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前編
7.調整技師に迫られて
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義肢の調整技師、デニス・カペルと昼食のときに隣りの席になったのは、偶然だった。病院棟と軍の基地では食堂が違う場所にある。病院棟に勤務する医師はエリーアスだけで、看護師が数名と、技師の調整技師のデニス・カペルくらいしか人員はいない。ぎりぎりの人数でやりくりしている病院棟から医師が逃げ出したというのは、大変なことだっただろう。
「今回の先生は長く続いてるんだね」
「前回までの医師は兵士に襲われていたようですからね」
「あ、先生のところにも来たんだ。それで、あいつ掴まっちゃったのか」
軽い口調で話しているが、その内容は決して軽いものではない。デニスが前の医師が襲われていたのを知っていたということになるからだ。
「前の先生は繊細だったからね。気持ちいいことだけ享受して、適当にあしらっておけばよかったのに」
「あなたはそれを知りながら、黙っていたのですか?」
「まぁ、そうかな。僕の言うことは何でも聞いてくれたし、楽だったからね」
明るく笑うデニスに嫌なものを感じて、エリーアスが席を立とうとすると、デニスが腕を掴んでくる。布越しだが体温が伝わって来てエリーアスは吐き気を覚えていた。
「ハインツェ先生は魅力的だよね。アードラー隊長が溺れるのも分かる」
「何を言っているんですか?」
「僕ともイイコトしようよ? 大丈夫、アードラー隊長とは別の日にしてあげるよ」
上目遣いで可愛い顔立ちを強調するように言うデニスに、エリーアスは吐き気しか覚えなかった。腕を振り払って逃げようとすると、デニスは手を伸ばしてエリーアスの頬に触れてこようとする。壁際に追い詰められてキスをされそうになった瞬間、べりっと勢いよくデニスがエリーアスから剥がされた。
「必死に確保した医師を辞めさせるようなことはするな。さっさと離れろ」
冷たい口調でギルベルトがデニスを引き剥がす様子に、夜に二人きりになったときの幼子のような縋る気配がなくて、エリーアスは昼間のギルベルトの様子に妙な違和感を覚えていた。
エリーアスに縋り付いて、抱いて、話を聞いてもらって、嬉しそうにしているギルベルト。ギルベルトの部屋に行くようになってから、事後にはシーツを替えて、エリーアスがシャワーを浴びるのを手伝うようにまでなっているギルベルトは、甲斐甲斐しいイメージしかない。
冷徹な表情をデニスに向けるのが、エリーアスには新鮮ですらあった。
「アードラー隊長って、結構ヤキモチ焼きなんですね」
「黙ってさっさと失せろ」
軽口を叩くデニスを追い払ったギルベルトの表情が暗く、エリーアスは自分が壁とギルベルトとの間に挟まれていることに気付いた。デニスに追い詰められるのは嫌だったのに、ギルベルトだと不快感はない。
「誰にでもメンタルケアを行っているのか?」
燃えるような目で問いかけられて、エリーアスはギルベルトの言う意味が理解できていた。
「誰にでもではないです」
「俺以外にも抱かれてるのか?」
否定したのにしつこく聞くギルベルトに、エリーアスは戸惑いを覚える。
「私は他人に触れられるのが苦手なのですよ」
「俺のときには自分で積極的に……」
「やめましょう。誰が聞いているか分かりません」
病院棟の食堂という場所でエリーアスはギルベルトと言い争いをしたくなかった。ギルベルトの言葉を遮ると、ギルベルトはぐっと奥歯を噛み締めたようだった。
「今夜、俺の部屋で」
「分かりました」
話の続きはギルベルトの部屋ですると約束して、エリーアスはようやく解放された。デニスに迫られていたのを助けてくれたのはありがたかったが、エリーアスにはギルベルトが怒っている理由がよく分からない。
話を聞く程度のメンタルケアならば、他の相手でも必要と判断すればするのだが、それ以上となるとギルベルト以外とすることをエリーアスは想像できなかった。自分が何故ギルベルトに抱かれたのかも分からないままに関係を続けているが、ギルベルトはエリーアスを独り占めしたいようなことを言う。
他人に抱かれた相手は抱けないという潔癖なのかもしれないとエリーアスは自分の体質のことも考えて、ギルベルトのことをそう判断した。
勤務が終わって翌日の制服を持ってギルベルトの部屋に行くエリーアス。抱かれる日には抱き潰されるので、エリーアスはギルベルトの部屋から出勤しなければいけなかった。それをデニスに見られていたのだろう。
デニスだけでなく、他にも見た者はいるのかもしれない。エリーアスとギルベルトの関係は、特に隠すつもりもなかったが、公になっているのかもしれない。
ドアをノックするとギルベルトが素早くドアを開けてエリーアスを部屋の中に入れた。ソファに座ると、ローテーブルの上にお茶の缶とティーポットとマグカップが置かれている。
「エリーアスが欲しがっていたようだから、用意した」
「お茶を淹れますか? 飲みながら話しましょう」
簡易キッチンでお湯を沸かしてお茶を淹れるエリーアスを、ギルベルトはずっと見詰めていた。お茶の入ったマグカップを渡されると、両手で包み込むようにして持つ。
「俺にお茶を淹れてくれたのは、エリーアスが初めてかもしれない」
「アードラー家でどれだけでも淹れてもらっていたでしょう?」
「覚えてない……。何を食べたかも、何をしたかも、ほとんど覚えてない。兄と弟があの家の中心だった」
自己主張の強い兄と弟を持って、二人が迷子になれば「待っていろ」と置いていかれて、おやつを欲しがる兄と弟に半分ずつあげて自分の分はもらわなかったギルベルト。兄弟から話を聞いているだけに、ギルベルトがアードラー家でどれだけ孤独で、自分というものを持っていなかったのかをエリーアスは実感させられる。
「エリーアスは違うと思った。俺の話を聞いてくれて、俺だけに抱かれている」
「話しは必要な相手がいれば聞きますが、抱かれるのはあなただけですね」
「本当に?」
エメラルドのような目が不安に揺らぐのをエリーアスはただ見つめていた。
「俺のいないところで、俺以外の相手に抱かれてるかもしれないと思ったら、脳髄が焼けるかと思った。エリーアスは俺が手に入れた、初めての相手なのに」
「手に入れた? 私はあなたのものではありませんよ?」
エリーアスはエリーアスのもので、誰の所有物でもない。それを主張しようとする前に、ギルベルトがエリーアスの腕を強く引く。長ソファの上に押し倒されて、エリーアスは身を捩って逃れようとした。
「これだけ頻繁にあなたに抱かれているのに、他の相手まで受け入れていたら、私は生活ができませんよ」
「エリーアス、俺を受け入れて」
「ここでは嫌です! ソファは狭すぎるし、ローションは手元にないし、避妊具もない。シャワーも浴びていません!」
きっぱりと断るとのしかかって来ていたギルベルトが、悲し気な顔でエリーアスの上から降りる。
「ベッドならいいか?」
「まずシャワーを浴びてから」
「分かった」
焦らすつもりはなかったが、エリーアスにも譲れないことがある。バスルームで後ろを綺麗にしてきたエリーアスを、ギルベルトは手を取ってベッドに招いた。
ローションを手に取って、指に絡めてギルベルトがエリーアスの後孔を探る。
「ぐぁっ!? そこっ、だめっ!」
「ここが悦いのか?」
「ひぁぁぁっ!」
一点を押し上げられて中心から白濁を零して達したエリーアスに、ギルベルトが興奮した様子でのしかかってくる。膝が耳の横に着くくらいまで脚を曲げられて、天井を向いた後孔にギルベルトが一気に中心を押し込んでくる。
一気に貫かれて嬌声を上げながら、エリーアスはギルベルトを締め付けて中で達していた。
「今回の先生は長く続いてるんだね」
「前回までの医師は兵士に襲われていたようですからね」
「あ、先生のところにも来たんだ。それで、あいつ掴まっちゃったのか」
軽い口調で話しているが、その内容は決して軽いものではない。デニスが前の医師が襲われていたのを知っていたということになるからだ。
「前の先生は繊細だったからね。気持ちいいことだけ享受して、適当にあしらっておけばよかったのに」
「あなたはそれを知りながら、黙っていたのですか?」
「まぁ、そうかな。僕の言うことは何でも聞いてくれたし、楽だったからね」
明るく笑うデニスに嫌なものを感じて、エリーアスが席を立とうとすると、デニスが腕を掴んでくる。布越しだが体温が伝わって来てエリーアスは吐き気を覚えていた。
「ハインツェ先生は魅力的だよね。アードラー隊長が溺れるのも分かる」
「何を言っているんですか?」
「僕ともイイコトしようよ? 大丈夫、アードラー隊長とは別の日にしてあげるよ」
上目遣いで可愛い顔立ちを強調するように言うデニスに、エリーアスは吐き気しか覚えなかった。腕を振り払って逃げようとすると、デニスは手を伸ばしてエリーアスの頬に触れてこようとする。壁際に追い詰められてキスをされそうになった瞬間、べりっと勢いよくデニスがエリーアスから剥がされた。
「必死に確保した医師を辞めさせるようなことはするな。さっさと離れろ」
冷たい口調でギルベルトがデニスを引き剥がす様子に、夜に二人きりになったときの幼子のような縋る気配がなくて、エリーアスは昼間のギルベルトの様子に妙な違和感を覚えていた。
エリーアスに縋り付いて、抱いて、話を聞いてもらって、嬉しそうにしているギルベルト。ギルベルトの部屋に行くようになってから、事後にはシーツを替えて、エリーアスがシャワーを浴びるのを手伝うようにまでなっているギルベルトは、甲斐甲斐しいイメージしかない。
冷徹な表情をデニスに向けるのが、エリーアスには新鮮ですらあった。
「アードラー隊長って、結構ヤキモチ焼きなんですね」
「黙ってさっさと失せろ」
軽口を叩くデニスを追い払ったギルベルトの表情が暗く、エリーアスは自分が壁とギルベルトとの間に挟まれていることに気付いた。デニスに追い詰められるのは嫌だったのに、ギルベルトだと不快感はない。
「誰にでもメンタルケアを行っているのか?」
燃えるような目で問いかけられて、エリーアスはギルベルトの言う意味が理解できていた。
「誰にでもではないです」
「俺以外にも抱かれてるのか?」
否定したのにしつこく聞くギルベルトに、エリーアスは戸惑いを覚える。
「私は他人に触れられるのが苦手なのですよ」
「俺のときには自分で積極的に……」
「やめましょう。誰が聞いているか分かりません」
病院棟の食堂という場所でエリーアスはギルベルトと言い争いをしたくなかった。ギルベルトの言葉を遮ると、ギルベルトはぐっと奥歯を噛み締めたようだった。
「今夜、俺の部屋で」
「分かりました」
話の続きはギルベルトの部屋ですると約束して、エリーアスはようやく解放された。デニスに迫られていたのを助けてくれたのはありがたかったが、エリーアスにはギルベルトが怒っている理由がよく分からない。
話を聞く程度のメンタルケアならば、他の相手でも必要と判断すればするのだが、それ以上となるとギルベルト以外とすることをエリーアスは想像できなかった。自分が何故ギルベルトに抱かれたのかも分からないままに関係を続けているが、ギルベルトはエリーアスを独り占めしたいようなことを言う。
他人に抱かれた相手は抱けないという潔癖なのかもしれないとエリーアスは自分の体質のことも考えて、ギルベルトのことをそう判断した。
勤務が終わって翌日の制服を持ってギルベルトの部屋に行くエリーアス。抱かれる日には抱き潰されるので、エリーアスはギルベルトの部屋から出勤しなければいけなかった。それをデニスに見られていたのだろう。
デニスだけでなく、他にも見た者はいるのかもしれない。エリーアスとギルベルトの関係は、特に隠すつもりもなかったが、公になっているのかもしれない。
ドアをノックするとギルベルトが素早くドアを開けてエリーアスを部屋の中に入れた。ソファに座ると、ローテーブルの上にお茶の缶とティーポットとマグカップが置かれている。
「エリーアスが欲しがっていたようだから、用意した」
「お茶を淹れますか? 飲みながら話しましょう」
簡易キッチンでお湯を沸かしてお茶を淹れるエリーアスを、ギルベルトはずっと見詰めていた。お茶の入ったマグカップを渡されると、両手で包み込むようにして持つ。
「俺にお茶を淹れてくれたのは、エリーアスが初めてかもしれない」
「アードラー家でどれだけでも淹れてもらっていたでしょう?」
「覚えてない……。何を食べたかも、何をしたかも、ほとんど覚えてない。兄と弟があの家の中心だった」
自己主張の強い兄と弟を持って、二人が迷子になれば「待っていろ」と置いていかれて、おやつを欲しがる兄と弟に半分ずつあげて自分の分はもらわなかったギルベルト。兄弟から話を聞いているだけに、ギルベルトがアードラー家でどれだけ孤独で、自分というものを持っていなかったのかをエリーアスは実感させられる。
「エリーアスは違うと思った。俺の話を聞いてくれて、俺だけに抱かれている」
「話しは必要な相手がいれば聞きますが、抱かれるのはあなただけですね」
「本当に?」
エメラルドのような目が不安に揺らぐのをエリーアスはただ見つめていた。
「俺のいないところで、俺以外の相手に抱かれてるかもしれないと思ったら、脳髄が焼けるかと思った。エリーアスは俺が手に入れた、初めての相手なのに」
「手に入れた? 私はあなたのものではありませんよ?」
エリーアスはエリーアスのもので、誰の所有物でもない。それを主張しようとする前に、ギルベルトがエリーアスの腕を強く引く。長ソファの上に押し倒されて、エリーアスは身を捩って逃れようとした。
「これだけ頻繁にあなたに抱かれているのに、他の相手まで受け入れていたら、私は生活ができませんよ」
「エリーアス、俺を受け入れて」
「ここでは嫌です! ソファは狭すぎるし、ローションは手元にないし、避妊具もない。シャワーも浴びていません!」
きっぱりと断るとのしかかって来ていたギルベルトが、悲し気な顔でエリーアスの上から降りる。
「ベッドならいいか?」
「まずシャワーを浴びてから」
「分かった」
焦らすつもりはなかったが、エリーアスにも譲れないことがある。バスルームで後ろを綺麗にしてきたエリーアスを、ギルベルトは手を取ってベッドに招いた。
ローションを手に取って、指に絡めてギルベルトがエリーアスの後孔を探る。
「ぐぁっ!? そこっ、だめっ!」
「ここが悦いのか?」
「ひぁぁぁっ!」
一点を押し上げられて中心から白濁を零して達したエリーアスに、ギルベルトが興奮した様子でのしかかってくる。膝が耳の横に着くくらいまで脚を曲げられて、天井を向いた後孔にギルベルトが一気に中心を押し込んでくる。
一気に貫かれて嬌声を上げながら、エリーアスはギルベルトを締め付けて中で達していた。
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