抱きたい美女に抱かれる現実

秋月真鳥

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第三部 七海とのぶくん (七海編)

8.ウエディングケーキと初夜

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 七海が16歳になる春休みに、建てられた二世帯住宅に引っ越しも終わって、誕生日には籍を入れるつもりで書類も揃えていた。結婚式は要と鷹野の場合も、要が成人したときに学生で、大学を卒業してからは子どもたちがいたので結局挙げなかった。話し合って、七海と信久は七海が高校から卒業したら結婚式を挙げることにしていた。

「ななとのぶくんが結婚するときに、ママとかなちゃんも結婚したらいいと思うの!」
「今更結婚式?」
「鷹野さんと結婚式、挙げたいな」

 提案した七海に、鷹野は子どもも三人いるし、躊躇っているようだが、要は乗り気だった。
 誕生日には信久が大きなケーキを作ってくれた。

「結婚式みたいなの」
「去年の誕生日は鷹野さんと要さんまで行き渡らなかったから、今年は全員で食べようと思って」
「ありがとう、のぶくん」

 二人でケーキカットをして、それぞれにサーブしていく。柊もフォークを握り締めて、サーブされるのを待っていた。
 もしゃもしゃとケーキにかぶりつく子どもたちを見て、鷹野と要が苦笑している。

「『パティシエ王子』のケーキで慣れてるから、適当なのは食べさせられないね」
「うちの子、舌が肥えちゃって」
「ずっと作るから、安心してください」

 信久の言葉に喜んだのは子どもたちだった。
 婚姻届けを役所に出して、信久と七海は手を繋いで家に帰った。大きな信久の手は、七海が16歳になっても、変わらず大きい。小さな頃から体が大きくて見上げるような信久が好きだった。飛びかかって噛んでしまったこともあったけれど、七海は素直に謝れる信久に心開いて、信久も七海を受け入れてくれた。
 初夜は心配もあったが、期待の方が大きかった。

「のぶくん、ななのこと、嫌いにならないでね?」
「ななちゃんこそ、俺が乱れても、かっこ悪いとか、気持ち悪いとか思わないで欲しい」

 年上の信久は、七海の中でかっこよくて頼りになる存在でありたいというプライドがあるらしい。それがずっと七海に抱かれたい自分を、偽る原因となっていたことを聞いて、七海はもじもじと膝を擦り合わせる。
 プリーツスカートの下で、七海の股間には、信久の甘いフェロモンに誘われて、男性器に相当するものが生えている。

「のぶくん……これ……」
「え?」

 スカートを持ち上げて、女性用の下着にはもはや納まらないサイズのそこを見せると、信久の動作が止まる。二度見されてしまって、七海は涙目になった。

「お、おかしい? 何か変?」
「い、いや……その、大きいから……」
「大きいとダメなの!? のぶくん、抱けない!?」
「ダメじゃない……けど、は、入るのかなぁ」

 他人のものと比べたことがないので分かるはずもないが、七海のものは規格外のサイズのようだ。体つきが小柄なので、自分の生えたモノが大きいなどという自覚のない七海は、指摘されて、泣き出しそうになってしまう。
 王子様のように七海の手を取って抱き寄せて、信久が背中を撫で下ろして宥めてくれる。

「お風呂に入ろうか」
「うん、のぶくん、一緒に」

 服を脱いで裸を見せるのは初めてで、七海は胸が高鳴る。自分のほっそりとした凹凸の少ない体はともかく、信久の豊かな大胸筋、丸い大殿筋、引き締まった腹筋、立派な腕の筋肉に目が行く。
 じっと見ていると、信久が腹を決めたように下着を脱いだ。
 男性のオメガなので、信久にもモノはついている。それが体格に見合ったサイズなのだろうが、七海の股間に生えたモノよりも小さいことに気付いて、七海は自分の中心が規格外であるという信久の言葉の意味を知った。

「は、入らなかったら、ど、どうすれば……」
「入る、はずだ」
「でもぉ、のぶくんが痛いのも、苦しいのも、やだよぉ」
「入れてみせる」

 泣き出してしまう七海を抱き締めてシャワーを浴びて、身体を洗ってから、七海を先に脱衣所に出して、信久は準備があるからとバスルームに残った。ほかほかの身体をバスタオルで拭いて、髪を乾かして待っていると、ぶわりと濃いフェロモンの香りが漂ってきた。

「の、のぶくん、発情期!?」
「かもしれない……ななちゃんが、凄い目で見て来るから」

 信久が欲しい。
 泣きながらでも、七海ははっきりと欲望が形になっていた。それが信久の発情期を誘発したのかもしれない。
 ベッドルームに行って、初めて使うキングサイズのベッドに七海をお姫様のように寝かせて、信久が口付けを落とす。口付けを受けてうっとりと目を閉じていると、バスローブを乱されて、中心に手がかけられた。
 既に先端が濡れ始めているそこの滑りを掬い取って、伸ばすように扱かれると、七海の細い腰が跳ねる。

「あぁっ! のぶくん!?」
「ななちゃん、みないで……」
「あっ!?」

 バスルームで時間がかかったのは、その場所を解していたからなのだろう。先端を後孔に宛がった信久が、ゆっくりと腰を落としてくる。飲み込まれる暑さと締め付けに、七海は腰を跳ね上げていた。

「だめっ! あぁっ! ななちゃん、まって」
「やぁっ! むりぃ!」

 入口はきついが、信久の中は柔らかく絡み付くようで、七海は気持ちよさの余り、腰を突き上げてしまう。突き上げられて、七海に跨る信久が体を反らせてびくびくと震える。
 胸に触れたいが手が届かないので、丸い大殿筋を揉みしだけば、締め付けがきつくなる。

「ひぁぁっ! ななちゃん、だめぇ!」
「あっ! あぁんっ! のぶくん、でちゃうよぉ!」
「あぁっ!」

 一際大きくなった七海が中で弾けると、白濁を受けた信久がくたりとシーツの上に倒れる。濃厚なフェロモンは部屋中に充満していて、七海はそれくらいでは我慢できなかった。
 信久の脚を抱えて、白濁の零れる後孔に切っ先を宛がう。
 フェロモンに溺れながら、欲望だけで奥まで押し込むと、信久が甘い喘ぎ声を漏らす。

「あっ! ひぁっ! ひっ!」
「んっ……のぶくんの中、すごい……ずっといれときたい……」

 ぐちゅぐちゅと濡れた音をさせながらゆっくりと腰を動かす七海に、信久はもう短く喘ぐことしかできない。達しても達しても、七海の中心は信久の中で形を取り戻し、また責め立てる。初めこそ信久がリードできていたが、最終的には七海に翻弄されて、どろどろになっていた。
 溢れるほどに注ぎ込むまで、初めての夜は終わらなかった。
 シャワーで後始末をして、ベッドのシーツも替えてパジャマに着替えた二人がベッドに寝転ぶ頃には、時刻は朝方になっていた。

「俺、恥ずかしい……」
「ううん、のぶくんは、変わらずかっこよかったの」
「気持ち悪くなかった?」
「どっちかというと、気持ちよかったの」

 ほっぺたを真っ赤にして告白した七海に、信久も顔を真っ赤にする。
 入らないかもしれないと泣いてしまった七海のために、バスルームで後孔を解してきてくれて、自分で入れる役までかって出てくれた信久は、七海にとって、やはり大人でかっこいい男性だった。

「オメガだから、女みたいだって思われたくなかったんだ」
「のぶくんは男のひとだよ。ななは、女で」
「そう言ってくれるななちゃんだから、好きになったのかもしれない」

 オメガである自分と、男性である自分。
 そのどちらも七海が受け入れたからこそ、信久も自分を認められたのかもしれない。
 その言葉に、七海の目から涙が零れる。

「幸せにする……一生、幸せにします」
「俺のセリフだよ」
「うん、なな、もう幸せだよ」

 信久と結婚出来た幸せを七海は噛み締めていた。
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