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本編
19.初夜
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大きな事件がひと段落したので、ルーカスとエルネスト、アーリンとパーシーは交代で休みを取っていいということになった。
カウンセリングの期間が終わってしまったので、エルネストはいつルーカスとの同居をやめてもおかしくはない。ルーカスとエルネストの距離が近すぎるということにパーシーも気付いているような気がしているのだ。
距離を置かれる前に、既成事実は作っておきたい。
休暇に入る前日に、ルーカスは夕食後にバスルームに入るエルネストの袖を掴んで宣言した。
「エルネストを抱きたい!」
「ルーカス……準備をしてくるから待ってて」
低くいい声で甘く囁いて、唇に軽くキスをされたルーカスはソファに座って全く落ち着けずにいた。
エルネストのシャワーはいつになく長かった。
それだけ入念に準備をしてくれているということだろう。
焦れながらそれを待っていたルーカスは、バスルームからエルネストが出てきたらソファから立ち上がってエルネストに詰め寄ってしまった。
「ルーカスもシャワーを浴びてくるといいよ」
「そ、そうだな」
促されて、すぐにでもエルネストを抱きたくて我慢できそうにないのに、肩透かしを食らって、ルーカスは下半身に血が集まって泣きそうだった。
シャワーで堪えきれず一回自分で抜いて、バスルームから出て行くと、エルネストは寝室で待っていてくれているようだ。
寝室に入れば灯りがついている。
「エルネスト、抱いてもいいか?」
「僕、抱かれる方は初めてだから、妙な反応しても気にしないでね?」
「わ、分かった」
そんな余裕は全くないルーカスだが、エルネストをベッドに優しく倒すと、エルネストは抵抗しない。
パジャマを脱がせていくのも、エルネストは協力的だった。ルーカスとエルネストは対格差があるので、どうしてもエルネストの強力なくしてはパジャマも下着も脱がせられない。
裸になったエルネストに、ルーカスもパジャマと下着を脱ぎ捨てて覆い被さると、指先で鼻先を突かれた。
「避妊具つけてね?」
「お、おう!」
実は避妊具の付け方など知らないし、つけたこともないルーカス。そんな状況になったことがこれまで一度もなかったのだ。
ローションを使ってエルネストの中を探ろうとすると、そこはもう解されていて柔らかく熱かった。
避妊具のパッケージを破ろうとした手が、ローションで滑ってなかなか破れない。下半身は爆発しそうに興奮しているのに、避妊具のパッケージに苛められているルーカスに、エルネストがその手から避妊具を取って、歯を立ててパッケージを食い破る。
「え、エルネスト」
「そんなにじらさないで」
甘く低く囁かれて、それだけで下半身が限界になりそうになって、ルーカスは避妊具を着けてエルネストを抱いた。
初めの一回はあまりにも早くて、情けなくてルーカスは泣きそうになってしまったが、エルネストが「もういっかい、いいよ」と甘く囁いてくれたので、もう一度やり直しをして、ルーカスはエルネストを抱いた。
初めてとは思えないくらいエルネストの体は熱く、ルーカスを包み込んだ。
事後にルーカスがエルネストの胸に触っていると、エルネストがくすぐったかったのか笑う。
「君、僕の胸が好きだね」
「好きだ。何か悪いか?」
「男の胸なんて触って楽しい?」
「楽しい」
答えるとエルネストはまたくすくすと笑っていた。
エルネストのおかげで悲惨な初夜にはならなかったが、抱いて無理をさせたことには変わりはない。人外は男女問わず妊娠できるとはいえ、男性の体は本来受け入れる場所ではないのだし、エルネストも快感を得られたかどうかは分からない。
不安になるが聞くのも怖かったので、ルーカスは何も聞けなかった代わりに、朝はエルネストより早く起きて朝食を作った。
エルネストのように慣れていないので、卵を焼きすぎてしまったり、ベーコンがうまくカリカリにならなかったり、トーストがキツネ色を通り越していたりしたが、エルネストは起きてきて朝食が出来上がっていることに感激してくれた。
「ルーカスが作ってくれたの? 嬉しいな。僕、自分が作ってない朝食を食べるのは久しぶりだ」
「ま、毎日でも作ってやるよ」
「本当? 無理しなくていいんだよ?」
「無理してない。あの……エルネスト、体は平気か?」
言いにくいことを聞くようなルーカスに、エルネストは笑顔で答える。
「平気だよ。ルーカスは丁寧だったし」
「本当か? 本当のことを言っていいんだぞ?」
「本当だよ。ルーカスは?」
「俺は元気だよ」
「それならよかった」
ソファに座って朝食を食べ始めるエルネストが本当に平気そうなのを見てルーカスはほっと胸を撫で下ろした。
「エルネスト、俺たちの関係を公にできないか?」
そうすればルーカスとエルネストが一緒に暮らしているのも、何も問題がなくなる。
このまま職場に隠して付き合うのではルーカスとエルネストが一緒に暮らしていたら、パーシーのように勘のいいものは気付くかもしれない。
ずっと考えていたことを口に出せば、エルネストもそれについて考えていたようだ。
「相棒を辞めさせられるかもしれないよ?」
「ジャンルカ課長なら分かってくれると思うんだ」
「僕も考えていたけれど、今のままではよくないよね」
呟くエルネストに、ルーカスはエルネストの肩を抱く。
「職場に内緒にしてたら、結婚もできないだろう?」
「結婚? 僕、プロポーズされてないけど」
「そうだった。結婚してほしい、エルネスト」
どうしてもルーカスは恋愛は初めてなので先走ってしまうところがあるようだ。プロポーズせずにエルネストと結婚することを考えていた。
「僕も結婚を前提にしたお付き合いとは思っていたけど、ルーカスはそんなに早く決めてしまっていいの? ルーカスはまだ若いし、他に出会いがあるかもしれないよ」
「俺はエルネストしか愛さない。エルネストだけが俺の恋人だ。エルネストと別れるようなことがあったら、俺は二度と誰も愛さない」
初めて愛した相手だからこそ、ルーカスはエルネストが特別だと感じる。エルネスト以外に恋愛感情を抱いたことはないし、恋愛自体がルーカスの人生には不必要なものだと思っていた。
それを覆したのはエルネストの存在だが、エルネストでなければルーカスは愛さなかっただろうし、相棒としても信頼しなかったと思う。
「僕は狼だよ? 狼の愛は重いよ?」
「狼の番は生涯添い遂げるんだろう? 望むところだ。俺はエルネストと生涯添い遂げたい。エルネスト、結婚してくれ」
指輪も何もない突然のプロポーズだったが、エルネストはそれを受け入れてくれた。
「ルーカス、僕でよければ」
「エルネストがいいんだ」
結婚の約束までしたとなると、上司への報告は必須だった。
ルーカスがやっと信頼できるようになった相棒だが、エルネストと結婚することになったら、相棒を辞めさせられる可能性もある。
ジャンルカならば大丈夫だろうと思ってはいるが、恋愛関係にある相棒同士という前例は人外課ではこれまでなかった。
「ジャンルカ課長に報告しないと」
「まずは、相棒を辞めさせられないように手を回さないといけないね」
不安になるルーカスに、エルネストは何か考えているようだった。
休み明けに出勤したときに、エルネストはジャンルカに報告する前に、アーリンとパーシーに相談していた。
「実はルーカスと恋愛関係にあって、結婚しようって話をしているんだ」
「二人は内緒の恋人だったの!?」
「そうだと思った」
「ルーカスは最近心を入れ替えたけれど、やっぱり相棒は僕しか務まらないと思うし、諮問会議が行われることになったら、そこで証言してほしい」
「ルーカスも態度を改めたことだし、エルネストがいないとダメなのは分かってるし、仕方ないわ、協力しましょう」
「仕方ないね。ルーカスにまた新しい相棒を探すのは難しいだろう」
根回しをした上でエルネストはジャンルカに報告に行くつもりだったようだ。
ジャンルカのデスクに行くと、ルーカスが報告する。
「エルネストと結婚しようと思っています。エルネストとは現在、恋愛関係にあります」
「そうだと思った」
「え!?」
そんなにバレバレだったかと驚くルーカスに、エルネストが苦笑している。
「気付いていて目を瞑っていてくださったんですね」
「ルーカスの相棒はエルネストしかいないと思っていたからな。でも正式に報告されたのだったら、二人のことを真剣に考えないといけないな」
「ルーカスの相棒は僕しか務められないと思っています」
「エルネストと離れる選択肢はないです。エルネストと相棒のままでいさせてください」
頭を下げるエルネストとルーカスに、ジャンルカはため息をついている。
「エルネストが聞てルーカスはいい方向に変わった。それは確かだ。カウンセリングも受けて、自分を顧みようという行動も出てきた。相棒を置いていくようなこともなくなった。怪我もなくなった。これを考えると、エルネストがルーカスに及ぼした影響は限りないだろう」
「それならば、なおさら、相棒を解消させないでください」
「私情を交えず仕事をします」
「私情を交えても構わない。というか、相棒がお互いを大事に思うのは当然のことだ。度の相棒同士もある程度は私情を交えている。恋愛関係にあるということは、それだけお互いを大事にできるということだとも思っている。結婚ということが二人にとって仕事上でもいい方向に向かうことを願っている」
諮問会議は開かれるが、ジャンルカはルーカスとエルネストの相棒関係が解消されないように努力してくれると約束してくれた。
ジャンルカのデスクから離れて、エルネストがルーカスに言う。
「次の休みには、僕の家族に君を会わせたい」
「失礼がないように気を付ける」
「僕の家族だよ? ルーカスなら大丈夫」
エルネストの家族に受け入れられるか分からないし、家族というものがどのようなものか理解できていないルーカスだが、家族に紹介されるとなれば、結婚をやはり考えてしまう。
「そういえば、告白した日にも家族に会わせてくれるって言わなかったか?」
「言ったよ。僕はお付き合いしている相手は基本的に家族に紹介してるからね」
「それで、俺はエルネストは結婚を意識しているんだと勝手に思ってた」
「結婚とは違うけど、自分の恋人を家族に紹介するのは普通じゃないの?」
「俺は家族とかいないからよく分からなかったんだよ」
ルーカスの言葉にエルネストが笑って頷く。
狼は群れの結束が固いというが、エルネストも独特な家族観を持っていることに、家族というものを知らないルーカスは気付いていなかった。
カウンセリングの期間が終わってしまったので、エルネストはいつルーカスとの同居をやめてもおかしくはない。ルーカスとエルネストの距離が近すぎるということにパーシーも気付いているような気がしているのだ。
距離を置かれる前に、既成事実は作っておきたい。
休暇に入る前日に、ルーカスは夕食後にバスルームに入るエルネストの袖を掴んで宣言した。
「エルネストを抱きたい!」
「ルーカス……準備をしてくるから待ってて」
低くいい声で甘く囁いて、唇に軽くキスをされたルーカスはソファに座って全く落ち着けずにいた。
エルネストのシャワーはいつになく長かった。
それだけ入念に準備をしてくれているということだろう。
焦れながらそれを待っていたルーカスは、バスルームからエルネストが出てきたらソファから立ち上がってエルネストに詰め寄ってしまった。
「ルーカスもシャワーを浴びてくるといいよ」
「そ、そうだな」
促されて、すぐにでもエルネストを抱きたくて我慢できそうにないのに、肩透かしを食らって、ルーカスは下半身に血が集まって泣きそうだった。
シャワーで堪えきれず一回自分で抜いて、バスルームから出て行くと、エルネストは寝室で待っていてくれているようだ。
寝室に入れば灯りがついている。
「エルネスト、抱いてもいいか?」
「僕、抱かれる方は初めてだから、妙な反応しても気にしないでね?」
「わ、分かった」
そんな余裕は全くないルーカスだが、エルネストをベッドに優しく倒すと、エルネストは抵抗しない。
パジャマを脱がせていくのも、エルネストは協力的だった。ルーカスとエルネストは対格差があるので、どうしてもエルネストの強力なくしてはパジャマも下着も脱がせられない。
裸になったエルネストに、ルーカスもパジャマと下着を脱ぎ捨てて覆い被さると、指先で鼻先を突かれた。
「避妊具つけてね?」
「お、おう!」
実は避妊具の付け方など知らないし、つけたこともないルーカス。そんな状況になったことがこれまで一度もなかったのだ。
ローションを使ってエルネストの中を探ろうとすると、そこはもう解されていて柔らかく熱かった。
避妊具のパッケージを破ろうとした手が、ローションで滑ってなかなか破れない。下半身は爆発しそうに興奮しているのに、避妊具のパッケージに苛められているルーカスに、エルネストがその手から避妊具を取って、歯を立ててパッケージを食い破る。
「え、エルネスト」
「そんなにじらさないで」
甘く低く囁かれて、それだけで下半身が限界になりそうになって、ルーカスは避妊具を着けてエルネストを抱いた。
初めの一回はあまりにも早くて、情けなくてルーカスは泣きそうになってしまったが、エルネストが「もういっかい、いいよ」と甘く囁いてくれたので、もう一度やり直しをして、ルーカスはエルネストを抱いた。
初めてとは思えないくらいエルネストの体は熱く、ルーカスを包み込んだ。
事後にルーカスがエルネストの胸に触っていると、エルネストがくすぐったかったのか笑う。
「君、僕の胸が好きだね」
「好きだ。何か悪いか?」
「男の胸なんて触って楽しい?」
「楽しい」
答えるとエルネストはまたくすくすと笑っていた。
エルネストのおかげで悲惨な初夜にはならなかったが、抱いて無理をさせたことには変わりはない。人外は男女問わず妊娠できるとはいえ、男性の体は本来受け入れる場所ではないのだし、エルネストも快感を得られたかどうかは分からない。
不安になるが聞くのも怖かったので、ルーカスは何も聞けなかった代わりに、朝はエルネストより早く起きて朝食を作った。
エルネストのように慣れていないので、卵を焼きすぎてしまったり、ベーコンがうまくカリカリにならなかったり、トーストがキツネ色を通り越していたりしたが、エルネストは起きてきて朝食が出来上がっていることに感激してくれた。
「ルーカスが作ってくれたの? 嬉しいな。僕、自分が作ってない朝食を食べるのは久しぶりだ」
「ま、毎日でも作ってやるよ」
「本当? 無理しなくていいんだよ?」
「無理してない。あの……エルネスト、体は平気か?」
言いにくいことを聞くようなルーカスに、エルネストは笑顔で答える。
「平気だよ。ルーカスは丁寧だったし」
「本当か? 本当のことを言っていいんだぞ?」
「本当だよ。ルーカスは?」
「俺は元気だよ」
「それならよかった」
ソファに座って朝食を食べ始めるエルネストが本当に平気そうなのを見てルーカスはほっと胸を撫で下ろした。
「エルネスト、俺たちの関係を公にできないか?」
そうすればルーカスとエルネストが一緒に暮らしているのも、何も問題がなくなる。
このまま職場に隠して付き合うのではルーカスとエルネストが一緒に暮らしていたら、パーシーのように勘のいいものは気付くかもしれない。
ずっと考えていたことを口に出せば、エルネストもそれについて考えていたようだ。
「相棒を辞めさせられるかもしれないよ?」
「ジャンルカ課長なら分かってくれると思うんだ」
「僕も考えていたけれど、今のままではよくないよね」
呟くエルネストに、ルーカスはエルネストの肩を抱く。
「職場に内緒にしてたら、結婚もできないだろう?」
「結婚? 僕、プロポーズされてないけど」
「そうだった。結婚してほしい、エルネスト」
どうしてもルーカスは恋愛は初めてなので先走ってしまうところがあるようだ。プロポーズせずにエルネストと結婚することを考えていた。
「僕も結婚を前提にしたお付き合いとは思っていたけど、ルーカスはそんなに早く決めてしまっていいの? ルーカスはまだ若いし、他に出会いがあるかもしれないよ」
「俺はエルネストしか愛さない。エルネストだけが俺の恋人だ。エルネストと別れるようなことがあったら、俺は二度と誰も愛さない」
初めて愛した相手だからこそ、ルーカスはエルネストが特別だと感じる。エルネスト以外に恋愛感情を抱いたことはないし、恋愛自体がルーカスの人生には不必要なものだと思っていた。
それを覆したのはエルネストの存在だが、エルネストでなければルーカスは愛さなかっただろうし、相棒としても信頼しなかったと思う。
「僕は狼だよ? 狼の愛は重いよ?」
「狼の番は生涯添い遂げるんだろう? 望むところだ。俺はエルネストと生涯添い遂げたい。エルネスト、結婚してくれ」
指輪も何もない突然のプロポーズだったが、エルネストはそれを受け入れてくれた。
「ルーカス、僕でよければ」
「エルネストがいいんだ」
結婚の約束までしたとなると、上司への報告は必須だった。
ルーカスがやっと信頼できるようになった相棒だが、エルネストと結婚することになったら、相棒を辞めさせられる可能性もある。
ジャンルカならば大丈夫だろうと思ってはいるが、恋愛関係にある相棒同士という前例は人外課ではこれまでなかった。
「ジャンルカ課長に報告しないと」
「まずは、相棒を辞めさせられないように手を回さないといけないね」
不安になるルーカスに、エルネストは何か考えているようだった。
休み明けに出勤したときに、エルネストはジャンルカに報告する前に、アーリンとパーシーに相談していた。
「実はルーカスと恋愛関係にあって、結婚しようって話をしているんだ」
「二人は内緒の恋人だったの!?」
「そうだと思った」
「ルーカスは最近心を入れ替えたけれど、やっぱり相棒は僕しか務まらないと思うし、諮問会議が行われることになったら、そこで証言してほしい」
「ルーカスも態度を改めたことだし、エルネストがいないとダメなのは分かってるし、仕方ないわ、協力しましょう」
「仕方ないね。ルーカスにまた新しい相棒を探すのは難しいだろう」
根回しをした上でエルネストはジャンルカに報告に行くつもりだったようだ。
ジャンルカのデスクに行くと、ルーカスが報告する。
「エルネストと結婚しようと思っています。エルネストとは現在、恋愛関係にあります」
「そうだと思った」
「え!?」
そんなにバレバレだったかと驚くルーカスに、エルネストが苦笑している。
「気付いていて目を瞑っていてくださったんですね」
「ルーカスの相棒はエルネストしかいないと思っていたからな。でも正式に報告されたのだったら、二人のことを真剣に考えないといけないな」
「ルーカスの相棒は僕しか務められないと思っています」
「エルネストと離れる選択肢はないです。エルネストと相棒のままでいさせてください」
頭を下げるエルネストとルーカスに、ジャンルカはため息をついている。
「エルネストが聞てルーカスはいい方向に変わった。それは確かだ。カウンセリングも受けて、自分を顧みようという行動も出てきた。相棒を置いていくようなこともなくなった。怪我もなくなった。これを考えると、エルネストがルーカスに及ぼした影響は限りないだろう」
「それならば、なおさら、相棒を解消させないでください」
「私情を交えず仕事をします」
「私情を交えても構わない。というか、相棒がお互いを大事に思うのは当然のことだ。度の相棒同士もある程度は私情を交えている。恋愛関係にあるということは、それだけお互いを大事にできるということだとも思っている。結婚ということが二人にとって仕事上でもいい方向に向かうことを願っている」
諮問会議は開かれるが、ジャンルカはルーカスとエルネストの相棒関係が解消されないように努力してくれると約束してくれた。
ジャンルカのデスクから離れて、エルネストがルーカスに言う。
「次の休みには、僕の家族に君を会わせたい」
「失礼がないように気を付ける」
「僕の家族だよ? ルーカスなら大丈夫」
エルネストの家族に受け入れられるか分からないし、家族というものがどのようなものか理解できていないルーカスだが、家族に紹介されるとなれば、結婚をやはり考えてしまう。
「そういえば、告白した日にも家族に会わせてくれるって言わなかったか?」
「言ったよ。僕はお付き合いしている相手は基本的に家族に紹介してるからね」
「それで、俺はエルネストは結婚を意識しているんだと勝手に思ってた」
「結婚とは違うけど、自分の恋人を家族に紹介するのは普通じゃないの?」
「俺は家族とかいないからよく分からなかったんだよ」
ルーカスの言葉にエルネストが笑って頷く。
狼は群れの結束が固いというが、エルネストも独特な家族観を持っていることに、家族というものを知らないルーカスは気付いていなかった。
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