末っ子王子は貧乏令嬢を見初める ~御令嬢は実は凄腕冒険者でした~

秋月真鳥

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最終章 王子と令嬢の結婚

22.合同結婚式の打ち合わせとアルマスのお誕生日

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 王城のサンルームで僕とロヴィーサ嬢とエリアス兄上とエルランド兄上と父上とセシーリア嬢でお茶をしている。サンルームは明るく、観葉植物も植え替えられて、とても美しくなっている。
 座り心地のいいソファは、ベッドにもなるようで、サンルームで横になって寛ぐこともできる。
 季節も春でとても心地いいので、僕たちは人払いをしたサンルームで話をしていた。
 話し合いの内容は結婚式の料理のことである。
 セシーリア嬢もそのために忙しいところを時間の合間を縫ってやって来てくれた。

「結婚式の料理をわたくしとセシーリア様が作るのは難しいですよね」
「結婚式の新婦ですから、朝から着替えにお化粧に、忙しいことと思います」
「わたくし、結婚式の料理も作りたかったのですが」
「わたくしもです」

 ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢が残念そうに話している。
 さすがに結婚式で新婦が料理を作るのは無理な話だろう。

「結婚式までにロヴィーサ様とセシーリア様が準備をされておいて、それを冷凍して、仕上げをクラース殿にお願いするというのはどうでしょう? クラース殿ならば間違いなくロヴィーサ様とセシーリア様の味を再現してくださいます」

 紅茶のカップをローテーブルに置いたユリウス義兄上の意見に、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢の表情が明るくなる。

「クラース様にお願いすればいいのですね」
「それならば、わたくしたちの作った料理を振舞えます」

 いつも思うのだがユリウス義兄上は普段は静かに聞いているだけなのに、こういうときはしっかりと意見を言ってロヴィーサ嬢とセシーリア嬢の望む方向になるようにしてくれる。
 本当にユリウス義兄上は有能な方なのだと僕は感心してしまう。

「ユリウス殿下、ありがとうございます」
「ロヴィーサ様はマグロの解体ショーをしてくださらないと」
「セシーリア様、それ、本気だったのですね」
「お色直しは、エプロンと包丁でお願いします」

 マグロの解体ショーをリクエストされて、ロヴィーサ嬢もまんざらではない顔をしていた。ロヴィーサ嬢のお誕生日にはミエト家でマグロの解体ショーが行われるだろう。
 新鮮なマグロの好きな部位を好きなだけ切ってもらえるという贅沢な催しは、ロヴィーサ嬢にしかできないものだった。

「アルマス様にお願いして、マンドラゴラ舞踏団にも活躍してもらいましょう」
「マンドラゴラのダンスは可愛いですよね」

 結婚式は女性のためのものだというが、ロヴィーサ嬢とセシーリア嬢が嬉しそうに話しているのを見ると僕もにこにこしてしまう。

「結婚式はエドとロヴィーサ嬢とエルランドとセシーリア嬢のいいようにしてくれ」
「四人が幸せそうなら、私も嬉しいよ」

 王家のしきたりもあるのだろうが、僕たちの結婚式は好きにさせてくれるという父上とエリアス兄上にも感謝しかない。

「わたくし、ワイバーンのステーキをお料理に入れたいんです。エド殿下と出会ったきっかけはワイバーンでした」
「わたくしはピロシキを入れたいです。エルランド殿下はピロシキがお好きだから」
「カレーも外せません。お刺身はマグロがあるからいいでしょうが」
「カレーはいいですね。エルランド殿下もお好きです」

 僕との思い出を辿るようにしてメニューを考えるロヴィーサ嬢と、エルランド兄上の好きなものを作ろうとするセシーリア嬢。どちらも健気で僕もエルランド兄上も微笑んでしまう。
 最高に幸せな春の日だった。

 アルマスのお誕生日には僕はバックリーン家に行った。ロヴィーサ嬢も白を基調としたドレスを着てバックリーン家に来ている。
 ロヴィーサ嬢が白を着るようになってから、貴族社会では階級というものがはっきりと分かれているので、公爵家の当主であるロヴィーサ嬢と色を被せるようなものはいなくなった。
 白いドレスは事実上ロヴィーサ嬢だけが着られるものになったのだ。
 もちろんロヴィーサ嬢と仲がいいセシーリア嬢が着て来ることもあるが、それはロヴィーサ嬢とお揃いにしているので問題がない。

 アルマスのお誕生日にはセシーリア嬢は参加していないので、ロヴィーサ嬢の白を基調としたドレスがとても目立っていた。

「エドヴァルド殿下がわたくしには白が似合うと言ってくださったお陰で、わたくしの色は白になりました」
「とてもよくお似合いです」
「わたくしが色を決めていないと、他の参加者がわたくしと色が被ってしまうと、その場にいられなくなってしまうので、エドヴァルド殿下が決めてくださったのはいいことだと思っています」
「貴族社会は面倒ですからね」
「白は結婚式に使われる色なので、あまり普段では使われないのもいいですね。わたくしが着ていても、他の方が困るようなことはありません」

 貴族社会は面倒くさい。
 公爵家の当主であるロヴィーサ嬢が着ているドレスに色が被ってしまったら、同じ色のドレスを着ている貴族は、ロヴィーサ嬢以上の身分でないと失礼に当たるのでその場を去らなければいけない。
 公爵家は貴族の中でも上位にあって、この国でも三つしか家がない。その上の身分となると王族になるので、ロヴィーサ嬢は実質この国では頂点に近い女性だった。

 そのロヴィーサ嬢がころころとドレスの色を変えずに白に決めたことで、他の貴族たちは白さえ選ばなければよくなったので、かなりドレス選びやドレスを誂えるのが楽になったと言える。

 僕がロヴィーサ嬢の白い水着を眩しいと思って、白いドレスを着てくれるように頼んでから、ロヴィーサ嬢は白を基調としたドレスを着てくれているが、それが他の貴族のためにもなったのであればよかったと思う。

「本日は私の誕生日にお越しいただきありがとうございます。マンドラゴラの舞踏を見て行ってください」

 アルマスが大広間の壇上を示すと人参マンドラゴラたちがバレエを踊っている。
 どれが主役なのか全部人参なので見分けがつかなくて分かりにくかったが、ダンスが見事なのは分かった。
 続いて蕪マンドラゴラがフラダンスを踊る。ロンパースの腰にひらひらの布をつけて小さな手足を動かして踊っているのが可愛い。
 最後は大根マンドラゴラのデュエットダンスだった。
 二匹の大根マンドラゴラがセクシーにデュエットダンスを踊る。袷が斜めになったスリットの入ったスレンダーなドレスを着た大根マンドラゴラと、同じ袷が斜めになったスリットの入った上衣にズボンを合わせた大根マンドラゴラがしっとりと踊り上げる。

 ダンスの後には拍手喝さいが起きた。

 マンドラゴラたちが壇上に並んで深々と礼をする。深く頭を下げ過ぎて、ころんころんと転がっている蕪マンドラゴラもいたが、それもご愛敬だった。

「アルマス、マンドラゴラの舞踏は素晴らしかったね」
「そうだろう……じゃない、そうでしょう。今日のために猛特訓したんですよ」
「僕とロヴィーサ嬢と、エルランド兄上とセシーリア嬢の合同結婚式にも、マンドラゴラ舞踏団に踊ってもらえるかな?」
「エドヴァルド殿下の結婚式にお役に立てるなんて嬉しいです。喜んで踊らせます」
「ありがとう、アルマス」

 マンドラゴラ舞踏団を僕とロヴィーサ嬢と、エルランド兄上とセシーリア嬢の合同結婚式に呼ぶ約束はできた。
 マンドラゴラ舞踏団がどのタイミングで踊るのかも、父上やエリアス兄上と話し合って決めなければいけない。

 エリアス兄上も父上も、僕とロヴィーサ嬢と、エルランド兄上とセシーリア嬢の合同結婚式はある程度自由にさせてくれるつもりだった。王家のしきたりがあるにもかかわらず、自由にさせてくれるのは、一生に一度のことだと思ってくれているからだろう。
 僕はロヴィーサ嬢以外と結婚するつもりはないので、結婚式はロヴィーサ嬢との間での式が一生に一度のものだし、エルランド兄上もセシーリア嬢に同じことを考えているだろう。

 待ちきれない結婚式は、僕のお誕生日に開催される。
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