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九章 奏歌くんとの九年目
18.春公演の脚本とバレンタインの準備
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春公演の演目が決まって脚本が配られた。
「シャーロック・ホームズ!?」
「海瑠がホームズで、美鳥さんがワトソンで、私がアイリーン!?」
配役を聞いて百合が不満の声を上げている。シャーロック・ホームズは基本的に女性との絡みのない探偵小説だ。女性役として出て来るのは『ボヘミアの醜聞』で出て来るオペラ歌手で、皇太子時代のボヘミア国王と恋人関係にあった人物だ。その他には下宿の女主人のハドスンや、ワトソンの妻くらいしかおらず、ホームズの恋愛が物語の中で描かれていることはない。
その時点で既に嫌な予感はしていたのだが、脚本を読み始めるとそれが当たっていたことが分かる。
「これ、ワトソンとホームズ、デキてない?」
「海瑠さんのホームズとこんなに仲良しなんて」
「二人で張り込みをするときの会話とか……」
「これは、デキてるわね」
海香の脚本なので警戒してはいたが、やはり妙な方向に向かっている気がする。ワトソンがホームズを庇う場面があったり、そこからホームズが怒りで我を忘れる場面があったり、推理を展開するときにもワトソンに「君がいないとダメなんだ」というようなセリフがあったりして、おかしい感じが満載である。
脚本を手に立ち尽くしている私と、嬉しそうな美鳥さんと、動物園の有名な狐のような顔の百合。
私たちの嫌な予感をそのままに稽古は始まりそうだった。
脚本を読み込んでいくのも役者の稽古の内である。声に出して読むものもいれば、集中して座って読むものもいる。私は最初の方は集中して読み込んで、そのうちに椅子から立って身振り手振りを加えながら読んでいく。
そこに百合が加わったり、美鳥さんが加わったりしてくる。
ストーリーはオリジナルのもので、ホームズが唯一認めたあの女性と呼ぶアイリーンと犯人が共謀して事件を起こし、それをホームズとワトソンが突き留めていく。アイリーンとの間に妖しい邂逅は入るものの特に恋人関係というわけではなく、アイリーンの手の平の上で踊らされていた犯人だけが落ちていく。
脚本を読めば読むほど解せない気持ちになって来る。
「これ、ラスト、海瑠と美鳥さんでデュエットダンス踊ればいいじゃない!」
最初に脚本に対して文句を言ったのは百合だった。読み込んでいくにつれてホームズとワトソンの絆の物語だとよく分かって、アイリーンはそれを崩そうとして崩せず撤退していくような感じだった。
「劇団の男役と女役のトップスターがラストにデュエットダンスを踊るのは、劇団の決まりですからね」
「全然ホームズ、アイリーンと愛し合ってない! むしろ、ワトソンを陥れて窮地に立たせたアイリーンに憎しみを抱いているじゃない!」
何故か嬉しそうな美鳥さんと、文句を言う百合に演出家の先生が厳かに告げる。
「考えてみてください。アイリーンとホームズは宿敵なのです。お互いに警戒しつつも、ホームズを騙そうとするアイリーンとそれを見抜こうとするホームズの巧妙なやり取り。それをデュエットダンスで出すのです」
そう言われてみると、最後のデュエットダンスにも意味があるような気がしてくるから不思議だ。演出家の先生の考え通りに舞台が構築されていくとすれば、それはそれで面白いかもしれないと思えてくる。
私たちの完敗で、海香と演出家の先生の完勝でこの舞台は始まりそうな気がしていた。
二月のバレンタインデーには私はお茶会とディナーショーが入っているので、毎年奏歌くんとは早めにバレンタインデーをする。大体一月の終わりが多いのだが、今年は私は奏歌くんとお菓子を作る気でいた。
「いっぱい作って、兄さんにも、百合さんにも、美鳥さんにも、真月さんにも、さくらちゃんにもおすそ分けしよう」
「私もそう思っていたの! 私もお菓子を作れるようになったし、みんなと食べたい」
「何にしようかな」
レシピを携帯電話で検索して奏歌くんが候補を探している。チョコレートのレシピのページを開くと、こんなにもチョコレートでお菓子が作れるのかと驚いてしまう。
携帯電話の液晶画面を見せながら奏歌くんが説明してくれる。
「チョコブラウニーはお手軽かな。配るんだったらチョコスティックケーキもいいかもしれない。あ、このガトーショコラ・オ・カフェはコーヒーが入ってるんだ、美味しそう」
奏歌くんの挙げてくれた三つのレシピを見て私と奏歌くんで考える。
「さくらにも上げるんだったら、コーヒーは良くないかもしれないね」
「あぁ、そっか。美味しそうなんだけどな」
カップケーキのようになっているそれを奏歌くんは未練ありそうに見ている。
「チョコスティックケーキ、これ、食べやすそうじゃない?」
「さくらちゃんも手で持ってもりもり食べられそうだよね」
「ちょっとずつ小分けにできそうだし、いいんじゃないかな」
話は纏まったのだが、私はガトーショコラ・オ・カフェをまだ見ている奏歌くんが気になった。どうしても奏歌くんはそれに心惹かれるのだろう。
「ガトーショコラ・オ・カフェは、二人のために作る?」
「え? 二種類も作って、海瑠さん、大変じゃない?」
「奏歌くんが食べたいなら、私はプレゼントしたいな」
そんなに作りたいのならば二種類作ってしまえばいい。配るのはチョコスティックケーキで、二人だけで食べるのはガトーショコラ・オ・カフェにすればいいのだ。
私の提案に奏歌くんは目を輝かせて喜んでいた。
お菓子作りの基本は買い物から。
板チョコレートやお砂糖の入っていないココアや卵やバターや小麦粉やインスタントコーヒーを買ってくる。ガトーショコラ・オ・カフェはカップケーキなのでケーキ用のカップも買った。
チョコレートを刻んでバターと一緒に湯煎して溶かしておくのと、ココアを小麦粉と混ぜて振るっておくのはどちらも同じだった。
チョコスティックケーキの方はチョコレートと卵を混ぜて、振るった粉類を混ぜて型に流し込んだら焼くだけだった。
「チョコレートを刻むのは大変だったけど、結構簡単にできるね」
「海瑠さんが上達したからじゃない?」
「そうかな?」
焼いている間に次のガトーショコラ・オ・カフェを作り上げていく。
卵は卵黄と卵白に分けて、卵黄だけを溶かしたコーヒーを混ぜたチョコレートに混ぜる。卵白はメレンゲになって角が立つまでしっかりと泡立てる。
泡立てる作業や力仕事は得意なので、私がやっていると、その間に奏歌くんがインスタントコーヒーを溶かして濃いコーヒー液を作っていた。
メレンゲが出来上がるとチョコレートとさっくり混ぜて、粉類も入れて混ぜ合わせる。生地が出来上がったらマフィンカップに入れて焼くだけだった。
「チョコスティックケーキが焼き上がったよ。ガトーショコラ・オ・カフェの方を焼いちゃおう」
オーブンレンジに続いてガトーショコラ・オ・カフェを入れて、チョコスティックケーキは粗熱を取る。
粗熱が取れたら奏歌くんがスティック状になるように切ってくれた。
出来上がったチョコスティックケーキはいい香りがして美味しそうで、ラッピングしてしまうのがもったいない。
じっと見ていると奏歌くんがくすりと笑った。
「海瑠さん、あーん」
「え? あ……」
「端っこの部分だよ。味見」
切った端っこの部分を奏歌くんは私の口に入れてくれた。奏歌くんも端っこの部分を口に入れてもぐもぐと食べている。
「美味しいね!」
「うん、すごく上手にできた」
「海瑠さん頑張ったもんね」
チョコレートを刻むのも、混ぜるのも私は自分でもよく頑張ったと思う。
奏歌くんに認められて私は胸を張る。
ラッピングをしているとガトーショコラ・オ・カフェが焼き上がる。取り出して粗熱を取っているとコーヒーのいい香りに私と奏歌くんは顔を見合わせた。
「一個食べちゃおうか?」
「半分ずつにしよ!」
ラッピングを途中でやめて、私と奏歌くんはガトーショコラ・オ・カフェを半分こにして食べたのだった。
ガトーショコラ・オ・カフェはコーヒーの香りがしてとても美味しかった。
「シャーロック・ホームズ!?」
「海瑠がホームズで、美鳥さんがワトソンで、私がアイリーン!?」
配役を聞いて百合が不満の声を上げている。シャーロック・ホームズは基本的に女性との絡みのない探偵小説だ。女性役として出て来るのは『ボヘミアの醜聞』で出て来るオペラ歌手で、皇太子時代のボヘミア国王と恋人関係にあった人物だ。その他には下宿の女主人のハドスンや、ワトソンの妻くらいしかおらず、ホームズの恋愛が物語の中で描かれていることはない。
その時点で既に嫌な予感はしていたのだが、脚本を読み始めるとそれが当たっていたことが分かる。
「これ、ワトソンとホームズ、デキてない?」
「海瑠さんのホームズとこんなに仲良しなんて」
「二人で張り込みをするときの会話とか……」
「これは、デキてるわね」
海香の脚本なので警戒してはいたが、やはり妙な方向に向かっている気がする。ワトソンがホームズを庇う場面があったり、そこからホームズが怒りで我を忘れる場面があったり、推理を展開するときにもワトソンに「君がいないとダメなんだ」というようなセリフがあったりして、おかしい感じが満載である。
脚本を手に立ち尽くしている私と、嬉しそうな美鳥さんと、動物園の有名な狐のような顔の百合。
私たちの嫌な予感をそのままに稽古は始まりそうだった。
脚本を読み込んでいくのも役者の稽古の内である。声に出して読むものもいれば、集中して座って読むものもいる。私は最初の方は集中して読み込んで、そのうちに椅子から立って身振り手振りを加えながら読んでいく。
そこに百合が加わったり、美鳥さんが加わったりしてくる。
ストーリーはオリジナルのもので、ホームズが唯一認めたあの女性と呼ぶアイリーンと犯人が共謀して事件を起こし、それをホームズとワトソンが突き留めていく。アイリーンとの間に妖しい邂逅は入るものの特に恋人関係というわけではなく、アイリーンの手の平の上で踊らされていた犯人だけが落ちていく。
脚本を読めば読むほど解せない気持ちになって来る。
「これ、ラスト、海瑠と美鳥さんでデュエットダンス踊ればいいじゃない!」
最初に脚本に対して文句を言ったのは百合だった。読み込んでいくにつれてホームズとワトソンの絆の物語だとよく分かって、アイリーンはそれを崩そうとして崩せず撤退していくような感じだった。
「劇団の男役と女役のトップスターがラストにデュエットダンスを踊るのは、劇団の決まりですからね」
「全然ホームズ、アイリーンと愛し合ってない! むしろ、ワトソンを陥れて窮地に立たせたアイリーンに憎しみを抱いているじゃない!」
何故か嬉しそうな美鳥さんと、文句を言う百合に演出家の先生が厳かに告げる。
「考えてみてください。アイリーンとホームズは宿敵なのです。お互いに警戒しつつも、ホームズを騙そうとするアイリーンとそれを見抜こうとするホームズの巧妙なやり取り。それをデュエットダンスで出すのです」
そう言われてみると、最後のデュエットダンスにも意味があるような気がしてくるから不思議だ。演出家の先生の考え通りに舞台が構築されていくとすれば、それはそれで面白いかもしれないと思えてくる。
私たちの完敗で、海香と演出家の先生の完勝でこの舞台は始まりそうな気がしていた。
二月のバレンタインデーには私はお茶会とディナーショーが入っているので、毎年奏歌くんとは早めにバレンタインデーをする。大体一月の終わりが多いのだが、今年は私は奏歌くんとお菓子を作る気でいた。
「いっぱい作って、兄さんにも、百合さんにも、美鳥さんにも、真月さんにも、さくらちゃんにもおすそ分けしよう」
「私もそう思っていたの! 私もお菓子を作れるようになったし、みんなと食べたい」
「何にしようかな」
レシピを携帯電話で検索して奏歌くんが候補を探している。チョコレートのレシピのページを開くと、こんなにもチョコレートでお菓子が作れるのかと驚いてしまう。
携帯電話の液晶画面を見せながら奏歌くんが説明してくれる。
「チョコブラウニーはお手軽かな。配るんだったらチョコスティックケーキもいいかもしれない。あ、このガトーショコラ・オ・カフェはコーヒーが入ってるんだ、美味しそう」
奏歌くんの挙げてくれた三つのレシピを見て私と奏歌くんで考える。
「さくらにも上げるんだったら、コーヒーは良くないかもしれないね」
「あぁ、そっか。美味しそうなんだけどな」
カップケーキのようになっているそれを奏歌くんは未練ありそうに見ている。
「チョコスティックケーキ、これ、食べやすそうじゃない?」
「さくらちゃんも手で持ってもりもり食べられそうだよね」
「ちょっとずつ小分けにできそうだし、いいんじゃないかな」
話は纏まったのだが、私はガトーショコラ・オ・カフェをまだ見ている奏歌くんが気になった。どうしても奏歌くんはそれに心惹かれるのだろう。
「ガトーショコラ・オ・カフェは、二人のために作る?」
「え? 二種類も作って、海瑠さん、大変じゃない?」
「奏歌くんが食べたいなら、私はプレゼントしたいな」
そんなに作りたいのならば二種類作ってしまえばいい。配るのはチョコスティックケーキで、二人だけで食べるのはガトーショコラ・オ・カフェにすればいいのだ。
私の提案に奏歌くんは目を輝かせて喜んでいた。
お菓子作りの基本は買い物から。
板チョコレートやお砂糖の入っていないココアや卵やバターや小麦粉やインスタントコーヒーを買ってくる。ガトーショコラ・オ・カフェはカップケーキなのでケーキ用のカップも買った。
チョコレートを刻んでバターと一緒に湯煎して溶かしておくのと、ココアを小麦粉と混ぜて振るっておくのはどちらも同じだった。
チョコスティックケーキの方はチョコレートと卵を混ぜて、振るった粉類を混ぜて型に流し込んだら焼くだけだった。
「チョコレートを刻むのは大変だったけど、結構簡単にできるね」
「海瑠さんが上達したからじゃない?」
「そうかな?」
焼いている間に次のガトーショコラ・オ・カフェを作り上げていく。
卵は卵黄と卵白に分けて、卵黄だけを溶かしたコーヒーを混ぜたチョコレートに混ぜる。卵白はメレンゲになって角が立つまでしっかりと泡立てる。
泡立てる作業や力仕事は得意なので、私がやっていると、その間に奏歌くんがインスタントコーヒーを溶かして濃いコーヒー液を作っていた。
メレンゲが出来上がるとチョコレートとさっくり混ぜて、粉類も入れて混ぜ合わせる。生地が出来上がったらマフィンカップに入れて焼くだけだった。
「チョコスティックケーキが焼き上がったよ。ガトーショコラ・オ・カフェの方を焼いちゃおう」
オーブンレンジに続いてガトーショコラ・オ・カフェを入れて、チョコスティックケーキは粗熱を取る。
粗熱が取れたら奏歌くんがスティック状になるように切ってくれた。
出来上がったチョコスティックケーキはいい香りがして美味しそうで、ラッピングしてしまうのがもったいない。
じっと見ていると奏歌くんがくすりと笑った。
「海瑠さん、あーん」
「え? あ……」
「端っこの部分だよ。味見」
切った端っこの部分を奏歌くんは私の口に入れてくれた。奏歌くんも端っこの部分を口に入れてもぐもぐと食べている。
「美味しいね!」
「うん、すごく上手にできた」
「海瑠さん頑張ったもんね」
チョコレートを刻むのも、混ぜるのも私は自分でもよく頑張ったと思う。
奏歌くんに認められて私は胸を張る。
ラッピングをしているとガトーショコラ・オ・カフェが焼き上がる。取り出して粗熱を取っているとコーヒーのいい香りに私と奏歌くんは顔を見合わせた。
「一個食べちゃおうか?」
「半分ずつにしよ!」
ラッピングを途中でやめて、私と奏歌くんはガトーショコラ・オ・カフェを半分こにして食べたのだった。
ガトーショコラ・オ・カフェはコーヒーの香りがしてとても美味しかった。
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