いエルドレッド。
「家族がいてくれるって幸せね」
抱き締めてくれる三人を、ラクランも抱き締め返した。
恋愛も結婚もしない。以前から決めていたことが、今回の事件でますます強くなった。優しく守ってくれる両親と可愛い弟、それに小さいが賢くて頼りになる理人がいればそれでいい。
相変わらず、理人はラクランと結婚する気で、その日を待ち望んでいた。
「後9年か。アメリカでは州によってはもっと早よ結婚できるところがないやろか」
「アタシ、イギリス人よ? 理人さんもイギリス人でしょ?」
イギリス人と日本人の間に生まれた理人は、どちらの国籍も持っている。日本では男性の結婚可能な年齢は18歳のようだが、ここはイギリスで理人はイギリス人なのだから16歳で構わない筈だ。
「理人さん、スコットにも、ヘイミッシュにも、内緒にしてくれる?」
「大事な話なんやな」
両親にも話せないことを、ラクランは不思議と理人には話せる。年に似合わぬ落ち着きをときに見せる理人だが、ラクランの前では年相応に泣いてしまうこともあった。
「アタシ、本当は運命がどんなものか分からないの。ごめんなさいね。理人さんのことが可愛くて、手放せなくて……でも、アタシ、結婚は誰ともしないと思うわ。多分、恋愛感情が欠如してるんだと思うの……性的に見られるのも、怖くて気持ち悪いだけだし」
まだたった7歳の理人に、酷なことを言っているという自覚はあった。しかし、言わなければ理人はラクランへの感情を間違ったままに育ってしまう。
泣いて、縋られても、ラクランは情に揺るがない覚悟で告げた言葉に、理人は赤茶色の目を瞬かせて、不思議そうにしていた。
「ランさんは、俺のこと嫌いやないやろ? あんな変な奴らに触られるのと、俺に触られるのは全く違うやろ? 俺はランさんが好きや。ランさんが庭で見つけてくれて、抱き上げてくれたときから、こんなに美しくて優しいひとはおらんと思ってた。俺が大人になって、ランさんが俺と結婚したくないんやったら、身を引くけど、まだ俺は結婚できる年にもなってへん。スタートラインに立ってもないのに、俺がダメやって、言わんといて」
真摯に確かな熱量を持っての告白に、ラクランは大いに動揺した。確かに理人はラクランに触れた二人の男とは全く違うし、胸に触れられても、抱き締めて眠っても、少しも不快ではない。暖かさやいい匂いに、安心してよく眠れるくらいだ。
「それは……理人さんが小さくて、まだ世界が狭いからじゃないかしら。沢山のひとに出会ったら、もっとお似合いの素敵なひとが見つかるかもしれないわ」
「誰かが俺に『お似合い』とか『素敵』とかいう相手がおっても、俺にとってはランさんが世界一素敵で、俺にお似合いなんや。お願いやから、俺の気持ちをランさんが決めてしまわんで。ランさんが俺のことが嫌なんやったら、それはランさんの気持ちやから諦めるけど」
運命ではないと告げても、理人の方はラクランを運命だと思っていると答えが来る。
7歳の言葉をどこまで信じていいのか。
困惑しながらも、その言葉がラクランの胸に甘く響いたのは隠せない事実だった。
「ランさんの好きなのが食べたいねん。ランさんの好みの男になるんやからな」
訛りは取れないが、喋りはしっかりして来た7歳の理人は、ひょろりと背も伸びて、クラスで大きい方に入るようになった。手足も細いが、鍛えられてはいる。ふわふわの赤茶色の髪は、ラクランのお気に入りだったので、長めに伸ばしていて、大きな赤茶色の目で少女のように愛らしかった。
年々男臭く逞しくなっていくラクランにとっては、理人の可愛さは羨ましくもあった。エルドレッドはヘイミッシュの血をしっかりと継いでいるようで、美少年に育ちつつある。
「アタシの好みは難しいわよぉ?」
「お、アレやな? 輝夜姫みたいに、難問を突き付けてくるんやな? 理人くん、負けへんで?」
頭も良くてユーモアもある理人は、ラクランを慕うままに育っていく。このまま育てば、16歳でラクランにプロポーズするかもしれないなんて、現実的ではないことが過って、ラクランはそれを振り払った。
同級生から無理矢理にキスをされた日以来、ラクランは家族ではない男性に触れられるのが妙に苦手になってしまった。意識してはいけないのかもしれないが、授業の質問をしに行った教室で、二人きりのときに若い男性教師が、ラクランの胸元を見ていたり、背中に手を当てたりするのが、気持ち悪くてならない。出来るだけ二人きりにならないようにするのだが、その教師はラクランの成績が良いので、もっと深い知識を与えようと呼び出してくる。
「ランさん、浮かない顔しとる。何かあった? 理人くんに話して?」
「大丈夫だと思いたいんだけど……」
ラクランの自意識過剰と思いたいが、触れられるのには抵抗があって、ヘイミッシュにもスコットにも内緒だと約束して、ラクランは理人にそっと打ち明けた。
「社会学の先生が、アタシの思い違いかもしれないけど、なんだか……」
「ランさんは優しくて、綺麗で、かっこ良くて、素敵やから、狙われてるのかもしれへん。次に呼び出されてるのいつや? 俺に任せて」
7歳とは思えないくらい頼りになる言葉に、ラクランは鼓動が速くなる。どうして心臓がうるさいのか、ラクランにはよく分からない。
三日後にその教師から呼び出されたラクランは、いつになくその教師が接近してくるのに辟易していた。ノートを確認するふりをして、ラクランの髪に触れようとする手を逃れれば、胸元に下げていたネックレスを手に取られる。理人と出会って初めての誕生日に理人がくれた石を、金属の台座に嵌めてネックレスにしたそれを、教師は笑った。
「こんな安っぽいものを着けなくてもいいのに。もっと良いものを買ってあげようか?」
「お金には困っていませんし、これは大事なひとがくれたものです」
「そう、残念」
ネックレスから手を離した教師の手が、石を追いかけるようにして、ラクランの発達した大胸筋を撫でる。ゾッとして身を引いた瞬間、パシャパシャと携帯電話の撮影音が響いた。
「証拠、押さえたで! ランさん、帰ろ! ヘイミッシュさんとスコットさんに、これ、見てもらうんや!」
先に教室に来て小さな体を最大限に利用して、机の下に隠れていた理人が、携帯電話を構えたままで出てくる。
「それを渡せ!」
「語るに落ちたなぁ、焦って取り返さなあかんようなコトしたんやもんな」
殴られそうになった理人の体を軽々と抱き上げると、ラクランは教師を睨み付けた。
「処分は覚悟してくださいね」
理人を抱き抱えたまま教室を出て、迎えに来ていたヘイミッシュの車に乗り込むと、力が抜けてラクランは膝の上の理人に縋るように抱き着いてしまった。
「やっぱり、アタシ、狙われてたのね……怖かった……理人さん、ありがとう」
「狙われてたって、何があったの?」
震えているラクランに運転席からヘイミッシュが訝しげに振り返る。理人が携帯電話で撮った写真をヘイミッシュに見せた。
「こいつが、ランさんに触りよったんや。教師って立場を利用して、他にも被害者がおるかもしれへん」
「二人だけで対処したの? 無事だったから良かったものの、相手が逆上して暴力に訴えかけて来たらどうするつもりだったのよ」
口では厳しいことを言いながらも、ヘイミッシュは震えているラクランの姿に、心配そうだった。
「アタシに手を出す相手なんて、悪趣味でいないと……」
「悪趣味やない。ランさんはめっちゃ魅力的や。もっと自覚して」
顔立ちもスコットとヘイミッシュが混ざり合って悪くはないのだろうが、この背丈と分厚い胸板、太い尻と太ももに、性的な魅力を感じるのは変態だけだとラクランは身を以て知ったような気がした。
やはり一生恋愛も結婚もしない方がいい。
「ショックだったわよね。家に帰りましょう」
警察への届け出はヘイミッシュがしてくれて、若い教師は他の生徒にも性的な悪戯をしていて、余罪が大量に見つかって、逮捕された。落ち込んでいるラクランを、スコットとエルドレッドと理人が抱き締めて慰めてくれる。
「とても怖い思いをしたね。嫌だっただろう」
「俺に打ち明けてくれて、ありがとうな。ランさんが嫌な思いをするのは俺も嫌や」
「あの男は絶対に有罪になるようにするから、兄さんはもう大丈夫だよ」
優しいスコットと、幼いのに計画を立ててラクランを守ってくれた理人。何を企んでいるのかがちょっと怖いエルドレッド。
「家族がいてくれるって幸せね」
抱き締めてくれる三人を、ラクランも抱き締め返した。
恋愛も結婚もしない。以前から決めていたことが、今回の事件でますます強くなった。優しく守ってくれる両親と可愛い弟、それに小さいが賢くて頼りになる理人がいればそれでいい。
相変わらず、理人はラクランと結婚する気で、その日を待ち望んでいた。
「後9年か。アメリカでは州によってはもっと早よ結婚できるところがないやろか」
「アタシ、イギリス人よ? 理人さんもイギリス人でしょ?」
イギリス人と日本人の間に生まれた理人は、どちらの国籍も持っている。日本では男性の結婚可能な年齢は18歳のようだが、ここはイギリスで理人はイギリス人なのだから16歳で構わない筈だ。
「理人さん、スコットにも、ヘイミッシュにも、内緒にしてくれる?」
「大事な話なんやな」
両親にも話せないことを、ラクランは不思議と理人には話せる。年に似合わぬ落ち着きをときに見せる理人だが、ラクランの前では年相応に泣いてしまうこともあった。
「アタシ、本当は運命がどんなものか分からないの。ごめんなさいね。理人さんのことが可愛くて、手放せなくて……でも、アタシ、結婚は誰ともしないと思うわ。多分、恋愛感情が欠如してるんだと思うの……性的に見られるのも、怖くて気持ち悪いだけだし」
まだたった7歳の理人に、酷なことを言っているという自覚はあった。しかし、言わなければ理人はラクランへの感情を間違ったままに育ってしまう。
泣いて、縋られても、ラクランは情に揺るがない覚悟で告げた言葉に、理人は赤茶色の目を瞬かせて、不思議そうにしていた。
「ランさんは、俺のこと嫌いやないやろ? あんな変な奴らに触られるのと、俺に触られるのは全く違うやろ? 俺はランさんが好きや。ランさんが庭で見つけてくれて、抱き上げてくれたときから、こんなに美しくて優しいひとはおらんと思ってた。俺が大人になって、ランさんが俺と結婚したくないんやったら、身を引くけど、まだ俺は結婚できる年にもなってへん。スタートラインに立ってもないのに、俺がダメやって、言わんといて」
真摯に確かな熱量を持っての告白に、ラクランは大いに動揺した。確かに理人はラクランに触れた二人の男とは全く違うし、胸に触れられても、抱き締めて眠っても、少しも不快ではない。暖かさやいい匂いに、安心してよく眠れるくらいだ。
「それは……理人さんが小さくて、まだ世界が狭いからじゃないかしら。沢山のひとに出会ったら、もっとお似合いの素敵なひとが見つかるかもしれないわ」
「誰かが俺に『お似合い』とか『素敵』とかいう相手がおっても、俺にとってはランさんが世界一素敵で、俺にお似合いなんや。お願いやから、俺の気持ちをランさんが決めてしまわんで。ランさんが俺のことが嫌なんやったら、それはランさんの気持ちやから諦めるけど」
運命ではないと告げても、理人の方はラクランを運命だと思っていると答えが来る。
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困惑しながらも、その言葉がラクランの胸に甘く響いたのは隠せない事実だった。
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