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素人作家を推しています ~彼の書く文章は俺に新しい扉を開かせる~

7.夜は続く

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 吸われた乳首も赤く腫れているし、首筋にも吸い痕が大量についている。最初に大浴場に行っておいてよかったと龍己は思わずにはいられなかった。こんな格好になっては公衆の面前に身体を晒すことはできない。
 部屋についている温泉に入る前にシャワーで身体を流したのだが、春香にローションを塗り込めた後孔を洗われてしまって、龍己は相当恥ずかしい思いをした。小説のことで根に持っているのか春香に容赦はなかった。

「春香、あまり痕を……」

 つけないでくれと言おうとして、龍己は春香の背中を見てしまった。白い肌にくっきりと目立つように残っているのは龍己の爪痕である。抱かれたときに必死にしがみ付いて、龍己は春香の背中に爪を立ててしまったようだ。

「なんか、ごめん」
「え? 何がですか?」
「いや……ごめん」

 自分がされたことの抗議をしようとして、自分がしてしまったことに気付いた龍己はひたすら謝るしかなかった。無意識のうちにやったのだろう、春香の首の周りにも赤い痕がついている。
 龍己も色は白い方だが、それよりも白い肌をしている春香は吸い痕や爪痕がものすごく目立つ。綺麗な春香の肌を傷付けてしまったことと、春香の肌は自分以外もう見るひとはいないのだという優越感で、龍己は若干複雑な気持ちになっていた。
 龍己が広い風呂に入ると、春香も入って来る。

「やっぱり熱いのですね」
「温泉ってこんなもんじゃないか?」
「僕が熱いのが苦手なのでしょうか」

 温泉に来たことがない春香にとっては、自分で温度調節ができない風呂は初めてだったのだろう。どうやら春香はぬるい風呂が好みのようだった。
 熱さに顔を真っ赤にしている春香も可愛いと思えてしまうのだからどうしようもない。

「明日はゆっくりするか」
「そうですね。龍己さんもお仕事があるのでしょう?」
「まぁ、仕事はなんとかなると思うけど」

 仕事は何とでもなる。これまで締め切りを破ったことがないのが龍己の自慢だった。今回もノートパソコンは持って来ているが、締め切りはずっと先の仕事をしている。どちらかというと龍己は速筆の部類に入るらしい。編集者からも特に締め切りについて注意されたことはなかった。

「春香は次の話の構想とかあるのか?」
「うーん、そろそろ、百合も絡む話を書いてみたいのですよね」
「百合?」

 花の種類を思い浮かべて、それがどう絡むのだろうと考えてしまう龍己に、春香が説明してくれる。

「男性同士の恋愛を薔薇、女性同士の恋愛を百合って言うのです。どの組み合わせでも愛は尊いと伝えたいのですが、急には書けないので、脇役で百合のカップルを入れていきたいのですよね」
「脇役か。そうなると、主人公はどうなるんだ?」
「主人公はボーイズラブにしようかなぁと思っているのです」

 龍己さんもお好きでしょう、ボーイズラブ?
 春香の問いかけに龍己は自分と主人公を重ねて読んでいるなど言えるはずがなかった。
 真っ赤になって答えられずにいる龍己に春香が近寄って来る。胸に触れられて、乳首を手の平で捏ねるように胸全体を揉まれて、甘い吐息が漏れる。

「んっ! ふぁっ!」
「まだ満足していないんじゃないのですか?」

 尻に手を添えられて揉まれて、龍己は身をくねらせる。

「もうだめだ。ここだと逆上せる」
「ここじゃなければいいのですか?」
「コンドームもないし」
「コンドームを付ければいいのですか?」

 問いかけてくる春香はしつこい。
 いいと言ってしまえば春香は容赦しないだろうが、言わなくても春香は龍己を抱こうとするだろう。
 無言でお湯から立ち上がって脱衣所に向かうと、春香も付いてくる。バスタオルで身体を拭いて出たところで、春香に壁に押し付けられた。
 ずくんっと胎が疼くのが分かる。
 これは小説で読んだシチュエーションと同じだ。

「龍己さん、コンドーム、付けなくてもいいですよね? ちゃんと洗いますから」
「春香、待って……」
「待てないのです」

 抱かれて柔らかくなっている後孔に後ろから春香の中心が押し当てられる。壁に押し付けられたまま、下から突き上げるようにして中に押し入って来る春香を、龍己は拒むことなどできなかった。


 小説の主人公と龍己は自分を重ねてしまう。それは春香の小説がそれだけ萌えるからだと分かっていた。後ろから突き上げられながら、首筋を、肩甲骨を吸い上げる、春香に感じてしまう。

「ひぁっ! あぁんっ! だめぇっ!」
「ダメなのですか? やめた方がいいのですか?」

 胸に回る手がきゅっと龍己の乳首を摘まんだ。その刺激に龍己は奥を締めてしまうが、春香は腰の動きを止めている。春香にダメと言ってしまったが、快感が強すぎて口を突いてしまっただけで、本気で龍己は嫌がってはいなかった。
 むしろもっと強く攻めて欲しい。
 龍己がおかしくなるくらいまで感じさせてほしい。

「だめじゃない……やめないで」

 懇願する龍己に、春香は胸を弄りながら後ろからがつがつと突き上げてくる。立ちバックは身長差があった方が悦いと春香の小説にも書いてあったが、本当にその通りで龍己は春香から与えられる快感の僅かも逃さないように必死になっていた。
 内壁を擦り上げ、最奥まで突き上げる春香に、龍己の中心からはとろとろと白濁が零れて達し続けている。中で達するようになってから、龍己は前ではっきりと達しないようになっていた。
 勢いよく白濁を吐き出すのではなく、中で達しているのに連動するようにとろとろと白濁を零すだけになってしまった龍己の中心。
 自分で後ろに触ったときから感じていたくらいなのだから、龍己には素質があったのかもしれない。

「ひっ! ひぁっ! おかしくなるぅ!」
「おかしくなってください。おかしくなっても、可愛いですから」

 耳元で囁かれてかぷりと耳朶を噛まれる。快感に溺れて龍己は立っていられなくなりそうになって、必死に壁に取り縋っていた。
 行為が終わった後は龍己の背中には赤い痕がたくさん残っていたし、乳首もじんじんと腫れていたが、コンドームの皮膜一枚ないだけでこれだけ春香を身近に感じられるのかという感動に近い感覚もあった。
 コンドームをつけないで龍己を抱きたいくらいには、春香は龍己に溺れている。その事実が龍己にとっては幸福だった。
 温泉に逆戻りしてシャワーヘッドを後孔に押し当てられて中を洗われるのは恥ずかしいし、それで感じてしまって前からとろとろと白濁を流しているのを見られるのは一種の羞恥プレイだったが、春香は一切許してくれなかった。

「せっかくの温泉旅行なのに龍己さんがお腹を下してはいけないのです」
「あぁっ! もう! ゆるしてぇ!」

 シャワーのお湯が中で出されているような感覚で耐えられず膝が崩れる龍己に、春香はキスをして宥めてくれた。

「龍己さん、可愛かったのです」
「かわいいのは、はるかだろ?」

 喘ぎ過ぎて喉が少し枯れている龍己に春香が苦笑している。
 どっちが可愛いかについては話し合っても結論が出ることはなさそうだった。
 バスタオルを外した布団の上に倒れ込んで、事後の気怠さに身を任せる龍己に、春香が胸に顔を乗せるようにして抱き付いてくる。普段の寝る体勢がそれなので、龍己はすっかりと慣れ切っていた。
 春香の重みも暖かさも全て心地いい。
 健やかに眠る春香の吐息を聞いていると龍己も眠気が襲ってくる。

「龍己さん、大好きなのです……」

 寝言のように呟く春香に、龍己は答えることができない。答えてしまえば春香を龍己に溺れさせるよりも先に、龍己が春香に溺れてしまっているのを自覚せざるを得ない。
 いつか春香が龍己の元を去るとしても、それが一日でも遅くなるように、龍己は春香を繋ぎ止めておかなければいけない。
 そのためにも、今答えを出すことは負けを認めたようで危険だと龍己は考えていた。
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