448 / 528
十三章 わたくしの結婚
6.呼び方を変える
しおりを挟む
国王陛下の私的なお茶会が終わると、わたくしはエクムント様に誘われて、クリスタちゃんはハインリヒ殿下に誘われ、レーニ嬢はふーちゃんに誘われて部屋まで送ってもらった。
部屋ではクリスタちゃんはわたくしとレーニ嬢に語ってくれた。
「ノエル殿下がうっかりと学園のお茶会で『ちゃん付け』を出してしまったことがあったでしょう? ノエル殿下のような身分の高い教育された方でさえそうなのだから、わたくしも失敗することがあってはならないと思ったのです」
「そういえばそんなことがありましたね」
「クリスタ、とても立派な考えだと思います」
「お姉様は心の中で呼んでいればいいと仰いましたが、心の中で呼んでいても、つい口から出てしまうことがあります。わたくしは皇太子妃になるのだから、気を引き締めなければいけないと思っています。フランツとマリアのことも、今後はふーちゃんやまーちゃんとは呼びません」
それはクリスタちゃんの子ども時代との別れだったのかもしれない。
クリスタちゃんがそれほどまでの覚悟をしていると聞くと、わたくしも甘いことは言っていられない。
「わたくしもクリスタを見習いますわ。私的な場でも心の中でも、クリスタはクリスタ、フランツはフランツ、マリアはマリアと呼びましょう」
「クリスタ嬢もエリザベート嬢も立派な志です。わたくしも見習いたいと思います」
レーニ嬢とも話し合って、わたくしは今後はクリスタちゃんのことはクリスタ、ふーちゃんのことはフランツ、まーちゃんのことはマリアと呼ぶと決めた。
フランツとマリアに関しては、まだ小さいので可愛い愛称で呼びたい気持ちはあったが、これが間違えて公式な場で出てしまってはいけないというクリスタの考えはよく分かったので改めることにした。
慣れないが、今後はクリスタ、フランツ、マリアと弟妹のことは呼び、レーニ嬢はレーニ嬢、ミリヤム嬢はミリヤム嬢と呼ぶことを決めた。
それにしてもクリスタの成長にわたくしは驚いてしまう。こんなにしっかりと発言をするような子だっただろうか。王宮で国王陛下と王妃殿下とハインリヒ殿下と過ごした時間がクリスタに皇太子妃としての自覚を目覚めさせたのだろう。
呼び方を変えることを含めて、クリスタの成長はわたくしにとっては寂しい一面もあったが、喜ばしいことでもあった。
「今後はお姉様を観察して、エクムント様とのことを羨ましがったりしません。わたくしにはわたくしのやるべきことがあるのですから」
凛と告げるクリスタにわたくしは感動してしまう。
ずっとわたくしにくっついてきて、離れることのできなかった小さな妹が、今、自立しようとしているのだ。寂しさは当然あるが、それ以上に感動が胸に込み上げる。
「クリスタ、覚えていてください。わたくしにとってあなたは大事な可愛い妹です。わたくしはあなたを誇りに思います」
「お姉様、ありがとうございます。わたくしにとっても、お姉様は大事な頼れるお姉様です。これからもよろしくお願いします」
手を取り合って言い合うわたくしとクリスタに、レーニ嬢がうんうんと頷いて話を聞いていた。
翌日の朝には、フランツとマリアとデニス殿とゲオルグ殿に起こされた。
「エリザベートお姉様、クリスタお姉様、いいお天気ですよ」
「お散歩に行きましょう!」
元気よく声を掛けてくるフランツとマリアに、わたくしとクリスタとレーニ嬢が支度をする。
「お姉様、参りましょう!」
「お姉様、一緒にお散歩しましょう!」
デニス殿とゲオルク殿も声を掛けてくる。ゲオルク殿は今年からお茶会に参加できる年齢になっているので、喋り方がしっかりしてきている。
支度をして庭に出るとエクムント様とハインリヒ殿下とユリアーナ殿下とオリヴァー殿とナターリエ嬢が待っていた。ゲオルグ殿が走って行ってナターリエ嬢の手を取る。
「ナターリエ嬢、一緒に歩きませんか?」
「わたくしでよろしければ」
レーニ嬢によく似たそばかすの散った頬を赤くしてナターリエ嬢と手を繋いでいるゲオルク殿はナターリエ嬢が好きなのかもしれない。
ユリアーナ殿下はデニス殿のところに駆けて行っていた。
「デニス殿、わたくしと一緒にお散歩しましょう」
「はい、ユリアーナ殿下」
同じ年の二人も仲睦まじく歩いている。
わたくしはエクムント様に手を取られ、クリスタはハインリヒ殿下に手を取られ、レーニ嬢はフランツに手を取られ、マリアはオリヴァー殿の手を握って一緒に歩いている。
「お兄様、ゲオルグ様がわたくしを誘ってくださいました。ゲオルグ様とお友達になれて嬉しいです」
「ナターリエ、よかったね。ゲオルグ様、ナターリエをよろしくお願いします」
「はい! ナターリエ嬢と仲良くします!」
手を繋いでもらって嬉しそうなナターリエ嬢にオリヴァー殿がゲオルグ殿にお礼を言って、ゲオルグ殿は背筋を伸ばして返事をしている。
気持ちが通じ合うのはまだまだ先だろうが可愛い小さなカップルにわたくしの表情も緩んでいた。
「エリザベート嬢、クリスタ嬢はもう結婚指輪の相談をしたそうですね」
「そのようですね。ハインリヒ殿下と結婚して皇太子妃となるのだから、準備も早いうちから行っておくのかもしれません」
「私たちの結婚指輪の相談も近いうちにしましょうか」
「わたくしはエクムント様にお任せしますわ。エクムント様の選んだものを身に着けたいのです」
「可愛らしいことを仰る」
歩きながら話していると、エクムント様が金色の目を細めている。エクムント様の金色の目は無表情だったり、厳めしい顔をしているととても怖く見えるのだが、わたくしの隣りにいるときはいつも凪いで優しく感じられる。
軍人で辺境伯領の軍の総司令官なのだから、冷酷な命令を口にすることもあるのだろうが、わたくしの隣りにいるエクムント様はいつも甘く優しく柔らかい表情をしていた。
一度だけエクムント様を怖いと思ったのは、わたくしが葡萄ジュースとすり替えられた葡萄酒を飲んでしまったときだろうか。あのときのエクムント様は金色の目を冷徹に光らせていた気がする。
それ以外はわたくしの大好きなエクムント様である。
冷徹な部分もエクムント様の一部だと思うと愛することはできるのだが、できる限りは優しいエクムント様でいてほしいとは思ってしまう。
わたくしにとっては、生まれたときから知っている相手で、小さなわたくしを抱っこしてくださったエクムント様は記憶にはないが、わたくしは物心ついたときにはエクムント様に恋をしていた。
妹枠から抜けられないのではないかと悩んだこともあったけれど、エクムント様はしっかりとわたくしを愛してくださっている。
エクムント様の握る手から、視線から、わたくしへの気持ちを感じ取ることができる。
「エクムント様、サファイアがわたくしの誕生石だというのは知っていますがエクムント様の誕生石は何なのですか?」
「男性の誕生石はあまり気にしないものですが、エリザベート嬢は気になるのですね」
「気になります」
「私もエリザベート嬢と生まれ月が同じなので、同じサファイアですよ」
わたくしとエクムント様は生まれ月が同じだから、誕生石も同じだった。
「それならば誕生花も同じなのですか?」
「誕生花は生まれた日によって違うので、誕生花は違うと思いますよ」
「そうなのですか」
誕生花が違うことにはがっかりしてしまったが、誕生石が同じというのは純粋に嬉しい。
「エクムント様の指輪にもサファイアを埋め込んだらお揃いになりますね」
「それはいいですね。裏側にサファイアの小さな粒を埋め込みましょう」
同じ誕生石なのだから、お揃いにしたい。わたくしの願いをエクムント様は聞いてくれるようだ。
「サファイアの石言葉をご存じですか?」
「いいえ、知りません」
「『成功』『誠実』『慈愛』などがありますが、身に着けることで誠実で穏やかな愛をもたらすといわれています」
身に着けることで誠実で穏やかな愛をもたらす。それはわたくしたちにぴったりなのではないだろうか。
結婚したらわたくしは誠実で穏やかな愛を育みたいと思っている。
「わたくしの理想とする夫婦の姿です」
「私も同じです」
エクムント様に微笑まれて、わたくしは同じ気持ちでいられる喜びを感じていた。
部屋ではクリスタちゃんはわたくしとレーニ嬢に語ってくれた。
「ノエル殿下がうっかりと学園のお茶会で『ちゃん付け』を出してしまったことがあったでしょう? ノエル殿下のような身分の高い教育された方でさえそうなのだから、わたくしも失敗することがあってはならないと思ったのです」
「そういえばそんなことがありましたね」
「クリスタ、とても立派な考えだと思います」
「お姉様は心の中で呼んでいればいいと仰いましたが、心の中で呼んでいても、つい口から出てしまうことがあります。わたくしは皇太子妃になるのだから、気を引き締めなければいけないと思っています。フランツとマリアのことも、今後はふーちゃんやまーちゃんとは呼びません」
それはクリスタちゃんの子ども時代との別れだったのかもしれない。
クリスタちゃんがそれほどまでの覚悟をしていると聞くと、わたくしも甘いことは言っていられない。
「わたくしもクリスタを見習いますわ。私的な場でも心の中でも、クリスタはクリスタ、フランツはフランツ、マリアはマリアと呼びましょう」
「クリスタ嬢もエリザベート嬢も立派な志です。わたくしも見習いたいと思います」
レーニ嬢とも話し合って、わたくしは今後はクリスタちゃんのことはクリスタ、ふーちゃんのことはフランツ、まーちゃんのことはマリアと呼ぶと決めた。
フランツとマリアに関しては、まだ小さいので可愛い愛称で呼びたい気持ちはあったが、これが間違えて公式な場で出てしまってはいけないというクリスタの考えはよく分かったので改めることにした。
慣れないが、今後はクリスタ、フランツ、マリアと弟妹のことは呼び、レーニ嬢はレーニ嬢、ミリヤム嬢はミリヤム嬢と呼ぶことを決めた。
それにしてもクリスタの成長にわたくしは驚いてしまう。こんなにしっかりと発言をするような子だっただろうか。王宮で国王陛下と王妃殿下とハインリヒ殿下と過ごした時間がクリスタに皇太子妃としての自覚を目覚めさせたのだろう。
呼び方を変えることを含めて、クリスタの成長はわたくしにとっては寂しい一面もあったが、喜ばしいことでもあった。
「今後はお姉様を観察して、エクムント様とのことを羨ましがったりしません。わたくしにはわたくしのやるべきことがあるのですから」
凛と告げるクリスタにわたくしは感動してしまう。
ずっとわたくしにくっついてきて、離れることのできなかった小さな妹が、今、自立しようとしているのだ。寂しさは当然あるが、それ以上に感動が胸に込み上げる。
「クリスタ、覚えていてください。わたくしにとってあなたは大事な可愛い妹です。わたくしはあなたを誇りに思います」
「お姉様、ありがとうございます。わたくしにとっても、お姉様は大事な頼れるお姉様です。これからもよろしくお願いします」
手を取り合って言い合うわたくしとクリスタに、レーニ嬢がうんうんと頷いて話を聞いていた。
翌日の朝には、フランツとマリアとデニス殿とゲオルグ殿に起こされた。
「エリザベートお姉様、クリスタお姉様、いいお天気ですよ」
「お散歩に行きましょう!」
元気よく声を掛けてくるフランツとマリアに、わたくしとクリスタとレーニ嬢が支度をする。
「お姉様、参りましょう!」
「お姉様、一緒にお散歩しましょう!」
デニス殿とゲオルク殿も声を掛けてくる。ゲオルク殿は今年からお茶会に参加できる年齢になっているので、喋り方がしっかりしてきている。
支度をして庭に出るとエクムント様とハインリヒ殿下とユリアーナ殿下とオリヴァー殿とナターリエ嬢が待っていた。ゲオルグ殿が走って行ってナターリエ嬢の手を取る。
「ナターリエ嬢、一緒に歩きませんか?」
「わたくしでよろしければ」
レーニ嬢によく似たそばかすの散った頬を赤くしてナターリエ嬢と手を繋いでいるゲオルク殿はナターリエ嬢が好きなのかもしれない。
ユリアーナ殿下はデニス殿のところに駆けて行っていた。
「デニス殿、わたくしと一緒にお散歩しましょう」
「はい、ユリアーナ殿下」
同じ年の二人も仲睦まじく歩いている。
わたくしはエクムント様に手を取られ、クリスタはハインリヒ殿下に手を取られ、レーニ嬢はフランツに手を取られ、マリアはオリヴァー殿の手を握って一緒に歩いている。
「お兄様、ゲオルグ様がわたくしを誘ってくださいました。ゲオルグ様とお友達になれて嬉しいです」
「ナターリエ、よかったね。ゲオルグ様、ナターリエをよろしくお願いします」
「はい! ナターリエ嬢と仲良くします!」
手を繋いでもらって嬉しそうなナターリエ嬢にオリヴァー殿がゲオルグ殿にお礼を言って、ゲオルグ殿は背筋を伸ばして返事をしている。
気持ちが通じ合うのはまだまだ先だろうが可愛い小さなカップルにわたくしの表情も緩んでいた。
「エリザベート嬢、クリスタ嬢はもう結婚指輪の相談をしたそうですね」
「そのようですね。ハインリヒ殿下と結婚して皇太子妃となるのだから、準備も早いうちから行っておくのかもしれません」
「私たちの結婚指輪の相談も近いうちにしましょうか」
「わたくしはエクムント様にお任せしますわ。エクムント様の選んだものを身に着けたいのです」
「可愛らしいことを仰る」
歩きながら話していると、エクムント様が金色の目を細めている。エクムント様の金色の目は無表情だったり、厳めしい顔をしているととても怖く見えるのだが、わたくしの隣りにいるときはいつも凪いで優しく感じられる。
軍人で辺境伯領の軍の総司令官なのだから、冷酷な命令を口にすることもあるのだろうが、わたくしの隣りにいるエクムント様はいつも甘く優しく柔らかい表情をしていた。
一度だけエクムント様を怖いと思ったのは、わたくしが葡萄ジュースとすり替えられた葡萄酒を飲んでしまったときだろうか。あのときのエクムント様は金色の目を冷徹に光らせていた気がする。
それ以外はわたくしの大好きなエクムント様である。
冷徹な部分もエクムント様の一部だと思うと愛することはできるのだが、できる限りは優しいエクムント様でいてほしいとは思ってしまう。
わたくしにとっては、生まれたときから知っている相手で、小さなわたくしを抱っこしてくださったエクムント様は記憶にはないが、わたくしは物心ついたときにはエクムント様に恋をしていた。
妹枠から抜けられないのではないかと悩んだこともあったけれど、エクムント様はしっかりとわたくしを愛してくださっている。
エクムント様の握る手から、視線から、わたくしへの気持ちを感じ取ることができる。
「エクムント様、サファイアがわたくしの誕生石だというのは知っていますがエクムント様の誕生石は何なのですか?」
「男性の誕生石はあまり気にしないものですが、エリザベート嬢は気になるのですね」
「気になります」
「私もエリザベート嬢と生まれ月が同じなので、同じサファイアですよ」
わたくしとエクムント様は生まれ月が同じだから、誕生石も同じだった。
「それならば誕生花も同じなのですか?」
「誕生花は生まれた日によって違うので、誕生花は違うと思いますよ」
「そうなのですか」
誕生花が違うことにはがっかりしてしまったが、誕生石が同じというのは純粋に嬉しい。
「エクムント様の指輪にもサファイアを埋め込んだらお揃いになりますね」
「それはいいですね。裏側にサファイアの小さな粒を埋め込みましょう」
同じ誕生石なのだから、お揃いにしたい。わたくしの願いをエクムント様は聞いてくれるようだ。
「サファイアの石言葉をご存じですか?」
「いいえ、知りません」
「『成功』『誠実』『慈愛』などがありますが、身に着けることで誠実で穏やかな愛をもたらすといわれています」
身に着けることで誠実で穏やかな愛をもたらす。それはわたくしたちにぴったりなのではないだろうか。
結婚したらわたくしは誠実で穏やかな愛を育みたいと思っている。
「わたくしの理想とする夫婦の姿です」
「私も同じです」
エクムント様に微笑まれて、わたくしは同じ気持ちでいられる喜びを感じていた。
273
お気に入りに追加
1,691
あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?
いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、
たまたま付き人と、
「婚約者のことが好きなわけじゃないー
王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」
と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。
私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、
「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」
なんで執着するんてすか??
策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー
基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。

ロザムンドの復讐 – 聖女を追放した愚か者たちへ
ゆる
恋愛
聖女ロザムンド・エステルは、神聖な力で人々を癒し、王国の希望として崇められていた。だが、王太子レオナルドの誤った決断と陰謀によって、彼女は「偽りの聖女」と断じられ、無慈悲にも追放される。信頼していた人々からの裏切りに絶望しながらも、ロザムンドは静かに決意する――この手で、真実の奇跡を取り戻すのだと。
一方、ロザムンドを失った王国は、偽りの聖女カトリーナを迎えたことで、次第に荒廃していく。民衆の不満は募り、疫病と飢饉が国を蝕く。王太子レオナルドは、やがて自らの過ちを悟り、真実の聖女を取り戻すために旅立つ。彼が再会したロザムンドは、かつての純粋な少女ではなく、自らの運命を受け入れ、覚悟を決めた強き聖女へと生まれ変わっていた――。
「私は、もう二度と誰にも裏切られない――!」
これは、追放された聖女が奇跡を取り戻し、かつての王国に復讐する物語。
後悔と贖罪に苦しむ王太子、かつて彼女を見捨てた貴族たち、偽りの聖女を操る陰謀者たち――彼らすべてが、ロザムンドの復活を前に震え上がる!
果たして、彼女は王国に真実の光を取り戻し、民衆の信頼を再び得ることができるのか?
そして、彼女を追放した王太子レオナルドの想いは届くのか――?

思い出してしまったのです
月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。
妹のルルだけが特別なのはどうして?
婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの?
でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。
愛されないのは当然です。
だって私は…。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる