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十三章 わたくしの結婚
30.エクムント様から聞く共同統治の話
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書庫での資料探しもエクムント様は手伝ってくださった。
辺境伯家の書庫には王宮図書館にも学園の図書館にもディッペル家の書庫にもない貴重な資料がたくさんあった。
辺境伯領の歴史は他国や海賊との戦いが中心となる。
オルヒデー帝国の南の海に面した辺境伯領は、昔から交易が盛んだったが、その分海賊に狙われやすいといった問題点があった。海賊から交易船を守るために海軍が構成されて、その海軍は他国との戦争の折にも活躍した。
隣国との仲が険悪だった時代には、辺境伯領は隣国から攻め入る海軍を迎え撃つ頼もしい場所であったのだ。
その辺境伯領がオルヒデー帝国から離れようとしてきたのが、隣国との仲が円満になり、王都や中央から隣国と戦っていた過去を評価されるどころか、野蛮な土地と考えられるようになってからだった。
辺境伯領の貴族たちはほとんどが士官学校を卒業した軍人であった。自分たちの戦果を褒められもせず、辺境伯領を野蛮だと決めつけられるのは彼らの誇りに大きな傷をつけた。
オルヒデー帝国は辺境伯領を評価しない。それならば独立して自分たちの国を作ろうとなっても仕方がない。中央の貴族たちは自分たちは戦いに出なかったのに、戦いに出て犠牲まで払った辺境伯領の貴族を馬鹿にするようなことをしようとしていたのだ。
しかし、国王陛下は辺境伯領の重要さを知っていたので、辺境伯領を高く評価し、独立を防ごうとした。
国王陛下の評価に従って、中央の貴族たちも評価を変えようとしていたが、辺境伯領の中では独立派とオルヒデー帝国との融和派が分かれる結果となり、領主である辺境伯家はオルヒデー帝国との融和の道を選んでいたが、独立派を押さえ込むことができずにいた。
そんなときに王家の血を引き、中央の貴族の中でも公爵家という高位の貴族の娘であるわたくしが辺境伯であるエクムント様の婚約者として選ばれたのだ。
自分の力では独立派を押さえ込むことはできないと理解していたカサンドラ様は、中央に嫁いだ自分の従姉の息子であるエクムント様を養子として、エクムント様の婚約者にはわたくしを選んだ。
海軍を有する辺境伯領を長年苦しめてきた壊血病の予防策をわたくしが提示できたというのもあるのだろうが、その当時はこの国でたった一つの公爵家だったディッペル家の娘で、王家の血を引き、紫色の光沢の黒髪に銀色の光沢の黒い目と初代国王陛下の色彩を持つわたくしは、オルヒデー帝国との融和の象徴ともいうべき存在だったのだ。
ここまで卒業論文を書いていて、わたくしは自分のことがあまりにもきらきらしく書かれているのではないかと自分で恥ずかしくなった。
それでも、これが事実なのだから仕方がない。
辺境伯領の歴史を纏めた文章をエクムント様に添削していただくと、エクムント様は無言で最後まで目を通されていた。
「一行で纏められていますが、壊血病の予防策を提示したというのは辺境伯領にとってはものすごく重要なことなのですよ?」
「わたくしのことですし、そんなに何行も書けません」
「エリザベート嬢はご自分の評価が低いのではないですか?」
エクムント様にそんなことを言われてしまった。
両親にも弟妹にも愛情を受けて育ってきたわたくしは、それなりに自己肯定感は高いものだと思っている。両親も弟妹もわたくしをよく褒めてくれるし、評価してくれる。
周囲もわたくしを評価してくれる方ばかりで、わたくしは酷い悪意というものにそんなに触れた経験がなかった。
「壊血病の予防策を見つけたのも偶然漁師の方と話しただけですし」
「それで思い付けるのがすごいのです。それだけではありません。エリザベート嬢はコスチュームジュエリーの名称を思い付いたり、フィンガーブレスレットやネイルアートを思い付いたり、発想が豊かなのです」
褒めていただいているが、それはわたくしの力ではない。わたくしが前世の記憶を持っているからだった。コスチュームジュエリーの名称なんて、わたくしが考えたわけではないし、フィンガーブレスレットも前世でマクラメとかアジアンノットとかケルティックノットとか、そういうものに触れたことがあったというだけだし、ネイルアートに至っては前世でそういうものがあったからクリスタやマリアにしてあげていたのが事業になっただけだった。
壊血病の予防策も前世の記憶から思い出したもので、本当はわたくしが思い付いたわけではない。
前世の記憶はわたくしにとっては薄く朧げなもので、エリザベートとしての人生をわたくしは生きている実感を強く感じて、前世は夢を見て思い出したくらいの霞んだ記憶しかないのだが、それでもその記憶がこの世界にはなかったものなので役に立っている。
前世のことはエクムント様にも告げることができない。
わたくしはエリザベート・ディッペルとしての実感の方が強いし、前世の話などしてもエクムント様は信じてくれないだろう。いや、エクムント様はわたくしの言うことならば信じるかもしれないが、それに何の意味があるだろう。
わたくしは今世を生きている。前世のわたくしは今世のわたくしのおまけみたいなものでしかないのだ。
「エクムント様に褒めていただけて嬉しいですが、わたくしはそれほど自分のしたことがすごいとは思っていないのですよ」
「それならば、私が何度でも言いましょう。エリザベート嬢は発想豊かな素晴らしい女性ですよ」
そこまで言われてしまうと照れてしまう。
エクムント様は何も知らないからわたくしを褒めるのだと分かっているが、好きな方から褒められたら悪い気はしないのだ。
「わたくしの発想が辺境伯領の役に立っているのならば幸いです」
「役に立っているどころではありませんよ。辺境伯領はエリザベート嬢のおかげで豊かになりました。女性の社会進出も少しずつ広がっています。エリザベート嬢が辺境伯領にもたらしてくれた恩恵は限りないのです」
「そ、そうですか」
「エリザベート嬢がこれから先どんなことをしてくれるのか、私は楽しみでならないのです。結婚したらエリザベート嬢とは私は共同統治を考えています」
共同統治とエクムント様は仰った。
どこの家の貴族の当主も配偶者の意見を聞きながら領地を治めているが、はっきりと共同統治とまで口にするのはエクムント様くらいではないだろうか。
特に辺境伯領は女性は家庭を守ることが美徳とされているような土地である。エクムント様がそれを変えようとしているところだが、そのモデルとしてわたくしとエクムント様が辺境伯領を共同統治するというのはものすごく意味のあることではないのだろうか。
「それは女性の社会進出を今以上に広げるかもしれませんね」
「エリザベート嬢は辺境伯領のことをしっかりと勉強してから嫁いできてくださることは、この卒業論文を見ても分かります。エリザベート嬢にならば、私は安心して辺境伯領を預けられると思っています」
もしもの時の話を以前にエクムント様としたことがある。
エクムント様が亡くなるようなことがあって、そのときに後継が育っていなければ、わたくしが後継を育てながら辺境伯領を治めてほしいとエクムント様は言った。
それだけでなく、今はエクムント様はわたくしと一緒に辺境伯領を治めると仰っている。
エクムント様が亡くなるようなことは考えたくなかったが、共同統治ならば話は別だ。
元々嫁いだ後もエクムント様を支えて行こうと思っていたのだ。
辺境伯としてエクムント様と共に辺境伯領を治める。
わたくしにも辺境伯領のためにできることがあるのかもしれない。
「エクムント様と共に辺境伯領を治めてみせます」
「エリザベート嬢が一緒ならば心強いです」
結婚したらわたくしはエクムント様と一緒に辺境伯となる。
その話をエクムント様はもう国王陛下に通しているような気がしていた。
辺境伯家の書庫には王宮図書館にも学園の図書館にもディッペル家の書庫にもない貴重な資料がたくさんあった。
辺境伯領の歴史は他国や海賊との戦いが中心となる。
オルヒデー帝国の南の海に面した辺境伯領は、昔から交易が盛んだったが、その分海賊に狙われやすいといった問題点があった。海賊から交易船を守るために海軍が構成されて、その海軍は他国との戦争の折にも活躍した。
隣国との仲が険悪だった時代には、辺境伯領は隣国から攻め入る海軍を迎え撃つ頼もしい場所であったのだ。
その辺境伯領がオルヒデー帝国から離れようとしてきたのが、隣国との仲が円満になり、王都や中央から隣国と戦っていた過去を評価されるどころか、野蛮な土地と考えられるようになってからだった。
辺境伯領の貴族たちはほとんどが士官学校を卒業した軍人であった。自分たちの戦果を褒められもせず、辺境伯領を野蛮だと決めつけられるのは彼らの誇りに大きな傷をつけた。
オルヒデー帝国は辺境伯領を評価しない。それならば独立して自分たちの国を作ろうとなっても仕方がない。中央の貴族たちは自分たちは戦いに出なかったのに、戦いに出て犠牲まで払った辺境伯領の貴族を馬鹿にするようなことをしようとしていたのだ。
しかし、国王陛下は辺境伯領の重要さを知っていたので、辺境伯領を高く評価し、独立を防ごうとした。
国王陛下の評価に従って、中央の貴族たちも評価を変えようとしていたが、辺境伯領の中では独立派とオルヒデー帝国との融和派が分かれる結果となり、領主である辺境伯家はオルヒデー帝国との融和の道を選んでいたが、独立派を押さえ込むことができずにいた。
そんなときに王家の血を引き、中央の貴族の中でも公爵家という高位の貴族の娘であるわたくしが辺境伯であるエクムント様の婚約者として選ばれたのだ。
自分の力では独立派を押さえ込むことはできないと理解していたカサンドラ様は、中央に嫁いだ自分の従姉の息子であるエクムント様を養子として、エクムント様の婚約者にはわたくしを選んだ。
海軍を有する辺境伯領を長年苦しめてきた壊血病の予防策をわたくしが提示できたというのもあるのだろうが、その当時はこの国でたった一つの公爵家だったディッペル家の娘で、王家の血を引き、紫色の光沢の黒髪に銀色の光沢の黒い目と初代国王陛下の色彩を持つわたくしは、オルヒデー帝国との融和の象徴ともいうべき存在だったのだ。
ここまで卒業論文を書いていて、わたくしは自分のことがあまりにもきらきらしく書かれているのではないかと自分で恥ずかしくなった。
それでも、これが事実なのだから仕方がない。
辺境伯領の歴史を纏めた文章をエクムント様に添削していただくと、エクムント様は無言で最後まで目を通されていた。
「一行で纏められていますが、壊血病の予防策を提示したというのは辺境伯領にとってはものすごく重要なことなのですよ?」
「わたくしのことですし、そんなに何行も書けません」
「エリザベート嬢はご自分の評価が低いのではないですか?」
エクムント様にそんなことを言われてしまった。
両親にも弟妹にも愛情を受けて育ってきたわたくしは、それなりに自己肯定感は高いものだと思っている。両親も弟妹もわたくしをよく褒めてくれるし、評価してくれる。
周囲もわたくしを評価してくれる方ばかりで、わたくしは酷い悪意というものにそんなに触れた経験がなかった。
「壊血病の予防策を見つけたのも偶然漁師の方と話しただけですし」
「それで思い付けるのがすごいのです。それだけではありません。エリザベート嬢はコスチュームジュエリーの名称を思い付いたり、フィンガーブレスレットやネイルアートを思い付いたり、発想が豊かなのです」
褒めていただいているが、それはわたくしの力ではない。わたくしが前世の記憶を持っているからだった。コスチュームジュエリーの名称なんて、わたくしが考えたわけではないし、フィンガーブレスレットも前世でマクラメとかアジアンノットとかケルティックノットとか、そういうものに触れたことがあったというだけだし、ネイルアートに至っては前世でそういうものがあったからクリスタやマリアにしてあげていたのが事業になっただけだった。
壊血病の予防策も前世の記憶から思い出したもので、本当はわたくしが思い付いたわけではない。
前世の記憶はわたくしにとっては薄く朧げなもので、エリザベートとしての人生をわたくしは生きている実感を強く感じて、前世は夢を見て思い出したくらいの霞んだ記憶しかないのだが、それでもその記憶がこの世界にはなかったものなので役に立っている。
前世のことはエクムント様にも告げることができない。
わたくしはエリザベート・ディッペルとしての実感の方が強いし、前世の話などしてもエクムント様は信じてくれないだろう。いや、エクムント様はわたくしの言うことならば信じるかもしれないが、それに何の意味があるだろう。
わたくしは今世を生きている。前世のわたくしは今世のわたくしのおまけみたいなものでしかないのだ。
「エクムント様に褒めていただけて嬉しいですが、わたくしはそれほど自分のしたことがすごいとは思っていないのですよ」
「それならば、私が何度でも言いましょう。エリザベート嬢は発想豊かな素晴らしい女性ですよ」
そこまで言われてしまうと照れてしまう。
エクムント様は何も知らないからわたくしを褒めるのだと分かっているが、好きな方から褒められたら悪い気はしないのだ。
「わたくしの発想が辺境伯領の役に立っているのならば幸いです」
「役に立っているどころではありませんよ。辺境伯領はエリザベート嬢のおかげで豊かになりました。女性の社会進出も少しずつ広がっています。エリザベート嬢が辺境伯領にもたらしてくれた恩恵は限りないのです」
「そ、そうですか」
「エリザベート嬢がこれから先どんなことをしてくれるのか、私は楽しみでならないのです。結婚したらエリザベート嬢とは私は共同統治を考えています」
共同統治とエクムント様は仰った。
どこの家の貴族の当主も配偶者の意見を聞きながら領地を治めているが、はっきりと共同統治とまで口にするのはエクムント様くらいではないだろうか。
特に辺境伯領は女性は家庭を守ることが美徳とされているような土地である。エクムント様がそれを変えようとしているところだが、そのモデルとしてわたくしとエクムント様が辺境伯領を共同統治するというのはものすごく意味のあることではないのだろうか。
「それは女性の社会進出を今以上に広げるかもしれませんね」
「エリザベート嬢は辺境伯領のことをしっかりと勉強してから嫁いできてくださることは、この卒業論文を見ても分かります。エリザベート嬢にならば、私は安心して辺境伯領を預けられると思っています」
もしもの時の話を以前にエクムント様としたことがある。
エクムント様が亡くなるようなことがあって、そのときに後継が育っていなければ、わたくしが後継を育てながら辺境伯領を治めてほしいとエクムント様は言った。
それだけでなく、今はエクムント様はわたくしと一緒に辺境伯領を治めると仰っている。
エクムント様が亡くなるようなことは考えたくなかったが、共同統治ならば話は別だ。
元々嫁いだ後もエクムント様を支えて行こうと思っていたのだ。
辺境伯としてエクムント様と共に辺境伯領を治める。
わたくしにも辺境伯領のためにできることがあるのかもしれない。
「エクムント様と共に辺境伯領を治めてみせます」
「エリザベート嬢が一緒ならば心強いです」
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