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十一章 ネイルアートとフィンガーブレスレット
25.ポテトチップスとコロッケ
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昼食ではハインリヒ殿下のお誕生日の式典の昼食会と同じ料理が用意された。
とても豪華で美味しい料理だったし、何度食べても美味しい物には変わりがないのでわたくしは喜んでそれを食べることにした。当日食べることができなかったクリスタちゃんやハインリヒ殿下やノルベルト殿下やノエル殿下、それに昼食会に参加しなかったユリアーナ殿下とふーちゃんとまーちゃんは、豪華な昼食が食べられて嬉しそうだった。
そういえばこの国は料理のレパートリーがそんなに豊かではない。前世で日本に生きていたわたくしは毎日違うものを食べていたが、そういうことはなく、日常的には同じようなものが毎食出る感じだった。
それも幼い頃からなので慣れていたが、たまには違うものも食べたくなる。そんなときに豪華な昼食会の料理が食卓に並ぶととても嬉しくなってしまう。
スープも前菜もメインディッシュ二品もデザートも美味しくいただいてから、わたくしは満足してミルクティーをいただいていた。
「エクムント様、わたくしはミルクティーが一番好きなのです。辺境伯領に嫁いでもミルクティーを飲むことができないでしょうか?」
「辺境伯領ではミントティーかフルーツティーが一般的なのでミルクティーを用意したことがありませんでしたね。牛乳が確保できるように考えてみましょう」
結婚した後のことを口にするのは少し恥ずかしい気もしたけれど、ミルクティーを飲みたい気持ちは確かなのでエクムント様にお願いする。エクムント様も牛乳の仕入れ先を考えてくれると答えてくれた。
安心していると、ユリアーナ殿下が国王陛下と王妃殿下にお願いをしているのが聞こえる。
「わたくし、へんきょうはくりょうで、ポテトチップスというものをたべました。おうきゅうのおちゃかいでも、ポテトチップスをたべたいのです」
「そのポテトチップスというのはどのようなものなのかな?」
「ユリアーナ、教えてください」
「えーっと、ジャガイモをものすごくうすくきって、パリパリにあげたものなのです」
「ジャガイモを揚げただけなのか?」
「味はついていないのですか?」
「おしおのあじがついていたきがします」
一生懸命身振り手振りを加えて説明するユリアーナ殿下に、スマートにエクムント様が説明に入る。
「薄切りにしたジャガイモを揚げて、塩を振ったお菓子なのです。エリザベート嬢が考えたものです」
「エリザベート嬢が」
「それは面白いですね。わたくしも食べてみたいですわ」
この国では主食であるジャガイモを揚げてお菓子にするなんて信じられない様子ではあるが、国王陛下も王妃殿下も興味を持ってくださっている。何より、お二人の可愛がっているユリアーナ殿下の願いなのだ。叶えられないわけがなかった。
ポテトチップスは確実にこの国に広がっていっていた。
それならば、別の料理も広められないだろうか。
この国にはシチューのようなものはあるので、肉じゃがは白滝が手に入らないくらいで、作れるのではないだろうか。コロッケも作り方を説明すれば作れるに違いない。
この作り方をどうやって思い付いたのかを誤魔化さなければいけないが、懐かしい美味しい料理を食べるためならばわたくしは努力は惜しまないつもりだった。
「ポテトチップスの他に考えている料理があるのですが」
「エリザベート嬢の発想は面白いので、ぜひお聞きしたいですね」
「やはりジャガイモを使うのか?」
「ジャガイモの料理方法が少なくて、最近飽き飽きしていたところだったのですよ」
エクムント様だけでなく、国王陛下も王妃殿下も興味を持ってくださっている。わたくしは厨房に顔を出すことにした。
厨房に行くのには、興味津々でユリアーナ殿下もノエル殿下もクリスタちゃんもエクムント様もついて来ている。
ふーちゃんとまーちゃんはミルクティーを飲んで一休みすることにしたらしい。
「ジャガイモを茹でて、皮を剥いて潰して、ミンチと人参と玉ねぎを細切れにしたものを炒めたものを混ぜて、小麦粉をはたいて、卵黄にくぐらせて、パン粉を浸けて揚げるのです」
随分と具体的な指示にエクムント様が金色の目を少し見開く。
「その調理法はどこで知ったのですか?」
「ジャガイモをただ揚げて食べるだけではつまらないと思っていたのです。もっと色々なものを混ぜて、外側もカリカリになるようにして揚げたらどうなるのか、食べてみたかったのです」
「よく思い付くものですね」
厨房の料理長に話しが行って、コロッケが作られる。
それだけでなくて、わたくしは肉じゃがも調理して欲しかったのだが、出汁の取り方や調味料などが違うので、急には難しいだろうと考えていた。
最終的にはカレーを作りたいとも考えている。
カレーには様々なスパイスが必要だが、それは辺境伯領で交易をすれば手に入るような気がするのだ。
とりあえずはコロッケを厨房で作ってもらって、お茶の時間に軽食と一緒に出してもらう。
初めて見るきつね色に揚げられたコロッケに、誰もが興味津々だった。
コロッケのソースは作るのが難しかったので、ケチャップに塩と胡椒を足したものを添えてある。
コロッケを皿にとって、エクムント様が最初に食べてみる。
「これは美味しいですね。混ざっているミンチと人参と玉ねぎの味と、パン粉の揚がった食感が面白いです」
エクムント様はコロッケを気に入ったようだった。
「熱々の内に食べるのがよさそうだ。これは美味しい」
「ケチャップはつけてもつけなくてもよさそうですね」
国王陛下と王妃殿下も美味しいと言ってくださっている。
ハインリヒ殿下もノルベルト殿下もノエル殿下もユリアーナ殿下も両親もふーちゃんもまーちゃんもレーニちゃんもクリスタちゃんもコロッケを美味しくいただいてくれているようだった。
コロッケだけでなくポテトチップスもユリアーナ殿下の願いで出されていたが、ポテトチップスはユリアーナ殿下が大量に食べていた。
「これをたべたかったのです。あたらしいりょうりもおいしいですが、ポテトチップスがわたくしはいちばんすきです」
お茶会はみんなが満足して終わって、わたくしも安堵していた。
お茶会の後でわたくしがクリスタちゃんとレーニちゃんと一緒の部屋で寛いでいると、エクムント様がドアをノックした。
「夕暮れになって、庭も涼しくなってきました。少し歩きませんか?」
「行かせていただきます」
エクムント様のお誘いは嬉しく、わたくしは急いで準備をして庭に出た。王宮の庭は広いのでわたくしがまだ見たことのない場所もある。日は暮れかけていたがまだ庭は明るかった。
エクムント様と一緒に歩いていると、生け垣が迷路のように入り組んでいる中に入っていって、エクムント様がそこのベンチにわたくしを招いた。ハンカチをベンチの上に敷いてもらって、感謝して座ると、エクムント様の手がわたくしの手を取った。
フィンガーブレスレットを着けているので、わたくしの手は紐とビーズで飾られている。
「私の色がよく似合いますね」
「このビーズはエクムント様の目の色と同じですよね」
「エリザベート嬢に私の色を身に着けて欲しかったのです。私の色に染めてしまおうだなんて、傲慢なことは考えていませんが」
染めてくださっても構わないのです。
口から出てきそうだった言葉を飲み込むと、エクムント様がわたくしの手を持ち上げて、指先にキスをした。
エクムント様がわたくしの指先にキスを!
手の甲にキスをされたことがなかったわけではないが、二人きりでこれだけ密着して指先にキスをされるだなんて、それ以上を期待してしまう気持ちがないでもない。
「エリザベート嬢、お部屋まで送ります」
しかし、エクムント様は紳士だった。
それだけで終わって、わたくしは部屋に送られてしまった。
「お姉様、エクムント様とのお散歩、どうでしたか?」
「エリザベートお姉様、お顔が真っ赤ですよ?」
帰ってきたらクリスタちゃんとレーニちゃんに詰め寄られて、わたくしは熱い頬を押さえたのだった。
とても豪華で美味しい料理だったし、何度食べても美味しい物には変わりがないのでわたくしは喜んでそれを食べることにした。当日食べることができなかったクリスタちゃんやハインリヒ殿下やノルベルト殿下やノエル殿下、それに昼食会に参加しなかったユリアーナ殿下とふーちゃんとまーちゃんは、豪華な昼食が食べられて嬉しそうだった。
そういえばこの国は料理のレパートリーがそんなに豊かではない。前世で日本に生きていたわたくしは毎日違うものを食べていたが、そういうことはなく、日常的には同じようなものが毎食出る感じだった。
それも幼い頃からなので慣れていたが、たまには違うものも食べたくなる。そんなときに豪華な昼食会の料理が食卓に並ぶととても嬉しくなってしまう。
スープも前菜もメインディッシュ二品もデザートも美味しくいただいてから、わたくしは満足してミルクティーをいただいていた。
「エクムント様、わたくしはミルクティーが一番好きなのです。辺境伯領に嫁いでもミルクティーを飲むことができないでしょうか?」
「辺境伯領ではミントティーかフルーツティーが一般的なのでミルクティーを用意したことがありませんでしたね。牛乳が確保できるように考えてみましょう」
結婚した後のことを口にするのは少し恥ずかしい気もしたけれど、ミルクティーを飲みたい気持ちは確かなのでエクムント様にお願いする。エクムント様も牛乳の仕入れ先を考えてくれると答えてくれた。
安心していると、ユリアーナ殿下が国王陛下と王妃殿下にお願いをしているのが聞こえる。
「わたくし、へんきょうはくりょうで、ポテトチップスというものをたべました。おうきゅうのおちゃかいでも、ポテトチップスをたべたいのです」
「そのポテトチップスというのはどのようなものなのかな?」
「ユリアーナ、教えてください」
「えーっと、ジャガイモをものすごくうすくきって、パリパリにあげたものなのです」
「ジャガイモを揚げただけなのか?」
「味はついていないのですか?」
「おしおのあじがついていたきがします」
一生懸命身振り手振りを加えて説明するユリアーナ殿下に、スマートにエクムント様が説明に入る。
「薄切りにしたジャガイモを揚げて、塩を振ったお菓子なのです。エリザベート嬢が考えたものです」
「エリザベート嬢が」
「それは面白いですね。わたくしも食べてみたいですわ」
この国では主食であるジャガイモを揚げてお菓子にするなんて信じられない様子ではあるが、国王陛下も王妃殿下も興味を持ってくださっている。何より、お二人の可愛がっているユリアーナ殿下の願いなのだ。叶えられないわけがなかった。
ポテトチップスは確実にこの国に広がっていっていた。
それならば、別の料理も広められないだろうか。
この国にはシチューのようなものはあるので、肉じゃがは白滝が手に入らないくらいで、作れるのではないだろうか。コロッケも作り方を説明すれば作れるに違いない。
この作り方をどうやって思い付いたのかを誤魔化さなければいけないが、懐かしい美味しい料理を食べるためならばわたくしは努力は惜しまないつもりだった。
「ポテトチップスの他に考えている料理があるのですが」
「エリザベート嬢の発想は面白いので、ぜひお聞きしたいですね」
「やはりジャガイモを使うのか?」
「ジャガイモの料理方法が少なくて、最近飽き飽きしていたところだったのですよ」
エクムント様だけでなく、国王陛下も王妃殿下も興味を持ってくださっている。わたくしは厨房に顔を出すことにした。
厨房に行くのには、興味津々でユリアーナ殿下もノエル殿下もクリスタちゃんもエクムント様もついて来ている。
ふーちゃんとまーちゃんはミルクティーを飲んで一休みすることにしたらしい。
「ジャガイモを茹でて、皮を剥いて潰して、ミンチと人参と玉ねぎを細切れにしたものを炒めたものを混ぜて、小麦粉をはたいて、卵黄にくぐらせて、パン粉を浸けて揚げるのです」
随分と具体的な指示にエクムント様が金色の目を少し見開く。
「その調理法はどこで知ったのですか?」
「ジャガイモをただ揚げて食べるだけではつまらないと思っていたのです。もっと色々なものを混ぜて、外側もカリカリになるようにして揚げたらどうなるのか、食べてみたかったのです」
「よく思い付くものですね」
厨房の料理長に話しが行って、コロッケが作られる。
それだけでなくて、わたくしは肉じゃがも調理して欲しかったのだが、出汁の取り方や調味料などが違うので、急には難しいだろうと考えていた。
最終的にはカレーを作りたいとも考えている。
カレーには様々なスパイスが必要だが、それは辺境伯領で交易をすれば手に入るような気がするのだ。
とりあえずはコロッケを厨房で作ってもらって、お茶の時間に軽食と一緒に出してもらう。
初めて見るきつね色に揚げられたコロッケに、誰もが興味津々だった。
コロッケのソースは作るのが難しかったので、ケチャップに塩と胡椒を足したものを添えてある。
コロッケを皿にとって、エクムント様が最初に食べてみる。
「これは美味しいですね。混ざっているミンチと人参と玉ねぎの味と、パン粉の揚がった食感が面白いです」
エクムント様はコロッケを気に入ったようだった。
「熱々の内に食べるのがよさそうだ。これは美味しい」
「ケチャップはつけてもつけなくてもよさそうですね」
国王陛下と王妃殿下も美味しいと言ってくださっている。
ハインリヒ殿下もノルベルト殿下もノエル殿下もユリアーナ殿下も両親もふーちゃんもまーちゃんもレーニちゃんもクリスタちゃんもコロッケを美味しくいただいてくれているようだった。
コロッケだけでなくポテトチップスもユリアーナ殿下の願いで出されていたが、ポテトチップスはユリアーナ殿下が大量に食べていた。
「これをたべたかったのです。あたらしいりょうりもおいしいですが、ポテトチップスがわたくしはいちばんすきです」
お茶会はみんなが満足して終わって、わたくしも安堵していた。
お茶会の後でわたくしがクリスタちゃんとレーニちゃんと一緒の部屋で寛いでいると、エクムント様がドアをノックした。
「夕暮れになって、庭も涼しくなってきました。少し歩きませんか?」
「行かせていただきます」
エクムント様のお誘いは嬉しく、わたくしは急いで準備をして庭に出た。王宮の庭は広いのでわたくしがまだ見たことのない場所もある。日は暮れかけていたがまだ庭は明るかった。
エクムント様と一緒に歩いていると、生け垣が迷路のように入り組んでいる中に入っていって、エクムント様がそこのベンチにわたくしを招いた。ハンカチをベンチの上に敷いてもらって、感謝して座ると、エクムント様の手がわたくしの手を取った。
フィンガーブレスレットを着けているので、わたくしの手は紐とビーズで飾られている。
「私の色がよく似合いますね」
「このビーズはエクムント様の目の色と同じですよね」
「エリザベート嬢に私の色を身に着けて欲しかったのです。私の色に染めてしまおうだなんて、傲慢なことは考えていませんが」
染めてくださっても構わないのです。
口から出てきそうだった言葉を飲み込むと、エクムント様がわたくしの手を持ち上げて、指先にキスをした。
エクムント様がわたくしの指先にキスを!
手の甲にキスをされたことがなかったわけではないが、二人きりでこれだけ密着して指先にキスをされるだなんて、それ以上を期待してしまう気持ちがないでもない。
「エリザベート嬢、お部屋まで送ります」
しかし、エクムント様は紳士だった。
それだけで終わって、わたくしは部屋に送られてしまった。
「お姉様、エクムント様とのお散歩、どうでしたか?」
「エリザベートお姉様、お顔が真っ赤ですよ?」
帰ってきたらクリスタちゃんとレーニちゃんに詰め寄られて、わたくしは熱い頬を押さえたのだった。
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