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十二章 両親の事故とわたくしが主役の物語
47.誕生石と婚約指輪
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国王陛下の生誕の式典の晩餐会には、わたくしは思い切って婚約指輪を付けて行った。なくしては嫌なので婚約指輪はもらってから大事に箱に入れて仕舞っていたのだ。
動くたびにダイヤモンドとサファイアで飾られた婚約指輪が気になってしまう。美しい婚約指輪。これをエクムント様はわたくしにくださった。
本当に結婚が近付いているのだと実感してしまう。
春になって学年の六年生になって、もう一度春が来て学園を卒業することになれば、わたくしはエクムント様の元に嫁いでいくのだ。
左手の薬指で光る婚約指輪にレーニちゃんは気付いたようだが、声を掛けることはなかった。国王陛下の生誕の式典の晩餐会で声を掛ける内容ではないと理解しているのだろう。
エクムント様もわたくしの左手の薬指の婚約指輪に気付いていた。
「エリザベート嬢、つけてくださっているのですね」
「落とさないか心配ですが、つけてきました」
「とてもよくお似合いです」
結婚指輪は男女ともにつけるのだが、婚約指輪は女性にだけ贈るものらしい。エクムント様は指輪を付けていないのでそうなのだろう。この世界ではそうなっているようだ。
婚約指輪は装飾的なものが多く、結婚指輪はいつもつけるのでシンプルなものが多いのがその理由だろう。きらきらと輝く婚約指輪をわたくしはずっと見ていられる自信があった。
「エリザベート嬢、指輪のサイズが心配ですか?」
「サイズはぴったりです」
「それならば落とさないと思いますよ」
そうなのだ。
エクムント様に指のサイズを教えたつもりはないのに、エクムント様はわたくしの指にぴったりの指輪を作ってくれた。
「エクムント様はよくわたくしの指のサイズを知っていましたね」
「いつも触れている手です。大きさも覚えます」
「そうなのですか!?」
わたくしはエクムント様と手を繋いだり、手に手を重ねることが多いが、エクムント様の指輪のサイズは想像が付かない。エクムント様はわたくしの手に触れているだけでわたくしの指のサイズが分かってしまったというのだ。
そんなの格好良すぎてわたくしはくらくらとする。
「エリザベート嬢の薬指は、私の小指とサイズがほとんど同じなのです」
「そんなこと考えたことがありませんでした」
「小指の第一関節の辺りが、エリザベート嬢の薬指の第二関節の太さですよ」
手の平を合わせてまじまじとサイズを見ていると、エクムント様が教えてくださる。
わたくしの薬指がエクムント様の大きな手の小指の第一関節くらいの大きさだったなんて全く知らなかった。
「エリザベート嬢のことなら、かなり知っているのですよ、私は」
「それは存じておりますわ。エクムント様とは小さなころからのお付き合いですから」
「帽子が嫌いで手で取って投げ捨てていたのを思い出します」
「それはわたくしが赤ちゃんのころではないですか。今はそんなことしませんよ」
「そうでしたね」
くすくすと笑いながら話すエクムント様に頬が熱くなるがわたくしは婚約指輪を付けてきてよかったと思っていた。
晩餐会の食事の後には大広間に場所を移して舞踏会が行われる。
わたくしはエクムント様に言っておかなければいけないことがあったのを思い出していた。
「わたくし、学園の五年生でジュニアプロムが年度末にあります。エクムント様、パートナーとして出席していただけますか?」
「お誘いありがとうございます。喜んで行かせていただきます」
「ありがとうございます」
ジュニアプロムには学外からでもいいのでパートナーが必要だった。五年生はジュニアプロム、六年生はプロムが開かれる。プロムとは踊りやお喋りを楽しむ会なのだが、学園のプロムは社交界に出る前の準備として舞踏会の練習が行われるのだ。
わたくしはまだ五年生でジュニアプロムにも出席したことはないが、ノルベルト殿下はノエル殿下のジュニアプロムからパートナーとして出席しているだろうし、今年のプロムではノエル殿下をパートナーとして踊るだろう。
ハインリヒ殿下はジュニアプロムでクリスタちゃんをパートナーとして誘うはずだ。
ジュニアプロムにエクムント様を誘えて安心していると、エクムント様がわたくしの手を取る。
「踊りますか?」
「はい、エクムント様」
手を引かれてわたくしは踊りの輪の中に入って行った。
しばらく踊って疲れると、エクムント様がわたくしを部屋に送り出してくださる。部屋に戻るとクリスタちゃんもレーニちゃんも戻っていた。
「お姉様、その指輪、いついただいたのですか?」
クリスタちゃんはわたくしが付けている婚約指輪に興味津々だ。
「エクムント様のお誕生日にいただきました。本当ならばわたくしのお誕生日にいただくはずだったのですが、出来上がりが遅くなったそうなのです」
「とても素敵ですね。ダイヤモンドとサファイアが飾られていますわ」
「ダイヤモンドは永遠という意味で、サファイアはわたくしの誕生石なのだそうです」
「素敵! さすがエクムント様ですね」
身を乗り出しているクリスタちゃんにレーニちゃんがそっと呟く。
「ハインリヒ殿下も結婚が近くなったらくださると思いますから、クリスタちゃんはそんなにじろじろ見てはいけませんよ」
「わたくし、そんなに露骨に見ていましたか?」
「晩餐会でエリザベートお姉様にお声を掛けようとしていたのではないですか?」
「レーニちゃんは鋭すぎますわ! エクムント様といい雰囲気だったので我慢したのですよ」
クリスタちゃんはハインリヒ殿下がいるのにわたくしに声を掛けようとしていた。それはあまり褒められたことではない。
「クリスタちゃん、ハインリヒ殿下と一緒のときにはハインリヒ殿下に集中してください」
「それは……」
「クリスタちゃんもハインリヒ殿下がクリスタちゃんの方を見ていなかったら、嫌な気分になるでしょう?」
「はい。気を付けます、お姉様」
クリスタちゃんも自分の振る舞いがよくなかったことに気付いたようだ。俯いて反省している。
わたくしは婚約指輪を外してビロードの箱の中に丁寧に納めた。
絶対になくさないようにしなければいけない。
「わたくしの誕生石はなんなのかしら……」
夢見るように呟くクリスタちゃんにレーニちゃんが答える。
「クリスタちゃんの誕生石はアクアマリンですよ。ふーちゃんの誕生石と同じなので、覚えていました」
「レーニちゃん、詳しいのですね。レーニちゃんの誕生石は何ですか?」
「わたくしは、ムーンストーンや真珠やアレキサンドライトと言われています」
「ムーンストーンと真珠は分かるのですが、アレキサンドライトとはどのような宝石ですか?」
疑問を投げかけるクリスタちゃんにレーニちゃんが答える。
「『宝石の王様』と呼ばれていて、光によって色を変える宝石です。太陽光の下では青緑、人工の光の下では赤なので、昼のエメラルド、夜のルビーと言われていますわ」
「それはロマンチックな宝石ですね」
「いつかふーちゃんがわたくしの婚約指輪にアレキサンドライトをくれたら嬉しいと思っているのです」
「ふーちゃんはきっとレーニちゃんにアレキサンドライトをプレゼントします。ふーちゃんですから!」
クリスタちゃんも自信を持って言っているが、わたくしもふーちゃんならば大丈夫だろうと思っていた。
「今日はお風呂の順番はどうしますか?」
「わたくしはドレスの片付けが終わっていないので、クリスタちゃんとレーニちゃんお先にどうぞ」
「わたくし、早くお化粧を落としたいので先でいいですか?」
「それでは、クリスタちゃん、どうぞ」
お風呂の順番を決めて、わたくしたちは寝る準備を始めた。
動くたびにダイヤモンドとサファイアで飾られた婚約指輪が気になってしまう。美しい婚約指輪。これをエクムント様はわたくしにくださった。
本当に結婚が近付いているのだと実感してしまう。
春になって学年の六年生になって、もう一度春が来て学園を卒業することになれば、わたくしはエクムント様の元に嫁いでいくのだ。
左手の薬指で光る婚約指輪にレーニちゃんは気付いたようだが、声を掛けることはなかった。国王陛下の生誕の式典の晩餐会で声を掛ける内容ではないと理解しているのだろう。
エクムント様もわたくしの左手の薬指の婚約指輪に気付いていた。
「エリザベート嬢、つけてくださっているのですね」
「落とさないか心配ですが、つけてきました」
「とてもよくお似合いです」
結婚指輪は男女ともにつけるのだが、婚約指輪は女性にだけ贈るものらしい。エクムント様は指輪を付けていないのでそうなのだろう。この世界ではそうなっているようだ。
婚約指輪は装飾的なものが多く、結婚指輪はいつもつけるのでシンプルなものが多いのがその理由だろう。きらきらと輝く婚約指輪をわたくしはずっと見ていられる自信があった。
「エリザベート嬢、指輪のサイズが心配ですか?」
「サイズはぴったりです」
「それならば落とさないと思いますよ」
そうなのだ。
エクムント様に指のサイズを教えたつもりはないのに、エクムント様はわたくしの指にぴったりの指輪を作ってくれた。
「エクムント様はよくわたくしの指のサイズを知っていましたね」
「いつも触れている手です。大きさも覚えます」
「そうなのですか!?」
わたくしはエクムント様と手を繋いだり、手に手を重ねることが多いが、エクムント様の指輪のサイズは想像が付かない。エクムント様はわたくしの手に触れているだけでわたくしの指のサイズが分かってしまったというのだ。
そんなの格好良すぎてわたくしはくらくらとする。
「エリザベート嬢の薬指は、私の小指とサイズがほとんど同じなのです」
「そんなこと考えたことがありませんでした」
「小指の第一関節の辺りが、エリザベート嬢の薬指の第二関節の太さですよ」
手の平を合わせてまじまじとサイズを見ていると、エクムント様が教えてくださる。
わたくしの薬指がエクムント様の大きな手の小指の第一関節くらいの大きさだったなんて全く知らなかった。
「エリザベート嬢のことなら、かなり知っているのですよ、私は」
「それは存じておりますわ。エクムント様とは小さなころからのお付き合いですから」
「帽子が嫌いで手で取って投げ捨てていたのを思い出します」
「それはわたくしが赤ちゃんのころではないですか。今はそんなことしませんよ」
「そうでしたね」
くすくすと笑いながら話すエクムント様に頬が熱くなるがわたくしは婚約指輪を付けてきてよかったと思っていた。
晩餐会の食事の後には大広間に場所を移して舞踏会が行われる。
わたくしはエクムント様に言っておかなければいけないことがあったのを思い出していた。
「わたくし、学園の五年生でジュニアプロムが年度末にあります。エクムント様、パートナーとして出席していただけますか?」
「お誘いありがとうございます。喜んで行かせていただきます」
「ありがとうございます」
ジュニアプロムには学外からでもいいのでパートナーが必要だった。五年生はジュニアプロム、六年生はプロムが開かれる。プロムとは踊りやお喋りを楽しむ会なのだが、学園のプロムは社交界に出る前の準備として舞踏会の練習が行われるのだ。
わたくしはまだ五年生でジュニアプロムにも出席したことはないが、ノルベルト殿下はノエル殿下のジュニアプロムからパートナーとして出席しているだろうし、今年のプロムではノエル殿下をパートナーとして踊るだろう。
ハインリヒ殿下はジュニアプロムでクリスタちゃんをパートナーとして誘うはずだ。
ジュニアプロムにエクムント様を誘えて安心していると、エクムント様がわたくしの手を取る。
「踊りますか?」
「はい、エクムント様」
手を引かれてわたくしは踊りの輪の中に入って行った。
しばらく踊って疲れると、エクムント様がわたくしを部屋に送り出してくださる。部屋に戻るとクリスタちゃんもレーニちゃんも戻っていた。
「お姉様、その指輪、いついただいたのですか?」
クリスタちゃんはわたくしが付けている婚約指輪に興味津々だ。
「エクムント様のお誕生日にいただきました。本当ならばわたくしのお誕生日にいただくはずだったのですが、出来上がりが遅くなったそうなのです」
「とても素敵ですね。ダイヤモンドとサファイアが飾られていますわ」
「ダイヤモンドは永遠という意味で、サファイアはわたくしの誕生石なのだそうです」
「素敵! さすがエクムント様ですね」
身を乗り出しているクリスタちゃんにレーニちゃんがそっと呟く。
「ハインリヒ殿下も結婚が近くなったらくださると思いますから、クリスタちゃんはそんなにじろじろ見てはいけませんよ」
「わたくし、そんなに露骨に見ていましたか?」
「晩餐会でエリザベートお姉様にお声を掛けようとしていたのではないですか?」
「レーニちゃんは鋭すぎますわ! エクムント様といい雰囲気だったので我慢したのですよ」
クリスタちゃんはハインリヒ殿下がいるのにわたくしに声を掛けようとしていた。それはあまり褒められたことではない。
「クリスタちゃん、ハインリヒ殿下と一緒のときにはハインリヒ殿下に集中してください」
「それは……」
「クリスタちゃんもハインリヒ殿下がクリスタちゃんの方を見ていなかったら、嫌な気分になるでしょう?」
「はい。気を付けます、お姉様」
クリスタちゃんも自分の振る舞いがよくなかったことに気付いたようだ。俯いて反省している。
わたくしは婚約指輪を外してビロードの箱の中に丁寧に納めた。
絶対になくさないようにしなければいけない。
「わたくしの誕生石はなんなのかしら……」
夢見るように呟くクリスタちゃんにレーニちゃんが答える。
「クリスタちゃんの誕生石はアクアマリンですよ。ふーちゃんの誕生石と同じなので、覚えていました」
「レーニちゃん、詳しいのですね。レーニちゃんの誕生石は何ですか?」
「わたくしは、ムーンストーンや真珠やアレキサンドライトと言われています」
「ムーンストーンと真珠は分かるのですが、アレキサンドライトとはどのような宝石ですか?」
疑問を投げかけるクリスタちゃんにレーニちゃんが答える。
「『宝石の王様』と呼ばれていて、光によって色を変える宝石です。太陽光の下では青緑、人工の光の下では赤なので、昼のエメラルド、夜のルビーと言われていますわ」
「それはロマンチックな宝石ですね」
「いつかふーちゃんがわたくしの婚約指輪にアレキサンドライトをくれたら嬉しいと思っているのです」
「ふーちゃんはきっとレーニちゃんにアレキサンドライトをプレゼントします。ふーちゃんですから!」
クリスタちゃんも自信を持って言っているが、わたくしもふーちゃんならば大丈夫だろうと思っていた。
「今日はお風呂の順番はどうしますか?」
「わたくしはドレスの片付けが終わっていないので、クリスタちゃんとレーニちゃんお先にどうぞ」
「わたくし、早くお化粧を落としたいので先でいいですか?」
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