愛の言葉に傾く天秤

秋月真鳥

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後日談

エリーアスとギルベルトの秘密の夜

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 数日前からギルベルトの様子がおかしかったのにエリーアスは気付いていた。エリーゼも3歳になって自分の部屋で眠るようになった。元々この国では赤ん坊と親が同じ部屋で寝る習慣がない。それをベビーベッドに寝かせて一緒の部屋で寝ていたのは、ギルベルトの我が儘だった。

「こんな可愛いエリーゼと別々の部屋で眠るなんて寂しいよ」

 ベビーベッドを片付ける月齢になったらエリーアスとギルベルトの間にエリーゼを寝かせていたが、流石に3歳にもなるとエリーゼも自分の部屋を欲しがる。

「わたち、じぶんのおへやで、ねんねつる」
「俺たちと同じ部屋じゃダメなのか?」
「ほいくえんのおともだち、みんな、ひとりで、ねんね!」
「他人は他人、自分は自分だぞ、エリーゼ」
「わたち、おへやほちい!」

 ギルベルトの方が寂しがっていたのだが、エリーゼの決意は固かった。仕方なくギルベルトは諦めてエリーゼのために可愛く飾られた部屋を用意しようとした。それもエリーゼにきっぱりと断られるのだが。
 レースやお人形やぬいぐるみで飾られた部屋にしようとエリーゼに相談しているギルベルトは、きっぱり断られている。

「わたち、ほちいのは、もじのひょう、せいざのかかれたぬの」

 文字の表を壁に貼って、星座の書かれた布をベッドの上に貼って、エリーゼは部屋を飾りたいと言っている。

「げんそきごうもほちいの」
「エリーゼは勉強家ですね」
「ママとユストゥスおじたまみたいになりたいの」

 何もかもを拒否されてしまってしょんぼりとしていたギルベルトをエリーアスは抱き締めて慰める。エリーゼも小さな手を伸ばして撫でて慰めていた。
 エリーゼの部屋ができてから、エリーアスはギルベルトとエリーゼを伴って産科の病院に行っていた。前に埋め込んだ疑似子宮はエリーゼを産んだときにエリーゼと共に摘出されている。新しく子ども望むのならば、もう一回疑似子宮を作るところから始めなければいけない。

「エリーゼ、弟か妹が生まれます。いいですか?」
「うれちい!」
「ギルベルト、高齢出産になるので少し心配ですが支えてくれますか?」
「精一杯支えるよ、エリさん」

 エリーゼとギルベルトと相談して、エリーアスは再び疑似子宮を体内で育てることにした。その疑似子宮が育ちきる頃にギルベルトは明らかにそわそわとし出したのだ。
 疑似子宮が育つと一時的に発情状態になって、ギルベルトのことを激しく求めてしまうことは分かっている。発情状態になるのを期待しているのかと思えば、そうではなかったようだ。
 お休みのキスをしてエリーゼを部屋に連れて行ったギルベルトは戻ってくると、潔く服を脱いだ。普段ならばボクサーパンツをはいているギルベルトが、なぜか女性もののブラジャーと後ろが紐になっているような際どいショーツをつけている。
 どういうことかと視線で問いかければ、ギルベルトが床の上に膝を突いた。

「エリさん、いや、エリーアス、お願いだ、これと同じ下着を着てくれ」
「は?」

 問い返してしまったエリーアスにギルベルトはどこまでも真剣である。

「恥ずかしいのは分かっている。俺も着たんだから、エリーアスも着てくれ」
「意味が分からないのですが」
「頼む! お願いします! エリーアスの下着姿が見たいんです」

 床に額を擦り付けるようにしてお願いするギルベルトに、エリーアスは困惑しかない。どうしてギルベルトが着たからエリーアスも着なければいけないのか意味が分からないし、そんなものを厳ついエリーアスが来ても気持ち悪いだけだ。

「俺が着たら、エリーアスも着てくれるんじゃないかってユストゥスも言ってたんだ……」
「はぁ!? あなた、ユストゥスに相談したんですか?」
「う、うん。下着も一緒に選んだ」

 自分の弟であるユストゥスにギルベルトが相談していて、下着も一緒に選んだという事実にエリーアスは頭痛がしてくる。弟に自分たちの性事情を知られたのもショックだが、嬉々としてエリーアスの下着を選んだ姿が想像できるだけに、恥ずかしくて顔が会わせられないような気になって来る。

「俺が着たら着てくれるってユストゥスは言ったのに……俺が着ても、エリーアスは着てくれない……エリーアスの下着姿を見たかったのに……」

 ぐすぐすと涙目になるギルベルトを見ていると、エリーアスの胎がきゅんと疼くような気がした。こんなにも情けなく、この国の大英雄がエリーアスを求めている。
 はぁっと吐く息が熱い。疑似子宮の準備ができて受胎が可能になっているのをエリーアスは感じていた。

「仕方がないですね。着るから、待っていてください」

 するりとパジャマを脱いだところで、ギルベルトが手を伸ばそうとして来る。それを制して、エリーアスは見せつけるように脱いでいく。下着も脱ぎ捨てて裸になると、白銀の義手と義足が目立っているのが分かる。下着の入った箱を受け取って、エリーアスは違和感を覚えていた。

「これ……一度使いました?」
「ち、違う! 買ったばかりの下着をエリーアスに着せるのは気になるかもしれないと思ったから、洗ったんだ」

 一度下着を洗っておくという万全の状態でギルベルトは準備していたようだ。後ろが紐のようになった布地の少ないショーツを穿いて、青い花の刺繍の入ったブラジャーを身に着ける。
 ベッドの上に上がる前に義手と義足を外すと、ギルベルトが充電する台に設置してくれた。左腕と左脚の膝から先がない状態でベッドに座っていると、ギルベルトがエリーアスを押し倒そうとして来る。それを避けて、エリーアスはギルベルトの腰に跨った。ギルベルトの着ている布地の少ないショーツからは、ギルベルトの立派なものがはみ出そうになっている。既に雫を零していて、ショーツが濡れて生地の色が濃くなっているのが分かった。
 片腕と左脚の肘から先がないが、エリーアスはエリーゼを産んでから筋トレをしてバランスも上手に取れるようになった。
 ギルベルトの手にローションを垂らして、エリーアスは後ろの紐をずらして後孔を晒して、ギルベルトに解してもらう。荒い息で唾を飲み込みつつエリーアスの後ろに指を入れて解したギルベルトの頬を右手で撫でて、キスをしてから、エリーアスはギルベルトの下着をずらして、下着をつけたままでギルベルトの中心を飲み込んでいく。

「あぁっ! エリーアスの中、熱い……気持ちいい!」
「まだ余裕ですね? その余裕がなくなるまで搾り取ってあげないと」
「え……う、嬉しい、けど、あっ!」

 ゆっくりと腰を動かしだすとギルベルトが甘い声を上げる。ぐちゅぐちゅと濡れた音をさせながらエリーアスはギルベルトを締め付けて追い詰めていく。

「エリーアス、出るっ! 出るぅっ!」
「たっぷり出してくださいね」

 きゅうっと中を締め付けると熱い飛沫がエリーアスの胎内を濡らす気配がした。まだまだ足りない。もっと強い刺激をエリーアスは求めている。
 立て続けに腰を動かしだすと、ギルベルトが泣き声になる。

「あっ! ひぁっ! イったばかり……あぁ!?」
「もっともっと出してください」

 私が孕むまで。
 誘ったのはギルベルトの方なのだから、エリーアスを満足させてくれなくては困る。腰を動かしていると、ギルベルトが焦れたように涙声で言う。

「エリーアス、おっぱい! おっぱい、ちょーだい!」
「どうしましょうね? ここ、隠れてしまっているんですが」
「やぁっ! エリーアスのおっぱい!」

 ブラジャーで隠れている胸をギルベルトの顔に押し付けると、自分で着て欲しいと言ったくせに、涙を散らして首を振っている。ブラジャーをずらして乳首が見えるようにすると、ギルベルトが無心でちゅうちゅうと吸っている。
 エリーアスは男性で母乳が出たことはないのでエリーゼにも授乳したことはないが、授乳することがあればこんな感じなのかと考えてしまう。
 この下着といい、胸を吸いたがることといい、ギルベルトはどういう性癖になってしまったのだろう。
 どんなギルベルトであろうとも受け入れるつもりではあったが、エリーアスは若干ギルベルトの育て方を間違ってしまったのではないかと考えなくもなかった。
 自分を大事にできなかったギルベルトを育て直してここまで修正したのはエリーアス自身だという自負がある。

「ギルベルト、私を孕ませてください」

 腰を振り立てると、また快楽に泣くギルベルトが可愛くて、エリーアスはギルベルトを存分に搾り取った。
 八か月後、エリーゼに弟が生まれる。
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