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番外編
フランツとレーニの結婚生活
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レーニとの結婚式の二年後に、妹のマリアが結婚した。
マリアとは一年と少ししか年が離れていないのだが、学年は二つ離れている。
その年は結婚式の予定が二つ入っていた年だった。
マリアとシュタール侯爵であるオリヴァー殿。
それに、ユリアーナ殿下がリリエンタール公爵家の後継者となっているデニス殿に嫁ぐ年でもあったのだ。
春先に行われるマリアの結婚式のために、レーニはドレスを選んでいた。
レーニは贅沢を好む性格ではない。ドレスを新しく誂えてもよかったのだが、持っているものを使って構わないと言ってくれたので、そうすることにした。
レーニが選んだのは辺境伯領の特産品の紫の布のドレスだった。
紫の布のドレスをレーニは持ってはいたが、あまり着ることはなかった。本人は紫よりも他のもっと明るい色の方が好きだと言っていた。普段からレーニが着るのはオレンジや黄色やピンクなど明るい色だった。
「マリア嬢は辺境伯領に嫁ぐのです。辺境伯領に着ていくのにこれ以上に相応しいドレスはありません」
辺境伯領に嫁いでいくマリアのことを思ってドレスを選んでくれるレーニに私は感謝の思いしかない。私は黒いタキシードを着て、レーニをエスコートした。
「フランツ様、結婚式でわたくしが体調を崩しても気にしないでくださいね。わたくし、フランツ様に言っておかねばならないことがあるのです」
「なんですか、レーニ」
「フランツ様、わたくし、赤ちゃんができたようなのです」
そばかすの散った頬を染めて告げるレーニに私はレーニの体を抱き締める。
「これほど嬉しいことはありません。レーニ、体を大事にしてください」
「はい、フランツ様」
結婚して二年。
レーニは私よりも七歳年上なので、早く子どもができないかと周囲が急かしていたのは知っている。分かっていたが、子どもは授かりものなので、私やレーニが決めることはできない。いざとなれば私は姉の辺境伯夫人やマリアのところから養子をもらう気でいたのだが、その必要はなくなったようだ。
レーニが無事に子どもを産んでくれることを私は願っていた。
結婚式ではマリアは辺境伯夫人となったエリザベート姉上のウエディングドレスとヴェールを身に纏っていた。女性にしては姉は長身だが、マリアはそれより少しだけ小さいがやはり女性としては長身である。
細身のドレスはマリアのために誂えたかのようにぴったりとしていてとても美しかった。
披露宴で私とレーニはマリアとオリヴァー殿にご挨拶に行った。
「マリア、とても美しいですよ。オリヴァー殿、マリアをよろしくお願いします」
「フランツお兄様ありがとうございます」
「マリア嬢がシュタール家に嫁いできてくれて、本当に幸せです。この日を待っていました」
「マリア嬢、いいえ、マリア夫人、オリヴァー侯爵おめでとうございます」
幸せそうな二人を見て私も幸せな気分に浸る。レーニも笑顔で二人を祝っていた。
披露宴の席に着くと、レーニが顔色を悪くしている。食べ物の匂いが苦しいのかもしれない。
「レーニ、部屋に戻って休みますか?」
「いいえ、平気です。少し気分が悪いだけです」
「食べ物の匂いがきついのではないですか?」
「少しだけです。まだ大丈夫です」
マリアの結婚式を祝うためにレーニに無理をしないでほしいという気持ちと、可愛い妹の結婚式を夫婦そろって祝いたいという気持ちが絡み合って私の心は複雑になる。それを分かっているかのようにレーニが私の手を握って「大丈夫です」と繰り返す。
刺繡の施された白いハンカチで口元を押さえる場面もあったが、レーニは席を立たずに披露宴の最中ずっと座っていた。食は進んでいなかったようだが、デザートに出てきたケーキと紅茶は口にしていた。ケーキと紅茶のおかげか少し顔色のよくなったレーニに私は安心する。
その日は辺境伯家に泊めてもらった。
シュタール侯爵家よりも客間が広く寛げるのと、辺境伯夫人となったエリザベート姉上から食事に誘われていたのだ。
食事の席には両親も辺境伯夫婦の子どもたちもいた。子どもは長女のエレオノーラ、八歳、長男のエルンスト、六歳、次女のユーディト、三歳の三人だ。
それに加えて、皇太子妃になっているクリスタ姉上と皇太子のハインリヒ殿下も子どもを連れてきていた。長男のフンベルト、四歳、長女のアンネマリー、二歳の二人だ。
エレオノーラは褐色の肌に金色の目、紫の光沢のある黒髪で、エクムント義兄上とエリザベート姉上の二人によく似ている。エルンストも褐色の肌に黒髪に銀色の光沢のある黒い目で、顔立ちはエクムント義兄上によく似ている。ユーディトは黒髪に金色の目だったが肌の色はエリザベート姉上にそっくりの白さで、辺境伯領の血を引いていても肌の白い子は産まれるのだと実感させられる。
クリスタ姉上の息子、エルンストは金髪に青い目でクリスタ姉上の色彩を持ちながら、顔立ちはハインリヒ殿下にそっくりである。アンネマリーは黒髪に黒い目で、色彩はハインリヒ殿下にそっくりだが顔立ちはクリスタ姉上に似ている。
一時期私は姉たちが辺境伯夫人と皇太子妃殿下になられたので、そう呼ばなければいけないと思い込んでいたのだが、姉たちからも義兄たちからも、それはよそよそしすぎるので、私的な場では「姉上」「義兄上」と呼ぶように言われていた。さすがにハインリヒ殿下を義兄上を呼ぶのは恐れ多いので遠慮させていただいたが、エリザベート姉上も、クリスタ姉上も、エクムント義兄上も、お言葉に甘えてそう呼ばせてもらっている。
「父上、母上、エクムント義兄上、エリザベート姉上、クリスタ姉上、ハインリヒ殿下、それに私の可愛い甥や姪たち。素晴らしい報告があるのです」
「なんですか? おしえてください、フランツ叔父様?」
「どうちたの?」
興味津々のエレオノーラとユーディトに、私はレーニに視線を投げる。レーニが頬を染めながらお腹に手をやった。
「わたくし、フランツ様のお子を妊娠していると医者に言われました。生まれて来るまでは安心できませんし、男の子とも女の子とも分かりませんが、今とても幸せです」
「レーニ、フランツの子を身籠ったのか」
「何と嬉しいことでしょう。体を大事にして丈夫な子を産むのですよ」
両親の驚きと喜びは大きなものだった。
「レーニ夫人のために、パウリーネ先生の弟子を手配させましょう」
「ありがとうございます、エリザベートお義姉様」
「わたくしも出産のときにはパウリーネ先生のお弟子さんに診てもらっていました。おかげで二人の子どもも無事に産めました」
エリザベート姉上もクリスタ姉上もレーニの妊娠について協力的なようだった。
かつて我が家で母の妊娠、出産を手伝い、その後は王妃殿下の妊娠、出産も手伝ったパウリーネ先生は、元々辺境伯領の出身で、カサンドラ様の主治医だった。その弟子が何人も育っていて、今ではオルヒデー帝国内で産科の医師として名を馳せ、働いている。
その中の一人は王宮に、一人は辺境伯家にお仕えしているようなのだが、他の弟子をディッペル家には派遣してくれるようだ。
「マリアにもこのことを伝えないと」
「きっと喜ぶことでしょう」
結婚式のお祝いに来たレーニが子どもを宿していると聞いたら、マリアはきっと喜んでくれるだろう。
両親の言葉に、私はマリアにもこのことを伝えようと決めていた。
妊娠していてもレーニは軽い悪阻があるだけでかなり元気だった。
初夏の誕生日のお茶会は中止にせずに、普通に開くこととなった。
「無理をせず疲れたら座ってくださいね。気分が悪くなったら別室で休んでください」
「わたくしは平気ですわ。悪阻も思ったより酷くないようです。お腹の張りもありませんし」
「それでも子どもを産むということは女性の体に負担をかけることになるのです。絶対に無理をしてはいけませんよ」
それでもレーニは笑顔でお茶会の主催を務めたのだった。
夜になって二人きりの寝室で、私はレーニの脚を、足首から膝まで擦るようにしてマッサージしていた。妊娠してからレーニは脚がむくみやすくなったと言っていたのだ。
「今日は立っていた時間が長かったので疲れたのではありませんか?」
「フランツ様のマッサージ、とても気持ちがいいです。このまま眠ってしまいそう」
「眠ってもいいのですよ」
「それはフランツ様に失礼ですわ」
「気にしないで眠ってください。レーニの安らかな寝顔を見ているのも幸せです」
マッサージを続けるとレーニがうとうとと眠り込んでいるのが分かる。眠ってしまったレーニの体を抱き寄せて私も眠った。
レーニはユリアーナ殿下とデニス殿の結婚式にも出席したし、皇太子殿下の生誕のお茶会にも出席したし、とても元気だった。
そのまま産み月に入り、元気な女の子を産んでくれた。
ストロベリーブロンドの髪と緑色の目の可愛い小さな女の子。
「太陽のような可愛い女の子ですね。名前はアポロニアにしましょう」
「どこか異国の神話でそんな名前を聞いたことがある気がします。わたくしのアポロニア。なんて可愛い」
初産にしては珍しいくらい安産だったとはいえ、疲れているであろうレーニは、名前を決めたアポロニアを抱き締めて涙ぐんでいた。私もアポロニアを見詰めながら涙が滲んでくる。
「レーニ、私と結婚してくれて、アポロニアを産んでくれてありがとうございます」
「わたくしこそ、こんな可愛いアポロニアをわたくしに授けてくださってありがとうございます」
ベビーベッドに寝かせたアポロニアを二人で見つめながら、抱き締め合うと、レーニは私の胸にほろほろと涙を零したのだった。
マリアとは一年と少ししか年が離れていないのだが、学年は二つ離れている。
その年は結婚式の予定が二つ入っていた年だった。
マリアとシュタール侯爵であるオリヴァー殿。
それに、ユリアーナ殿下がリリエンタール公爵家の後継者となっているデニス殿に嫁ぐ年でもあったのだ。
春先に行われるマリアの結婚式のために、レーニはドレスを選んでいた。
レーニは贅沢を好む性格ではない。ドレスを新しく誂えてもよかったのだが、持っているものを使って構わないと言ってくれたので、そうすることにした。
レーニが選んだのは辺境伯領の特産品の紫の布のドレスだった。
紫の布のドレスをレーニは持ってはいたが、あまり着ることはなかった。本人は紫よりも他のもっと明るい色の方が好きだと言っていた。普段からレーニが着るのはオレンジや黄色やピンクなど明るい色だった。
「マリア嬢は辺境伯領に嫁ぐのです。辺境伯領に着ていくのにこれ以上に相応しいドレスはありません」
辺境伯領に嫁いでいくマリアのことを思ってドレスを選んでくれるレーニに私は感謝の思いしかない。私は黒いタキシードを着て、レーニをエスコートした。
「フランツ様、結婚式でわたくしが体調を崩しても気にしないでくださいね。わたくし、フランツ様に言っておかねばならないことがあるのです」
「なんですか、レーニ」
「フランツ様、わたくし、赤ちゃんができたようなのです」
そばかすの散った頬を染めて告げるレーニに私はレーニの体を抱き締める。
「これほど嬉しいことはありません。レーニ、体を大事にしてください」
「はい、フランツ様」
結婚して二年。
レーニは私よりも七歳年上なので、早く子どもができないかと周囲が急かしていたのは知っている。分かっていたが、子どもは授かりものなので、私やレーニが決めることはできない。いざとなれば私は姉の辺境伯夫人やマリアのところから養子をもらう気でいたのだが、その必要はなくなったようだ。
レーニが無事に子どもを産んでくれることを私は願っていた。
結婚式ではマリアは辺境伯夫人となったエリザベート姉上のウエディングドレスとヴェールを身に纏っていた。女性にしては姉は長身だが、マリアはそれより少しだけ小さいがやはり女性としては長身である。
細身のドレスはマリアのために誂えたかのようにぴったりとしていてとても美しかった。
披露宴で私とレーニはマリアとオリヴァー殿にご挨拶に行った。
「マリア、とても美しいですよ。オリヴァー殿、マリアをよろしくお願いします」
「フランツお兄様ありがとうございます」
「マリア嬢がシュタール家に嫁いできてくれて、本当に幸せです。この日を待っていました」
「マリア嬢、いいえ、マリア夫人、オリヴァー侯爵おめでとうございます」
幸せそうな二人を見て私も幸せな気分に浸る。レーニも笑顔で二人を祝っていた。
披露宴の席に着くと、レーニが顔色を悪くしている。食べ物の匂いが苦しいのかもしれない。
「レーニ、部屋に戻って休みますか?」
「いいえ、平気です。少し気分が悪いだけです」
「食べ物の匂いがきついのではないですか?」
「少しだけです。まだ大丈夫です」
マリアの結婚式を祝うためにレーニに無理をしないでほしいという気持ちと、可愛い妹の結婚式を夫婦そろって祝いたいという気持ちが絡み合って私の心は複雑になる。それを分かっているかのようにレーニが私の手を握って「大丈夫です」と繰り返す。
刺繡の施された白いハンカチで口元を押さえる場面もあったが、レーニは席を立たずに披露宴の最中ずっと座っていた。食は進んでいなかったようだが、デザートに出てきたケーキと紅茶は口にしていた。ケーキと紅茶のおかげか少し顔色のよくなったレーニに私は安心する。
その日は辺境伯家に泊めてもらった。
シュタール侯爵家よりも客間が広く寛げるのと、辺境伯夫人となったエリザベート姉上から食事に誘われていたのだ。
食事の席には両親も辺境伯夫婦の子どもたちもいた。子どもは長女のエレオノーラ、八歳、長男のエルンスト、六歳、次女のユーディト、三歳の三人だ。
それに加えて、皇太子妃になっているクリスタ姉上と皇太子のハインリヒ殿下も子どもを連れてきていた。長男のフンベルト、四歳、長女のアンネマリー、二歳の二人だ。
エレオノーラは褐色の肌に金色の目、紫の光沢のある黒髪で、エクムント義兄上とエリザベート姉上の二人によく似ている。エルンストも褐色の肌に黒髪に銀色の光沢のある黒い目で、顔立ちはエクムント義兄上によく似ている。ユーディトは黒髪に金色の目だったが肌の色はエリザベート姉上にそっくりの白さで、辺境伯領の血を引いていても肌の白い子は産まれるのだと実感させられる。
クリスタ姉上の息子、エルンストは金髪に青い目でクリスタ姉上の色彩を持ちながら、顔立ちはハインリヒ殿下にそっくりである。アンネマリーは黒髪に黒い目で、色彩はハインリヒ殿下にそっくりだが顔立ちはクリスタ姉上に似ている。
一時期私は姉たちが辺境伯夫人と皇太子妃殿下になられたので、そう呼ばなければいけないと思い込んでいたのだが、姉たちからも義兄たちからも、それはよそよそしすぎるので、私的な場では「姉上」「義兄上」と呼ぶように言われていた。さすがにハインリヒ殿下を義兄上を呼ぶのは恐れ多いので遠慮させていただいたが、エリザベート姉上も、クリスタ姉上も、エクムント義兄上も、お言葉に甘えてそう呼ばせてもらっている。
「父上、母上、エクムント義兄上、エリザベート姉上、クリスタ姉上、ハインリヒ殿下、それに私の可愛い甥や姪たち。素晴らしい報告があるのです」
「なんですか? おしえてください、フランツ叔父様?」
「どうちたの?」
興味津々のエレオノーラとユーディトに、私はレーニに視線を投げる。レーニが頬を染めながらお腹に手をやった。
「わたくし、フランツ様のお子を妊娠していると医者に言われました。生まれて来るまでは安心できませんし、男の子とも女の子とも分かりませんが、今とても幸せです」
「レーニ、フランツの子を身籠ったのか」
「何と嬉しいことでしょう。体を大事にして丈夫な子を産むのですよ」
両親の驚きと喜びは大きなものだった。
「レーニ夫人のために、パウリーネ先生の弟子を手配させましょう」
「ありがとうございます、エリザベートお義姉様」
「わたくしも出産のときにはパウリーネ先生のお弟子さんに診てもらっていました。おかげで二人の子どもも無事に産めました」
エリザベート姉上もクリスタ姉上もレーニの妊娠について協力的なようだった。
かつて我が家で母の妊娠、出産を手伝い、その後は王妃殿下の妊娠、出産も手伝ったパウリーネ先生は、元々辺境伯領の出身で、カサンドラ様の主治医だった。その弟子が何人も育っていて、今ではオルヒデー帝国内で産科の医師として名を馳せ、働いている。
その中の一人は王宮に、一人は辺境伯家にお仕えしているようなのだが、他の弟子をディッペル家には派遣してくれるようだ。
「マリアにもこのことを伝えないと」
「きっと喜ぶことでしょう」
結婚式のお祝いに来たレーニが子どもを宿していると聞いたら、マリアはきっと喜んでくれるだろう。
両親の言葉に、私はマリアにもこのことを伝えようと決めていた。
妊娠していてもレーニは軽い悪阻があるだけでかなり元気だった。
初夏の誕生日のお茶会は中止にせずに、普通に開くこととなった。
「無理をせず疲れたら座ってくださいね。気分が悪くなったら別室で休んでください」
「わたくしは平気ですわ。悪阻も思ったより酷くないようです。お腹の張りもありませんし」
「それでも子どもを産むということは女性の体に負担をかけることになるのです。絶対に無理をしてはいけませんよ」
それでもレーニは笑顔でお茶会の主催を務めたのだった。
夜になって二人きりの寝室で、私はレーニの脚を、足首から膝まで擦るようにしてマッサージしていた。妊娠してからレーニは脚がむくみやすくなったと言っていたのだ。
「今日は立っていた時間が長かったので疲れたのではありませんか?」
「フランツ様のマッサージ、とても気持ちがいいです。このまま眠ってしまいそう」
「眠ってもいいのですよ」
「それはフランツ様に失礼ですわ」
「気にしないで眠ってください。レーニの安らかな寝顔を見ているのも幸せです」
マッサージを続けるとレーニがうとうとと眠り込んでいるのが分かる。眠ってしまったレーニの体を抱き寄せて私も眠った。
レーニはユリアーナ殿下とデニス殿の結婚式にも出席したし、皇太子殿下の生誕のお茶会にも出席したし、とても元気だった。
そのまま産み月に入り、元気な女の子を産んでくれた。
ストロベリーブロンドの髪と緑色の目の可愛い小さな女の子。
「太陽のような可愛い女の子ですね。名前はアポロニアにしましょう」
「どこか異国の神話でそんな名前を聞いたことがある気がします。わたくしのアポロニア。なんて可愛い」
初産にしては珍しいくらい安産だったとはいえ、疲れているであろうレーニは、名前を決めたアポロニアを抱き締めて涙ぐんでいた。私もアポロニアを見詰めながら涙が滲んでくる。
「レーニ、私と結婚してくれて、アポロニアを産んでくれてありがとうございます」
「わたくしこそ、こんな可愛いアポロニアをわたくしに授けてくださってありがとうございます」
ベビーベッドに寝かせたアポロニアを二人で見つめながら、抱き締め合うと、レーニは私の胸にほろほろと涙を零したのだった。
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