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十二章 両親の事故とわたくしが主役の物語
48.ジュニアプロムでの失敗
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国王陛下の生誕の式典が終わって、冬休みも終わると、わたくしたちは学園の寮に戻る。
学園では宿題を提出して、評価をもらって、通常の授業に戻っていた。
冬休み明けから春の試験までは時間が短い。
その期間に一年間の復習をしなければいけないので、わたくしもクリスタちゃんも寮の部屋では勉強にかかりきりだった。
「オリヴァー殿、この前の詩の授業はどう思いましたか?」
「異国に嫁ぐ日を待つ隣国の女王殿下の思いがあふれていましたね」
「わたくしの解釈を見てくれますか?」
「私の解釈もお願いします」
お茶の時間になると、オリヴァー殿に詩の解釈を教えてもらう。オリヴァー殿の解釈はいつも的確で、とても勉強になった。
「エリザベート嬢、ハインリヒ殿下、私も聞いてもよろしいですか?」
「わたくしも確認したいことがあります」
「何でも聞いてください」
「お答えしましょう」
オリヴァー殿とミリヤムちゃんはわたくしとハインリヒ殿下に別の教科の勉強を聞く。わたくしもハインリヒ殿下も丁寧にそれに答えた。
今年はジュニアプロムもあるので、五年生は忙しい。六年生のノルベルト殿下はプロムと卒業式もあるのでますます忙しい。
それでも学年末の試験ではノルベルト殿下は首席だったし、わたくしも五年生の首席でハインリヒ殿下が二位、オリヴァー殿とミリヤムちゃんがそれに続く結果となった。四年生の首席はクリスタちゃんとレーニちゃんだった。三年生はリーゼロッテ嬢が首席だった。
学年末の試験が終わると、卒業式やプロムに向けての準備が始まる。
今年でノルベルト殿下が卒業してしまうと、わたくしの主催するお茶会も寂しくなってしまう。ふーちゃんは今年で九歳だし、ガブリエラちゃんもわたくしが卒業してからしか学園に入学してこない。
それにわたくしも六年生になるのでそろそろお茶会の主催をクリスタちゃんに譲る準備をしなければいけなかった。
お茶の仕入れやお茶菓子の注文、サンルームの鍵の借り方や給仕を連れてくることなど、わたくしを見ているのでクリスタちゃんはちゃんと覚えている。
クリスタちゃんには来年度からお茶会の主催として頑張ってもらわねばならなかった。
ジュニアプロムの日とプロムの日は一緒で、五年生と六年生は体育館に集まって盛装をして舞踏会に備える。
わたくしが体育館に行くと、エクムント様が到着されていた。
「エクムント様、来てくださったのですね」
「エリザベート嬢、学園に来たのは初めてです。今日はご一緒させてください」
「それはわたくしのセリフですわ。今日はよろしくお願いします」
体育館には給仕も入っていて、飲み物や軽食も用意されている。
音楽隊が呼ばれていて、ダンスの音楽を奏でていた。
ノエル殿下もいらっしゃって、ノルベルト殿下と手を取り合って見つめ合っている。お二人の時間を邪魔するつもりはなかったので、わたくしはお声はかけなかった。
後で休憩されているときにお声掛けすればいいだろう。
ハインリヒ殿下はクリスタちゃんの手を引いて踊りの輪に入っていく。
オリヴァー殿はまーちゃんを誘ってくださったようで、ドレス姿のまーちゃんがオリヴァー殿に手を引かれている。
まーちゃんはそのまま今日はわたくしとクリスタちゃんの部屋に泊まって、わたくしとクリスタちゃんと一緒にディッペル家に帰ることが決まっていた。
「みんな楽しそうですね」
「私たちも踊りますか?」
「はい」
エクムント様に手を引かれてわたくしも踊りの輪の中に入る。
舞踏会に参加したことがなかったわけではないので、ダンスも慣れていたし、舞踏会の雰囲気にも慣れがあった。
それがよくなかったのかもしれない。
わたくしはダンスのターンで足を滑らせてしまった。
わたくしは運動会では毎年乗馬を選んでいたので、体育館で踊ったことはない。体育館で踊るときには女性も男性も柔らかなバレエシューズのようなものを履いていた。
今日は体育館の床にシートが張られて、靴で歩いてもいいようになっていたのだが、そのシートのつなぎ目に足が引っかかってしまった。
バランスを崩すわたくしをエクムント様が軽々と抱き上げた。
そのままダンスの輪から離れて端の椅子のところまで、運ばれる。
「エリザベート嬢、大丈夫ですか?」
「油断しました。シートのつなぎ目に足を引っかけたようです」
「足を痛めたようですね」
「これでは踊れません」
せっかくのジュニアプロムなのに踊れないと俯くわたくしに、エクムント様が給仕を呼んで飲み物を持ってこさせる。葡萄ジュースを受け取って一口飲むと、少し気分が落ち着いてくる。
「無理をして踊ることはないと思います」
「せっかく来ていただいたのにすみません」
「保健室に行きますか?」
「いいえ、それほどではありません。エクムント様とこの場を楽しみたく思います」
保健室に行くという選択肢もあったが、足を捻ったことを言われるだけで、足が治るわけではない。それに酷く捻ったわけではないので、今は痛みはあるが自然に治る範囲だろう。
「部屋まで送りましょうか?」
「いいえ、もう少しエクムント様と過ごしたいです」
踊ることができなくてもエクムント様と過ごす時間は大事にしたい。わたくしの要望に、エクムント様は応えてくださって、わたくしの隣りに座った。
エクムント様も飲み物を給仕に持ってこさせる。小さく気泡を上げるシャンパンを飲んでいるエクムント様に、わたくしはそのシャンパンに興味がわいていた。
「舞踏会ではシャンパンがよく振舞われるのですか?」
「踊るので、冷たくて喉越しのいい飲み物が好まれるのです。シャンパンや葡萄ジュース、葡萄酒がよく振舞われますね」
「なるほど……」
わたくしも舞踏会を主催する側になるので、知識は得ておきたかった。
「わたくし、ノエル殿下から引き継ぎをして、今年までお茶会の主催をしていたのです。ノエル殿下はお茶会の主催をすることも将来の役に立つと仰っていました」
「貴重な経験をなさいましたね。お茶の手配やお茶菓子の注文、給仕の手配など、お茶会の主催は学ぶことの多い仕事です」
「わたくしが辺境伯家に嫁いだ後も役に立つかと思ったのです」
「必ずその経験は役に立つことでしょう」
座ってエクムント様と話していると、勉強になるし、気分もよくなってきた。足はまだ痛かったが、わたくしはジュニアプロムが台無しにならなくてよかったと思っていた。
「エリザベート嬢、座ってどうなさったのですか?」
「ノエル殿下、ノルベルト殿下、こんばんは。実はわたくし、シートのつなぎ目に足を引っかけて足を捻ってしまったのです」
「それは大変でしたね。大丈夫ですか?」
「痛いですが、酷く捻ったわけではないので、時間が経てば治ると思います」
ノエル殿下とノルベルト殿下に説明するときに少し恥ずかしかったが、ノエル殿下もノルベルト殿下もわたくしを心配してくれた。
ジュニアプロムが終わった後、エクムント様はわたくしを抱き上げて、寮の入り口まで送ってくださった。抱き上げられて恥ずかしかったが、エクムント様に守られている安心感にわたくしは包まれていた。
寮の入り口でわたくしを降ろして、エクムント様はクリスタちゃんとまーちゃんに語り掛けていた。
「クリスタ嬢、マリア嬢、エリザベート嬢をよろしくお願いします」
「はい。お姉様を支えてお部屋まで連れて行きます」
「エリザベートお姉様と一緒にいます」
クリスタちゃんもまーちゃんもわたくしを助けてくれる様子だった。
クリスタちゃんに支えられて部屋に戻ると、ドレスを脱いで着替える。
明日には足はかなりよくなっていそうだったから、今日はシャワーを諦めて明日の朝入ることにした。
「お姉様、まーちゃんと一緒にシャワーに行ってきますね」
「行ってらっしゃい、クリスタちゃん、まーちゃん」
クリスタちゃんはまーちゃんを連れてシャワールームに行っている。
わたくしは顔を洗って化粧を落とし、髪を解いてベッドに腰かけ、一息ついていた。
学園では宿題を提出して、評価をもらって、通常の授業に戻っていた。
冬休み明けから春の試験までは時間が短い。
その期間に一年間の復習をしなければいけないので、わたくしもクリスタちゃんも寮の部屋では勉強にかかりきりだった。
「オリヴァー殿、この前の詩の授業はどう思いましたか?」
「異国に嫁ぐ日を待つ隣国の女王殿下の思いがあふれていましたね」
「わたくしの解釈を見てくれますか?」
「私の解釈もお願いします」
お茶の時間になると、オリヴァー殿に詩の解釈を教えてもらう。オリヴァー殿の解釈はいつも的確で、とても勉強になった。
「エリザベート嬢、ハインリヒ殿下、私も聞いてもよろしいですか?」
「わたくしも確認したいことがあります」
「何でも聞いてください」
「お答えしましょう」
オリヴァー殿とミリヤムちゃんはわたくしとハインリヒ殿下に別の教科の勉強を聞く。わたくしもハインリヒ殿下も丁寧にそれに答えた。
今年はジュニアプロムもあるので、五年生は忙しい。六年生のノルベルト殿下はプロムと卒業式もあるのでますます忙しい。
それでも学年末の試験ではノルベルト殿下は首席だったし、わたくしも五年生の首席でハインリヒ殿下が二位、オリヴァー殿とミリヤムちゃんがそれに続く結果となった。四年生の首席はクリスタちゃんとレーニちゃんだった。三年生はリーゼロッテ嬢が首席だった。
学年末の試験が終わると、卒業式やプロムに向けての準備が始まる。
今年でノルベルト殿下が卒業してしまうと、わたくしの主催するお茶会も寂しくなってしまう。ふーちゃんは今年で九歳だし、ガブリエラちゃんもわたくしが卒業してからしか学園に入学してこない。
それにわたくしも六年生になるのでそろそろお茶会の主催をクリスタちゃんに譲る準備をしなければいけなかった。
お茶の仕入れやお茶菓子の注文、サンルームの鍵の借り方や給仕を連れてくることなど、わたくしを見ているのでクリスタちゃんはちゃんと覚えている。
クリスタちゃんには来年度からお茶会の主催として頑張ってもらわねばならなかった。
ジュニアプロムの日とプロムの日は一緒で、五年生と六年生は体育館に集まって盛装をして舞踏会に備える。
わたくしが体育館に行くと、エクムント様が到着されていた。
「エクムント様、来てくださったのですね」
「エリザベート嬢、学園に来たのは初めてです。今日はご一緒させてください」
「それはわたくしのセリフですわ。今日はよろしくお願いします」
体育館には給仕も入っていて、飲み物や軽食も用意されている。
音楽隊が呼ばれていて、ダンスの音楽を奏でていた。
ノエル殿下もいらっしゃって、ノルベルト殿下と手を取り合って見つめ合っている。お二人の時間を邪魔するつもりはなかったので、わたくしはお声はかけなかった。
後で休憩されているときにお声掛けすればいいだろう。
ハインリヒ殿下はクリスタちゃんの手を引いて踊りの輪に入っていく。
オリヴァー殿はまーちゃんを誘ってくださったようで、ドレス姿のまーちゃんがオリヴァー殿に手を引かれている。
まーちゃんはそのまま今日はわたくしとクリスタちゃんの部屋に泊まって、わたくしとクリスタちゃんと一緒にディッペル家に帰ることが決まっていた。
「みんな楽しそうですね」
「私たちも踊りますか?」
「はい」
エクムント様に手を引かれてわたくしも踊りの輪の中に入る。
舞踏会に参加したことがなかったわけではないので、ダンスも慣れていたし、舞踏会の雰囲気にも慣れがあった。
それがよくなかったのかもしれない。
わたくしはダンスのターンで足を滑らせてしまった。
わたくしは運動会では毎年乗馬を選んでいたので、体育館で踊ったことはない。体育館で踊るときには女性も男性も柔らかなバレエシューズのようなものを履いていた。
今日は体育館の床にシートが張られて、靴で歩いてもいいようになっていたのだが、そのシートのつなぎ目に足が引っかかってしまった。
バランスを崩すわたくしをエクムント様が軽々と抱き上げた。
そのままダンスの輪から離れて端の椅子のところまで、運ばれる。
「エリザベート嬢、大丈夫ですか?」
「油断しました。シートのつなぎ目に足を引っかけたようです」
「足を痛めたようですね」
「これでは踊れません」
せっかくのジュニアプロムなのに踊れないと俯くわたくしに、エクムント様が給仕を呼んで飲み物を持ってこさせる。葡萄ジュースを受け取って一口飲むと、少し気分が落ち着いてくる。
「無理をして踊ることはないと思います」
「せっかく来ていただいたのにすみません」
「保健室に行きますか?」
「いいえ、それほどではありません。エクムント様とこの場を楽しみたく思います」
保健室に行くという選択肢もあったが、足を捻ったことを言われるだけで、足が治るわけではない。それに酷く捻ったわけではないので、今は痛みはあるが自然に治る範囲だろう。
「部屋まで送りましょうか?」
「いいえ、もう少しエクムント様と過ごしたいです」
踊ることができなくてもエクムント様と過ごす時間は大事にしたい。わたくしの要望に、エクムント様は応えてくださって、わたくしの隣りに座った。
エクムント様も飲み物を給仕に持ってこさせる。小さく気泡を上げるシャンパンを飲んでいるエクムント様に、わたくしはそのシャンパンに興味がわいていた。
「舞踏会ではシャンパンがよく振舞われるのですか?」
「踊るので、冷たくて喉越しのいい飲み物が好まれるのです。シャンパンや葡萄ジュース、葡萄酒がよく振舞われますね」
「なるほど……」
わたくしも舞踏会を主催する側になるので、知識は得ておきたかった。
「わたくし、ノエル殿下から引き継ぎをして、今年までお茶会の主催をしていたのです。ノエル殿下はお茶会の主催をすることも将来の役に立つと仰っていました」
「貴重な経験をなさいましたね。お茶の手配やお茶菓子の注文、給仕の手配など、お茶会の主催は学ぶことの多い仕事です」
「わたくしが辺境伯家に嫁いだ後も役に立つかと思ったのです」
「必ずその経験は役に立つことでしょう」
座ってエクムント様と話していると、勉強になるし、気分もよくなってきた。足はまだ痛かったが、わたくしはジュニアプロムが台無しにならなくてよかったと思っていた。
「エリザベート嬢、座ってどうなさったのですか?」
「ノエル殿下、ノルベルト殿下、こんばんは。実はわたくし、シートのつなぎ目に足を引っかけて足を捻ってしまったのです」
「それは大変でしたね。大丈夫ですか?」
「痛いですが、酷く捻ったわけではないので、時間が経てば治ると思います」
ノエル殿下とノルベルト殿下に説明するときに少し恥ずかしかったが、ノエル殿下もノルベルト殿下もわたくしを心配してくれた。
ジュニアプロムが終わった後、エクムント様はわたくしを抱き上げて、寮の入り口まで送ってくださった。抱き上げられて恥ずかしかったが、エクムント様に守られている安心感にわたくしは包まれていた。
寮の入り口でわたくしを降ろして、エクムント様はクリスタちゃんとまーちゃんに語り掛けていた。
「クリスタ嬢、マリア嬢、エリザベート嬢をよろしくお願いします」
「はい。お姉様を支えてお部屋まで連れて行きます」
「エリザベートお姉様と一緒にいます」
クリスタちゃんもまーちゃんもわたくしを助けてくれる様子だった。
クリスタちゃんに支えられて部屋に戻ると、ドレスを脱いで着替える。
明日には足はかなりよくなっていそうだったから、今日はシャワーを諦めて明日の朝入ることにした。
「お姉様、まーちゃんと一緒にシャワーに行ってきますね」
「行ってらっしゃい、クリスタちゃん、まーちゃん」
クリスタちゃんはまーちゃんを連れてシャワールームに行っている。
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