抱きたい美女に抱かれる現実

秋月真鳥

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第一部 後天性オメガは美女に抱かれる (雪峻編)

7.二度目の発情期

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 体が熱っぽくて、フェロモンが出ているのは自覚していた。アルファが近くにいると、発情期がアルファの誘いによって前後することがあるという。艶華が求めてくれるているからならば、疼く胎が悦びを待ち望んでいる気がして、雪峻はオメガとはこんなに浅ましい生き物なのかと、自分の体に恐怖してもいた。
 玄関のドアを開けた瞬間から、艶華にこの熱を治めて欲しいのに、艶華は眼鏡をかけて絵に集中しているようだ。抑制剤を飲んでしまえば良いのだが、発情期に抱かれる快感を覚えた体は、刺激を求めてしまう。

「つやかぁ……」

 鼻にかかった甘い声。
 こんな声が自分の口から出るのかと驚いてしまうが、発情期の猫のように艶華にすり寄っても、集中しているのか、全然こちらを見てもらえない。絵を描く手がぶれてはいけないので、激しく絡み付けないが、ソファの隣りに座って肩にすりすりと額を擦り付けて、こちらを見るように促す。

「抑制剤、飲んだら?」

 思わぬ冷たい言葉に、それだけ艶華が仕事に集中しているのだろうと反省して、抑制剤を取りに行こうと立ち上がると、よろけて艶華の膝に倒れ込んでしまった。頬に触れた股間のものの存在に、雪峻の喉が鳴る。
 発情期で熟れ切った体は、理性など吹き飛ばしてしまっていた。
 部屋着のロングシャツを捲って、脚の間に顔を突っ込むと、女性物の布地の狭い下着から、逞しい中心がはみ出ているのが分かる。自分にもあるものだから、正気のときならば躊躇ってしまうかもしれないが、欲しくてたまらず頬ずりすると、艶華が眼鏡を外した。

「はしたないことして」
「でも、これ、ほしいぃ」
「お口でしてもらおうかな」

 口に押し付けられてその大きさに怯んだのは一瞬だけで、そこが後ろを埋めてくれると考えるだけで胎が疼いて、ぴちゃぴちゃと音を立てて舐め始める。喉の奥まで飲み込もうとするが、大きさにえづいてしまって、咳き込んでいると、艶華の手が雪峻の尻を揉んだ。
 パンツと下着を脱がされるのに、腰を上げて協力してしまう雪峻には、もう理性などない。

「乗られてると避妊具ゴム取りに行けないんだけど、仕方ないよね?」
「え!? あ……だ、だめぇ」
「中で出されるの、だぁいすきでしょ?」

 いつの間にか膝の上に乗り上げる形になっている雪峻の濡れた後孔に、艶華が切っ先を宛がう。くぷくぷと入口を浅く掠めて、なかなか中まで入れてくれない艶華に、雪峻は焦れて涙が滲む。

「いれてぇ!」
「でも、避妊具……」
「あ、だめ……」
「じゃあ、このままにしよっか」

 入っていた先端を抜いてしまって、艶華が雪峻の薄い尻の肉に中心を挟んで擦り上げ始めた。下から突き上げられて、後孔を切っ先が掠めるのに、期待して蠢く内壁には到達しない。
 欲しくて欲しくて堪らないのに、核心には至らずに、雪峻が白旗を上げるのは時間の問題だった。

「もう、いれてぇ! おねがい!」
「いいのね?」
「いいっ! ひぁぁっ!」

 腰を掴まれて一気に下から突き上げられ、貫かれて、雪峻は内壁を蠢かせて絶頂する。きつい締め付けに、艶華も柳眉を顰めていたが、堪えて、雪峻の腰を掴んだままでがつがつと突き上げて来る。

「ひっ! ひぁっ! あぁっ!」

 もう短く喘ぐことしかできず、絶頂の波から降りられない雪峻は、艶華の白濁を中に受け止めて、中心からもとくとくと白濁を零して気を失っていた。
 引き戻されたときには、ソファではなくベッドで、艶華が運んでくれたのだとぼんやりしたままの頭で理解する。アルファ女性は男性よりも力が強いというが、中背で細身の雪峻くらいは運べるのだろう。

「ごめんなさい……嫉妬、したの」
「え? 何が、ごめんなさい?」
「私の方が年上だし、雪峻くんのこと知らなかったし……」
「なんのこと?」

 焦らされたのはつらかったが結果として気持ちよかったのだから構わない雪峻に、艶華はしょんぼりとして白状してくれた。

「要ちゃんって子にも、雪峻くん、抱かれたのかなと思って」
「ない! 絶対ない! あいつとかない!」
「雪峻くんのフェロモン、いい匂いだから、アルファが近付いてこないように、牽制してたの」

 自分の匂いを付けて自分のオメガを守るのは、アルファならばできて当然のことだという。世界に一割しかいない雲の上のような存在のアルファの実態など、雪峻は知らない。例外的に要というアルファが側にいるが、好みではないし、性的な話などお互いしたいとも思わない。
 そのことを正直に言えば、艶華は安心したようだった。
 豊かな胸にぎゅっと抱き締められる。

「二股かけられた挙句、その相手と連絡取れなくなっちゃったことがあって、心配だったの」
「二股とか、あの馬鹿相手にないよ」
「あのね、雪峻くん」

 柔らかな胸に抱きしめられていると、あらぬ場所が反応し始める。雪峻も男なのだから、前が反応しても良いはずなのに、発情期が強くて白濁を放たれて、それが伝い落ちる後孔が疼いた。薄い雪峻の腹には、艶華の中心が当たっている。

「赤ちゃん、できてたら、責任取るから、産んでください」
「あ、赤ちゃん!? お、俺が!? そんな馬鹿な……」

 愕然としてしまったが、オメガなのだから発情期にアルファの精を受ければ、妊娠する確率は高い。前回は緊急避妊薬を処方してもらったが、今回は艶華は産んでほしいという。
 アルファとオメガの間に生まれる子どもは、高い確率でアルファかオメガなので、せっかくの機会を逃したくないのだろう。艶華との間に赤ん坊を産んで、その子をいずれやって来る艶華との別れのときにはどうすれば良いのだろう。
 何より、男性では、骨盤が開かないタイプのオメガは帝王切開になるし、女性器に相当する場所ができないオメガも帝王切開でしか赤ん坊は産めない。女性のアルファに男性器に相当するものが生えるように、男性のオメガに女性器に相当する場所ができたとしても、出産というのがどれほど大変なものなのか、雪峻には想像もつかなかった。
 赤ん坊を腹で育てて、産み出さなければいけない。
 男性でアルファ寄りのベータだと思い込んでいたので、雪峻は一度もそういう可能性を考えたことがなかった。

「赤ちゃんだよ? 私と雪峻くんの」
「赤ちゃん……」

 一つの命なのだから粗末にはしたくない。命を救うために医者になろうと医学部に入った雪峻にとっては、前回のように緊急避妊薬を飲むことも、艶華と親密になった今では、艶華の赤ん坊を殺してしまう行為だと認識が変わっていた。

「できてるか、分からないし……避妊具、つけて」
「つけるけど、もうできてるかもしれないでしょ?」
「考えたくない……」

 そんな現実からは目を背けて、快楽にだけ溺れたい。
 一度交わったので発情期は多少は治っていたが、まだ体の奥底では日が燃えているように熱が篭っている。何も考えずに、艶華に抱かれたい。
 口付けると、艶華がベッドサイドのテーブルの引き出しから避妊具を取り出した。パッケージを破いて中心に被せると、雪峻の体をシーツの上に倒す。
 脚を広げさせられて、膝を自分で固定したのは、無意識だった。雪峻の後孔に押し当てられた艶華の中心がずぶずぶと入ってくる。内壁を擦り上げられる快感に、雪峻は喉を反らせて感じ入る。反った胸に、かりりと艶華が歯を立てた。

「ひぁっ!?」

 胸の尖りを甘噛みされて、びりびりと快感が胎まで来る。突き上げながら胸を弄られて、雪峻は気持ち良さのあまり涙を零していた。

「だめぇ! うぁっ! むねと、どうじっ、ふぁぁっ!」
「雪峻くん、きつい」
「あぁっ! そんな、おく!」

 深くまで責め立てられて、最奥をゴリゴリと擦り上げられると、気持ち良さでおかしくなりそうになる。涙と洟でぐしゃぐしゃの泣き顔に、艶華はキスを降らせてくれた。
 皮膜一枚なのに、中で熱い飛沫が放たれないのが、ほんの少しだけ寂しくて、雪峻は自分が艶華に溺れて堕ちていくのを感じていた。
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