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偽りの運命 ~運命だと嘘をついた~
運命だと嘘をついた 1
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ラクラン・ハワードの両親、ヘイミッシュとスコットは生まれる前からの許嫁で、お互いを運命の相手だと一目で分かったという。
中性的な美しい顔立ちにほっそりとした長身、艶やかな黒髪を長めに伸ばした、鮮やかな青い目のヘイミッシュ。見上げるほどの長身で筋骨隆々としていて、金髪を前髪だけ長く残して横と後ろは刈っている、緑の瞳のスコット。
美しいが変わり者のヘイミッシュが父親で、筋骨隆々としたスコットが母親のラクランは、髪の色と目の色はヘイミッシュ似の黒髪青い目、身体つきと身長はスコット似の逞しく厳つい、という見事な混ざり具合だった。
「あなたの婚約や結婚について、口出しはしたくないのだけれど、ラクラン、あなたに会いたいってひとがいっぱいいて困るのよ」
イギリスの貴族の家系で、広大な庭や屋敷のあるハワード家の跡継ぎになるであろうラクランは、幼い頃から婚約の話が大量に届いていた。父のヘイミッシュは貴族というだけでなく、心理分析官としても優秀だし、母のスコットは警察組織の上の方にいる。学生時代は成績も優秀だったという二人に、ラクランは似たようだった。
「それって、アタシじゃなくて、『お貴族様』の血縁になりたいってだけよね」
そして、幼い頃に女の子が欲しかった影響か女性のような喋り方をするヘイミッシュの喋り方も、しっかりとラクランには受け継がれてしまっている。
母のスコットは12歳にして180センチを超えていたという話だが、現在13歳のラクランもまた、180センチを超える立派な逞しい身体つきをしていた。
「ラクランにも運命の出会いがあるといいよね。エルドレッドにも」
食事で服を汚してしまった弟の4歳のエルドレッドの服を着替えさせながら、母のスコットが微笑む。両親共にラクランに理解があって穏やかな性格なのは良いのだが、恋愛に関してはややロマンチストであるのが悩みのタネだ。二人は物心付いた頃からお互いを運命の相手と信じて結婚し、今も愛し合っている。そのせいで、ラクランにも運命の出会いが訪れることを願っている。
「運命なんて、そんなの、簡単に訪れないわよぉ」
「意外と近くに落ちてるかもしれないわよぉ?」
現実主義のラクランの語調を真似て、ヘイミッシュが笑う。学校まで送ってもらうためにラクランはスコットとエルドレッドに挨拶をした。
「スコット、行ってきます。エル坊や、アタシがいなくても、良い子でいるのよ? お兄ちゃん、学校が終わったら、アナタのために飛んで帰ってくるわ」
「にいさん、いってらっしゃい」
二人にハグをして、スコットから頬にキスをもらって、エルドレッドには丸い薔薇色の頬にキスを上げて、ラクランは広い庭を通って車庫に向かおうとした。その途中で、庭の植え込みに奇妙な枝が折れている場所を見つける。
「ヘイミッシュ、何かおかしいわ」
噴水や植え込みを刈り込んだ迷路のある広く見事なイングリッシュガーデンは、一般に公開していない私有地だが、時折、ホームレスや勘違いした観光客が入り込むことがある。警察関係者の屋敷でもあるので、警備は強化していたが、それをすり抜けた輩がいるようだ。
「ラクラン、屋敷に入りなさい。スコットに知らせて。私が確認するわ」
「一人じゃ危ないわよ」
警察の上層部の人間であるスコットに知らせるのが一番だと分かっていたが、ヘイミッシュを一人にすることもできず立ち尽くしたラクランの脚に、小さな生き物がぶつかって来た。
くしゃくしゃの脂じみた髪の毛に、汚れた顔、ツンと臭う何日も洗っていない服を着て、靴下も靴も履いていない、エルドレッドよりも小さな子ども。
「アナタ……どこから入ったの? 靴は? 足を怪我してない?」
「あ……うぁ、ふぇっ」
赤茶色の髪の幼児は、髪と同じ色の目に涙をいっぱい溜めて泣き出してしまう。
「怒ったわけではないのよ。驚かせてごめんなさいね」
「ホームレスの子どもが入って来たのかしら?」
季節は冬で、裸足の幼児の足は擦り傷もあり、寒さで真っ赤になっていて痛々しかった。放ってはおけないと、ラクランはその子を抱っこして屋敷に戻り、ヘイミッシュがその子の親や身元を探るために写真を警察に送る。
連れて行ったバスルームで、エルドレッドを脱がせるときと同じ要領でその子を裸にすると、シャツの裾やズボンや下着は排泄物で汚れており、肋骨の浮いた棒切れのような脚の痩せた体には、幾つもの痣が浮かんでいた。髪の毛が長かったので一見性別もどちらか分からなかったが、男の子だった。
「やぁ……いちゃい……ごめしゃい……」
「お湯が沁みるのね。少しだけ我慢して、体を温めないと、風邪を引いてしまうわ」
ボディブラシを使うと痛がりそうだったので、手の平にボディソープを泡立てて洗ってやると、ボディソープとお湯が沁みるのか、幼児は謝りながら泣き続ける。綺麗に洗い上げて髪も洗って、バスタブに座らせると、涙の溜まった目を大きく見開いていた。
「熱くないかしら?」
「あちゅい?」
ぽちゃぽちゃと不思議そうにお湯を手で掬ってみせるその子は、今まで暖かなお湯に浸かったことなどなかったのかもしれない。手の平で擦っただけで垢が大量に出て、湯船の湯に浮かんでいた。
お風呂から出てくると、まだ保育園に行っていないエルドレッドが興味津々で自分より小さな男の子を見つめてくる。とりあえず服はエルドレッドのものを着せていたが、かなり大きいようだった。
「エルはエルドレッド、きみは?」
「り、りひと……」
「アナタ、リヒトさんっていうのね。お腹は空いてない?」
ようやく幼児らしい高い声を出した彼に問いかけると、答えるのを躊躇っていたようだが、くるるるると可愛らしくお腹が鳴る。スープとパンをスコットが用意すると、彼はしばらくスープを眺めた後で、熱々のそれに手を突っ込んだ。
「びぎゃー!?」
「リヒトさん!? 大変! スコット、冷やすものを!」
「いちゃいー! やぁー!」
真っ赤になった手を水で冷やして、もう一度テーブルについたときには、完全に彼は怯えた目でスープを睨んで椅子から逃げようとしていた。仕方なくラクランがスプーンを手にとって、スープを掬って、ふうふうと吹き冷まして口に運ぶ。しばらく固まって口を開けない姿勢を見せていたが、空腹に耐えかねたのか良い匂いに恐る恐る口を開けた彼は、一口食べて、ぱっと顔を輝かせた。
「パンも食べられるかしら?」
ちぎったパンを口に入れ、スープを吹き冷まして口に運んで、お腹がいっぱいになると、彼は眠ってしまった。恐らくは、暖かいものを口にしたこともなかったのだろう。
「立田理人、3歳。日本人とイギリス人の間の子どもね。両親は、彼を捨てるのの常習犯みたいよ」
イギリスと日本を行き来している両親は、日本でもイギリスでも、適当な場所に理人を置いて姿を消してしまう。側に置いている間は、殴ったり、育児放棄をしたりと、保護者としての役割が担える人物ではないようだ。
「保護施設に入るの?」
「そうなると思うわ」
ラクランのジャケットを火傷で赤くなった小さなお手手でしっかりと握りしめて、眠っている理人をどうすればいいのか、13歳のラクランには分からない。手が痛むだろうに、離そうとすると、泣き出してしまう小さな理人。
「うちに置くことはできないの?」
子どもがもう一人増えたくらいで、傾ぐハワード家ではないと分かっているが、その問いかけにヘイミッシュとスコットはいい顔はしなかった。
「その子に同情的になるのは分かるけど、そうしたら、次に誰か迷い込んできたときに、ラクランはその子もうちの子にするの?」
「アタシが優しくしたの。それなのに、アタシが手を放してしまったら、この子はまた誰も信じられなくなるんじゃないかしら?」
「あなたはまだ13歳なのよ?」
「でも……」
ひとつだけ、ラクランはこの両親を黙らせる言葉があると知っていた。偽りでも構わない。それを使ってしまえば、ヘイミッシュからの情報で3歳と判明した理人は、16歳まではハワード家にいられる。
「運命かもしれないの。アタシの運命の相手かもしれないわ」
13歳のラクラン・ハワードに、その日、3歳の婚約者ができた。
中性的な美しい顔立ちにほっそりとした長身、艶やかな黒髪を長めに伸ばした、鮮やかな青い目のヘイミッシュ。見上げるほどの長身で筋骨隆々としていて、金髪を前髪だけ長く残して横と後ろは刈っている、緑の瞳のスコット。
美しいが変わり者のヘイミッシュが父親で、筋骨隆々としたスコットが母親のラクランは、髪の色と目の色はヘイミッシュ似の黒髪青い目、身体つきと身長はスコット似の逞しく厳つい、という見事な混ざり具合だった。
「あなたの婚約や結婚について、口出しはしたくないのだけれど、ラクラン、あなたに会いたいってひとがいっぱいいて困るのよ」
イギリスの貴族の家系で、広大な庭や屋敷のあるハワード家の跡継ぎになるであろうラクランは、幼い頃から婚約の話が大量に届いていた。父のヘイミッシュは貴族というだけでなく、心理分析官としても優秀だし、母のスコットは警察組織の上の方にいる。学生時代は成績も優秀だったという二人に、ラクランは似たようだった。
「それって、アタシじゃなくて、『お貴族様』の血縁になりたいってだけよね」
そして、幼い頃に女の子が欲しかった影響か女性のような喋り方をするヘイミッシュの喋り方も、しっかりとラクランには受け継がれてしまっている。
母のスコットは12歳にして180センチを超えていたという話だが、現在13歳のラクランもまた、180センチを超える立派な逞しい身体つきをしていた。
「ラクランにも運命の出会いがあるといいよね。エルドレッドにも」
食事で服を汚してしまった弟の4歳のエルドレッドの服を着替えさせながら、母のスコットが微笑む。両親共にラクランに理解があって穏やかな性格なのは良いのだが、恋愛に関してはややロマンチストであるのが悩みのタネだ。二人は物心付いた頃からお互いを運命の相手と信じて結婚し、今も愛し合っている。そのせいで、ラクランにも運命の出会いが訪れることを願っている。
「運命なんて、そんなの、簡単に訪れないわよぉ」
「意外と近くに落ちてるかもしれないわよぉ?」
現実主義のラクランの語調を真似て、ヘイミッシュが笑う。学校まで送ってもらうためにラクランはスコットとエルドレッドに挨拶をした。
「スコット、行ってきます。エル坊や、アタシがいなくても、良い子でいるのよ? お兄ちゃん、学校が終わったら、アナタのために飛んで帰ってくるわ」
「にいさん、いってらっしゃい」
二人にハグをして、スコットから頬にキスをもらって、エルドレッドには丸い薔薇色の頬にキスを上げて、ラクランは広い庭を通って車庫に向かおうとした。その途中で、庭の植え込みに奇妙な枝が折れている場所を見つける。
「ヘイミッシュ、何かおかしいわ」
噴水や植え込みを刈り込んだ迷路のある広く見事なイングリッシュガーデンは、一般に公開していない私有地だが、時折、ホームレスや勘違いした観光客が入り込むことがある。警察関係者の屋敷でもあるので、警備は強化していたが、それをすり抜けた輩がいるようだ。
「ラクラン、屋敷に入りなさい。スコットに知らせて。私が確認するわ」
「一人じゃ危ないわよ」
警察の上層部の人間であるスコットに知らせるのが一番だと分かっていたが、ヘイミッシュを一人にすることもできず立ち尽くしたラクランの脚に、小さな生き物がぶつかって来た。
くしゃくしゃの脂じみた髪の毛に、汚れた顔、ツンと臭う何日も洗っていない服を着て、靴下も靴も履いていない、エルドレッドよりも小さな子ども。
「アナタ……どこから入ったの? 靴は? 足を怪我してない?」
「あ……うぁ、ふぇっ」
赤茶色の髪の幼児は、髪と同じ色の目に涙をいっぱい溜めて泣き出してしまう。
「怒ったわけではないのよ。驚かせてごめんなさいね」
「ホームレスの子どもが入って来たのかしら?」
季節は冬で、裸足の幼児の足は擦り傷もあり、寒さで真っ赤になっていて痛々しかった。放ってはおけないと、ラクランはその子を抱っこして屋敷に戻り、ヘイミッシュがその子の親や身元を探るために写真を警察に送る。
連れて行ったバスルームで、エルドレッドを脱がせるときと同じ要領でその子を裸にすると、シャツの裾やズボンや下着は排泄物で汚れており、肋骨の浮いた棒切れのような脚の痩せた体には、幾つもの痣が浮かんでいた。髪の毛が長かったので一見性別もどちらか分からなかったが、男の子だった。
「やぁ……いちゃい……ごめしゃい……」
「お湯が沁みるのね。少しだけ我慢して、体を温めないと、風邪を引いてしまうわ」
ボディブラシを使うと痛がりそうだったので、手の平にボディソープを泡立てて洗ってやると、ボディソープとお湯が沁みるのか、幼児は謝りながら泣き続ける。綺麗に洗い上げて髪も洗って、バスタブに座らせると、涙の溜まった目を大きく見開いていた。
「熱くないかしら?」
「あちゅい?」
ぽちゃぽちゃと不思議そうにお湯を手で掬ってみせるその子は、今まで暖かなお湯に浸かったことなどなかったのかもしれない。手の平で擦っただけで垢が大量に出て、湯船の湯に浮かんでいた。
お風呂から出てくると、まだ保育園に行っていないエルドレッドが興味津々で自分より小さな男の子を見つめてくる。とりあえず服はエルドレッドのものを着せていたが、かなり大きいようだった。
「エルはエルドレッド、きみは?」
「り、りひと……」
「アナタ、リヒトさんっていうのね。お腹は空いてない?」
ようやく幼児らしい高い声を出した彼に問いかけると、答えるのを躊躇っていたようだが、くるるるると可愛らしくお腹が鳴る。スープとパンをスコットが用意すると、彼はしばらくスープを眺めた後で、熱々のそれに手を突っ込んだ。
「びぎゃー!?」
「リヒトさん!? 大変! スコット、冷やすものを!」
「いちゃいー! やぁー!」
真っ赤になった手を水で冷やして、もう一度テーブルについたときには、完全に彼は怯えた目でスープを睨んで椅子から逃げようとしていた。仕方なくラクランがスプーンを手にとって、スープを掬って、ふうふうと吹き冷まして口に運ぶ。しばらく固まって口を開けない姿勢を見せていたが、空腹に耐えかねたのか良い匂いに恐る恐る口を開けた彼は、一口食べて、ぱっと顔を輝かせた。
「パンも食べられるかしら?」
ちぎったパンを口に入れ、スープを吹き冷まして口に運んで、お腹がいっぱいになると、彼は眠ってしまった。恐らくは、暖かいものを口にしたこともなかったのだろう。
「立田理人、3歳。日本人とイギリス人の間の子どもね。両親は、彼を捨てるのの常習犯みたいよ」
イギリスと日本を行き来している両親は、日本でもイギリスでも、適当な場所に理人を置いて姿を消してしまう。側に置いている間は、殴ったり、育児放棄をしたりと、保護者としての役割が担える人物ではないようだ。
「保護施設に入るの?」
「そうなると思うわ」
ラクランのジャケットを火傷で赤くなった小さなお手手でしっかりと握りしめて、眠っている理人をどうすればいいのか、13歳のラクランには分からない。手が痛むだろうに、離そうとすると、泣き出してしまう小さな理人。
「うちに置くことはできないの?」
子どもがもう一人増えたくらいで、傾ぐハワード家ではないと分かっているが、その問いかけにヘイミッシュとスコットはいい顔はしなかった。
「その子に同情的になるのは分かるけど、そうしたら、次に誰か迷い込んできたときに、ラクランはその子もうちの子にするの?」
「アタシが優しくしたの。それなのに、アタシが手を放してしまったら、この子はまた誰も信じられなくなるんじゃないかしら?」
「あなたはまだ13歳なのよ?」
「でも……」
ひとつだけ、ラクランはこの両親を黙らせる言葉があると知っていた。偽りでも構わない。それを使ってしまえば、ヘイミッシュからの情報で3歳と判明した理人は、16歳まではハワード家にいられる。
「運命かもしれないの。アタシの運命の相手かもしれないわ」
13歳のラクラン・ハワードに、その日、3歳の婚約者ができた。
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