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十章 ふーちゃんとまーちゃんの婚約
44.ホルツマン家からの謝罪
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わたくしは今回ローザ嬢との間にあったことを全て正直に両親に手紙に書いて、伝えておいた。クリスタちゃんとローザ嬢のことならば、両親も無関係ではないし、ローザ嬢がしたことはそれだけ許しがたかったからだ。
リーゼロッテ嬢がローザ嬢を連れ去った翌日には早馬でディッペル家の両親のところに手紙が届いて、その内容を両親がわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんに送ってくれた。
謝罪に伺いたいと書いてあるが、わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんは王都で学園の寮に暮らしているので、寮に謝罪に来るわけがない。ローザ嬢がノルベルト殿下のことを口に仕掛けたことをわたくしは忘れていなかった。あんな教育のなっていないローザ嬢の話をするのだから、どこか内密に話せる場所がいい。
『本来ならばホルツマン家にお招きするのが礼儀なのですが、レーニ様に御迷惑をおかけしたラルフのいるホルツマン家にお越しいただくのも申し訳ないので、私たちが伺わせていただきます』
そう書かれていたので、手紙を受け取ったレーニちゃんがわたくしとクリスタちゃんの部屋に来て、相談していた。
「謝罪を受ける場所をどうしましょうか」
「リリエンタール家とディッペル家でしたら、ディッペル家の方が王都からは近いのではないですか?」
「リリエンタール家だとリリエンタール公爵が嫌な気持ちになるかもしれません」
わたくしの問いかけにクリスタちゃんとレーニちゃんは一緒に考えてくれた。
ディッペル家の方が近いこともあったし、ホルツマン家の人間が来るということは、リリエンタール家では元夫の血縁が来るということになる。それは少々まずいし面倒なので、やはりディッペル家が最適だと思われた。
週末にディッペル家にわたくしとクリスタちゃんは帰って、レーニちゃんはディッペル家にお泊りに来ることにして、ホルツマン家に返事を書いた。
謝罪の場はディッペル家で。
手紙を受け取っていた両親は快くディッペル家にホルツマン家の方々が訪問するのを了承してくれた。
大人であるホルツマン家のひとたちと話すにあたって、十五歳で社交界デビューもしている身のわたくしが最年長で、十四歳のレーニちゃんと、まだ十三歳のクリスタちゃんの三人では自分たちの言いたいことがはっきりと言えない場面もあるかもしれない。
ホルツマン家の当主であるホルツマン伯爵夫妻が謝罪するのだから、その場に大人である両親がいるのは当然のことだった。
ディッペル家に帰る前のお茶会では、ノエル殿下がお茶会が終わった後にわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんを残して話をしてくれた。
「ローザ嬢と言い争ったという話ではないですか。ローザ嬢は同じ一年生のホルツマン家のリーゼロッテ嬢に連れて実家に帰らされたという話ですが、どうなっているのですか?」
「ローザ嬢がわたくしやクリスタちゃんを侮辱するようなことを言ってきたのです。その上、ノル……いえ、それはなんでもないです」
「え!? 今言いかけたことはなんですか? わたくしのノルベルト殿下に何か言ったのですか?」
ノルベルト殿下のことに関して言おうとしたのをノエル殿下に伝えてしまってはいけなかった。
慌てて言い直したわたくしに、ノエル殿下は身を乗り出している。
わたくしは深呼吸してノエル殿下に落ち着いて伝えた。
「はっきりとは言っていません。言う前にリーゼロッテ嬢が止めました」
「止めたのですか。王族であるノルベルト殿下に何か言ったのであれば、不敬罪。最低でも禁固刑、最悪は死刑か、終身刑です」
「ひぇ……」
そうだとは薄々勘付いていた。
不敬罪とはそういう重い罪なのだ。
前世の現代の感覚が朧気にあるわたくしにしてみれば、発言だけで死刑か終身刑になるだなんて信じられない。終身刑と言えば、牢獄から一生出ることは叶わず、死ぬまで捕らえられている刑罰である。
あのとき、あのままローザ嬢がノルベルト殿下のことを口にしていたらどうなっていたか。ノエル殿下も王族なので不敬罪が当然のように口にしていて、わたくしは血の気が引く思いになる。
リーゼロッテ嬢は自らの拳を以ってローザ嬢を救ったのだった。
「本当にローザ嬢は何も言っていないのですね?」
「はい、言っていません」
問い詰めるノエル殿下にわたくしは慌てて答えるしかなかった。
原作の『クリスタ・ノメンゼンの真実の愛』がロマンス小説で、クリスタちゃんとハインリヒ殿下の最初は最悪の出会いからの溺愛を描いた甘いものであったので、わたくしはこの世界を少し甘く考えすぎていたようだ。
ローザ嬢とのこともわたくしがもっと気を付けてローザ嬢に敵対の意志を見せていれば起きなかったことかもしれない。
今回のことでわたくしは貴族としての自分のあり方を少しだけ反省したのだった。
週末にはディッペル家にクリスタちゃんとレーニちゃんと一緒に帰って、ホルツマン家のひとたちが謝罪に来るのを待つ。
ふーちゃんとまーちゃんも遊んで欲しそうにしていたが、今日だけは我慢してもらう。
ホルツマン家のひとたちは、前にも見たラルフ殿とリーゼロッテ嬢のご両親、つまりはホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢の三人だった。
客間に入るなり膝を突いて床に額を付けるようにして頭を下げる。
「ホルツマン家の養子がエリザベート様とクリスタ様とレーニ様に御迷惑をおかけしました」
「この罪は到底許されないものだと分かっております」
「兄の件も併せて本当に申し訳ありませんでした」
悪いのはローザ嬢とローザ嬢を養子にしたレーニちゃんの前の父親ということは分かっているが、ホルツマン伯爵夫妻の血縁が犯した過ちなので、当主であるホルツマン伯爵夫妻と、その場にいた後継者であるリーゼロッテ嬢が謝罪するしかないのだろう。
ローザ嬢本人とレーニちゃんの前の父親はさすがに連れてこなかったようだ。連れて来られていたら、わたくしは謝罪を断って帰ってもらっていたかもしれない。
「謝るのはいいのですが、件の人物たちをホルツマン家はどうなさるおつもりなのですか?」
「このままにしておくつもりではないですよね?」
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんに変わって両親が聞いてくれる。
ホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢は床に額を擦り付けそうになっているままで、答えた。
「エリザベート様とクリスタ様とレーニ様のお怒りはごもっともだと思っております」
「二人には、病死してもらうことにいたします」
「病死!?」
思わず声が出てしまった。
病死ということは、ひっそりと始末するという意味である。
前世の記憶が朧気にあるせいか、わたくしはそんな野蛮なことはとても受け入れがたかった。クリスタちゃんとレーニちゃんの顔を見てみると、青ざめているような気がする。
「どうしますか、クリスタ、レーニ嬢?」
「あんな方でもわたくしの実の父親です。実の父親と思いたくはないのですが」
「よく分かりませんが、ローザ嬢はわたくしと血が繋がっているのでしょう? そんな方が病死だなんて……」
レーニちゃんもクリスタちゃんもホルツマン伯爵夫妻の申し出を受け入れられないようだ。
わたくしは両親の顔を見る。
両親は厳かな表情をしている。
「それだけのことを件の人物たちがしたということですね?」
「特にレーニ様には弟は酷いことをしておりました。実家に帰ってきて、勝手に自分の愛人だった女の娘を養子にして、どれだけレーニ様が傷付いたかは計り知れません」
「これで許されるのならば、わたくしたちはあの二人に病死してもらいます」
これは本気のようだ。
レーニちゃんもクリスタちゃんも自分たちのせいで、忘れたいような相手とはいえ実の父親と、認識していないとはいえ異母妹を失うようなことになれば、一生後悔するかもしれない。
ノルベルト殿下のことを口にしようとした時点で、ローザ嬢は不敬罪で死刑か終身刑だったかもしれないのだから、同じことだと思っても、わたくしはどうにかしてそれを免れさせたかった。
「病死とは穏やかではありませんね。わたくしたちはそのようなことは望んでいません。レーニ嬢の前の父君に関しては、断種の上、平民として監視を付けて生活してもらって、ローザ嬢は修道院に入れて一生出られないようにする。それで手を打ちましょう」
「よろしいのですか?」
「よろしいですよね、レーニ嬢、クリスタ?」
わたくしがレーニちゃんとクリスタちゃんに聞けば、二人は頷いて答える。
「あんな男でもわたくしの実の父です。死んで欲しいとまでは思いません」
「よく分かりませんが、わたくしの異母妹なのでしょう? わたくしも死んで欲しいと思いません」
「それでは、レーニ嬢の前の父君に関しては断種の上監視を付けて平民として暮らしてもらう。ローザ嬢は修道院に入れて一生過ごしてもらう。これでディッペル家としては納得致しましょう」
「わたくしたちの娘と、レーニ嬢が情けをかけたことをホルツマン伯爵夫妻には忘れないでいて欲しいものですね」
「決して忘れません」
「ありがとうございます」
床に額を擦り付けるようにして頭を下げているホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢がどこか安心している雰囲気を醸し出していて、わたくしも少し安心した。
ホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢が帰ってからわたくしは両親に聞いてみた。
「わたくしとクリスタとレーニ嬢の判断で間違いはなかったでしょうか? 甘すぎはしませんでしたか?」
「多少甘いかと思うけれど、ホルツマン家に貸しを作ったということで悪くはなかったかな」
「エリザベートとクリスタとレーニ嬢に血生臭い話を聞かせてしまいましたね。エリザベートとクリスタとレーニ嬢の判断で血生臭い話が避けられてわたくしもほっとしております」
両親もあの二人に病死して欲しいと本当に願っていたわけではなかったようだ。
ローザ嬢がノルベルト殿下を侮辱しようとしたことに関しては、わたくしはお墓までこの秘密を持って行かなければいけない。
クリスタちゃんとレーニちゃんにもそれは守ってもらわなければいけないと思っていた。
リーゼロッテ嬢がローザ嬢を連れ去った翌日には早馬でディッペル家の両親のところに手紙が届いて、その内容を両親がわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんに送ってくれた。
謝罪に伺いたいと書いてあるが、わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんは王都で学園の寮に暮らしているので、寮に謝罪に来るわけがない。ローザ嬢がノルベルト殿下のことを口に仕掛けたことをわたくしは忘れていなかった。あんな教育のなっていないローザ嬢の話をするのだから、どこか内密に話せる場所がいい。
『本来ならばホルツマン家にお招きするのが礼儀なのですが、レーニ様に御迷惑をおかけしたラルフのいるホルツマン家にお越しいただくのも申し訳ないので、私たちが伺わせていただきます』
そう書かれていたので、手紙を受け取ったレーニちゃんがわたくしとクリスタちゃんの部屋に来て、相談していた。
「謝罪を受ける場所をどうしましょうか」
「リリエンタール家とディッペル家でしたら、ディッペル家の方が王都からは近いのではないですか?」
「リリエンタール家だとリリエンタール公爵が嫌な気持ちになるかもしれません」
わたくしの問いかけにクリスタちゃんとレーニちゃんは一緒に考えてくれた。
ディッペル家の方が近いこともあったし、ホルツマン家の人間が来るということは、リリエンタール家では元夫の血縁が来るということになる。それは少々まずいし面倒なので、やはりディッペル家が最適だと思われた。
週末にディッペル家にわたくしとクリスタちゃんは帰って、レーニちゃんはディッペル家にお泊りに来ることにして、ホルツマン家に返事を書いた。
謝罪の場はディッペル家で。
手紙を受け取っていた両親は快くディッペル家にホルツマン家の方々が訪問するのを了承してくれた。
大人であるホルツマン家のひとたちと話すにあたって、十五歳で社交界デビューもしている身のわたくしが最年長で、十四歳のレーニちゃんと、まだ十三歳のクリスタちゃんの三人では自分たちの言いたいことがはっきりと言えない場面もあるかもしれない。
ホルツマン家の当主であるホルツマン伯爵夫妻が謝罪するのだから、その場に大人である両親がいるのは当然のことだった。
ディッペル家に帰る前のお茶会では、ノエル殿下がお茶会が終わった後にわたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんを残して話をしてくれた。
「ローザ嬢と言い争ったという話ではないですか。ローザ嬢は同じ一年生のホルツマン家のリーゼロッテ嬢に連れて実家に帰らされたという話ですが、どうなっているのですか?」
「ローザ嬢がわたくしやクリスタちゃんを侮辱するようなことを言ってきたのです。その上、ノル……いえ、それはなんでもないです」
「え!? 今言いかけたことはなんですか? わたくしのノルベルト殿下に何か言ったのですか?」
ノルベルト殿下のことに関して言おうとしたのをノエル殿下に伝えてしまってはいけなかった。
慌てて言い直したわたくしに、ノエル殿下は身を乗り出している。
わたくしは深呼吸してノエル殿下に落ち着いて伝えた。
「はっきりとは言っていません。言う前にリーゼロッテ嬢が止めました」
「止めたのですか。王族であるノルベルト殿下に何か言ったのであれば、不敬罪。最低でも禁固刑、最悪は死刑か、終身刑です」
「ひぇ……」
そうだとは薄々勘付いていた。
不敬罪とはそういう重い罪なのだ。
前世の現代の感覚が朧気にあるわたくしにしてみれば、発言だけで死刑か終身刑になるだなんて信じられない。終身刑と言えば、牢獄から一生出ることは叶わず、死ぬまで捕らえられている刑罰である。
あのとき、あのままローザ嬢がノルベルト殿下のことを口にしていたらどうなっていたか。ノエル殿下も王族なので不敬罪が当然のように口にしていて、わたくしは血の気が引く思いになる。
リーゼロッテ嬢は自らの拳を以ってローザ嬢を救ったのだった。
「本当にローザ嬢は何も言っていないのですね?」
「はい、言っていません」
問い詰めるノエル殿下にわたくしは慌てて答えるしかなかった。
原作の『クリスタ・ノメンゼンの真実の愛』がロマンス小説で、クリスタちゃんとハインリヒ殿下の最初は最悪の出会いからの溺愛を描いた甘いものであったので、わたくしはこの世界を少し甘く考えすぎていたようだ。
ローザ嬢とのこともわたくしがもっと気を付けてローザ嬢に敵対の意志を見せていれば起きなかったことかもしれない。
今回のことでわたくしは貴族としての自分のあり方を少しだけ反省したのだった。
週末にはディッペル家にクリスタちゃんとレーニちゃんと一緒に帰って、ホルツマン家のひとたちが謝罪に来るのを待つ。
ふーちゃんとまーちゃんも遊んで欲しそうにしていたが、今日だけは我慢してもらう。
ホルツマン家のひとたちは、前にも見たラルフ殿とリーゼロッテ嬢のご両親、つまりはホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢の三人だった。
客間に入るなり膝を突いて床に額を付けるようにして頭を下げる。
「ホルツマン家の養子がエリザベート様とクリスタ様とレーニ様に御迷惑をおかけしました」
「この罪は到底許されないものだと分かっております」
「兄の件も併せて本当に申し訳ありませんでした」
悪いのはローザ嬢とローザ嬢を養子にしたレーニちゃんの前の父親ということは分かっているが、ホルツマン伯爵夫妻の血縁が犯した過ちなので、当主であるホルツマン伯爵夫妻と、その場にいた後継者であるリーゼロッテ嬢が謝罪するしかないのだろう。
ローザ嬢本人とレーニちゃんの前の父親はさすがに連れてこなかったようだ。連れて来られていたら、わたくしは謝罪を断って帰ってもらっていたかもしれない。
「謝るのはいいのですが、件の人物たちをホルツマン家はどうなさるおつもりなのですか?」
「このままにしておくつもりではないですよね?」
わたくしとクリスタちゃんとレーニちゃんに変わって両親が聞いてくれる。
ホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢は床に額を擦り付けそうになっているままで、答えた。
「エリザベート様とクリスタ様とレーニ様のお怒りはごもっともだと思っております」
「二人には、病死してもらうことにいたします」
「病死!?」
思わず声が出てしまった。
病死ということは、ひっそりと始末するという意味である。
前世の記憶が朧気にあるせいか、わたくしはそんな野蛮なことはとても受け入れがたかった。クリスタちゃんとレーニちゃんの顔を見てみると、青ざめているような気がする。
「どうしますか、クリスタ、レーニ嬢?」
「あんな方でもわたくしの実の父親です。実の父親と思いたくはないのですが」
「よく分かりませんが、ローザ嬢はわたくしと血が繋がっているのでしょう? そんな方が病死だなんて……」
レーニちゃんもクリスタちゃんもホルツマン伯爵夫妻の申し出を受け入れられないようだ。
わたくしは両親の顔を見る。
両親は厳かな表情をしている。
「それだけのことを件の人物たちがしたということですね?」
「特にレーニ様には弟は酷いことをしておりました。実家に帰ってきて、勝手に自分の愛人だった女の娘を養子にして、どれだけレーニ様が傷付いたかは計り知れません」
「これで許されるのならば、わたくしたちはあの二人に病死してもらいます」
これは本気のようだ。
レーニちゃんもクリスタちゃんも自分たちのせいで、忘れたいような相手とはいえ実の父親と、認識していないとはいえ異母妹を失うようなことになれば、一生後悔するかもしれない。
ノルベルト殿下のことを口にしようとした時点で、ローザ嬢は不敬罪で死刑か終身刑だったかもしれないのだから、同じことだと思っても、わたくしはどうにかしてそれを免れさせたかった。
「病死とは穏やかではありませんね。わたくしたちはそのようなことは望んでいません。レーニ嬢の前の父君に関しては、断種の上、平民として監視を付けて生活してもらって、ローザ嬢は修道院に入れて一生出られないようにする。それで手を打ちましょう」
「よろしいのですか?」
「よろしいですよね、レーニ嬢、クリスタ?」
わたくしがレーニちゃんとクリスタちゃんに聞けば、二人は頷いて答える。
「あんな男でもわたくしの実の父です。死んで欲しいとまでは思いません」
「よく分かりませんが、わたくしの異母妹なのでしょう? わたくしも死んで欲しいと思いません」
「それでは、レーニ嬢の前の父君に関しては断種の上監視を付けて平民として暮らしてもらう。ローザ嬢は修道院に入れて一生過ごしてもらう。これでディッペル家としては納得致しましょう」
「わたくしたちの娘と、レーニ嬢が情けをかけたことをホルツマン伯爵夫妻には忘れないでいて欲しいものですね」
「決して忘れません」
「ありがとうございます」
床に額を擦り付けるようにして頭を下げているホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢がどこか安心している雰囲気を醸し出していて、わたくしも少し安心した。
ホルツマン伯爵夫妻とリーゼロッテ嬢が帰ってからわたくしは両親に聞いてみた。
「わたくしとクリスタとレーニ嬢の判断で間違いはなかったでしょうか? 甘すぎはしませんでしたか?」
「多少甘いかと思うけれど、ホルツマン家に貸しを作ったということで悪くはなかったかな」
「エリザベートとクリスタとレーニ嬢に血生臭い話を聞かせてしまいましたね。エリザベートとクリスタとレーニ嬢の判断で血生臭い話が避けられてわたくしもほっとしております」
両親もあの二人に病死して欲しいと本当に願っていたわけではなかったようだ。
ローザ嬢がノルベルト殿下を侮辱しようとしたことに関しては、わたくしはお墓までこの秘密を持って行かなければいけない。
クリスタちゃんとレーニちゃんにもそれは守ってもらわなければいけないと思っていた。
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