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五章 十六歳の性教育
26.ロヴィーサ嬢のお誕生日の準備
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ロヴィーサ嬢のお誕生日が近くなって、ロヴィーサ嬢は貴族たちに招待状を送っていた。招待状には返事が来るのだが、そこに一言添えてある。
「『今年もぜひマグロの解体ショーをお願いします』『去年のマグロは絶品でした』『またマグロを食べさせてください』ですって、エド殿下」
「僕もあのマグロは最高だったと思います。ロヴィーサ嬢はいつの間に、ご飯を炊いて、たくあんを用意して、とろろも用意していたのですか?」
「ご飯とたくあんととろろは、パーティーの後にエド殿下とマグロを食べようと思って用意していたのですよ」
「それであんなにすぐに出てきたんですね。もう、本当に美味しかった! ネギトロも絶品でした!」
絶賛する僕にロヴィーサ嬢は頬を染めている。
あのときにはロヴィーサ嬢を侮辱しようと母上の従弟のヴィリアム殿と娘のブリット嬢が来ていた。ロヴィーサ嬢のことを「人間の令嬢」と言って、「人間のマナーが分かっていない」とか酷いことを言っていたので、僕はヴィリアム殿とブリット嬢に怒りを覚えていた。
せっかくのロヴィーサ嬢のお誕生日を無茶苦茶にするかもしれないヴィリアム殿とブリット嬢。二人をどうやって追い返すか考えていたときに、ロヴィーサ嬢が巨大な殺人マグロを肩に担いできたのだ。
殺人マグロは大きすぎて、人間がその群れの中に飛び込むと一瞬で食い尽くされてしまうと言われている。魔窟というモンスターの養殖場で育ったマグロなので、当然人間を食べたことがない安全なものだったが、それでもその大きさと迫力にヴィリアム殿とブリット嬢は怯んだ。
自分たちはこの殺人マグロを狩って来ることができるのか。
ダミアーン伯父上に問いかけられて、ヴィリアム殿とブリット嬢はすごすごと帰って行った。
その後、ヴィリアム殿は魔族の国の国王陛下であるお祖父様から叱責を受けて、国外へ出ることのないように謹慎を言い渡された。
魔族の国では結婚していなければ王位を継ぐことができないので、ダミアーン伯父上はずっと王太子のままだ。それをヴィリアム殿は自分が結婚して子どももいるのをいいことに、王太子の座を密かに狙っていたのだ。
それが公になっていれば、反逆罪で処刑されてもおかしくはない。反逆罪で処刑されることを考えれば、謹慎を言い渡して、王位継承権を剥奪するくらいは優しいものだっただろう。
去年のロヴィーサ嬢のお誕生日を思い出すと僕は胸がスカッとする。
「これだけ望まれているのですから、今年もマグロの解体ショーをしましょうか?」
「本当ですか? ものすごく楽しみです!」
マグロの解体ショーをする決意をするロヴィーサ嬢に僕は飛び跳ねて喜んでしまった。
招待状は断られるとしても送らないことが失礼に当たることもある。
僕の兄であるエリアス兄上は国王陛下なのでロヴィーサ嬢のお誕生日のパーティーに来ることはできないが、エリアス兄上にも、父上にも、エルランド兄上にもロヴィーサ嬢は招待状を送った。
断られること前提だったのだが、意外な返事が来た。
「エド殿下、エルランド殿下がセシーリア様と一緒に出席なさるそうです!」
「エルランド兄上が!」
「それに、国王陛下は来られませんが、ユリウス殿下が来られると返事がありました」
王弟であるエルランド兄上とその婚約者のセシーリア嬢、それに王配であるユリウス義兄上が来るとなると、ロヴィーサ嬢の格もそれだけ上がったことになる。
元々公爵家の当主であり、王家の覚えめでたいロヴィーサ嬢だったがこんな名誉なことがあるとは思わなかった。
「セシーリア様からは、『一緒にマグロを捕まえに行きましょう』とお誘いをいただいています!」
「それはいいですね。僕とロヴィーサ嬢とセシーリア嬢で魔窟に行きましょう!」
エルランド兄上とセシーリア嬢とユリウス義兄上が来るのならば、望まれているマグロの解体ショーはますます行わなければいけない。エルランド兄上はマグロの解体ショーをものすごく羨ましがっていたのだ。
「使用人さんたちにミエト家を大掃除してもらって、食器もカトラリーも全部磨いてもらいましょう!」
お誕生日に向けてロヴィーサ嬢は張り切っていた。
お誕生日前にロヴィーサ嬢はセシーリア嬢と僕と魔窟にマグロを捕獲に行った。ダミアーン伯父上が下さった金柑くらいの大きさのオレンジ色に光る睡眠玉が役に立つ。
ロヴィーサ嬢は水の中でも平気で服のまま入って行くのだが、セシーリア嬢が同行するようになってから、それをしなくてもよくなった。セシーリア嬢が水の上に固い氷を張ってくれるのだ。
氷の上を歩いて行って、ロヴィーサ嬢は獲物を見付けたところで氷を割って、獲物に睡眠玉を投げつける。
浮かんできたのは特に大きな殺人マグロだった。
脂がのっていて見ているだけで涎が垂れそうになる。
「美味しそうなマグロですね」
「立派なマグロを捕まえましたね」
「これで誕生日のパーティーで解体ショーができます」
巨大なマグロを担ぎ上げて階層から出るロヴィーサ嬢に、セシーリア嬢が氷の魔法を解いて水面の氷を溶かしていた。
ロヴィーサ嬢のお誕生日には、以前セシーリア嬢が着ていた白に見えるが、光の加減では青い光沢が出る生地でロヴィーサ嬢はドレスを誂えていた。
この生地はセシーリア嬢がロヴィーサ嬢にお世話になっているお礼と、友情の証として魔族の国の特産品の絹を送ってくれたのだ。
細身のドレスを着ているロヴィーサ嬢はとても美しい。
僕は水色に青を差し色にしたスーツだが、ロヴィーサ嬢が美しくあってくれるというだけでとても幸せだった。
ロヴィーサ嬢の元にはたくさんの貴族たちが挨拶にやってくる。
「ロヴィーサ嬢、お誕生日おめでとうございます。今日はとても楽しみにしていますよ」
「エルランド殿下、ありがとうございます。マグロは後程解体致します」
「カマを塩焼きにすると美味しいんですよね」
「ご期待に沿えるように致します」
既にエルランド兄上はマグロを食べることを考えているが、こういうところは僕に似ている。
「どうしても一度ロヴィーサ様の主催するパーティーに来てみたくて、エリアスに我が儘を言いました」
「そこまでしてくださってありがとうございます、王配殿下。とても光栄です」
「ロヴィーサ様は私の料理の師匠でもありますからね。今日はよろしくお願いします」
ユリウス義兄上もマグロの解体ショーを楽しみにしているようだ。
「ロヴィーサ様、約束してくださいませ」
「なんでしょう、セシーリア様?」
「わたくしとロヴィーサ様の合同結婚式にもマグロを解体するのです」
「まぁ!? わたくし、花嫁になっても、マグロを解体するのですか!?」
「マグロの解体ショーのある結婚式なんて、ロヴィーサ様だけですわ」
「そんな。お約束はできませんが、エドヴァルド殿下と相談してみます」
セシーリア嬢はロヴィーサ嬢に結婚式でもマグロを解体してほしいようだ。
花嫁がマグロを解体する結婚式。
ロヴィーサ嬢ならば悪くないのではないかと思ってしまう。
「皆様お待ちかねのマグロの解体ショーの前に、紹介したい方がおります。皆様、どうか、ご注目下さい」
ロヴィーサ嬢が入口の方を示すと、大広間の入口が開いてクラース殿がゆっくりと歩いて入って来る。
クラース殿はロヴィーサ嬢の隣りに立って、頭を下げた。
「ロヴィーサの曾祖父のクラース・エスコラです。曾孫の誕生日にいらしてくださってありがとうございます」
「曾祖父はミエト家の書庫に大量のレシピを残してくださっていました。最近、わたくしは曾祖父が生きていることを知りました。今はわたくしの料理の師です」
「これからもロヴィーサが皆様の舌を満足させ続けることができることを祈っております」
「曾祖父共々、今後ともミエト家をよろしくお願いいたします」
優雅にお辞儀をするロヴィーサ嬢と、深々と頭を下げるクラース殿。
ミエト家の書庫にはどんな国、どんな世界からもレシピを集めて手記が治められていると噂になっているが、その手記を作った人物であるクラース殿に視線が集まる。
「初めまして、クラース殿。噂は聞いています」
「王太子殿下、お初にお目にかかります」
ダミアーン伯父上が興味津々でクラース殿に話しかけている。
クラース殿は礼儀正しくダミアーン伯父上に返事をしていた。
「『今年もぜひマグロの解体ショーをお願いします』『去年のマグロは絶品でした』『またマグロを食べさせてください』ですって、エド殿下」
「僕もあのマグロは最高だったと思います。ロヴィーサ嬢はいつの間に、ご飯を炊いて、たくあんを用意して、とろろも用意していたのですか?」
「ご飯とたくあんととろろは、パーティーの後にエド殿下とマグロを食べようと思って用意していたのですよ」
「それであんなにすぐに出てきたんですね。もう、本当に美味しかった! ネギトロも絶品でした!」
絶賛する僕にロヴィーサ嬢は頬を染めている。
あのときにはロヴィーサ嬢を侮辱しようと母上の従弟のヴィリアム殿と娘のブリット嬢が来ていた。ロヴィーサ嬢のことを「人間の令嬢」と言って、「人間のマナーが分かっていない」とか酷いことを言っていたので、僕はヴィリアム殿とブリット嬢に怒りを覚えていた。
せっかくのロヴィーサ嬢のお誕生日を無茶苦茶にするかもしれないヴィリアム殿とブリット嬢。二人をどうやって追い返すか考えていたときに、ロヴィーサ嬢が巨大な殺人マグロを肩に担いできたのだ。
殺人マグロは大きすぎて、人間がその群れの中に飛び込むと一瞬で食い尽くされてしまうと言われている。魔窟というモンスターの養殖場で育ったマグロなので、当然人間を食べたことがない安全なものだったが、それでもその大きさと迫力にヴィリアム殿とブリット嬢は怯んだ。
自分たちはこの殺人マグロを狩って来ることができるのか。
ダミアーン伯父上に問いかけられて、ヴィリアム殿とブリット嬢はすごすごと帰って行った。
その後、ヴィリアム殿は魔族の国の国王陛下であるお祖父様から叱責を受けて、国外へ出ることのないように謹慎を言い渡された。
魔族の国では結婚していなければ王位を継ぐことができないので、ダミアーン伯父上はずっと王太子のままだ。それをヴィリアム殿は自分が結婚して子どももいるのをいいことに、王太子の座を密かに狙っていたのだ。
それが公になっていれば、反逆罪で処刑されてもおかしくはない。反逆罪で処刑されることを考えれば、謹慎を言い渡して、王位継承権を剥奪するくらいは優しいものだっただろう。
去年のロヴィーサ嬢のお誕生日を思い出すと僕は胸がスカッとする。
「これだけ望まれているのですから、今年もマグロの解体ショーをしましょうか?」
「本当ですか? ものすごく楽しみです!」
マグロの解体ショーをする決意をするロヴィーサ嬢に僕は飛び跳ねて喜んでしまった。
招待状は断られるとしても送らないことが失礼に当たることもある。
僕の兄であるエリアス兄上は国王陛下なのでロヴィーサ嬢のお誕生日のパーティーに来ることはできないが、エリアス兄上にも、父上にも、エルランド兄上にもロヴィーサ嬢は招待状を送った。
断られること前提だったのだが、意外な返事が来た。
「エド殿下、エルランド殿下がセシーリア様と一緒に出席なさるそうです!」
「エルランド兄上が!」
「それに、国王陛下は来られませんが、ユリウス殿下が来られると返事がありました」
王弟であるエルランド兄上とその婚約者のセシーリア嬢、それに王配であるユリウス義兄上が来るとなると、ロヴィーサ嬢の格もそれだけ上がったことになる。
元々公爵家の当主であり、王家の覚えめでたいロヴィーサ嬢だったがこんな名誉なことがあるとは思わなかった。
「セシーリア様からは、『一緒にマグロを捕まえに行きましょう』とお誘いをいただいています!」
「それはいいですね。僕とロヴィーサ嬢とセシーリア嬢で魔窟に行きましょう!」
エルランド兄上とセシーリア嬢とユリウス義兄上が来るのならば、望まれているマグロの解体ショーはますます行わなければいけない。エルランド兄上はマグロの解体ショーをものすごく羨ましがっていたのだ。
「使用人さんたちにミエト家を大掃除してもらって、食器もカトラリーも全部磨いてもらいましょう!」
お誕生日に向けてロヴィーサ嬢は張り切っていた。
お誕生日前にロヴィーサ嬢はセシーリア嬢と僕と魔窟にマグロを捕獲に行った。ダミアーン伯父上が下さった金柑くらいの大きさのオレンジ色に光る睡眠玉が役に立つ。
ロヴィーサ嬢は水の中でも平気で服のまま入って行くのだが、セシーリア嬢が同行するようになってから、それをしなくてもよくなった。セシーリア嬢が水の上に固い氷を張ってくれるのだ。
氷の上を歩いて行って、ロヴィーサ嬢は獲物を見付けたところで氷を割って、獲物に睡眠玉を投げつける。
浮かんできたのは特に大きな殺人マグロだった。
脂がのっていて見ているだけで涎が垂れそうになる。
「美味しそうなマグロですね」
「立派なマグロを捕まえましたね」
「これで誕生日のパーティーで解体ショーができます」
巨大なマグロを担ぎ上げて階層から出るロヴィーサ嬢に、セシーリア嬢が氷の魔法を解いて水面の氷を溶かしていた。
ロヴィーサ嬢のお誕生日には、以前セシーリア嬢が着ていた白に見えるが、光の加減では青い光沢が出る生地でロヴィーサ嬢はドレスを誂えていた。
この生地はセシーリア嬢がロヴィーサ嬢にお世話になっているお礼と、友情の証として魔族の国の特産品の絹を送ってくれたのだ。
細身のドレスを着ているロヴィーサ嬢はとても美しい。
僕は水色に青を差し色にしたスーツだが、ロヴィーサ嬢が美しくあってくれるというだけでとても幸せだった。
ロヴィーサ嬢の元にはたくさんの貴族たちが挨拶にやってくる。
「ロヴィーサ嬢、お誕生日おめでとうございます。今日はとても楽しみにしていますよ」
「エルランド殿下、ありがとうございます。マグロは後程解体致します」
「カマを塩焼きにすると美味しいんですよね」
「ご期待に沿えるように致します」
既にエルランド兄上はマグロを食べることを考えているが、こういうところは僕に似ている。
「どうしても一度ロヴィーサ様の主催するパーティーに来てみたくて、エリアスに我が儘を言いました」
「そこまでしてくださってありがとうございます、王配殿下。とても光栄です」
「ロヴィーサ様は私の料理の師匠でもありますからね。今日はよろしくお願いします」
ユリウス義兄上もマグロの解体ショーを楽しみにしているようだ。
「ロヴィーサ様、約束してくださいませ」
「なんでしょう、セシーリア様?」
「わたくしとロヴィーサ様の合同結婚式にもマグロを解体するのです」
「まぁ!? わたくし、花嫁になっても、マグロを解体するのですか!?」
「マグロの解体ショーのある結婚式なんて、ロヴィーサ様だけですわ」
「そんな。お約束はできませんが、エドヴァルド殿下と相談してみます」
セシーリア嬢はロヴィーサ嬢に結婚式でもマグロを解体してほしいようだ。
花嫁がマグロを解体する結婚式。
ロヴィーサ嬢ならば悪くないのではないかと思ってしまう。
「皆様お待ちかねのマグロの解体ショーの前に、紹介したい方がおります。皆様、どうか、ご注目下さい」
ロヴィーサ嬢が入口の方を示すと、大広間の入口が開いてクラース殿がゆっくりと歩いて入って来る。
クラース殿はロヴィーサ嬢の隣りに立って、頭を下げた。
「ロヴィーサの曾祖父のクラース・エスコラです。曾孫の誕生日にいらしてくださってありがとうございます」
「曾祖父はミエト家の書庫に大量のレシピを残してくださっていました。最近、わたくしは曾祖父が生きていることを知りました。今はわたくしの料理の師です」
「これからもロヴィーサが皆様の舌を満足させ続けることができることを祈っております」
「曾祖父共々、今後ともミエト家をよろしくお願いいたします」
優雅にお辞儀をするロヴィーサ嬢と、深々と頭を下げるクラース殿。
ミエト家の書庫にはどんな国、どんな世界からもレシピを集めて手記が治められていると噂になっているが、その手記を作った人物であるクラース殿に視線が集まる。
「初めまして、クラース殿。噂は聞いています」
「王太子殿下、お初にお目にかかります」
ダミアーン伯父上が興味津々でクラース殿に話しかけている。
クラース殿は礼儀正しくダミアーン伯父上に返事をしていた。
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