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二章 ノメンゼン子爵の断罪
3.王都に行くために
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王都に行くために慌ただしく準備がされる。
わたくしは空色のドレスを、クリスタ嬢はオールドローズ色のドレスを荷物に入れてもらって、靴も靴下も下着も揃える。
自分の身だしなみのことは自分でできるようにと母から教えられているので、わたくしはできるだけ自分で準備を整えていた。
マルレーンはわたくしを手伝って、トランクの中に畳んだドレスや靴や靴下や下着を入れている。
忘れてはいけないのはハインリヒ殿下から頂いた牡丹の造花の髪飾りだ。ふんわりとした花弁が美しい髪飾りは、箱に入れたままトランクに納められた。
「おねえさま、したぎとくつしたは、いくつ?」
「二泊三日ですが、少し多めに持って行っておいた方がいいかもしれません」
「パジャマもいれる?」
「入れましょうね」
部屋のベッド脇に開いている窓から聞こえてくるクリスタ嬢の声に、クリスタ嬢も旅の準備をしているのだと分かる。
クリスタ嬢は畳まれていない下着と靴下とパジャマを、両腕いっぱいに抱えて来ている。
「デボラ、クリスタ嬢の服を畳んであげて」
「はい、エリザベートお嬢様。こちらで畳みますね、クリスタお嬢様」
「おねがい、デボラ」
デボラに服を渡して畳んでもらって、わたくしとクリスタ嬢は同じトランクに服や靴を揃えて入れた。
「わたくし、みつあみがうまくできないの。デボラ、おうとにはついてきてくれるの?」
「旦那様から一緒に行くように言われていますよ」
「マルレーンも?」
「わたくしも旦那様と奥様から言われています」
デボラとマルレーンが一緒に来てくれるのならば心強い。わたくしは安心してトランクをデボラとマルレーンに預けられた。デボラとマルレーンはそれぞれ、クリスタ嬢とわたくしの荷物が揃っているかを確かめていた。
「エリザベートお嬢様、レインコートはお入れになりましたか?」
「あ、忘れていたわ」
「王都では雨が降るかもしれませんからね」
「わたくしもレインコート、いれてないわ」
「わたくしが入れておきますね」
マルレーンに確認されてわたくしはレインコートを入れていなかったことを思い出す。前世でわたくしが住んでいた日本よりもずっと乾燥した地域なのだが、時々霧雨が降る。それをわたくしは忘れていた。
クリスタ嬢はデボラにレインコートを入れてもらっている。
この世界では雨が相当酷くならないと傘を差す習慣がなく、子どもはレインコートを羽織らせるのが普通だった。
普段に着るのもよそ行きのワンピースで、わたくしは王都に行くのを楽しみにしていた。
国王陛下にクリスタ嬢を子爵家の後継者と認めてもらうために国王陛下の別荘に行ったが、そこは王都の外れで、隣接するディッペル領と近く、馬車で行くことができた。
ハインリヒ殿下とノルベルト殿下も普段はその別荘で過ごされているので、ディッペル公爵家のお茶会やキルヒマン侯爵家のお茶会に出ることができていた。
今回は正式に王都の王宮に行くというので、わたくしとクリスタ嬢は王都からやって来たリップマン先生に聞いていた。
「王都はどのようなところなのですか?」
「王都は中心に宮殿があって、宮殿を取り巻くように城下町が広がっています。城下町から出ると農地が広がって、ディッペル公爵領やキルヒマン侯爵領に繋がっています」
「どれくらいひろいのですか?」
「広さ自体はディッペル公爵領の方が広いかもしれませんが、ディッペル公爵領よりも街の面積が広くて、栄えているイメージですね」
王都よりも広い領地を持つディッペル公爵家はやはりすごいのだと実感する。
この国には公爵家は二つしかない。
ディッペル公爵家とバーデン公爵家だ。
どちらも古い歴史のある公爵家で、ディッペル公爵家には王家の血を引く人物が臣籍降下したこともある。そのせいでわたくしの髪の色と目の色は初代国王陛下と同じ色彩を持っているのだ。
バーデン公爵家についてわたくしはよく知らないが、あまりいい噂は流れて来ていない。
先代のバーデン公爵が自分の娘を国王陛下に嫁がせて力を持とうとしたのだが、国王陛下には市井に恋人がいて、成人したら異国から婚約者が嫁いでくる約束をしていたので、それは果たせなかった。
バーデン公爵家は権力に固執する家だというイメージがわたくしの中にはあった。
物語の中ではバーデン公爵は出てこなかったが、この世界に生まれると物語に書かれていないこともたくさん知ってしまうものなのだ。
書かれていなかったからと言って、それ以外の人物の人生がないわけではない。それはこの世界に生まれて思い知ったことだった。
「牧場に行かれたときには、各駅停車の列車を使われたでしょう?」
「たくさんの駅に停まっていた記憶があります」
「わたくし、ねむってしまったから、わかりません」
「ディッペル公爵領内を移動するときには各駅停車の列車で構わないのですが、王都に行くためには特急列車が走っています。それに乗ればわたくしが来たときのように短時間で王都に行けるのです」
リップマン先生の説明は、現代の日本で電車に乗って通勤していた前世があるわたくしには分かったが、クリスタ嬢には少し難しかったようだ。
「とっきゅうれっしゃって、なんですか?」
「停まる駅が減らしてある列車です。停まる駅が少ないので、より早く目的地に到達することができます」
「かくえきていしゃっていうのは?」
「全部の駅に停まる列車のことですね」
詳しく説明してもらって、クリスタ嬢が誕生日にもらった図鑑を広げてどの列車が各駅停車で、どの列車が特急列車なのか教えてもらって、クリスタ嬢はやっと納得していた。
「クリスタ嬢は侯爵と子爵の爵位について理解していました。どこまで爵位を理解しているのか、確認してあげてくれませんか?」
「それでは、エリザベート様、クリスタ様の話を聞いて、理解できていないと思ったところを訂正してあげてください。エリザベート様の勉強にもなるはずです」
「はい、リップマン先生。クリスタ嬢、自分の分かる範囲でいいので爵位について話してみてください」
リップマン先生に促されて、わたくしはクリスタ嬢に聞いていた。
王都に行って貴族たちに揉まれるとなると、爵位は理解しておいた方がいい。五歳といえども、失礼があっては許されないこともあるのだ。
「えーっと、こくおうへいかがいちばんえらくて、つぎにディッペルこうしゃくけがあって、そのしたにキルヒマンこうしゃくけがあって、ノメンゼンししゃくけはもっとしただということしかわかりません」
五歳の時点でこれだけ理解できているというのはすごいことである。
わたくしはクリスタ嬢の発言を受けて説明する。
「王家と大公家があって、その下に五爵と呼ばれる位があります。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五つです。それに加えて、この国では辺境伯家が一つあって、辺境伯家は公爵家と並ぶ地位とされています」
説明をするとクリスタ嬢がお目目をぐるぐるにさせながら聞いている。
クリスタ嬢には少し難しかったかもしれない。
「わたくしには、ちょっとむずかしい……」
「クリスタ嬢は子爵家の令嬢なので、王家のお茶会に参加する他の子どもたちに失礼がないように気をつけねばなりませんよ」
クリスタ嬢を利用しようとする勢力がクリスタ嬢に接近するかもしれない。そのときに、クリスタ嬢が五歳だということで無礼講になっていても、何か不作法を働いてしまったら、その家に借りを作りかねない。
わたくしはクリスタ嬢を守る決意をしていた。
「わかりました。おねえさま、わたくしきをつけます」
「クリスタ嬢はとてもいい子ですね。リップマン先生、わたくしの説明でよろしかったでしょうか?」
「よく理解できていると思います。王族の細かい称号や大公の説明は、また次回にしましょう。今日はよく勉強ができました」
「ありがとうございました、リップマン先生」
「あしたもよろしくおねがいします、リップマンせんせい」
昼食の時間も近くなっていたので、その日の授業はこれで終わった。
わたくしは空色のドレスを、クリスタ嬢はオールドローズ色のドレスを荷物に入れてもらって、靴も靴下も下着も揃える。
自分の身だしなみのことは自分でできるようにと母から教えられているので、わたくしはできるだけ自分で準備を整えていた。
マルレーンはわたくしを手伝って、トランクの中に畳んだドレスや靴や靴下や下着を入れている。
忘れてはいけないのはハインリヒ殿下から頂いた牡丹の造花の髪飾りだ。ふんわりとした花弁が美しい髪飾りは、箱に入れたままトランクに納められた。
「おねえさま、したぎとくつしたは、いくつ?」
「二泊三日ですが、少し多めに持って行っておいた方がいいかもしれません」
「パジャマもいれる?」
「入れましょうね」
部屋のベッド脇に開いている窓から聞こえてくるクリスタ嬢の声に、クリスタ嬢も旅の準備をしているのだと分かる。
クリスタ嬢は畳まれていない下着と靴下とパジャマを、両腕いっぱいに抱えて来ている。
「デボラ、クリスタ嬢の服を畳んであげて」
「はい、エリザベートお嬢様。こちらで畳みますね、クリスタお嬢様」
「おねがい、デボラ」
デボラに服を渡して畳んでもらって、わたくしとクリスタ嬢は同じトランクに服や靴を揃えて入れた。
「わたくし、みつあみがうまくできないの。デボラ、おうとにはついてきてくれるの?」
「旦那様から一緒に行くように言われていますよ」
「マルレーンも?」
「わたくしも旦那様と奥様から言われています」
デボラとマルレーンが一緒に来てくれるのならば心強い。わたくしは安心してトランクをデボラとマルレーンに預けられた。デボラとマルレーンはそれぞれ、クリスタ嬢とわたくしの荷物が揃っているかを確かめていた。
「エリザベートお嬢様、レインコートはお入れになりましたか?」
「あ、忘れていたわ」
「王都では雨が降るかもしれませんからね」
「わたくしもレインコート、いれてないわ」
「わたくしが入れておきますね」
マルレーンに確認されてわたくしはレインコートを入れていなかったことを思い出す。前世でわたくしが住んでいた日本よりもずっと乾燥した地域なのだが、時々霧雨が降る。それをわたくしは忘れていた。
クリスタ嬢はデボラにレインコートを入れてもらっている。
この世界では雨が相当酷くならないと傘を差す習慣がなく、子どもはレインコートを羽織らせるのが普通だった。
普段に着るのもよそ行きのワンピースで、わたくしは王都に行くのを楽しみにしていた。
国王陛下にクリスタ嬢を子爵家の後継者と認めてもらうために国王陛下の別荘に行ったが、そこは王都の外れで、隣接するディッペル領と近く、馬車で行くことができた。
ハインリヒ殿下とノルベルト殿下も普段はその別荘で過ごされているので、ディッペル公爵家のお茶会やキルヒマン侯爵家のお茶会に出ることができていた。
今回は正式に王都の王宮に行くというので、わたくしとクリスタ嬢は王都からやって来たリップマン先生に聞いていた。
「王都はどのようなところなのですか?」
「王都は中心に宮殿があって、宮殿を取り巻くように城下町が広がっています。城下町から出ると農地が広がって、ディッペル公爵領やキルヒマン侯爵領に繋がっています」
「どれくらいひろいのですか?」
「広さ自体はディッペル公爵領の方が広いかもしれませんが、ディッペル公爵領よりも街の面積が広くて、栄えているイメージですね」
王都よりも広い領地を持つディッペル公爵家はやはりすごいのだと実感する。
この国には公爵家は二つしかない。
ディッペル公爵家とバーデン公爵家だ。
どちらも古い歴史のある公爵家で、ディッペル公爵家には王家の血を引く人物が臣籍降下したこともある。そのせいでわたくしの髪の色と目の色は初代国王陛下と同じ色彩を持っているのだ。
バーデン公爵家についてわたくしはよく知らないが、あまりいい噂は流れて来ていない。
先代のバーデン公爵が自分の娘を国王陛下に嫁がせて力を持とうとしたのだが、国王陛下には市井に恋人がいて、成人したら異国から婚約者が嫁いでくる約束をしていたので、それは果たせなかった。
バーデン公爵家は権力に固執する家だというイメージがわたくしの中にはあった。
物語の中ではバーデン公爵は出てこなかったが、この世界に生まれると物語に書かれていないこともたくさん知ってしまうものなのだ。
書かれていなかったからと言って、それ以外の人物の人生がないわけではない。それはこの世界に生まれて思い知ったことだった。
「牧場に行かれたときには、各駅停車の列車を使われたでしょう?」
「たくさんの駅に停まっていた記憶があります」
「わたくし、ねむってしまったから、わかりません」
「ディッペル公爵領内を移動するときには各駅停車の列車で構わないのですが、王都に行くためには特急列車が走っています。それに乗ればわたくしが来たときのように短時間で王都に行けるのです」
リップマン先生の説明は、現代の日本で電車に乗って通勤していた前世があるわたくしには分かったが、クリスタ嬢には少し難しかったようだ。
「とっきゅうれっしゃって、なんですか?」
「停まる駅が減らしてある列車です。停まる駅が少ないので、より早く目的地に到達することができます」
「かくえきていしゃっていうのは?」
「全部の駅に停まる列車のことですね」
詳しく説明してもらって、クリスタ嬢が誕生日にもらった図鑑を広げてどの列車が各駅停車で、どの列車が特急列車なのか教えてもらって、クリスタ嬢はやっと納得していた。
「クリスタ嬢は侯爵と子爵の爵位について理解していました。どこまで爵位を理解しているのか、確認してあげてくれませんか?」
「それでは、エリザベート様、クリスタ様の話を聞いて、理解できていないと思ったところを訂正してあげてください。エリザベート様の勉強にもなるはずです」
「はい、リップマン先生。クリスタ嬢、自分の分かる範囲でいいので爵位について話してみてください」
リップマン先生に促されて、わたくしはクリスタ嬢に聞いていた。
王都に行って貴族たちに揉まれるとなると、爵位は理解しておいた方がいい。五歳といえども、失礼があっては許されないこともあるのだ。
「えーっと、こくおうへいかがいちばんえらくて、つぎにディッペルこうしゃくけがあって、そのしたにキルヒマンこうしゃくけがあって、ノメンゼンししゃくけはもっとしただということしかわかりません」
五歳の時点でこれだけ理解できているというのはすごいことである。
わたくしはクリスタ嬢の発言を受けて説明する。
「王家と大公家があって、その下に五爵と呼ばれる位があります。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の五つです。それに加えて、この国では辺境伯家が一つあって、辺境伯家は公爵家と並ぶ地位とされています」
説明をするとクリスタ嬢がお目目をぐるぐるにさせながら聞いている。
クリスタ嬢には少し難しかったかもしれない。
「わたくしには、ちょっとむずかしい……」
「クリスタ嬢は子爵家の令嬢なので、王家のお茶会に参加する他の子どもたちに失礼がないように気をつけねばなりませんよ」
クリスタ嬢を利用しようとする勢力がクリスタ嬢に接近するかもしれない。そのときに、クリスタ嬢が五歳だということで無礼講になっていても、何か不作法を働いてしまったら、その家に借りを作りかねない。
わたくしはクリスタ嬢を守る決意をしていた。
「わかりました。おねえさま、わたくしきをつけます」
「クリスタ嬢はとてもいい子ですね。リップマン先生、わたくしの説明でよろしかったでしょうか?」
「よく理解できていると思います。王族の細かい称号や大公の説明は、また次回にしましょう。今日はよく勉強ができました」
「ありがとうございました、リップマン先生」
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