愛の言葉に傾く天秤

秋月真鳥

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後日談

ユストゥスとライナルトの秘密の夜

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 ユストゥスにとって人生において一番大事な人物は兄のエリーアスだった。兄弟なので結婚や恋愛に発展することはないと理解していたが、エリーアスにとっての最高の理解者でありたいし、エリーアスが可愛がる弟はこの世で自分一人でありたい。
 ユストゥスはエリーアス第一主義だから、ライナルトと結婚を決めたのもライナルトがエリーアスのことを本当に尊敬していて、エリーアスとの関係がいいと分かっていたという要素がなかったわけではない。ギルベルトとエリーアスとの結婚を認めた理由もエリーアスがそれを求めていたからに違いない。
 ユストゥスにとってはエリーアスは兄であり、聖母のような、慈母のような存在だった。
 他人に触れることを嫌がって距離を置きたがるエリーアスがあんなに優しいことを知っているのはユストゥスだけだった。今はギルベルトもライナルトもエリーゼもエリーアス・ジュニアもいるが、変わらずエリーアスは誰に対しても公平で慈悲深かった。
 大事な兄に関してギルベルトが相談したいと言って来たときに、ユストゥスは応じるしかなかった。それ以外の選択肢などない。ギルベルトの悩みを解決することは、エリーアスを幸せにすることに繋がっているのだ。

「エリさんと、しばらくまともに抱き合ってないんだ」
「セックスレスなのかい?」
「エリーゼと同じ部屋で寝ているから。エリーゼと寝られるのはとても嬉しいんだ。できれば一人部屋を持ってほしくなかったけど、エリーゼも自分の部屋が欲しいお年頃で、自分の部屋で眠るようになってしまった」

 エリーアスと抱き合えていない話から、エリーゼの話に変わってしまったがユストゥスは穏やかに聞いている。ギルベルトは話したいことを話していけばいい。それが悩みの解決になるのならば、ユストゥスは少しも時間を無駄にしたとは思わない。

「エリさん、二人目の子どもが欲しいから疑似子宮をまた埋め込んだんだ。それで、疑似子宮を埋め込んだら、来るだろう?」
「発情状態か」
「それ! そのときに、エリさんと久しぶりに抱き合うから、特別なことをしたいんだ」

 エリーゼの妊娠中からエリーアスとギルベルトがほとんど抱き合っていないとすれば、四年近くぶりの行為となるはずだ。その間お互いに触れて抜き合ったりしたのかもしれないが、その辺は兄のプライベートなのでユストゥスは追及しないことにする。

「こういうのは、どうかな?」

 ユストゥスが提案したのは、女性用のセクシーな下着の男性サイズが売っている店の案内だった。タブレット端末で示すと、ギルベルトの目がじっと一点を見詰めている。
 青い花の花びらが胸を覆うようになっているブラジャーが気になっているようだ。

「これなんか、兄さんの目の色に合いそうだよね?」
「すごく似合うと思う。でも、エリさんはこういうの着るの嫌がらないかな?」

 不安そうなギルベルトにユストゥスは微笑んで見せる。

「ギルベルトも着たらいいよ」
「え? 俺が!?」
「ギルベルトが着て、『俺も着たからエリーアスも着てくれ』って言ったら、きっと兄さんは拒めない」

 エリーアスがどれだけギルベルトに甘いかを知っているからユストゥスはその作戦がうまくいくことを確信していた。それに、ギルベルトが女性もののセクシーな下着を着るだなんて、ちょっと面白いではないか。
 愉快犯のユストゥスはギルベルトに吹き込んだだけでなく、自分の分とライナルトの分も下着を注文した。

「兄さんは潔癖症なところがあるから、使う前に下着は一度洗っておいた方がいいよ」
「そうだな。エリさんは綺麗好きだもんな」

 他人に触れられることを嫌がるエリーアスは、誰が触れたか分からない下着を身に着けることを嫌がるかもしれない。それを見越してアドバイスをすると、ギルベルトはしっかりとそれを心得て頷いて帰って行った。
 ギルベルトがエリーアスのために注文したのは青い花の下着。ギルベルトの分は黄緑の花の下着だった。ユストゥスは自分のために水色の下着を注文して、ライナルトのためにはピンクの下着を注文する。ピンク色の下着は色素の薄いライナルトによく似合うだろう。
 エリーアス・ジュニアを保育園から連れて帰って来たライナルトとハグをしながら、ユストゥスは注文の品が到着するのを楽しみにしていた。
 注文の品は二日後に届いた。一度洗濯して乾かしてから、エリーアス・ジュニアを保育園に送りに行こうとするライナルトをユストゥスが引き留める。
 エリーアス・ジュニアにはパズルをしていてもらって、その間にユストゥスはライナルトを部屋に招いて、服を脱いでいた。
 水色のブラジャーと後ろが紐になっている際どいショーツを身に着けたユストゥスの姿に、ライナルトが真っ赤になって困惑しているのが分かる。

「今日一日、僕はこれを着て仕事をする。帰ったら、分かるね、ライナルト?」
「ゆ、ユストゥス……」
「たくさん可愛がってあげる」

 頬を撫でてキスをするとライナルトの手が恐る恐るユストゥスのショーツの膨らみに触れた。布地の小さなそこからは、ユストゥスの中心がはみ出そうになっている。

「いけないひとだ。帰ってからって言ってるのに」

 くすりと笑って、ユストゥスは服を着直して、パズルをして待っていてくれたエリーアス・ジュニアのところに行った。

「だいじだいじ、おわった?」
「終わったよ、待たせたね、ジュニア。さぁ、行こうか」
「パパ、ママ、いっと」
「三人で行こうね」

 保育園までエリーアス・ジュニアを送ってから、ユストゥスとライナルトが一緒に向かう先は同じ場所。同じ研究所で働いているのだから当然だ。ライナルトはユストゥスの部下で助手なのだから、ユストゥスの研究室に入ってきて報告することもある。研究室に入って来たライナルトが、明らかに目元を赤く染めて、ユストゥスと視線が合わないのが可愛い。
 今日一日ユストゥスの下着姿を見せたことで、ライナルトはユストゥスを意識してしまっているのだ。
 仕事を終えて定時に研究所を出て、エリーアス・ジュニアを迎えに行く。庭で泥んこになって遊んでいたエリーアス・ジュニアは、保育園でシャワーを浴びさせてもらって、着替えて家に連れ帰った。
 シャワーは浴びているので、晩ご飯を食べさせていると、エリーアス・ジュニアが眠りそうになっている。

「今日はいっぱい遊んだのかな」
「パパ、えりーでたんと、おいかけっこ、ちた」
「エリーゼのクラスと一緒に遊んだのか」
「えりーでたんに、ちゅかまえられた。たのちかった」

 幸せそうに言うエリーアス・ジュニアは半年ほど先に生まれたエリーゼを姉のように慕っている。学年が一つ上のエリーゼのクラスと遊んではしゃいでいたのだろう、食べ終わって歯磨きをすると、エリーアス・ジュニアはぐっすりと眠ってしまった。
 エリーアス・ジュニアの部屋のベビーモニターの電源を入れて、泣いたら分かるようにして、ユストゥスがエリーアス・ジュニアを寝かせている間に、ライナルトはシャワーを浴びているようだ。脱衣所に入ってパジャマを隠してしまって、ライナルトのために買った下着と取り換える。
 その後でエリーアスはライナルトの入っているバスルームに服と下着を脱いで入って行った。エリーアス・ジュニアが生まれてからは、どちらかがお風呂に入れないといけないのでシャワーを一緒に浴びることもほとんどなかった。
 身体を擦り付けると、ライナルトは腰を揺らして期待しているような動きをする。まだ与える気はなかったので、手早くシャワーを浴びて脱衣所に出ると、ライナルトがピンク色の花の下着を持って立ち尽くしていた。

「こ、これは、どういうことだ!?」
「ライナルト、着てくれるよね?」
「お、俺がこんなもの、似合うとでも……」
「似合うよ。着てよ、お願い」

 甘く囁くとライナルトは僅かに躊躇った後に下着を身に着けてくれた。ユストゥスも下着を着てバスローブを羽織って寝室に行く。寝室でバスローブを脱ぐと、ユストゥスはライナルトの身体をベッドにうつぶせに押し倒しながら、その肉の薄い尻を揉みしだいた。

「あっ! あぁっ! ユストゥスっ!」
「しばらくご無沙汰だったよね。寂しかったんじゃないかな?」

 ぐにぐにと後孔を揉むようにして刺激すると、そこがぱくぱくと開いて指を飲み込もうとして来る。ローションを直接ショーツの上からライナルトの尻に垂らすと、冷たさにライナルトが息を飲んだ。

「ひっ! ひぁっ!」
「ここ、物欲しそうにしてるよ?」
「あっ!? あぁっ!」

 指を差し込んでライナルトの弱みを指で押せば、ライナルトの体がびくびくと跳ねる。ショーツの前に触れると、ぐっしょりと濡れているのが分かった。

「もう出ちゃったんだ」
「だ、だって……」
「昔は女のひとを泣かせてたライナルトが、今は僕に泣かされてるなんて、どんな気分?」
「ユストゥス、意地悪、しないでぇ!」

 欲しいと後ろの紐をずらして後孔を露わにするライナルトに、ユストゥスはくすくすと笑いながら後ろに差し込む指を増やしていく。しっかりと解れたことを確認して切っ先を後孔に宛がう頃には、ライナルトはまた前で達していたようだった。
 ぐっと奥まで中心を押し込むと、ライナルトの背が反る。

「あぁぁぁぁっ!?」
「イったの?」
「あっ! あぁっ! イってる、イってるからぁ!」
「僕はまだなんだよね」

 奥まで貫かれただけで中で達したライナルトの内壁が蠢くのも、ユストゥスを煽る結果にしかならない。後ろから覆いかぶさるようにしてユストゥスは腰を動かしながらライナルトのブラジャーの隙間に手を滑り込ませる。乳首を引っ張ると、中が強く締まる。

「可愛い。気持ちいいよ、ライナルト」
「あっ! ひぁっ! あぁんっ!」

 もう短く喘ぐことしかできないライナルトを、ユストゥスは心置きなく貪ったのだった。
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