抱きたい美女に抱かれる現実

秋月真鳥

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第二部 年上オメガを落としたい日々 (要編)

10.4歳の結んだ縁

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 大学の入学前に、要と七海は、鷹野の妹の艶華に紹介された。
 絵を描く以外のことはできなくて、部屋に行くとその汚さに驚く要と七海を他所に、鷹野は艶華に説教しながら部屋を片付ける。

「本当に、生活能力がないんだから」
「鷹野ちゃんはできるのに、なんで私はできないんだろうね」

 不思議と首を傾げる艶華は、顔立ちは整って美しく、胸も腰も豊かで、背も高く、鷹野との血の繋がりを強く感じさせた。鷹野とも艶華とも血の繋がりのある七海も、こんな風に豊かな美女になるのかと眺めていると、ゴミの山と床に積み上げられた資料の隙間から、七海がトイプードルの子犬を見つけた。

「かなちゃん、ママ、わんちゃんだよ!」
「え!? 艶華、自分の世話もできないのに、犬飼ったの!?」
「ペットショップで目が合って、運命だと思ったの」
「ペットシートも替えてないし……餌は?」
「どうだったっけ?」

 ぽやんと答える艶華に、「生き物を飼う資格なし!」と鷹野はトイプードルをゲージに入れて保護してしまった。泣いてトイプードルに縋る艶華に、きっぱりと鷹野が言う。

「部屋を片付けられて、ペットシートも替えられるようになって、餌も水も定期的に上げられるようにならないと、返さない」
「いやー! 虹華にじかちゃーん」
「犬の話はいいから、こっちの話、聞いてくれる?」

 トイプードルの子犬をゲージに入れる頃には、汚かった艶華の部屋も片付いていて、七海は手を叩いて鷹野を絶賛していた。

「母さんが浮気してできた妹の七海ちゃん。そのお姉さんで、僕の恋人の要ちゃん」
「鷹野ちゃんに恋人が!?」
「暫定、だけど……」
「鷹野さんのことは大事にします。成人したら籍もいれて、結婚するつもりです」

 未成年だと結婚に保護者の同意が必要になって来るので、嫌な親と話し合わなければいけない。そんな場を設けるよりは、成人して自由に結婚できるようになってから結婚しようというのが鷹野の意見だった。
 親に会うのは嫌だが、鷹野と結婚するためならば我慢するのに、鷹野はこういうところまで要のことを気遣ってくれる。惚れ直すのだが、その間に気持ちが変わったらいつでも別れるという鷹野の姿勢には、要は呆れていた。

「カナエちゃん、鷹野ちゃんのこと、よろしくね」
「要です」
「カノエちゃん?」
「艶華、興味ないことは、一切覚えないから」

 そうやって頭を抱える鷹野の言葉の意味が分かったのは、要の幼馴染の雪峻ゆきちかが艶華と付き合い始めて、大学にお弁当を届けに来たときだった。艶華は完全に要が誰か分かっていなくて、要もそれに合せて、初対面のような顔をしたが、帰ってから鷹野に報告はした。

「艶華さん、私の腐れ縁の幼馴染と付き合ってるみたい」
「え!? 未成年に手を出したの!?」

 鷹野と対照的に、艶華は性に奔放で、今までに何度もお金目当て、身体目当ての恋人に騙されている。

「そのたびに、僕が手切れ金渡して別れさせてるんだけどね……」
「雪峻は……大丈夫、かな?」

 同じ剣道道場に小学校に入る年に入門してからの腐れ縁で、学校は違っても剣道の試合では一緒になるし、道場では要がアルファで同世代の女の子は相手にならなかったので、雪峻と組まされることが多かった。それもコテンパンに倒していたから、雪峻は要を「馬鹿!」と言って、憎まれ口を叩くことが多い。

「口は悪いけど、性格も悪いし……あれ? 艶華さん、大丈夫かな?」
「虹華ちゃんのことも、ちゃんとしないといけないもんね」
「にじちゃん、どっかいくの?」

 鷹野と要と七海の家に保護した虹華を、七海はものすごく可愛がっている。虹華も七海に懐いているが、これは一時的に保護しているだけで、いつかは返さないといけないことは七海に話していた。
 結局、虹華は艶華のところに返すことになったのだが、その日に鷹野から艶華と雪峻が結婚するだろうという話を聞かされた。

「いいなぁ……私も早く鷹野さんと結婚したいよー」
「約束でしょ?」
「かなちゃん、ママとけっこんして、ママをはなさないでね?」
「任せといて!」
「もう、七海ちゃんまで」

 常識人の鷹野が、未成年のままで要と結婚するわけはないが、要は誕生日が来て19歳になっていた。結婚できるまではもう一年を切っている。

「要ちゃん、そろそろ、発情期なんだけど」
「よし、ななちゃん、今日は私とお風呂に入ろうか」
「えーかなちゃん、かみのけのあらいかたが、らんぼうなんだもん」

 文句を言われながら七海と一緒にお風呂に入って出て来ると、その間に鷹野が明日の料理の下拵えをしていてくれる。七海をベッドに寝かせて絵本を読んでいる間に、鷹野もお風呂に入る。
 結局、元鷹野の部屋にキングサイズのベッドと七海の子ども用の柵のあるベッドが入った寝室は作ったが、要の部屋のベッドを買い替えて、ダブルサイズにして、別にしていた。
 鷹野の部屋と要の部屋を分けるドアを閉めてしまえば、声もほとんど聞こえることはない。
 要の部屋のベッドに湯上りの鷹野が来てくれた。
 キスをして、パジャマを脱がせていくと、濃厚な甘い香りがする。
 発情期には子どもができるかもしれないので、避妊具ゴムを付けなければいけないのだが、その日の鷹野は少し違った。

「赤ちゃんできたら困るけど……一回だけ、生で……」
「良いの?」
「それで、うなじ……」
「良いの!? 本当に?」

 雪峻と艶華が結婚するということで、鷹野の心境にも変化があったらしい。発情期に直に精を注ぎ込んで、うなじを噛んで良いということは、鷹野と要が「番」になるということだった。
 口付けて胸を弄っていると、甘く吐息を漏らしながら、鷹野が話してくれる。

「艶華、僕のフェロモンが香ることがあったけど、もう匂わないんだって。うなじかんだわけじゃないのに」
「え? 雪峻、ベータだよ?」
「オメガで、運命の番だったみたいなんだ」
「ふぁー!?」

 あの雪峻がオメガで、艶華に抱かれている。
 プライドの高い雪峻は、艶華を抱いていると言っていたが、どうやら逆だったらしい。驚きで声を上げた要に、鷹野が口付けをする。

「僕を、要ちゃんのものにしてくれる?」
「喜んで」

 ベッドの上に押し倒して、脚を開かせると、濡れた後孔が露わになる。膝裏に手を入れて、脚を折り曲げて、切っ先を後孔に宛がうと、鷹野が緊張できゅっとそこを締めるのが伝わる。
 キスをしたいが届かないので、胸に舌を這わせると、鷹野の身体がシーツの上でびくびくと跳ねた。
 内壁を擦り上げながら中心を納めていくと、狭く熱く締め付けられる。

「ひぁっ! かなめ、ちゃんっ! あぁっ!」
「すきっ! たかのさん、すきっ!」

 欲望のままに腰を打ち付けると、鷹野の纏うフェロモンの香りが濃くなる。最奥まで貫いて、そこをごりごりと擦ると、鷹野の目から涙が零れる。

「ひぃんっ! そこ、だめぇ!?」
「すごい、しまる……たかのさん、きもちいいの?」
「あぁっ! いいっ! いいからぁっ!」

 腰を回して重点的に奥を責めると、内壁が痙攣して鷹野が中で達したのが分かる。萎えている鷹野の中心は、とろとろと透明な雫を垂らすだけだった。
 初めて抱かれたときから、鷹野は中心では達しない。オメガという性だからだろう、男性としてよりも孕む性としての性質が強い。
 ギリギリまで引き抜いて、奥まで一気に押し込むと、鷹野の喉から声にならない悲鳴が上がる。それを聞きながら、要も鷹野の中で達していた。
 白濁を吐き出して、全部塗り込めるように腰を緩々と動かしていると、鷹野が体を起こす。反動で抜けてしまった鷹野の後孔から、とろりと要の白濁が零れているのが視覚的にもくる。

「うなじ、かんで……」
「私のものに、しちゃうよ?」
「なりたかった……。要ちゃんのこと、ずっと可愛いと思ってて、僕のものになればいいと思ってた……ごめんね、我慢のできない悪い大人で」

 本当ならば要が成人して自分で決められるまで待たなければいけない。それ以前に要に選ばれることはないと思い込んでいた。それでも、七海を理由に要と一緒に過ごせる一年を最後の思い出にしようと思っていた。
 涙ながらに告白されて、要も涙が滲んでくる。

「ずっと両想いだったんじゃない……鷹野さんったら」

 悩んで、焦れて、苦しんだ日々が、もったいなかったように思えるが、それがなければ今はない。
 要は鷹野のうなじに歯を立てた。
 鷹野のフェロモンは要にしか作用しなくなって、要は鷹野のフェロモン以外に反応することはない。

「来年は、七海ちゃんも5歳でしょう?」

 アルファとオメガの間に生まれた子は、早い子は5歳でバース性の検査を行う。七海がアルファだったら、発情期の来る鷹野の側で育てるのは心配だったと、鷹野は話してくれた。
 鷹野自身も、艶華のバース性の分かった10歳のときから、このマンションで別々に暮らしている。

「ななちゃんのママだもんね」
「ママで、もういいか」

 こうして、要は鷹野と番になったのだった。
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